彼女の憂鬱
            

アコ 様






その日の天気は快晴。
春先の・・・いや本来ならまだ冬真っ只中の1月のはずだが
このグランドラインの気まぐれな天候のおかげで
吐く息も凍る時期にこんなにも暖かな陽射しを浴びることができるのだ。


ここはグランドライン。
アラバスタでの激闘を終え、考古学者のロビンを仲間に入れたルフィ一行は次なる冒険を求め船を進める。
船員達が寝息・・・(いや彼等には鼾の方が似合うだろうか)を立てている頃朝日の差し込むデッキに一つの影があった。


細身の体に豊満なバスト。朝日が当たるとキラキラと輝く橙色の髪を持つのは・・・・・そう。この船の有能な航海士ナミだ。
腕に付けたログポースを目線まで掲げ、水平線の彼方を覗き込んでいる。
おそらく軌道の修正と進路の確認を行っているのだろう。


「ん〜問題なしっと・・・・それにしても久々のいい天気!」


そういったナミの目線の先には籠から崩れ落ちそうな程溜りに溜まった衣類の山があった。
ここの所吹雪だの台風だので全く洗えなかったのだ。
あれだけ買い込んでいたナミだが、もう着る服がない。
今日だって、いつもは襲来があっても戦えるように動きやすいミニスカートを履いているのだが
もう換えがないので仕方なくタンスの奥に眠っていた白い清楚なワンピースを着ていた。


(まぁ、敵が来たってあいつ等がいるから心配ないんだけど・・・・)


なんだか落ち着かない・・・というか少し気恥ずかしいのだ。
黙っていれば、まるで人形のような彼女だが
性格がもともと活発で年齢より少し大人びているナミは真っ白なワンピースなんて着ることは滅多になかった。
ここの男共(サンジを除く)はきっと人の格好になんて興味はないだろうが、
まだ18歳というピチピチ(死語)のナミにとってはそれを考えているだけで一日が終わってしまうような大問題だった。


しかし、換えがないことにはどうしようもない。
これを着るくらいなら一日中水着でいる方がましだったが
まだ少し肌寒く、一度病気で死にかけたナミにとってあのような苦しみを二度と味わいたくはない。
それに一日中部屋に篭っていたとしても服の山を洗うことができないのである。

(仕方ないか・・・)

ハァとため息をつくナミ・・・・。彼女も服の一つや二つで気分の変わるお年頃なのだ。
そこに、ふわぁっとコーヒーとパンの焼ける良い匂いが風に運ばれてきた。
サンジが朝食の準備をしているのだ。それもそのはず。そろそろ、船員達が起きてくる時間だ。
ナミは一度背伸びと深呼吸をして、キッチンの方へと向かっていった。




「メシだーーー!!」

場所は変わってここはキッチン。
人一倍食欲旺盛な船長は今か今かとサンジの食前の挨拶をよだれを垂らしながら待っている。

「おまえな〜ガキじゃあるまいし、よだれ垂らすなよ。」
「満腹中枢に異常があるのかも・・・・」

船長を見て、一般常識のあるウソップと船医である立場からルフィの異常な食欲を本気で心配するチョッパー。
そんな三人を、クルーたちより10近くも離れた新入りのロビンは微笑ましく眺めている。
最後のクルーであるゾロはまだ寝たりないのか虚ろな目で大きな欠伸をしている。・・・・・この男の睡眠欲も異常である。


「できたぞー!」


今日のメニューはサンジお手製クロワッサンに半熟のプレーンオムレツ。
ボイルしたウインナー。食物繊維たっぷりのサラダにデザートのフルーツ。

「サンジっ!早く飯食おう!飯!」

「ちょっと待て。まだナミさんがおいでになってねぇ!」

「あら?おかしいわね。私が起きた時にはもういなかったわよ?」
不思議そうに首を傾げるロビン。

「まさかっ!ナミさんの身になにかあったんじゃ・・・」
今にも、飛び出しそうなサンジ。そして・・・

「メシーー!メシ!メシ!メシーーー!」
・・・もう食べ物しか目にかいっていないようである。



<カチャ・・・・・>




いきなりドアが開き、船員達は一斉に入り口に注目した。
そこにいたのは、ちょうど話の華であるナミだった・・・・
しかし、いつもと様子が違う。
いつも、「うっさい!」だの何だのと言ってくるナミだが、今日はやけにおとなしい。
それにいつもとは違う純白のワンピースのせいか、いつもより幼く見える。
もともと顔が整っているので何処からどう見ても美少女であった。


サンジは口からタバコを落とし・・・・ゾロはさっきまで半分しか開いていなかった目を目一杯開いている。
ウソップ頬を赤く染め、チョッパーは目をキラキラと輝かせている。





「何よ・・・・そんなに可笑しいの?・・・」




船員達がハッとするとナミは大きな琥珀色の目に少し涙を浮かべている。
頬もピンクになりそれがかえって可愛らしい。


「ナミすっごい可愛いぞ!!!」
「なみすわぁ〜ん最高に似合っていらっしゃる」
「まぁ、とても素敵ね」


からかわれるか笑われるだろうと思っていたナミは仲間達の絶賛の声に驚いたようだったが、

「そうかな////」

と照れながらも喜んでいた。
皆が口々に褒め称えている間・・・あまり口数の多い方ではないゾロは黙って眺めていた。


「ほら、お前もなんか言って差し上げろよ」
心優しいサンジはそんなゾロを気づかったのだろう。しかし、それが裏目にでてしまった・・・・


「・・・・・・・い、いつもそんくらい静かだといいのにな」





<しーーーーん>




キッチンに重苦しい間ができた。

口下手にも程がある・・・・・・。
それとも、子供にはよくある「好きな子はいじめてしまう」というやつなのだろうか・・・・
まぁ、どっちにしろ今の発言はどうかと思うが・・・・・


「・・・・そう・・・・・早く朝食にしましょ・・・・・」


ナミは笑ったつもりだろうが、目は全く笑っていなかった。


その後彼が朝食を食べることができず、山のような洗濯物を一人で洗わされたのはいうまでもない。





END


(2003.10.27)

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<管理人のつぶやき>
ナミの真っ白のワンピース姿を想像するだけで楽しい気持ちになりました♪
クルー達の評価に対するナミの反応が可愛い〜。
ああ、ゾロの余計な一言が・・・本当に「好きな子には」なんとやらですね。
ラストのゾロに対する仕打ち、ええ気味です。
でも、ナミの洗濯物を洗ったの?それはそれでイイ思いをしたのでは・・・。
ナニか持ち帰ってたりして(笑)。

ご本人曰く「リベンジ」の投稿作品でした♪
アコさん、どうもありがとうございました〜。

アコさんは現在サイトをお持ちです。こちら→
mate

 

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