対決!!ナミVSカラス
            

ライム 様




「……………」

ある日の朝、ナミはスーツを身にまとい、鞄をしっかりと握りしめながら立っていた。

「カァーーー!!」
「!!」

そのナミの2メートル先には、ごみ置き場。そしてそのごみの上には1羽のカラスが。

「……どうしよう」

ナミはさっきからこの場に立ちっぱなしで、1歩も進めずにいる。原因はナミがじっと見ているこのカラス。

「ほんとにどうしよう……。会社行くにはここ通らなきゃ行けないし。でも恐くて通れないし…」

ナミはブツブツ言っていた。もちろんカラスからは目を離さない。

「おい」
「大丈夫、何もごみ置き場の上を通るわけじゃないんだから。その横をダッシュで走り抜ければ…」

ナミはカラスに集中しすぎていて、話し掛けられたのにも気付かない。

「おい、ナミ!!」
「うわっ!!」

ナミは急に話かけられたことに驚き、数歩前に出てしまう。

「カァーーー!!!」
「きゃーーー!!!」

そしてカラスの鳴き声にも驚き、今度は尻餅を付いた。

「何してんだよお前…」
「あ、ゾロ」

ナミに話掛けたのは、同じマンションに住んでいる同僚のゾロ。ゾロもスーツを身にまとい、これから出勤のようだ。

「ちょっといきなり話かけないでよ!!びっくりするじゃ…」
「カァーーー!!」
「きゃーーー!!」

ナミは慌ててゾロの後ろに隠れる。

「だからお前はさっきから何してんだって…」
「見て分かんないの!?カラスと闘ってんのよ!!」

ナミに言われて目の前のカラスを見るゾロ。

「……おれにはカラスに遊ばれてるようにしか見えねェがな」
「うるさいわね!!ちょっと黙っててよ!!」

ナミはゾロの後ろからカラスを睨んだままだ。

「おい、ナミ。いつまでカラスと遊んでる気だ?」
「だから闘ってるんだって!!」
「……いつまで闘ってる気なんだ?遅刻するだろ」
「もうちょっと。今ここを通り抜けるための心の準備してる途中なんだから…」

それでもナミは、まだゾロの後ろに隠れ、ゾロの腕をしっかりと掴んでいる。

「あっそ。じゃあそろそろ腕放してくれねェか?おれは会社に行きてェんだ」
「待って!!もうちょっとだけ!!」
「おれを巻き込むな!!遅刻するだろ!!」
「私だって!!…あ、そうだ!!」

ナミは何かを思いつき、ゾロの腕を離す。

「お、やっと決心ついたか」
「ゾロ!!こうなったら囮作戦よ!!」
「はァ!?」
「ゾロが先にそこを通って、カラスの注意を引くの!!で、私はその間に走り抜ける!!うん、完璧!!」

そしてナミはゾロの背中を押す。

「さァゾロ!!行くのよ!!」
「…あァそうかよ」

ゾロはもう怒鳴る気力もなく、ナミの言われたとおりに先にカラスの前を通る。だがカラスはゾロに見向きもしない。そしてゾロはそのまま突破してしまった。

「おい、もう通っちまったぞ」
「何なのよこのカラス!!囮に見向きもしなかったらこの作戦の意味がないじゃない!!」

ナミはまた1人、取り残されてしまった。ゾロが来る前にも何人もここを難なく通る人を見てきた。だからナミもその人達と一緒に通り抜けようとしたのだが、このカラスはナミが通ろうとする度に鳴くのだ。

「も〜!!どーしよーーー!!」
「ったく、しょうがねェ奴だな…」

ゾロは頭を掻きながらナミの元へ戻って来た。

「ゾロ、戻って来たってもう囮作戦は通用しないってば」
「あァ。分かってる」

そう言うと、ゾロはナミの手を引張って行った。

「きゃーー!!ちょっと待ってゾロ!!無理!!無理だって!!カラスに襲われる!!」
「おれがカラスとお前の間にいれば問題ねェだろ?」

そしてカラスの前に差し掛かる。

「カァーーー!!」
「きゃーー!!ほら!!来るって!!」
「襲ってこねェから大丈夫だっつーの。行くぞ!!」

ゾロの言った通り、カラスは鳴くだけで、襲っては来なかった。そして2人は見事突破。

「やった!!カラスに勝った!!」
「ったくカラス1羽ごときでぎゃーぎゃー言いやがって…」
「ありがと、ゾロ!!助かったわ!!」

そしてナミはカラスの方を向く。

「ふんっ!!カラスめ、思い知ったか!!」

通れた途端、強気になるナミ。

「カァーーー!!!」
「きゃーーーー!!!」
「あほか!!!」

そしてまたカラスに鳴かれた。

「お前次からどうするんだよ。今日はおれがたまたまいたから良かったけどよ、あのままだったら一生通れなかったんじゃねェのか?」
「そうかもしれない…。次からはごみ出しの時間より前に家出ることにするわ」
「あァ、そうしろ。朝からあんなに騒がれちゃ、近所迷惑だ」
「失礼ね!!あれはカラスが悪いのよ!!」


























そして次のごみ出しの日。

「カァーーーー!!」
「きゃーーーーー!!」
「お前またかよ…」

今日もまたごみ置き場2メートル手前で叫んでいるナミを発見。

「ごみ出し前に家出るんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんだけど、寝坊しちゃったの〜!!」

涙目で訴えるナミ。

「もうおれは知らねェ。自分でなんとかしろ」
「え!?ちょっとゾロ待ってよ!!!」
「カァーーーー!!!」
「きゃーーーー!!!」

ナミとカラスの闘いは終わらない。




-おわり-


(2003.12.11)

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<管理人のつぶやき>
ワハハハハ!楽しい、楽しすぎる〜。
カラス相手に喜怒哀楽をコロコロ変えるナミがかわいいですね!
そんなナミを小馬鹿にしつつも助けてくれる同じマンションの住人で同僚のゾロ。やさしいじゃん♪
ナミとカラスの闘いは続く…ナミが早起きできるまで(笑)。それまではゾロに守ってもらいなさいv

ライムさんの初投稿作品でした。
ご本人曰く、「この間、カラスに襲われそうになったことから、この話を思いつきました」。
とんだ災難でしたが、そのおかげでこのお話が誕生したかと思うと、カラスに感謝したり(笑)。
ライムさん、楽しいお話をどうもありがとうございました!!

 

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