愛しい君にプレゼントを。
ねここ 様
もうそろそろナミの誕生日――なんだが。
「なにーっ!お前まだナミさんの誕生日プレゼント買ってないのかー!?」
・・・耳に痛い話だ。
何も考えていないわけではない。
一応、考えてはいた。ただそのうちのどれにするか迷っていたらもう前日になっていたんだ。
丁度明日は島に上陸するからその時買おう。そう思った。
「じゃぁ日が暮れる頃に船に集合!解ったわね?」
「「「「「「了解!」」」」」」
そうしてナミ以外の全員が街へと繰り出した。
プレゼントを何にしようか。
そう思いながら歩いていたらいつの間にか町のはずれの森に来ていた。
そしてふと目に入った店。
こんな町の外れにあるなんて・・・なんだか不思議な感じがする。
興味が湧いて、中に入ってみた。
中は特に人はいなく、気配すらなかった。
店内を物色していると、突然後ろから声がした。
「何をお求めでしょうか?」
振り返ると店員らしき女性が立っていた。
「いや・・・ちょっとプレゼントを」
「彼女へのプレゼントですね」
「!?な、なんで」
「あなたのその優しい顔を見ていればわかりますよ。こちらなどどうでしょうか?
それはナミの肩の入れ墨と同じ風車にみかんのペンダントだった。
正確にはみかんではなくオレンジの石だが。
けれど、その石がとても綺麗で、形から言ってもナミが喜びそうだと思った。
「ああ、これを貰う」
「お買い上げ、ありがとうございます」
値段はそれほど高くもなければ安くもなかった。
・・・まぁ値段を言わなければナミも何も言わないだろう。
買ったペンダントをプレゼント用に包んで貰い、礼を言って店を出た。
ここから港は近いみたいだ。船がよく見える。
早速そっちの方向へ歩いていった。だが――
「どうして辿り着けないんだ!?」
と、思わず声に出てしまった。
しょうがないので街の大通りをうろついていたら、チョッパーの姿が見えた。
チョッパーも此方に気づいたのか腕をぶんぶん振っている。
「ようチョッパー。何か良いもん見つかったか?」
「ん?いや、何もないぞ!」
ニコニコしながら両腕で大事そうに抱えている包みを見ると、どうもそれがナミへのプレゼントのようだ。
そうして話しているうちにもう夕暮れ時だった。
2人で船向かって歩いていると、次々に皆に会った。
サンジは今日のために使うであろう食材を両腕いっぱいに持っていた。
そしてウソップが荷物持ちを手伝っているようだった。
そうこうしているうちに船に着いた。
サンジが料理を作り終え、ナミの誕生日を祝うための宴会が始まった。
「ナミッ!肉やるぞ、肉!お前今日誕生日だもんな!」
そういって肉を差し出しながら口からはダラダラと涎が垂れている。
「き、気持ちだけで十分だから食べなさいよ」
ルフィが「いいのか!?」と言った瞬間にはもう大きな肉は無くなっていた。
「ナミ!俺からは本だ!」
「あ、これ読みたかった本よ!ありがとうチョッパー」
「ほ、褒めても嬉しくなんかねーぞ!」
そう言いながらも顔は笑顔だった。
「ナミ!俺からはコレだ」
そう言って差し出したのはくす玉だった。
「?何これ・・・」
「まぁそう言わずに紐を引っ張ってみろ」
ナミはウソップの言われるがままに紐を引っ張った。
するとポンッ!と音がして中から船員全員の人形が出てきた。
「・・・うわぁー!何?これもしかしてウソップの手作り!?」
「そうよ!俺様にかかれば人形の一つや二つ、すぐに作れるぜ!」
布があまり無かったのであろう。ツギハギが沢山あったがそれはそれで愛嬌があった。
「私からはこれよ、航海士さん」
そういって渡した包みからは洋服が出てきた。
黒いキャミソールと緑のショートパンツだ。
「航海士さん、服が欲しいって言ってたでしょ?」
「うん、ありがとうロビン!」
「・・・まぁ俺からはこの料理がプレゼントって所かな。でもそれだけじゃ物足りないだろうから――」
そう言いながらサンジが取り出したのはみかんを使ったケーキだった。
普通のスポンジケーキを生クリームでコーティングしていて、みかんで綺麗に飾り付けをしてある。
「ナミさんのみかん畑のみかんをちょっと拝借したよ。――ゴメンね、勝手に採ってっちゃって」
「勝手に持って行ったのは許し難いことだけど、こんなに美味しそうになって返ってきたんだから許しちゃう!
でも次から無断はやめてね?」
「はい、わかってます」
サンジは余程ナミがケーキを気に入ったことが嬉しいのだろうか、いつもの数倍の笑みを浮かべていた。
「いいなぁ〜ナミ。サンジー!俺にもケーキ!!」
「バカ!アレはナミさん専用だ!!」
ナミは大きなホールケーキにかぶりつきながらふと思ったように言った。
「で、ゾロのプレゼントは?」
ナミがそう言ったので皆が俺に注目した。
「あー、プレゼントはーそのー」
「無い」
本当はあるのになぜか口から出たのは「無い」という言葉だった。
「そう・・・無いのね。まぁいいわ」
・・・いいのか?と聞こうとしたとき、ナミが口を開いた。
「――いつか3倍返しにしてもらうから♪」
・・・何ていう女だ。
「さぁ!それより今日は飲むわよぉ〜!」
そうナミが言ったので皆で酒を飲んだ。
そして案の定俺とナミ以外は酔い潰れてしまった。
「もう、みんなホントにお酒に弱いわねぇ」
「・・・飲み比べでもするか」
「いいわね、やりましょう」
それから何時間も飲んだ気がするが、実際1時間も経っていなかっただろう。
腹が空いているのに酒を沢山飲んだせいか酒の周りがいつもより早い。
いつもならもっと飲めるのだが、今日は早々にダウンしてしまった。
「あら、ゾロらしくないわね」
「まぁそんな日もあるさ」
「さて、私が勝ったから何かして貰おうかしら」
「・・・勝者への祝いのプレゼント」
そう言ってナミに街で買った包みを差し出した。
「何、コレ?」
「・・・プレゼントに決まってるだろ」
「あら?最初は『無い』って聞いていたけれど?」
「・・・気のせいだ」
「貰って良いのね?」
「――もうお前のだからな」
そう言ったらナミは丁寧に包みを開けていった。
そしてプレゼントを見た瞬間に顔が煌めいた。
「ゾロ・・・ありがとう」
彼女の満面の笑みが俺には最高のご褒美だった。
ナミが幸せならそれで良い。そう思う自分がいる。
「ナミ――誕生日おめでとう」
「ありがとう、ゾロ」
愛しい君の生まれた日、祝わなきゃいけないだろう?
FIN
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