私達
夏 様
幸せのカタチは人それぞれで、
あなたが幸せなら、私も幸せ。
「・・・・今夜は満月かぁ・・・・」
見張り台の上でそっと呟く。そよ風が涼しい夏の夜。
本を片手に海を見渡すと、波も静かで、優しい海が広がる。
空には雲が一つもなくて、キレイな星が空全体に散らばっていた。
今、私は船の上で独りっきり。
暇ではあったけど、本を読みながら風にあたるのはいいモノがあった。
秋島が近いせいもあるのか、過ごしやすい天候だった。
「眠いなあ・・・・・今日はずっとミカン畑の世話だったから・・・」
大きな月を見ていると、後ろの方からガタッと音がした。
驚いて振り向くと、目の前に大きな体と緑色の髪の毛がなびいた。
「っゾロ!!ビックリした!・・・・何してんの?」
「寝れねえんだよ。夕涼みしに来た」
「そっか。ねえ、話し相手になってよ。暇でしょうがないわ」
「いいが、面倒くせえ話と難しい話は嫌だぞ」
「しないから!ね?はい、ここ座って」
あぁ、と言ってゾロはその場に座る。
でも、よく考えれば話すことなんてなかった。
「・・・・お前眠いんじゃねえ?」
「えっ・・・何で?」
「だって、眠そうな顔してるぜ」
ゾロはそう言うと、私に近づいてきて隣りに座る。
何?と思った瞬間、ゾロが私を自分の方に寄せた。
「な!?意味わかんないんですけどっ・・・・」
「はい、おやすみー」
ゾロの顔は穏やかで、今にも寝てしまいそうな感じがした。
私には、その顔が愛しかった。
「・・・・・スーー・・・・」
「・・・・は?・・・・・」
寝てしまいそうなんじゃなくて、完璧に寝ているように見えた。
っていうか、完璧に寝てる。この男は。
「何しに来たのよ・・・・本当に・・・・・」
呆れて、ゾロの顔を見る。
でもその顔はとっても逞しくて、強そうで・・・・
そして、私の全てを包んでくれそうなくらい優しかった。
今、船の上には私とゾロの二人っきり。
多分、誰にも私たちを引き裂くことは出来ない。
こんなに近くにいるんだから。こんなに愛しいんだから。
「さあて、本でも読むか・・・」
「お前、俺と話すんじゃねえのかよ」
「え!あんた起きてたの!?」
「いつ俺が寝たって言った?」
あまりに子供過ぎて、あまりにバカらしくて、あまりに嬉しくて・・・・
私は声を出して笑ってしまった。
「じゃあ、話しますか。これからの私達のこと」
「なんだよ、俺達のことって」
「んー?これから二人はどんな風に一緒にいるのかなぁって」
「どんな風って・・・・こんな風だろ」
ゾロの言う「こんな風」ってのは多分・・・・
たくさんケンカして。たくさん怒って。たくさん嬉しくて。
たくさん幸せで。たくさん愛していて。
こんな日々が続けばいいんだろうな。
こんな日々のことを、幸せって言うんだろうな。
私達にとって、幸せのカタチとは
変わらない日々と、変わらない二人が一緒であり続けること。
END
(2004.07.20)Copyright(C)夏,All rights reserved.
<管理人のつぶやき>
ナミが話しようと言ってるのに寝るゾロ…お前なぁ(笑)。実にゾロらしいですが。
そのくせ、隣に座った途端にナミを引き寄せたり。やりおるな。
それに焦るナミがまだまだ初々しいですね♪
そして、そう、幸せは何気ない日常の中にあるのですよー。
夏さんの2作目の投稿作品でした。どうもありがとうございました〜v