「女だぞ」
            

雷猫 様



「ロビンっっ!!!」


ゆっくりとロビンの体が地面に降りる。

真っ黒に、変わり果てたロビンは、声をあげる間もなくひざを折っていく。




いつ動いたのか、動転していたナミは見えなかった。
・・が、そこには地面に倒れるロビンをしっかりと抱き支えるゾロがいた。

ものすごい形相でエネルを睨んでいる。




「・・・・女だぞ。」


「見れば分かる。」



速く、そして優しくロビンを地面に置いたゾロは、抜きっぱなしの刀を振りかざしエネルに向った。




「イカレてんのかテメェはぁ!!!!」







・・・・そこからは全てがあっという間だった。
いや、正確に言えばあっ、と言う間もなかった。



ゾロの刀がつかまれる。
そこからゾロの体に電流が走る。
倒れる。顔を踏まれる。
置きあがる。ゲリラがエネルを倒す。

・・・エネルが置きあがる。



2人とも倒れる。





「ゾロっっっ!!!!」




そう叫んで、駆け寄って、肩をゆすりたかった。
でも体は意識とは反対に、金縛りのように動かなかった。


エネルの冷たい目が、こちらを向く―――




















宴は、終わることを知らないかのように延々と続く。


七人の仲間は、包帯でぐるぐる巻かれてはいるが、みんな無事だった。





「・・・・・・ゾロ。」



騒がしい場所を離れて、独りで酒を煽るゾロを見つけた。
ナミの声に気付き、ゾロの頭がかすかに動く。
体中に巻かれた包帯が痛々しい。

そりゃそうだ、3回も雷にあったんだから

そう思いながら男の隣に腰を落とす。



「元気そうね。」

「そう見えるか。」


そう言って自分を包んでいる大量の包帯を指差す。
言葉とは裏腹に、顔は優しく微笑んでいる。


「ん。」


下を向いていた顔を上げると、ゾロが酒瓶をこちらに差し出している。


「飲まねぇのか。」

「あ・・・、今日はいいわ。」

「なんだ?変なヤツ。」

そう言って眉をひそめる。


「今ダイエット中だから。」

「だいえっと??お前が?」

「何よ、悪い?」

「体に悪いぞ。」


ゾロは眉間にしわを寄せたまま、ナミにあげるつもりだった酒を一口飲んだ。


「じじぃねぇ・・・。ホンット、女心が分からないんだからっ。」


ハハ、と無邪気な笑顔を見せながら、ゾロはその場に寝転がった。





「ねぇ、ゾロ。」


「んー?」


寝っ転がったままの体勢で、ゾロは答た。


「ロビンがエネルにやられた時・・ね、私何考えてたと思う?」


ゾロは静かに目を閉じた。


「・・・さぁな。俺には女心なんて分かんねぇから。」


「嫌味なヤツ。」

「お互い様だろ。」


フン、とかすかに笑う。

ナミも静かに微笑んで、口を開いた。


「あの時・・・、もし私がああなってしまっても、・・・・・・・ゾロは助けてくれたかなって。」


ゾロは目を開いた。
空を見たままのかたちで。



「・・・・・・そりゃ無理だ。」



予想もしなかった言葉が突然飛んできて、ナミは目を見開く。


「なっ、何よそれ!普通男なら、「当たり前だろ。」とか、「任せろ。」・・とか、気の効いた言葉を選ぶってもんでしょ!??」


するとゾロは、寝かせていた体をゆっくりと持ち上げた。


「お前はそんな言葉を期待してたのか?」


「え・・・・・。」

「俺なら・・・・」



ゾロの視線は、空からナミへと静かにそそがれた。



「最初から、お前を戦場へ連れていかない。」


「・・・なんで・・・・・」







「好きだから。」







体が熱くなっていくのが分かった。



「言っただろ、お互い様って。おめぇも、男心なんてこれっぽっちも分かっちゃいねぇ。」



「俺が、戦ってる時いつも、そう思ってること、お前知らないだろ。」


「お前がケガしてねぇか、捕まってねぇか、心配でたまらなくなってるの、お前知らないだろ。」






潤んだ目から涙がこぼれるのを防ぐように、ナミはそっと目を閉じてゾロの肩に体をあずけた。








「・・・・・ナミ。」


「・・・ん?」












「重い。」











そこからはいつものお話―――




end


(2005.05.07)

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<管理人のつぶやき>
雷猫さんの久々の「セリフシリーズ」でございます。
このセリフはゾロナミストとしては心乱れたシーンでございましたが、雷猫さんのおかげで甘いゾロナミに早変わりです(笑)。
女心と男心はどちらも互いに理解できないのがミソ。実際はナミも戦場までついて行ってしまいますから(そこがいいのですが)、ゾロはいつも気が気じゃないわね^^;。

雷猫さんの17作目。どうもありがとうございましたーー!

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