疲れて帰って来る君に何かを求めることは出来なかった。
でも少しだけでも良いから話せたらな、って思ってたんだよ。






ふんわりと抱かれたら、それはもう、最上級の幸せ  −1−
            

AKARI 様



ゾロとナミが出会ったのはある雨の日のことだった。
両親を亡くし当てもなく彷徨っていたナミをゾロが家に連れ帰ったのだ。
当時ゾロは高校生、ナミは小学生だった。

「風呂はいっておいで。体冷えてるだろ、荷物は俺が整理しておくから」
「・・・うん」

ナミが風呂場に入っていくのを見送り、ゾロは彼女が持っていた鞄の中身を整理し始めた。
服や学校で使うのであろう教科書など色々な物が入っていた。
一番下に入っていた写真にはナミらしき子どもと夫婦が優しい笑みを浮かべて写っていた。

(両親亡くしたって言ってたな、そういえば)

きっと言わないだけで凄く辛い思いをしているのだろう。
当てが無いということは唯一の頼りが両親だったということだ。
見ず知らずの自分に何か出来ることはあるのかと考えてみるが、出来ることは限られている気がする。

彼女に自分との思い出を与えることが出来ても、それによって彼女の傷が癒えることは無いと思う。
ずっと心の中から消えないのだろう。
どんなに楽しいことがあっても、幸せなことがあっても、両親を亡くしたという事実は変わらないから。

せめてこれからの人生を楽しく幸せに過ごさせてあげることがゾロに出来る精一杯なのかも知れない。

「ゾロ、パジャマ大きい」
「お、出たか。悪いな、子ども用が無かったもんでよ。荷物の中身も濡れちまってるし」

風呂からあがったナミはゾロのパジャマの上だけを着て出てきた。
それでも膝下まで隠れている。
半そでを渡したはずなのに腕の殆どが隠れてしまっていた。

「今洗濯してやるから、それまでの我慢な。スースーするかも知れないが」
「大丈夫」

ナミは小さく微笑んだ。
そして服を洗濯機に放り込んでいるゾロの服の裾を握る。

「ん?」
「私、此処に居て良いの?」
「良いよ。居たいだけ居て良い、ずっと居て良い」

ゾロの言葉にナミは安堵の溜め息を吐いた。
家までの道を歩く間に少し話しただけなのだが、思った以上にゾロに懐いているらしかった。
それならば連れ帰った以上、責任をもって彼女を育てていかなければならない。

「あ、そうだ。お前の学校にロビンって名前の先生居るか?」
「うん、保健室の先生」
「じゃあ俺の母校だな。ロビンに話があるから明日一緒に学校行くか。ついでに色々買い物に行っても良いし」
「うん、行きたい」

ナミは何より買い物をする時が好きなのだと言った。
いつも母と一緒に食材を見てまわるのが楽しかったそうなのだ。

「んし、じゃあ決定な。行けないってメールしとこう」
「誰に・・・?」
「妹」

ナミはゾロのことに興味津々なようであった。
これから長い時間を共にすることになるのだから、色々知りたくなったのだろう。

「妹っていっても血繋がって無いんだけどな」
「ほぇ〜会ってみたい」
「会わない方が良いぞ、ちょっと怖いから」

ゾロが居るから大丈夫だとナミは言った。
兎に角何でも良いから知りたいということなのだろう。

「寝るか」
「一緒に寝てくれる?」
「良いよ、じゃあ寝室行くか」

初めての夜は二人一緒に眠った。
ナミが眠るまでゾロは色々な話を聞かせてやった。
ゾロの腕の中でナミは安心して眠ったのであった。




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(2007.10.18)


 

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