また、あなた達と・・・
            

夏 様


「私・・・もっと早くあいつらと出会いたかったな」


私はポツリと呟く。目の前には夜の海が広がる。
最愛の母、ベルメールさんの墓の前で、瓶ごと酒を飲んでいた。辺りには誰も居ない。

「・・・・おっ、ナミか」

私は驚いて、振り返った。そこには酒瓶を5本も持った、ゾロが立っていた。

「何しにきたの?こんな所まで」
「いや・・・・迷った・・・」
「は??・・・バカ?あんたって」
「うるせぇ。もう自覚してる」
「へえ、少しは利口になったわね。良かったわ」

チッ・・・と舌打ちをし、ゾロは私の隣に座る。

「・・・・誰の墓だ?これ」

珍しく真面目な顔をしたゾロが私に聞いた。その真面目な顔に、私は少し驚く。

「私のね、お母さん。まあ、血は繋がってないんだけど」
「・・・・そうか・・・・・」

明るい月の光が、私とゾロを照らし出す。二つの影が並ぶ。
私は飲み終えた酒瓶を、林のほうに投げ入れた。まだ飲み足りない気がした。
すると、隣の影が私の肩をたたく。振り返ると、酒瓶を一本差し出す。

「まだ飲むんだろ?やるよ」
「・・・・ありがと」

ゾロはまた酒瓶を口に運んだ。それを見た私も、酒を飲む。
全然酔えない。それは、アーロンが居なくなった喜びでもあるんだろうけど、悲しみでもあった。私はもう、海賊をやる理由がなくなったのだ。
海賊を止める。それは同時に、こいつらと離れてしまうということなんだ。
「ありがとね、ゾロ。あいつら倒してくれて」
「・・・それは、俺に言うことじゃねぇ。ルフィに言えよ」
「ルフィにはもう言ったもの。それに私はあんたに言いたいの」
「・・・どういたしまして」

ゾロは少し赤くなって、下を向く。そんなゾロに私は微笑む。


「でも、一番戦ったのはお前だろ」

ゾロの急な言葉に、度肝を抜かれる。

「は?私、少しも戦ってないわ。あんた達のおかげよ。ルフィやあんたやサンジ君やウソップが頑張ってくれたから・・・」
「そうじゃねぇ。今日だけのことじゃねぇよ。お前は今まで8年も辛いの我慢して、苦しいの我慢して、村のために頑張ってたんだろ?そのことだよ」
「ちょっ・・・待ってゾロ。なんでそのこと知ってんの?」
「お前の姉ちゃんが言ってたらしい。俺は寝てたんだが、後で腐るほどラブコックに聞かされた」
「そっか・・・ノジコが言ったんだ・・・」

少し、間ができた。そっか、ゾロは私のこと知ってるんだ。

「でもね・・・私は本当は弱虫なの」

突然のセリフに、驚いたようにゾロが私のほうを向く。

「苦しくって、辛くって・・・・我慢しきれなくなって、何度も逃げ出そうとした。でも逃げることすら、怖かったのよ・・・」

私の表情が険しくなって、涙がこぼれ落ちた。肩が震えた。
その肩を・・・温かい腕が抱いた。そして優しい声がした。

「お前が弱いのなら、俺が絶対守ってやるよ。約束する」

涙がボロボロこぼれたままの顔を優しく胸に引き寄せる。そしてぎゅっと抱く。
最初は体中に力を入れていたけど、すぐに力を抜く。
長い間、沈黙が続いた。私の心臓の音だけが、私には聞こえた。

「私ね・・・迷ってるんだ。これから、どうしようかなって・・・」

ゾロは腕の力を抜き、私を放す。

「これから、この村に残るべきなのかな・・・あんた達についてくべきなのかな」
「・・・お前が決めることだから、俺は何にも言わねえが・・・・」
「・・・何・・・・?」
「ルフィやウソップは悲しむだろうな。ラブコックなんて何言うかわかんねえ。絶対に無理に引き止めようとはしねえと思うが・・・・」

ゾロはだんだん赤くなりながら頭を掻き、やっと言葉にする。

「・・・俺はお前が居なかったら絶対寂しい。・・・・こんなに好きだからな・・・」

私は自分の顔が真っ赤になるのを感じた。何・・・・?こいつが・・・・

私のことを好きって・・・・・・???

「あんた・・・・なんで今そんな事言うのよ。もう迷えないじゃない」
「迷わねえ方がいいだろうが。すっきりすんだろ」

開き直ったような言い方。でも顔は赤い。こいつにとっては今世紀最大の告白だよね。

「さあて!本当にどうしよっかナ!!」
「何だお前、もう迷わねえんじゃねえのか」
「違うわよ。あんたの事よ。私のこと好きなんでしょ?」

ピクッとゾロが動く。・・・・かわいい。

「しょうがないでしょ。私もあんたのこと大好きなんだから」

ゾロは驚いて、こっちを見る。私も真っ赤な顔で笑う。

「あんたと離れたくないし、海図も描かなきゃだしね!」

立ち上がった二人の影。そしてそっと手をつなぐ。

「みんなには内緒ね、ついてくこと。驚かせるんだから」


ねぇ、ゾロ。知ってた?私はずっと前からあんたを好きだったこと。

そして・・・
二人はお互いの思ってる以上に、お互いのことが大好きなんだよ。




END


(2004.06.23)

Copyright(C)夏,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
ゾロの正面突破の告白だ〜。今言わないと、好きな女が船を降りてしまい、もう二度と会えなくなるかもしれないのですから、ゾロも必死になるっていうものでしょう。
「さあて!本当にどうしよっかナ!!」のセリフ。ゾロの告白を嬉しく思いつつ、子悪魔的な振る舞い。ナミの本領発揮って感じですね♪

夏さんの初投稿作品でした。かわいいお話をどうもありがとうございましたv 
またの投稿を期待しておりますよ〜。

 

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