「あ・・・雪」


気がつけば窓の外は一面真っ白だった。


唯一の家族であるノジコは昨日から旅行に行っている。今日帰ってくるはずだったがこの雪のせいで明日まで帰って来れないだろう。
ナミはもう冷めてしまったお茶を飲みながらテレビのリモコンをとった。

「はぁ・・ヒマ・・」


大好きなミカンを食べながらも気分は鬱々としている。
休み最後の日だというのにこの大雪では何処にも出かけられない。
今日に限って面白い番組は何もないし、もちろん課題なんてとうの昔に終わっている。






―  私と貴方の間柄  ―
            

アコ 様



ナミは春から入学したばかりの高校1年生だ。

レベルの高い学校だが、昔から頭のよかったナミにとっては退屈だった。
10年前に母が他界してからナミは姉のノジコに養ってもらっているがやはり二人が
食べていくには厳しい。
せめてもの足しになればとファミレスでバイトをしていたが昨日クビになってしまった。
クビになったそもそもの原因はナミではない。
上司にいきなり尻を撫でられて右ストレートをくらわせただけだ。
悪いのは自分ではないが権力があるのは向こうだ。すぐにクビにされた。


( どうせなら、もう一発お見舞いしてやればよかった・・・ )


しかし、そんなことを考えていても始らない。求人情報誌でも読んで新しい職を探さなければ。
暖かいコタツからでるのは嫌だったが情報誌は自分の部屋にある。


「えぇい!」と仕方なく立ち上がったその時。



「  ピンポーン  」

風の音の中にチャイムの音が聞こえた。

(こんな大雪の日に誰だろう・・)

外はさっきより強さを増した大雪が吹雪いている。
郵便?それとも隣のゲンさんが心配してきてくれたのだろうか。
ともかくこんな寒い中人を待たせる訳にはいかない。急いで玄関に向かった。


「ガチャッ」
「はいはい。どなたです・・・か・・」


一瞬固まってしまった。
ドアの前で鼻を真っ赤にして震えているのは予想もしなかった相手だった。


「よぉ。いきなりわりぃな。」
「ど!どうしたのよ?いきなり!」
「いや。たいしたことじゃねぇんだけどよ・・」
「風邪ひくからとりあえず中に入りなさいよ」

いきなりの訪問客は幼馴染のゾロだった。
ゾロとは小さい時から仲が良かった。
小学校・中学校とずっと同じクラスでいつも一緒にいた。
勉強はからっきしできない・・・というかやる気さえないが昔から得意だった剣道は全国クラスだ。
高校が別々になったので会うのは久しぶりだ。


「お茶とコーヒーとココアどれがいい?」
「んーお茶」

余程外は寒かったのだろうコタツの中に潜り込みながら返事をしてきた。

(そういうと思った)

付き合いが長いせいかゾロの好みは大体わかる気がする。
ナミは急須に新しい茶葉をいれながら「ふふ」と予想が当たった事を喜んでいた。



「あっ!!」

別のことを考えていたせいか、手元がくるってナミの手にお茶がかかってしまった。


「熱っっ!!!」
「ばっ!!早く冷やせ!」


ゾロが駆け寄ってきた。
蛇口から勢いよく水が出てくる。真冬なのでとても冷たかった。
「もう大丈夫」と言ったが「まだだ」と言って放してくれなかった。

半年以上会っていなかっただけなのにゾロが急に大人っぽく見えた。
背も大分伸びているし、声だって更に低くなっている。
私は変わっただろうか。これでも入学してから何人にも告白された。
かっこいいと評判の先輩や運動部のレギュラー。
けど、私は全員断った。
何故?


「・・・・ゾロが好き」


言った後にハッとした。ゾロが驚いた顔でこちらを見ている。
私は今までの関係が好きだった。壊したくなかった。
けれど、他の子にヤキモチをやく自分がいた。
自分に嘘はつけない。



「私・・・ゾロが好き。・・好きなの・・」



頬に暖かいものが通った。
「言ってしまった」という後悔か、それとも今まで溜め込んでいた気持ちがこみ上げてきたのか。
どちらなのかわからないけど涙が止まらなかった。
ゾロは困っているだろうか。私のことを嫌いになっただろうか。
急に視界が真っ黒になった。

ゾロの・・・コートの色だ。


「俺も・・・ずっとお前のことが好きだった・・」


抱きしめられていた。会わないうちに大きくなった体に私はすっぽりと収まっていた。
強く抱きしめられて少し苦しかったが、懐かしいゾロの匂いにとても心が安らいだ。
涙も止まっていた。
どのくらい経ったのだろう。抱きしめる力が緩まったので上を見上げた。


ゾロのまっすぐな視線目が逸らせない。

「ゾロ・・・っ」

だんだん二人の距離が近づく・・・私は自然と眼を閉じていた。


唇が触れる。柔らかい感触に私達が酔いしれていた。



ふと、時計の方に眼をやった。もう12時をすぎている。外は真っ暗だ。


「・・・・げっ!」

「どうしたのよ?」

「・・そういえば、俺お前に課題手伝ってもらおうと思って来たんだよ。」

「いいじゃない。ちょっと位遅れたって」

「いや・・・今回遅れたらな・・」

「遅れたら・・?」

「・・・留年だと」

「えーーー!!!」

「まぁ、いいか1年くらい」

「良くないわよ!!」



その日は結局徹夜でゾロの宿題をしたが、退屈をしなくてすんだ。


「今度このお詫びしてよね」

「へいへい」


明後日は初デート。
昨日までは幼馴染。
今の私達の関係。



恋人






−終わり−


(2004.01.09)


<管理人のつぶやき>
長く幼馴染だった二人にとって、しばらく会えなかった半年間は必要な時間だったみたい。
離れて、また再会したことで、相手に対する気持ちがハッキリしてきて、またハッキリさせたくなったのかもしれません。
ゾロは課題の手伝いを口実にしてるけど、要はナミに会いたかったんだよね〜?(笑)
雪に閉ざされて外は寒いけど、ナミのおうちの中はあつあつ、ポッカポカだーーv

2004年の最初の投稿はアコさんの初パラレルでした!
アコさん、あまーいお話をどうもありがとうございましたv
どうぞ本年もよろしくお願いいたしますね♪

アコさんは現在サイトをお持ちです。こちら→
mate

 

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