あんたは仲間で・・・

仲間だから、大切で・・・

いつも、これからも、そのままでこの気持ちは変わる事は無いと思ってた。




――そう思ってたのに・・・もうっ!!






あっちむいてホイッ!
            

波男 様



二人に変化があったのは今日の夜。
自分の気持ちに変化が現れたのは今日の夜。

それまでは、本当に気の合う仲間だった。
ルフィも、ウソップも、サンジ君も、そして・・・ゾロも。


『男』って意識する事なんて無かったのになぁ。


だって、船に乗る時にちょっとやばかった乙女心も、航海を続けていく内にキレイさっぱり無くなったし。
乙女心って言ったって、良いタイミングで助けてくれた奴に少し、本当に少しだけときめいちゃっただけ。

そう。この時は3日でそんな感情消えていった。

あいつは『女』として私に接さない。
必ず『仲間』として接してくれる。

だから、私もゾロの事を『男』として見るのではなく、『仲間』として見てた。

なのに、今更あいつに私の女の部分が反応しちゃうなんて・・・。

でも、やっぱり危ない罠に落ちる時もあった。
だって毎日一緒にいるんだもの。

いくら仲間と言ったって『男』と『女』

でもそれは、いつもは気づかない一瞬の感覚で。
気づいても、いつもだったら無視出来る感覚だった。

なのに・・・。

今は心臓がドキドキと高鳴って・・・。
目が神経が、あいつの存在を探したがる。

駄目だ、完全に意識しちゃってる。

馬鹿みたい。これってもう恋しちゃう一歩手前だわ・・・。



あぁ〜あ・・・。この船の奴と恋愛なんて・・・想像出来なくなってたのに。

なんで・・・よりによって、あいつに反応しちゃったかなぁ。
そりゃぁ、最初はちょっとときめいたのは事実だけど・・・。

でも・・・あんな、方向音痴で万年寝太郎の刀馬鹿で、おまけに超貧乏の男を好きになるなんて・・・。



でもなぁ、、、待って!まだ『好き』って感覚じゃ無いかも知れないわよ?

ただ、今日見たゾロがいつもと違ったから・・・だからちょっと気になっただけじゃない?
それにちょっと女の子の日が近くって情緒不安定だったし・・・。(←おい作者!)


・・・・・・・・・。



そうよ!!絶対そうだわ!!
だって、私よ!?
私が、あんな奴を好きになるなんて考えられないもの!

うん。そういう事だわ!
しかも、今日はちょっと眠れないから余計に変な事考えちゃったのよ!

あぁ。そうと分かれば、何かすっきりしたぁv
さてさて、変な事考える前に眠っちゃえ!

おやすみなさ〜い。









それは、今日の夜の事。
数時間前の出来事でした。

ナミは、夏の暑さから眠れなくて甲板に冷たいお酒を持って夕涼みをしていたのでした。
今日は暑いながらも風が出ていて、少し気持ちのいい夜でした。

そこに、風に乗って石鹸の匂いがしたので振り返るとゾロがいました。



「ナミ?」

「何?」
「俺にも酒くれよ・・・」
「いやよ。これは高いお酒なの!」

冷えたビールは高くは無いけど、夏の夜には値打ち物。

誰があげるもんですか!そう思ってフンっと鼻を鳴らして横を向いた。
その動きを見ていたゾロは楽しそうに一つ提案をだしてきた。

「じゃぁ、ゲームでもしないか?」
「はぁ?あんたから『ゲーム』って単語が出てくると思わなかったわ」
「今日チョッパーにせがまれてやったんだが、なかなか面白れぇんだ」
「なにそれ?」


「あっちむいてホイッってやつだ」


「あぁ〜。私も今日やったわよ。3馬鹿にせがまれて・・・」
「よし!じゃぁ、やろうぜ!」

「ちょっと待ってよ!『やる』とは言ってないわよ」

「じゃぁ、俺が勝ったら酒寄越せ。お前が勝ったら・・・」

「私が勝ったら借金10倍に増やすわよvv」

「いいぜ。負ける気がしねーからな」

「言ってなさいよ。とりあえず、あんたからでいいわよ?私こういうの強いからねvv」

ゾロは少しだけ呆れ顔をしながら、持っていたタオルを床において人差し指を私の顔近くに持ってきた。

私の顔と、ゾロの指の先がおよそ距離15cm。

こういう時は指の先を見ちゃ駄目。
今日学んだ教訓。

指の先を見ると、なぜかつられて同じ方向に顔が行っちゃう。
なんだか分からないけど、誘導されるような感じ?


だから、こういう時はゾロの目を見るに限る。

じーっと。
じーーっと。

頭では、顔を向ける方向を考えて・・・

じーーーーっと。


「行くぞ、あっち向いて〜・・・」

っていいながら、そのまま停止。


この馬鹿も考えてきたわね・・・
この『溜め』がポイントなのよね。この勝負。

でも、相手はこのナミちゃんよ?一筋縄じゃいかないっつーの!!


そう考えながら、またゾロを見る。

じーっと。
じーーっと。

頭では、顔を向ける方向を考えて・・・

じーーーーっと。

って・・・動かないわねぇ・・・でも、変な感じ。
こいつの顔をこんなじっくり見た事あったかしら。


ったく、真剣な顔しちゃって。


その距離は滅多に無い至近距離で・・・
見ている先は、あまり自分に向けられる事が無い真剣な表情で・・・。


ゾロってなかなかいい顔立ちだったのね。
気づかなかったけど、眉毛の形がキレイ。
鼻筋も通ってて・・・唇薄いなぁ。


見る所が無いからじっくり観察するように見てしまったり・・・。


でも、船の上での生活なのに、唇キレイ。
肌荒れに無縁なのかしら・・・。


だんだん目線が辛くなる。どこを見ても何か恥ずかしい。
それに、反対に自分の顔も見られてると思うと、ますます恥ずかしくなったり・・・。

そしたら・・・。

ドキン。


ありゃ?

ドキッドキッ。

ありゃりゃ??


え?何?ちょ・・ちょっと・・・。


顔が段々熱くなってきて・・・。



「・・・ッホイ!!」

とっさに目線を外してゾロの指先を見ると・・・
やっぱり私の顔は、ゾロの指の方向に誘導されてしまった。

「よっしゃっ!」

「ちょっと!!今のは無しよ!あんた『ホイ』って言うまで時間かかりすぎ!」

赤い顔が見えないように手で顔を抑えながら、捲くし立てると余裕の一声。

「ああ?それも作戦だ。・・・お前だってこれくらいするだろ?」

畜生!何なのよ!そう思いながら冷静を装いながら
『私が勝ったら同点でしょ?だからもう一勝負ねvv』と言って後ろを向いた。

心臓!!静まれ!!
顔の血液!!静まれ!!

ゾロに聞こえないように深呼吸を1回。
ゾロに向き合い、人差し指をゾロの顔の前に・・・
さっきよりも間を開けたつもりが、急に振り返ってちょっと縮まってしまったみたい。

その距離およそ10cm。

それでも『賭けに負けるのだけはご免だわ!』と思うと次第に冷静になった。

「いくわよ!!」
「おし!こい!!」

「あっちむいて〜〜〜〜〜〜」

そう言いながら、ゾロの顔を凝視。


またその時、ドキンと心臓が一跳ねする。

あっ・・・また・・・。

そして、その一回がスタートコールのように心臓はもっと早くなっていく。

ううう〜〜〜なんなのよ!!


何か恥ずかしくって・・・
落ち着いたはずの心臓は大行進してて。
もう、何だか居た堪れない気持ちになってきて・・・

早く、早く目線を他に移したくって・・・


「〜〜ッホイ!!」


指を左に向けたのに・・・


ゾロの顔は1mmも動かなかった。


いつもだったら、すぐに何か言葉が出るのに、こういう時に限って声が出ない。
何か言わなきゃ!そう気持ちで、頭で分かっているのに、声が出ない。

早く視線を逸らしてほしいのに、ゾロの顔は1mmも動かない。

そしたら・・・

「っぷ・・・くく・・・あ〜はっはははっは・・・」

そのゾロの笑い声を聞いていると、やっと声がでた。

「何を笑ってるのよ!!」
「弱ぇえ!弱すぎだ!」
「うっさいわよ!なんで顔を動かさないのよ!」
「ああ。左右上下だけじゃねーんだよ。こうやって『動かさない真ん中』ってのもあんだよ」
「そんなの私は知らないわよ!!どーせあんたの使わない脳みそで考えたルールでしょ!!」

「お?頭いいじゃねーか」

「そんなの無しよ!もう一回私から!」

「なっ!待て!俺が今勝っただろうが!」
「だから言ってるでしょ?あんたのはズルよ!男がそんなズルイ事していいと思ってるわけ?」

「よし分かった。こい!」

それでも、男を使った猛抗議にゾロはしぶしぶ顔を、また私に向けた。

「あっちむいて〜〜〜〜〜〜」

真剣なゾロの顔
多分きっと私も真剣な顔してると思う。

でもね?ゾロ?

私を甘く見ちゃいけないのよvv
あんたがさっきみたいなイカサマするなら私にも考えがあるのよ。
このナミさんを怒らせた事、後悔しなさい!


それから、ゆっくりとゾロとの間を縮めて・・・

10cmから・・・ゆっくりと5cm、そして3cm。この距離ならいいわ。

指差していない右手でゾロの頬をなでる。

何かと固まっているゾロ。
そこに、ゆっくりと笑いかけて、またゆっくりとした動作で右手で耳の裏を撫でながら左に向かせて、そっと頬っぺたにKISSをした。


それからゆっくりゾロから離れると、ゾロの顔と私の指先は同じ方向を向いていて・・・。


忘れていた最後の『ホイ』と言うと、賭けの対象だったビールを一気飲みして、赤い顔を見せないように下を向いて駆け出した。
でもその時、私の手首がゾロの大きな掌に掴まれた。

「おい」

「何?」

「お前の方が、ズルだろうが・・・強制的に俺の顔、動かしやがって・・・」

そうゾロが言い終わるのを聞いてゾロを見ようと顔を上げると、そこには先程とは別人のようなゾロが居た。

顔を赤くして、額の汗が月の光に照らされている。

ただ、頬っぺたにKISSしただけなのに、何、顔を赤くしてるのよ・・・。
そう馬鹿にしたいのに、その照れや恥ずかしさがナミにも伝わってくる。

掴まれた手首から、そしてゾロの視線から、ジンジンと。


静かな夜の海にいる自分達。
そんな静かさとは裏腹に、激しくなる鼓動。

本当だったら、あのままビールを一気飲みしてやって、ゾロを馬鹿にして立ち去ろうと思っていた。
それが、仲間ってもんで・・・それがいつもの私達。

なのに、今こうやって何故か二人で見詰め合っちゃったりしてて・・・。

どうにもならない違和感に、ナミもゾロも固まってしまったのだった。









・・・っと、そこまでを、もう一度思い出してナミは勢いよく飛び上がった。


ね!寝るつもりだったのに!!・・・何で全部・・・しかも事細かに思い出してるのよ!!


でも、どんなに目を瞑っても現れるのは、今日のゾロや今までの色々なゾロ。

「好き・・・なのかなぁ?」

そう一言呟いて、枕をギュッと抱いてまたナミは目を瞑った。



その疑問が解けるのは、まだまだ先のお話。




〜FIN〜


(2004.09.13)

Copyright(C)波男,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
ゾロとの出会いでトキめいたのは認めてるナミ。でも3日で納まった(…)。それがここにきて気持ちが再燃。そのきっかけが「あっちむいてホイ」であるとはオシャカ様でも思うめぇ!本当に何がキッカケで恋が始まるか分かりませんね。
それにしても、ナミのドキドキと一緒にドキドキしていきまいしたよ(笑)。
しかも3回目の時のナミは艶かしかったゾ!あんなことされたら固まってしまうゾ!
意識したのは、きっとナミだけではないはず・・・この後どうなるんでしょうね?そんな期待をせずにはいられませんよ♪

波男さんの初投稿作品でした。可愛いナミさんをありがとうございましたーvvv
続編も待ってますカラ!!(力こぶし)

 

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