初期微動
            

ちゃたろう 様




アーロンパークが崩壊した。

終わったよベルメールさん
8年もかかったけど やっとみんな

自由になれた!!





ナミはベルメールの墓前に報告した。
ゲンゾウとノジコは一歩下がったところから、そんなナミを見守っていた。


これまでの人生が終わって、改めてこれからの自分を考える。


「ナミ!!!お前はおれの仲間だ!!!!」

ルフィの言葉が胸に残る。


答えなんか決まっていた。

ゲンさん、ノジコ・・・ごめんね。
心配してくれてるの、わかってる。



チクッ
刺青に刺した傷が痛んだ。


「ドクターのとこ行かなきゃ。」

消せるものなら、完全に消して欲しい。
でも、この傷痕は残るだろう。

ノジコの肩の刺青が目に入った。
彼女がそれを入れたのは自分の気持ちを少しでも軽くする為だったのだろう。
海賊の烙印を押された幼い記憶がよみがえった。


ナミは二人と別れた後、ドクターの家へ足を向けた。













「・・・どうした?ナミ。」

夜には祝いの宴があるって言うのに、ナミの様子が変だ。
ウロウロと家の中を歩き回って・・・何か心配してる?


「ほんっとにバカ!!」
「誰のこと心配してるのよ」

「えっ」
「あたしには何でも話すって約束だろ?」


うろたえるナミにお茶を出してテーブルについた。
「ほら、座りな。」


さぁ。面白い話でも聞けるかな。
にっこり笑ってナミを促した。



「・・・知らなかったのよ。あいつがあんな大怪我してたなんて。」

「ああ、あの剣士さんかい?」

「あたし、背中蹴って傷口殴った・・・。」





ノジコはどうせアーロン達から守ろうと下手な芝居でも打ったんだろうと察しをつけた。





「まぁ過ぎたことだ。今頃ドクターのとこで手当て受けてんじゃないの?」

「うん。・・・さっきドクターのとこ行ったら、ゾロが叫び声上げてた。」



「フッ・・・けが人のクセに無茶すんなってお灸据えられたかな。」

「普通だったら全治2年だって。バカよあいつ。そんな身体で・・・」







シュンとしたナミが可愛いと思った。



(でもこの子、絶対本人の前でこんな心配してる素振りなんて見せないんだろうけど。)



ノジコは苦笑した。











「あんたとあの剣士さんってどーなの?」

ノジコがふと思い立ったように聞いた。





「なにが。」

ナミは「どーなの」が何を指しているのかわからず、聞き返した。







「・・・ふーん。そっか。」

「?」



ノジコは勝手に納得したらしく、それ以上聞いて来ることはなかった。





「あいつら、あんたのことほんとに仲間だと思ってるんだ。素直に心配してやんなよ。」

「・・・うん。」











島をあげた盛大な宴は、いく夜か続いた。

ナミはそんな中、ルフィ・ゾロ・ウソップ・サンジがめいめい楽しんでいる姿を確認した。

心配していたゾロだって普段通りに酒を飲んでは、ガーガ―寝ている。

そんな様子に、ホッと息をつくナミだった。







「んナミさ―――ん!!」

ナミの姿を見つけて、サンジがラブハリケーンとばかりにやってくる。





「明日・・・出発するって。」

「そう。」







「腹は決まったのか?」



寝ていたとばかり思っていたゾロが口を挟んだ。







ナミは二人から顔を背けた。

そんな彼女の様子に、ゾロとサンジは気遣うように押し黙った。



「ねえ。」


ナミの声に二人は顔を上げる。


「ちょっと、お願いがあるんだけど。」


哀しげな笑顔を見せるナミの一言に、サンジは瞬間移動で答え、エスコートしながらナミと歩きだす。

ゾロは大きくため息をついて、仕方なさそうに二人の後をついて行った。











数時間後、ゾロとサンジの二人はゴーイングメリー号の甲板上で大きく肩で息をしていた。





「ぜぇ・・・ぜぇ・・・あの女・・・人をこき使いやがって・・・ぜってェ許さねえ!!」

「はぁ・・・はぁ・・・このクソ野郎・・・ナミさんに手ぇあげたら、おれが許さねえぞ!」













ゴーイングメリー号には、見事なミカン畑ができていた。





























ナミは良く働いてくれた男二人を船に残し、今度こそ肩の刺青跡を診てもらいにドクターの元へ向かっていた。



「ゾロのヤツ、あれだけ動けるなら大丈夫ね。」





文句を言いながらもゾロが身体を動かす姿を思い出していた。

ナミは自然と笑っていた。

















出発の朝。



「しかし来ねェなあいつ」

「来ねェんじゃねェのか?」

「来ねェのかナミさんは!!?オォ!!?」

「お前な!!生ハムメロンどこにもなかったぞ!!」





そんな会話をよそに、ナミはナミらしく船に戻った。





「じゃあねみんな!!!!行って来る!!!!」



別れの邪魔はしないとでも言うようにスタスタと甲板を移動する男たちは、ナミのその明るい大声に思わず口の端が上がっていた。









「ゾロ!!」



ばしぃっ





ゾロの背中に痛みが走った。

何すんだと睨んで振り返れば、ナミの笑顔があった。



一瞬、ひるんで言葉を飲み込んだ。





「ドクターの診療代、立替といたから。利子3倍ね!」



そういうとそのままルフィたちの方へ走って行った。







ゾロはわなわなと肩を震わせた。



「てめェ!もう、二度と助けてやらねェ!!」



「べ!!」

ナミは振り返り、右目を垂れ舌をだして答えた。



「この野郎!!!!」



「ナミさんになんて口利きやがる!オロすぞてめェ!!」

「あァ?!やんのか!!」









どちらが先に手出したのか・・・ゾロとサンジで取っ組み合いが始まった。

それを見て、ルフィが行け行けそこだと盛り上がる。

ウソップはメリーを壊すなとハラハラしつつも被害を受けないよう遠巻きに見ている。

ナミは苦笑した。





(さて、働きますか!)

船の針路をとる前にと、足を踏み出した。





「いいかげんにしろっ!!」



ガツン!!!!





「「いてェェェ!!!!」」

二人に背中を見せたナミの顔は、これ以上ないくらいの笑顔だった。




FIN


(2012.12.23)


<管理人のつぶやき>
アーロン城崩壊直後。ノジコ姉さんには、ゾロがナミの相手に見えてるよう^^。でも、ナミはまだ「?」状態なのが面白いですね(笑)。ナミはゾロとサンジに何をさせるのかと思ったら・・・なーるほど!と納得。長いしがらみから開放されたばかりのナミの笑顔が目に浮かんで見えました^^。

ちゃたろうさんの初投稿作品でございました。ステキなお話をありがとうございましたvvv

 

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