グランドライン中学校の昼休みがやってきた。外は梅雨らしくどんよりと曇り、今にも雨が降りそうだった。






曇りのち雨のち快晴
            

味海苔 様




「2年C組橘さん、至急カウンセリング1に来て下さい。」

あぁ、バレたんだ。
ナミは弁当をしまい、席を立った。
「ナミさん、どうかしたんですか?私、ついて行きます!」
「いいのよビビ、それより、コイツらのこと見ててくれる?まったく、一体何仕出かすかわかんないんだから…」
指差す先には、学年でも有名な3バカ―ルフィ、ウソップ、チョッパー―の鬼ごっこをしている姿があった。
「…わかりました。何かあったら呼んでください!」
「ありがと。」



「なぁ、成績優秀なはずの君が風俗店にいたというのはどういうことだ。何があったのか、説明してくれないか。」
「…。」
「まだ中学だぞ。そりゃ、スタイル良くて狙われやすいのはわかるが、普通の男に間違ってもついて行く君じゃないだろう。」
「…なめてるんですか」
「は?」
「私…私、もう処女じゃないんですよ!?」
「え゛!??」
「小6の時、塾の帰りに襲われて…一度汚れたら次からはもう同じだし、それで家族の経済的な負担が減るならって。…シャンクス先生含め、男がどんなものかなんてとっくに知ってますから。」
 沈黙。ナミの鼻を啜る音だけが、部屋に響いていた。
「…そのことは、保護者の方にも知らせたのか?」
「もちろん知らせてませんよ。そんなことしたら、ノジコやベルメールさんが傷つきますもん。」
「いや、それはダメだ。俺には子供がいるからわかる。知らないでいる方が絶対つらい。先生から今晩電話で伝え」
「だったら、私はどうやって生きていけばいいの!?せっかく今まで頑張ってきたのに…先生なんて、大っっ嫌い!!」

シャンクスは、ナミの消えたドアを見て呟く。
「悪かった。そこまで言うなら知らせねぇよ…」



「おい毬藻、カウ1に、んナミすゎんがいらっしゃったぞ。行ってこいよ」
「んだよ、面倒くせぇなぁ。大丈夫だろ、アイツのことだし」
「くぉら、レディ・ファーストだっ! いいから行け、とっとと行きやがれこのクソマリモぉ!!」
(ロビンと二人になりたいだけじゃねぇのか、あのぐる眉…)
「何モタモタしてんだっこの迷子、さてはカウ1への道も忘れたな!?いい加減3年なんだからそれくらい覚えとけっっ!!」
「んだと!?上等だ、行ってやらぁ!」

…と、ここまではいいんだが。何で来たとたんにナミに殴られなきゃなんねぇんだ。
…ぅお!??
「おい、泣いてるのか? 大丈夫か、ナミ!」
思わず腕を掴んで引き寄せてしまった。
「ヤダ、放してよっ!! ゾロには関係無いでしょ!?」
「お前のことで俺に関係無いわけあるかっ! 屋上行くぞ」



 結局、全部話してしまった。
 本当は、私が穢れていると知って突き放されるのが怖かった。でも、とにかく誰かに話したくて、そうでないと何かに押し潰されそうで…。
 隣で胡座かいて考え込んでいるゾロを見て、何度目かの溜め息をついた。返事を聞くのが怖い。
 不意に気配を感じて振り返ると、剣道の試合と同じくらい真剣な目をしたゾロがいた。
「まず、ナミ、お前は穢れてなんかいない。 人間として認めらんねぇのは、ナミをそんな目に合わせたヤツらだ。 俺は、お前がそいつらのことを教えてくれさえすれば、絶対にそいつらをぶったぎってやる。 それから…俺は、ナミがどんなことをしようと、過去にどんなことがあろうと、」
「お前を、お前だけを愛している。」

 何も、言えなかった。
 嬉しかったから。ゾロからこんなことを言ってもらえるなんて、嬉しすぎたから。
 気が付けば、言い終わってから真っ赤になっているゾロに、抱きついていた。自信なさげな手が、背中に回ってくる。
 ただ、幸せだった。今なら、家族にもきちんと伝えられる気がする。

 突然、ゾロは身を放した。不思議そうに見上げるナミの手を引き、いきなり駆け出す。授業開始5分前の予鐘がなっていた。

 教室の前で別れる直前、ナミは囁いた。
「私もよ」

 いつの間にか、空はすっきりと晴れわたっていた。




the End


(2012.06.25)


<管理人のつぶやき>
ちょっと過激な内容が飛び出してきたりしてびっくりしてしまいました(@_@;)。
小6でなんという過酷なものを背負ってしまったんでしょう;;。ナミの心もすっかり荒んでしまっているように感じました。でも他でもないゾロが、ありのままのナミを受け止めてくれてよかったと思います><。これからは自分のことを大切にしてほしい。ゾロのためにもね。

味海苔さんの初投稿作品でした。初めてのご投稿ありがとうございました〜。

 

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