「あ〜、あっちい」
「ちょっとルフィ!!扇風機独り占めしないでよ!!」
「うわっ!!何すんだよナミ!!…くっそぉ〜。ウソップ!!
何か飲み物買ってきてくれ!!」
「何でおれが!!外暑いだろが!!」
「こことたいして変わんねェよ。むしろコンビニの方がクーラー効いてて涼しいんじゃねェのか?」
「そうか…。でもそれまでがあちィだろ!!そんなに言うならサンジ!!お前が買って来い!!」
そして4人は一斉にこの部屋の主を見て言う。
「「「「ゾロ!!!クーラー買って来い!!」」」」
「アホか!!」






最終日の戦争
            

ライム 様




夏休みの最終日は毎年戦争だ。毎年毎年、分かってはいるのだがどうしても遊びまくってしまう。
結果、最終日には貯まりに貯まった宿題が。そして必ず誰かが言い出す。
『よし!!こういう時は分担だ!!』
中学の頃から5人は、必ず夏休み最終日に集まって宿題を分担してやっていた。
『ウソップとサンジ君は数学、ルフィは国語ね』
『ちょっと待て!!お前とゾロはどうすんだよ!!』
ナミに渡された数学のノートを振り回しながらウソップが言う。
『私たちは自由研究に決まってんじゃない!!大変なのよ?5人分の自由研究って』
『全部同じにすればいいじゃねェか』
そう言ったルフィは、本日何本目かのジュースを開けてようとしていた。
『あんたバカ?そんなことしたら“分担しました”って言ってるようなもんじゃない!!』
『ナミさん、1年の時も2年の時も同じ手使ってさすがにもうバレてると思うけど?』
『でも証拠はないわ!!最後の最後で証拠作ったら意味ないでしょ!?分かったらさっさとやる!!時間ないんだから!!』
これが中学3年の時の夏休み最終日の光景だった。そして現在、5人は同じ高校に進み、またしても夏休み最終日を迎えようとしていた。






「ちょっと……今なんて言った?」
事の発端は夏休み終了3日前。5人は最終日を残して全ての日数を遊んで過ごした。
そして今日は毎年恒例の宿題をどこでやるか決定会議の日。
「だから、おれは今回は加わらねェから」
ゾロはジュースを飲み干し、ごみ箱へ投げ入れた。
「あんた高校1年目からダブるつもり!?」
ナミはそんなゾロの肩を掴んで揺さぶる。
「ちげェよ。おれは宿題もう終わったって言ってんだ」
「「「「は!?」」」」
これには一同びっくり。
「おいおいおい。明日は雪かァ?」
「何ィーー!?雪降んのか!?」
「バカ、降るわけねェだろ。こんなあちィってのに」
「あんた熱でもあるんじゃないの!?」
4人は口々に言う。
「雪は降らねェし、熱もねェ!!」
ゾロは怒鳴りベンチに座った。
「おかしいじゃねェか!!毎日おれらと遊んでていつ宿題やる暇があるってんだ!?」
「毎日コツコツやってたんだよ」
「ぜってェおかしい!!こんなのゾロじゃねェ!!」
ウソップはそう叫んだが、ゾロに殴られ静かになった。
「あ、でも私ゾロのクラスの子に聞いたことあるわ」
ナミが思い出したように言う。
「何を?」
「“ロロノア君ってうちのクラスで1番頭いいんだよねー”って」
「「ウソだーーーー!!?」」
「ナミさん、それはあなたが騙されたんだよ」
「「なーんだ、ウソか」」
「あっさり納得すんな!!!!」
ゾロは4人に向かって言う。
「だって信じられないじゃない!!ゾロが頭いいなんて!!」
「そうだ!!お前中学の頃からおれと成績競ってたじゃねェか!!」
そう言って中学の頃の成績の悪さを語り出すウソップ。
「あの時はあの時だ」
「じゃあお前、この前の期末の数学、何点だったんだよ」
サンジは少しからかい気味に聞く。
「96」
「「「「うそだーーーー!!!」」」」
「だからウソじゃねェって言ってんだろ!?殺すぞお前ら!!」
「待って。そこまで言うなら証拠見せてもらいましょうよ」
ナミの一言で5人はロロノア家へ。





「ほら、これで信じたか?」
「ま、まじで…?」
5人の目の前には広げられたテストの答案用紙と、びっしり埋め尽くされてる宿題のノート。
「数学96点、物理93点、英語94点、国語90点……全部90点台だ…」
「すげーーっ!!おれ90点台の答案初めて見た!!」
「おれも小学校ぶりだな…」
サンジは何度も答案の点数を見直し、ルフィは“すげー”を連発。ウソップはナミの持っている宿題の方に目を向けた。
「こっちもすごいわよ…。全部埋まってる」
「これで納得しただろ?だから明後日はお前らだけでがんばれ」
ゾロはそう言うと、出した物をしまい始めた。
「決めたわ!!」
「は?」
持っていたゾロの宿題を机に置き、ナミがいきなり言った。
「明後日はここで宿題をやる!!」
「お前おれの話聞いてたのか?おれはやったから…」
「今年は分担じゃなくて、ゾロのを写す!!」
「はァ!?」
ナミは迷いもなく言い切った。
「ってことで明後日はここに集合ねvあ、ゾロ飲み物とか準備しといてね〜vじゃ、解散!!」
「ちょっと待て!!まだおれは了解して…!!」
“パタン…”
ゾロが言い終わらないうちに、4人は部屋を出て行ってしまった。











「お前らが勝手に決めた場所なんだから文句言うな!!おれの部屋にクーラーがないことぐらい知ってただろ!!」
そして今日、予定通りにゾロの家に集合した4人。だがさっきから暑いだの何だのと文句の言いっぱなしだ。
「だって、他のとこでやるって言ったらあんた絶対来ないじゃない」
ナミは言いながらゾロの数学のノートを写す。
「今日だって逃げようと思ってたら、お前ら朝早くから押しかけてきやがるし…!!」
「ゾロ!!物理のノート貸せ!!」
サンジはそんなゾロに催促。
「それにしてもあちィなァ…。やっぱ今からいつもの図書館行かねェか?」
ルフィはナミに取られた扇風機を取り返し、それを抱えながら言う。
「でももうお昼すぎちゃったし。今から行くのって微妙じゃない?」
「でもこんなに暑かったら集中できねェよ〜」
ウソップはテーブルに伸びている。
「確かに全然進んでねェよな。今年は写すだけなのにまだ半分も終わっちゃいねェ」
サンジはノートをパラパラとめくりながら言う。
「ちょっと!!それはまずいわ!!今日しかないのよ!!集中して!!」
「なァ…おれ暇だから寝ててもいいか?」
ゾロはあくびをしながら聞く。
「ダメに決まってんでしょ!?あんたが寝たらみんながつられて寝ちゃうんだから!!」
「つくづく自分勝手だな…」
と、ルフィがごそごそ動き出した。
「お!!?ゾロ、これこの前出たゲームだよな!?」
「あ?あァ」
「なァなァ、ちょっとやってみていいか!?」
ルフィは目をキラキラさせて、すでにゲーム機をつなげる寸前。
「ルフィ!!今は宿題が先!!ゲームなんて今度でいいでしょ!?」
ナミがルフィからゲームを取り上げる。
「え――――!!ちょっとぐらいいいじゃねェか!!おれ宿題飽きた!!」
「ダメ!!」
「ナミさん、ちょっとならいいんじゃねェか?おれも結構疲れてきたし、一旦休憩ってことにしねェ?」
サンジに言われてナミは溜め息をついた。
「もう……じゃあ1時間だけよ!!それ過ぎたらちゃんとやるんだからね!!」
「おう!!よし、ウソップ対決だ!!」




そして3時間後――――
「行けっ!!ルフィそこで必殺技だ!!」
「あーー!!ウソップ負けてるじゃない!!そこ避けて!!」
「あ!!新しいアイテムだ!!」
「こらルフィ!!今のは卑怯だぞ!!」
4人はすっかりゲームにはまっていた。
「おい……。いいのかよ宿題は」
「宿題?あー、そんなの後後!!それより今は……」
ナミは身を乗り出してゲームに熱中している。
「知らねェぞ、おれは…」
ゾロはそのまま眠ってしまった。










次の日の放課後、廊下にはホウキやモップを持ったルフィ、ウソップ、サンジ、ナミが。
「うっかりはまちゃって宿題終わらなかったわ…」
4人は宿題をやってこなかった罰として、校舎内の掃除を言い渡された。
「そもそもルフィがあんなもん見つけるからだ!!」
「なんだよ、ウソップだってノリ気だったじゃねェか!!」
「おれたちまではまちゃって…」
「ほんと、情けないわ」
と、そこへゾロが通りかかった。
「よっ。せいぜいがんばれよ」
「ちょっと待て」
そのまま通り過ぎようとしたゾロをサンジが捕まえる。
「何だよ」
「そもそもてめェがめずらしく宿題をやってきたのが間違いだったんだ。だからてめェもやれ」
「は!?ふざけんな!!」
「そうだ!!それにゾロの家に新作ゲームが置いてあるのが悪い!!」
そういってルフィはホウキを渡す。
「おい…。どう考えたってそれは理不尽じゃねェか?」
「文句言わない!!やっぱり全員でやるべきよ!!ほら、さっさとやる!!」
ナミに促されて、結局ゾロまで掃除をすることになったのだった。


教訓。
慣れないことはするべきではない。




-おわり-


(2004.02.13)

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<管理人のつぶやき>
夏休みの宿題・・・既に管理人にとっては既に懐かしい響きである(^_^;)。
仲間達はドタバタしながらも仲が良くて、実に微笑ましい。
高校に上がってゾロが抜け駆けしたことへのみんなの言い草が面白い。
「こんなのゾロじゃねェ!!」って言われてもな(ぶはは!)。
ゾロにはとんだトバッチリでしたねぇ。でも仲間の結束は深まったか。

カラスシリーズ(既にシリーズ扱い・笑)から少し離れて、ライムさんの別パラレルオールキャラ小説を投稿してくださいました。
ライムさん、またまた楽しいお話をどうもありがとうございましたー♪

 

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