やさしいコトバ
雷猫 様
「素敵」
「綺麗」
「かわいい」
サンジ君の口から飛び出すいくつもの誉めコトバ。
そのコトバが彼の口から出たなら、どんなに幸せなんだろう。
いつもと同じ朝。
目が覚めると横にはまだ寝ているロビンがいた。
どうしてだろうとまだ起ききってない頭を働かせて、昨日は本を隣で読んでいてそのまま寝たということを思い出す。
ロビンを起こさないようにそっとベッドを出る。
今日のナミはすこぶる機嫌がよかった。
夢にあの人が出てきたからだ。
そしてこう言った。
『綺麗だ。』
思い出すだけでニヤケてしまう顔を洗って甲板に出た。
ロビン以外はみんな起きているようだ。
「おっ、ナミ!遅かったなぁ!」
船の先端に上っているルフィがこちらを向いて笑っている。
「昨日は遅くまで本読んでて。ロビンまだ寝てるから。」
「勉強家のナミさんも素敵だーvvそして綺麗だーv」
「綺麗」
そのコトバにいちいち反応してしまう。
そしてとっさに彼を探す。
「どうしたんだ?」
挙動不審なナミにウソップが聞いた。
「えっ?ぁ・・いや、朝ご飯まだ?」
とっさにかわす。
「用意できてますよ!ナミさんこちらへ〜v」
そう言ってキッチンに連れられた。
朝ご飯をちょうど食べ終わった所でロビンが来た。
「ロビン!ごめんね昨日・・。ベッド陣取っちゃって!」
ロビンがいいわよ、と言いかけた時だった。ずぅっと無口だったあいつが口を開いた。
「夢で綺麗なもんでも見てたのか?」
ロビンに対して言ったんだろう。
だけど、
分かってるけど、
体が反応してしまう。
顔が熱い。
「ナミ、顔赤いぞ?熱でもあるのか?」
医者のチョッパーが言う。
そう言えばそうだ。
体が妙に熱かった。
「ナミっ!?」
気がついた時には、おでこに冷たいタオルが置いてあった。
「・・・・・・・っ?」
重たい体を起こし、時計を見る。
もう夜の2時だ。
「寝てろよ。」
強引に肩を押される。
されるがままにベッドに倒された。
「・・・・ゾロ?」
ゾロがベッドの端に腰掛け、こちらを見ていた。
「ぶっ倒れたんだよ。朝飯の時に。」
「うそ・・・。・・・っじゃぁ船は?」
「進められるわけねぇだろ。航海士がいねぇんじゃぁ。」
今日1日船が動かせなかった。それもこれも自分の健康管理ができてなかったせい。
つまり、私のせい。
「ルフィに謝らないと。」
そう言ってベッドから出ようとする。だけどゾロに阻止される。
「明日1日休めば完全に直る、らしい。寝てろ。」
ゾロに止められて、ちょうどゾロの隣に座る形になる。
「明日1日!?なら、明日も船を止めたままになるの?」
「そうなるな。」
「そんなのできるわけないじゃない!船が2日も遅れるなんて・・・・。私のせいなのにっ・・!」
「なんでそうなる。ルフィはちゃんと分かってるよ。」
ゾロは横に座っているナミを横目で見た。
「気にすんな。」
ふっと笑って前を向き直った。
「・・・・。」
ナミはゾロの肩に頭を落とした。
ゾロは突然ナミがよりかかって来たので顔を真っ赤にして驚いた。
「・・・・っナミ!?」
もうろうとする意識の中で、ゾロに話しかける。
「夢にさぁ・・・・、ゾロが出てきたのよ・・・・。こっち見て・・笑ってて・・・・。・・・・なんて言ったと思う・・・?」
「・・・・・さ、さぁ・・・・・。」
「綺麗だ、って・・・言ったの。」
「俺がか!?」
ゾロの顔はさらに真っ赤になっていく。
「うれしかった・・・・・。ゾロ・・・・・・。」
ゾロはナミの手をぎこちなく握って、耳下に口を近ずけた。
そして囁いた。
2日後――――
ナミはいつも通りにすっかり元気になった。
笑うし怒鳴るし指示するし。
ゴーイングメリー号に明るさが戻ったようだ。
「ゾロ〜v」
悪巧みをしたような顔で近寄る。
「あのコトバ、忘れてないからねっv」
「・・・・////////。」
「フフッvv」
あのコトバ
『綺麗だ。』
おせじじゃないわよね?
おわり
(2004.07.15)Copyright(C)雷猫,All rights reserved.
<管理人のつぶやき>
こ、こんなことゾロに言われてみたい…(笑)。でも、夢で見たらそりゃ意識してしまうよね。
しかも実際にそう言ってくれるところがゾロの優しさ。一体どんな顔して囁いたのやら。
これが効いたのか、ナミは全快ですね。いたずらっぽくその話題をしてはゾロを困らせるナミさんが素敵だーv
雷猫さん、可愛いお話をどうもありがとうございました〜♪