海に咲く花 ― 2.ゾロサイド ―
uuko 様
ふと目が覚めた。
男部屋のバンクベッドの中だ。
朝・・・じゃねェ。まだ夜半を過ぎたばかり。
戦闘の後はいつも眠りが浅い。
興奮が冷めやらず高ぶった血が治まらない。
物足らぬ戦いで怪我をしたわけでもなければ尚更。
見聞色で船内を探る。
慣れぬ気配が、二つ、いや三つか。
侍とガキ。
そして、死の外科医。
知らぬ間に同盟を結んでいた、元4億を超す賞金首。
だがそいつの気配にも、特に不審な様子はない。
おれが目覚めたのは、いつも頭の片隅にある気配が動くのを、無意識に捉えたせいだ。
気配を消して外に出ると、月夜に淡く映る細い影が図書室の扉に手をかけるのが見えた。
先程まで夢の中で犯していた女。
迷うことなく後を追った。
***
ドアが締まる前に滑り込み、ナミの腕を掴む。
「ゾ・・・?」
それ以上声をあげる間も与えず、柔らかな橙色の髪に覆われた頭を押さえ噛みつくように口を塞ぐ。
舌で強引に柔らかな唇を割り口内に侵入し、息もつかせぬ様に舌をからめ、口腔の奥まで深くえぐる。
「んんっ・・・」
胸を叩く拳を無視し、身体ごと抱え込んで動きを封じた。
喰い尽くしたい。
やり場なく滾っていた熱はぶつける対象を与えられ自制が効かない。
餓えに突き動かされるまま細い身体をソファに押し倒し、白い喉から鎖骨まで歯をたててゆく。
薄い布一枚で覆われた豊かな乳房を貪ぼる。
片手で両腕を縫い留め、もう一方でショートパンツと下着を引き摺り下ろす。
「ちょっ・・・やっ」
体でナミの膝を割り、股の間の仄暗い裂け目に顔を埋めながら服を脱ぎ捨てる。
秘唇を舐めあげ中心に舌を挿し入れ、唾液を擦りつける。
「っつ・・・あぁっ!」
まだ準備の出来ていないナミの中に、
「くっ・・・ナミ・・・」
既にどうしようもなく隆起した自身を突き立てた。
「あ・・・」
抵抗し強張っていた身体が弛緩する。
抑制の効かぬ凶暴な欲を、女が柔らかく受け止める。
「ゾロ・・・」
手離した小さな掌が、おれをかき抱く。
・・・そのまま我を忘れ、許しを請うように愛しい身体に溺れた。
*
情を吐き出し突っ伏したおれの下で、ナミはたいそうなオカンムリだ。
「ったく、もう!」
バカ。ケダモノ。マリモ。
「・・・悪ィ」
「重い。のいて」
またシャワー浴びなきゃなんないじゃない。
「借金10万ベリーだからね」
びしっと指をつきつける。
情交の名残で上気した顔で言われても可愛いだけだが。
「・・・洗ってやっから勘弁しろ」
「バカ。そんなことしたら、また・・・」
「今度はちゃんとイかせてやっから」
っつ〜か、さっきもとりあえずイってたろ。
ドカバキ。
「で?」
湯を溜めナミの指示通りバブルなんたらを掻き混ぜる。
やたら甘い香りのする泡の中で、膝の上に乗った女の肩を揉まされるのは、ある意味拷問だ。
「あァ?」
白くすべらかな背中を掌を撫でると、肌がざわりとかすかに震える。
「何があったのか、ちゃんと言いなさい」
命令形なのが気に障るが、抵抗は地獄行き直行便を意味する。
「いやまァ・・・なんだ。いろいろ・・・、考えてた気がするんだが。
・・・一発ヤったらどうでも良くなった」
髪をあげ露わなうなじに、鼻を擦りつける。
「なによそれ。・・・っ」
両手で両脇から腹へ、そして胸にかけてのなだらかな線をなぞり、ふくよかな双丘を弄ぶ。
「いたずらはダメって言ったでしょ」
そう言いながらも逃げる気配はないので続ける。
「いろいろって・・・。あ・・・」
固く起ちだした先端を、指先で柔らかく愛撫する。
「・・・エロガッパがまた一匹増えたなとか」
いや二匹なのか?あの侍のガキもあなどれん。
「んん。どうでもいいわね」
「グル眉とお前の中身交換のこととか」
「う〜ん、あれはちょっとした悪夢だったわ」
ヤってる途中に中身入れ替わる夢とか、マジ悪夢だ。
「やべェ能力者が船に乗り込んでることとか」
トラ男君とか慣れなれしく呼んでやがるなとか。
「同盟には反対しなかったくせに」
既に決定事項だったろうが。
「・・・女ぶった斬ったこととか」
結局斬ったのよね。雪女。
「・・・いやなの?強敵でも?」
べつに強敵ってほどでもなかったが、
「・・・コックじゃなくとも、気持ちいいもんじゃねェ」
斬る必要もなかったかもしれない女を斬ったのは、挑発されたせいだ。
あんたでも敵が男とか女とかって区別すんのね。
女子供に案外甘いのは知ってるけど、敵には容赦ないくせに。
女斬って楽しいっつぅ方がやべェだろ。
それはそうだけど。
全く意識しねェっつ〜ほど達観はできんな、ルフィみたいには。コック程アホじゃねェが。俺が一番普通だろ。
良く言うわ。でもルフィのは達観っていうより、区別ついてないんじゃない。
・・・どうなんかね。
「ムカつくのもわからなくはないわね」
「なにが」
「女を弱者と思ってるから、真剣に対峙出来ないってことでしょ」
サンジ君程突き抜けてたら、あれはあれでちょっと尊敬するけど。
「・・・またそれかよ」
「私が言うのは初めてよ」
「う・・・」
「これをあんたに言った女がいたでしょ」
「・・・」
「あたしのことも、弱いって言ったじゃない」
何弱ェの狙ってんだ、とか。
「・・・弱ェじゃねえか」
「あんたに比べりゃ、誰だって弱いわよ」
つ~か、事実でも面と向かって言われるとムカつくもんよね。
「それにあたしは恐がりなだけ。ヒートエッグで反撃出来たんだから」
「すいやせんでした。もう邪魔しません」
「それはだめ。私を守るのはあんたの仕事。ギムなの」
感謝はしてるわよ。一応言っとくけど。
「へいへい」
「・・・私は別にいいんだけどね。か弱い女で」
賢いし。強いだけの迷子バカより全然役に立つし。可愛いし。
誰が迷子バカだ。可愛いとか、それこそ関係ねェだろ。
「でもさ、男と力で対等に渡り合ってきた女性にとっては、
そういう風に扱われるのは、心外だし悔しいんじゃない」
「・・・」
・・・ナミがあの女海兵と話し込んでいたのは知っている。
斬りたくねェもんはあるが、斬るときゃ斬る。
敵として斬らないのは、あいつが女だからじゃねェ。
斬る必要がねェからだ。
たぶん。
「あんたに惚れてるって」
「誰が」
「たしぎ大佐。剣士として。とりあえず」
「・・・」
「ちゃんと向き合いなさいよ。あの人にも。自分にも。
あんたらしくないわ。逃げるなんて」
「・・・何が言いたい」
ナミの下腹部に手を伸ばす。
「だからあんたが・・・。あ・・・」
ぬめりを帯びた裂け目に指を這わす。
「そうやって、男だとか女だとか・・・。んんっ」
溶けた中心に、つぷりと指を入れる。
「親友にそっくりとかって・・・。だ・・・め・・・」
花芯を抑えナミの奥を掻く。
「真実から・・・目を背けるのが・・・。やっ!」
ナミの腰をうかせ、
「はぁっ・・・、むか・・・つく・・・」
口で煩い口を塞ぎながら、
「んんっ・・・!」
熱く蜜を滴らせるその中芯を、天を向く己で貫いた。
***
だから男はずるいっての。
力では女が男に敵わないの、わかってるくせに。
「そうやって、身体でごまかそうとするのが腹立つのよ!」
「・・・うっせェ」
「なによバカ!」
女であることを最大限に利用して、おれを振り回すお前が。
男はずるいだなんざ、笑止千万。
お前が弱ェだなんて誰も思っちゃいねェ。
麦わらの一味最強のくせに。
「お風呂洗ってから出なさいよね」
「・・・」
・・・強行手段に訴えるのは、他で敵わねェからに決まってんだろうが。
女に命令され風呂洗いをする世界一の大剣豪(予定)。
傷ひとつ無い背中には哀愁が漂う。
別にいいがな。風呂洗いは嫌いじゃねェし。
・・・あの海軍女が気にならないと言えば嘘になる。
そしてあいつを見るたびに、別の少女を思い起こさずにはいられず、それが無性に苛立たしい。
ナミの怒りの理由も、たぶんおれの中の昏い想念の一部もそれが原因で、
それが何を意味するのかなど考えるのも煩わしい。
だけどナミ。考えたことはあるか。
お前が力では絶対に敵わない、コックとルフィとこの俺とが、
お前に絶望的なまでに逆らえねェ理由を。
何故お前を無意識に庇うのか、命に代えてでも守ろうとするのか。
ずる賢さでは右に出るもののない天性の魔女に。
強く美しい無敵の海の女神に。
おれが・・・おれ達が、どれだけイカれてんのか。
←1へ 3へ→
(2013.08.17)
<管理人のつぶやき>
激しい戦闘の後、ナミの身体を激しく求めて・・・。その性急ぶりに、ゾロの渇き具合がうかがえます。わかっているのか、ナミもそんなゾロを受け入れる。その後の会話からも、ナミはゾロのことを、ゾロ以上によく理解しているのだなぁと思いました。
表作品『海に咲く花 1.たしぎサイド』の続きで、ゾロサイドのお話でした。uukoさん、どうもありがとうございました!