どおしてなんだよぉー!なんで俺じゃないんだぁ!自分で言うのもなんだが、眉目秀麗、成績優秀、至極紳士であり、女心を掴む統べも心得ている…愛に溢れた男なんだよー俺は!そうだよ、その辺の奴らにゃ、絶対負けねー自信はある!なのに…

「お前、俺の女にならねぇ?」
「いいわヨ、望むところ。」

…って、何なんだよー!俺の目の前で告白大会?しかも、OK貰ってるしぃー!俺が半年かけて口説き続け、やっとこれから…って時に、あのアホ剣士がぁぁぁぁ





はじめて君としゃべった……。  −3−
            

CAO 様

―紳士の密かな嘆き


ここは、俺のジジィが経営するレストランだ。いつもは、愛を語らうカップルや品のいい老夫婦、幸せそうな家族連れ…たまには怪しい密会中の男女や男同士なんつーのも…で、賑わう瀟洒な佇まいの素敵な店なんだ。だが今日は、オープン10周年記念パーティの手伝いに駆り出され…いや、それはかまわないんだ!俺はジジィに引き取られた時から、ずっと店で修業してきたし、料理は本当に愛している(世の女性達と同じ位)し、このパーティの企画から参加して力を注いできたからなっ!そうさー盛り上げるために、店の常連客は勿論、近くの会社のOLや会員制高級クラブのママ、大学の美人教授…数えたら限りがねぇ程口説き落としたんだ。勿論、俺の高校で1、2を争う美女も、半年がかりでやっと口説き落としたんだ…こんなこと輝かしい俺の女性遍歴の中でも、且つて無かった!
そう、半年前...毎年行なわれる学園祭。その実行委員に選ばれた俺は、一年生の委員の中にこの世のモノとは思われぬ可愛いヒトを見つけたんだ!…情熱を感じさせるオレンジ色の髪、その素抜けるような白い肌、鵄色の瞳に知性を宿し、その頬は薄いばら色、唇に至っては思わず触れたくなる程蠱惑的、しかもナイスバディだ…女神だっ!そう思ったね、俺は。
「嗚呼っ!天使も膝まづく貴女の美貌に、僕の心は総て奪われてしまった!どうかこの哀れな小羊に、貴女のお名前だけでも教えていただけませんかぁぁ?」
「…ナミ。」
「俺の名は、サンジ。一流コックです。」彼女の白魚の様な手を取り、唇を押しあてた。
「…あのっ、サンジさんちょ…」
「さん付けなんて、他人行儀な!サ・ン・ジとお呼び下さい。」
「じゃ、サンジ…君。手、離して下さらない?」
「あらっ?コックさん、また女の子口説いているんですかぁ?いつも忙しそうねー。」
「うおっ!た、たしぎちゃーん。何で此処へ?そっかぁー、俺に会いにきてくれたんだねー!…」
…思い出しちまった。あの頃は幸せだったよなぁー。委員会の度にナミサン送ってって、美人のおねーさまにも紹介され、家族ぐるみのお付き合いも夢では無かった筈。確かに身持ちは堅かったケド、デートの誘いは何時も断られたケド、キスしようとして何度も殴られたケド、決して俺のこと嫌って無いと確信してたんだ!いやどっちかつうと、彼女の言動は、好意の裏返しだったと思う。さっきまでは、そう信じてた…
今日昼休みに図書室で、彼女からパーティに行ってもいい!って、聞かされた時は天にも昇る気持ちだったのによぉー。あんま他人の話聞かねぇマリモ頭にさえも、放課後無理矢理捕まえて、言いたくなる位にだ!ただ、話しても話してもマリモ脳には理解出来ない様で、そんな時運命の女神は悪戯好きにも、俺の愛しいナミサンと可愛いビビちゃんを通りかからせたんだ!その瞬間俺は、思ったね(彼女と俺の絆の深さを、アホ剣士に見せ付けてやろう。ナミサンの美しさにひれ伏させ、羨ましがらせてやろう。)と。なのに…
???なんでですか?俺がひれ伏すんですか?俺が羨む側ですかぁ?!なんで、話したことも無い同士が、逢った途端に付き合い始めるわけぇー!納得いかねぇ!
「おい!サンジ。さぼってんじゃねぇぞっ!!」
「うるせぇー、くそジジィ!こちとらパーティどころじゃねーってんだ!俺の人生最大のピンチをどうするか…いってー。」蹴食らわしやがった...。
「そろそろ客がくる頃だ!しっかり用意しやがれ!ちびナス。」
「解ってる!任しとけ…」…そうだ嘆いてる場合じゃねぇ。ナミサンも来るんだ!チャンスじゃねぇ?マリモは呼んでねぇし、つまり二人で語らう機会だらけ。しかもここは俺のテリトリー、俺の作った料理とトークに酔わせれば…よーし、わりぃなマリモ、俺の勝だ。それにナミサン、あいつと付き合うのってノリっだって言ってたからなっ!楽勝だ!まずはキビキビ働く姿で魅了して…
「嗚呼っ!ロクサーヌちゃん、待ってたよぉー」

(客も八割方集まって来たな。もうすぐ7時だ!よっし、気合いを入れ直してっと。)カラァン。ドアベルが鳴る。
「あー、ビビちゃん相変わらずお美しい…あれ、一人?ナミサンとご一緒かと…」
「す、すぐ来るわ…うっわー素敵!華やかなパーティですね。」
「否、君が居ないから美しさが足りなかったんだよ…来てくれて嬉しいよ、姫君。」…カラァン
「ナミサン!待って...な、な、な、何でてめぇが此処に居んだよぉー。呼んでねぇだろっ。」
「あん!俺はコイツに呼ばれたんだ。文句あっか?」
「……ナミサン」
「初デートなの。邪魔は無しよv」…女神に寄り添うマリモだと!女神の隣は俺だろっ!そうだろ?ビビちゃん何とか言って…

「二人は恋人同士なんですから。」




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(2005.11.23)

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