<ご注意>

このお話は、『
投稿部屋』のライムさんのゾロナミ出版社シリーズ
対決!!ナミVSカラス」「ゾロの苦悩」「金曜日の変化
魔女の笑顔」「ちっちゃなキューッピット?」の続編です。
先にこれらの作品を読まれると分かり易いです♪

 










なんだか妙に気になることがひとつ…。

「お、ナミ!!ゾロどこにいる?」

それは最近特に多くなったこの質問。会う人会う人が何故か私にゾロの居場所を聞いてくる。

「いたいたナミ!!ロロノア君見なかった?」

……私探すくらいなら本人探した方がいいんじゃ。

「ナミ〜。これロロノアに渡しといてくれ!!」

挙句の果てには編集長まで…。

「もう!!なんなのよみんなして!!!」

私は思わず叫んでしまった。





彼の言葉、彼女の想い
            

ライム 様


確かに、最近ゾロは出版社内を動き回っていて捕まりにくい。
本人曰く『撮影の助っ人を頼まれた』らしく、そのせいで行ったり来たりの繰り返し。でもだからってみんなして私に聞くことないじゃない!!

「え、だってなァ。なんとなくお前ならあいつの居場所分かるような気がして」

なにそれ。……ってちょっと。何みんな編集長の言う事に頷いてんのよ。

「それにお前だって結局は“知らない”って言った事あんまりねェじゃねェか」

ウソップまで…。でもそういや言った事ないかも。

「だからみんなお前に聞くんだよ。あいつ携帯全然出ねェし、それなら分かる奴に聞いて直接話す方がいいだろ?」

確かにそうよね。………ん?でもちょっと待って。

「何で私は毎回あいつの居場所知ってんのよ!!」
「いや、そんなことおれに言われても…」

すると編集長がニヤニヤした顔で寄ってきた。

「愛vなんじゃないのか?ん?」



「お昼行って来ます」
「……いってらっひゃい」
「なんでおれまで!!!」

私は編集長とウソップをひと殴りして出版社を出た。



「な〜にが“愛”よ!!!どうせウソップがあることないこと編集長に吹き込んだんだろうけど!!」

ブツブツ言いながらやって来たのはサンジ君のお店“ブルー×ブルー”。例の取材以来私はすっかりここが気に入って、最近では毎日のようにお昼を食べに来ている。

「あれ?」

店の前まで来た時、私はドアに“close”の看板がぶら下がっていることに気づいた。

「おかしいわね…。今日定休日じゃなかったはずなんだけどなァ」

それでも開いてないものは仕方ない。そう思って帰ろうとした時、店のドアが開いた。

「あ、やっぱりナミさん!!」
「ビビ」

しょっちゅうここに来るもんだから、バイトのビビとも仲良くなっちゃった。

「ナミさん、入ってください!!サンジさんももうすぐ帰ってくると思うんで」

私はビビに促され店内へ。

「サンジ君出かけてるの?買い出し?」
「いえ、ランチデリバリーに」
「ランチデリバリー?そんなのもやってるの?ここ」
「最近始めて。と言っても個数は限定なんですけどね」

ビビは私に水の入ったグラスを差し出す。

「いつもは私が行ってるんですけど、今日は量が多かったんでサンジさんが車で。だからその間だけお店閉めてるんです」
「そっか。料理できるのサンジ君だけだもんね」

この店にはちゃんとした従業員がいない。コックはサンジ君1人で、ビビとあと2人のバイトの子がいるだけ。まァお店自体がこじんまりしてるからそれでもやっていけるんだろうけど、デリバリー始めたら大変なんじゃないかしら…。それにしても、バイトの子が女の子のみってところがサンジ君らしいわ…。

「そういえば今日は一緒じゃないんですか?」

ビビが空席の私の隣を見て言った。そこには大体いつもいるであろう人物の姿がない。

「あァ、ゾロのこと?うん、今日は私1人よ」

ここに来る時は大体ゾロも一緒。別に誘い合って来るわけじゃないのに、なぜか一緒になってしまう。まァゾロは元々ここに通ってたんだから、一緒になるのは当たり前と言えば当たり前なんだけど。

「そういやあの人、最近全然来てないみたいですよ。サンジさんが言ってました」

へー、サンジ君が。あの2人仲がいいんだか悪いんだかわかんないわ…。

「あいつここのところ忙しいらしくて。でもそろそろ解放されるけどね」
「大変ですね」

ほんと、いつもが大して大変そうじゃないから余計に大変そうに見えるのよね。気づけばあちこち移動してるんだもん。……それにしても、お昼ここに来てないって言ってたけどちゃんと食べてんのかしら…。

「ナミさん、心配ですか?」

ブツブツ言いながら考えている私にビビが声を掛けてきた。

「え?何が?」
「ゾロさん、でしたっけ?その人が」

…………あれ?私今何考えてたっけ…。

「なんで私はあんな奴の心配なんかしちゃってるのよ!!」

私は自分にツッコミを入れた。そうよ!!心配する義理なんてこれっぽっちもないのに!!

「あ、やっぱり心配してるんですね」
「……何か言った?ビビ」

そしてニコニコして私を見ているビビを睨む。

「いえ、別に」

ビビは更にニコニコにやにや。

「ちょっとビビ。あんた今絶対変な勘違いしてるでしょ?!私は別に…」
「あ〜〜〜!!!!やっぱりナミさんだ〜〜〜!!お待たせしました!!愛の戦士サンジ、只今戻りました!!」

私がビビに文句を言おうとした時、サンジ君が帰って来た。

「あ、お帰りサンジ君。デリバリー行ってたんだってね」
「そうなんですよ〜。なんか昼間っから社員の誕生日パーティーやるんだって話で。特製・パーティー仕様ランチとケーキを今届けてきて」

へー。あ、そういえば…。

「そういえば私ももうすぐ誕生日だったわ」

サンジ君が言った事で思い出した。やだわ、また1つ歳食うなんて…。

「え!?ナミさん、いつですか!?愛の戦士サンジ、全力でお祝いします!!」

サンジ君、分かったからちょっと離れて…。

「7月3日よ」

私は一度サンジ君を引き離して言った。

「7月3日って…もうすぐじゃないですか!!」

ビビは店のカレンダーを見る。

「じゃあその日の夜は早く店閉めてナミさんの為にここでパーティーを!!!」
「わァ!!サンジさん、それいいですね!!」

サンジ君が腕まくりをし、ビビが早速計画を立てようとしてる。でもごめん、2人共…。

「あー、それはすごくうれしいんだけど、気持ちだけ受け取っとくわ」
「なんで――――!!?ナミさん、おれじゃ不満!!?」

サンジ君の顔色が一気に変わる。

「そうじゃなくて。私、なんでか毎年その日残業入るのよ。入社して3年目になるけど、過去2年間誕生日は残業。だから多分今年もそうだと思うの」

ほんと、何で毎年こうなのかしら。そりゃあ編集長はその日が私の誕生日だって知らないけど、それにしたって出来すぎじゃない?

「そうなんですか…」

うん、ごめんねビビ。今度編集長が昼寝してる間に眉毛をマジック(油性)で繋げておくから、それで許して?

「あののほほん編集長め…!!」

あらサンジ君。よく分かってるじゃない、うちの編集長のこと。……でもサンジ君って編集長と会った事あったかしら。

「今度蹴り食らわせてやる!!」

いや、それはやめた方がいいと思うわ…。あの人密かに格闘技やってるって噂だから。

「ほんとごめんね、2人共。なんならお昼にちょっとしたパーティー開いてくれないかな?」

するとサンジ君が今度は一気に明るくなった。

「喜んで!!ナミさんの為ならどんな料理でもお作りします!!!」
「そお?じゃあ宜しくv」
「私も何か用意しておきますね!!」
「ありがとう、ビビ」

今年の誕生日はいつもより楽しくなりそうだわ!!







「ふぁ〜…」

それから数週間が過ぎ、私の誕生日当日がやってきた。

「やっぱり今年も残業か…」

もしかしたら今年は…なんて期待は脆くも崩れ、私は今誰もい
ない部屋でパソコンと睨めっこしていた。

「おいこら、欠伸するな。移るだろ」
「………移らないわよ」

訂正。1人いたわ。緑頭のカメラマンが。

「ったく、やっと助っ人の仕事が終わったと思ったらこっちの仕事が山ほど溜まってるしよ…ふぁ〜…」
「ちょっと、欠伸しないでよ。移るじゃない」
「てめェから移って来たんだよ」

7月3日も残り数時間。昼間は前に言ってた通り“ブルー×ブルー”で私の誕生日パーティーだった。サンジ君からは美味しい料理と花束のプレゼント。ビビからは香水を貰った。

「あんたはあるわけないわよね〜」

チラッとゾロを見てみる。

「あ?何だって?」
「いえ、別に」

ま、こいつには誕生日のこと言ってないからプレゼントなんてなくて当然なんだけど。今までそういうことが話題になったことなかったしね。

「おいナミ。それ終わったら飲みに行こうぜ」

大体終わったらしいゾロが言う。

「…いいわよ。私ももう終わるし」

この調子だと今年の誕生日はゾロと過ごす事になるのね。……って何か誤解を生みそうな言い方だわ、これ…。




「あ―飲んだ飲んだ!!」

居酒屋からの帰り道、ゾロは大きく伸びをしながら言った。

「あったり前でしょ!?それでまだ足りないって言ったら人間だということを疑うわ」

ゾロは『我ながらよく働いたから自分への褒美だ』とか言って、浴びるようにお酒を飲んでいた。ご褒美にしなくてもいっつも浴びるように飲んでるくせに。

「その言葉、そっくりそのままてめェに返してやるよ」
「返すな!!」

と言いつつも、私も今日は結構飲んだわ…。


「うわ、もうこんな時間!!」

ふと時計を見ると、すでに23時近く。あ〜明日も仕事なのに…。

「お、そういや」

1歩前を歩いていたゾロが急に思い出したように言いこっちを振り返った。

「おめでとう」

………は?

「だからおめでとうって言ってんだ」

何言ってんのこいつ…。めずらしく酔ってる?

「何?なにがめでたいの?私何もしてないけど」

するとゾロは少し眉間に皺を寄せた。

「お前、自分の誕生日も覚えてねェのかよ」

誕生日?

「あ―。うん、そう誕生日。あ、それでおめでとうね。ありが……」

ん?何か違和感を感じるんですけど…。

「…って何であんた私の誕生日知ってんの!?」

そうよ!!私こいつに言った覚えないわよ!?

「前チョッパーが泊まりに来た時に言ってただろ」
「え、言ったっけ」
「夜中テレビの前で」

夜中…テレビ?あ、そういえば…。


『やった!!おれ1位だ!!』
『何が1位なの?チョッパー。…あァ、今日の星座占い。そういやもう“今日”って時間ね…』
『お前、テレビなんか見てねェでさっさと帰れ。もう終わったんだろ?そのゲーム』
『いいじゃない。チョッパーもう帰っちゃうんだから。…へー、チョッパーって山羊座なんだ。誕生日いつ?』
『12月24日』
『え、すごい!!クリスマス・イブなんて素敵じゃない!!』
『ナミはいつなんだ?誕生日』
『7月3日よ。お母さん曰く、だから私“ナミ”って名前らしいのよ。安易よね〜』
『……安易すぎるにもほどがあるだろ。お前の母ちゃん相当面倒くさがりだったんだな』
『うるさい、ゾロ。人に言われるとなんか腹立つわ。そういうあんたはどうなのよ。どうせ11月11日とかでゾロ目だからゾロなんじゃないの〜?』
『………』
『え、当たり!?何よあんた!!人のこと言えないじゃない!!』
『うるせェ!!』
『7月3日ってことはナミは…蟹座か?』
『うん、そうよ』
『お、蟹座今日最下位じゃねェか。残念だったな』
『うっそ!!やだー!!えーっと、ラッキーアイテムは……マリモ?』
『………』
『………』
『てめェらおれを見んな!!』


確かこんなことがあったような…。

「もしかしてそれ覚えてたの!?」
「お前ほど覚えやすい誕生日の奴はいねェよ」

すっごい意外……。ゾロが人の誕生日覚えてるなんて…。

「おい、なんか言う事ねェのかよ」

じーっとゾロを凝視してたら、こう言われた。

「え、何?」
「だから、おめでとうって言われたら普通なんて言うんだよ」
「あァ!!えっと、ありがとう…」

うわ、なんか恥ずかしい…。

「よし。まァちと遅いが今日に変わりはねェしな」

ゾロは自分の腕時計を見てそう言い、そのままスタスタと歩いて行ってしまった。

「ほんとに言うの遅いわよ…。ギリギリじゃない、バカ」

私はゾロに聞こえないくらいの声で文句を言った。でも、言葉とは裏腹に口角が上がっている。
やばい……。うれしいじゃない…。
今日はサンジ君にもビビにも同じ事を言われた。でも何故かゾロの“おめでとう”が1番うれしく感じるわ。

「おいナミ!!置いてくぞ!!」

少しにやけた顔をしている時に、ゾロが振り向いて言う。

「ちょ、ちょっと!!こんな暗い道にこ〜んな可愛い女の子置いてく気!?」

そして私はそれを隠すように慌てて言った。

「もう女の子って言う歳でもねェだろ。さらに今日また1つ歳食ったしな」

………前言撤回!!!

「決めた!!あんたには誕生日プレゼントを貰う事にしたわ!!しかも3年分!!」
「は!?ふざけんじゃねェ!!おれは去年まで知らなかったんだぞ!?第一金がねェ」
「もう決めたも〜ん!!期待してるわよ、ゾロv」

そう言って私は走ってゾロを追い抜いた。やっぱり顔は緩みっぱなしで。


今まで気づかない振りをしてきたことがある。
でもそろそろ認めざるを得ない状況になってきたのかしら…。
それでも、絶対口に出してなんて言ってやんないんわ。
だってなんか悔しいじゃない?

7月3日も残りわずか。住宅街を小走りしながら私はそう決意した。
そんな私の後ろにはゾロがいる。





その頃、とある居酒屋では――――――。

「くっそ〜、ナミのやつ!!おれは編集長だぞ!?そのおれを殴るとは何事だ〜!!」
「編集長、飲みすぎ…。余計なこと言うからですよ」

編集長と、半ば強制的に連れて来られたウソップが酒を飲んでいた。

「余計な事?おれは本当のことを言ったまでだ!!」

編集長はウソップの肩をがっちりと組む。

「おい知ってるか?ウソップ。ナミがなんで毎回ロロノアの居場所知ってるか」
「いえ…。編集長は知ってるんですか?」
「おォ!!教えてやろう!!」

そして編集長は耳打ちする。

「あいつ、いっつもロロノアのこと目で追ってるんだ。それもロロノアがどっか行く度にだぞ?ありゃ絶対惚れてるな」

得意満面の顔で言い放つ編集長。

「ナミが?ゾロを?まさか〜」

だがウソップは“ありえない”と首を振り続ける。

「編集長、そんなこと絶対ナミに言わないで下さいよ?またおれが編集長に何か吹き込んだって殴られるんですから!!」
「何―!?ウソップ、お前おれの観察力嘗めてるだろ!!これは絶対確実だ!!」
「あーはいはい。編集長酔ってるんですよ。もう帰りましょう!!また奥さんに怒られますよ」

ウソップは店員にお勘定を頼む。

「ウソップ―――!!お前もおれを編集長だと思ってないんだな!?そうなんだな!?」
「いや、そんなこと言ってないじゃないですか!!」
「よし分かった!!これからお前におれという存在の意味を説いてやろう!!次行くぞ次!!」
「まだ飲むんですか!?ってちょっと!!編集長―――!!」




「…ねェ。なんか編集長が私のことずーっと妙な笑顔で見てくるんだけど」
「あ?気のせいだろ。それより仕事しろ、仕事」
「そうかしら…。ねェ、ウソップはどう思う?」
「きききき気のせいじゃねェか!?」
「やっぱそうなのかなァ。でもイヤな笑顔よ、あれ。何か“おれはお前の秘密を知ってるぞ〜”って笑顔」
「どんな笑顔だよ…」

その翌日、3人の間ではこんな会話が繰り広げられたのだった。




-おわり-


(2004.07.03)

Copyright(C)ライム,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
前作ではゾロの気持ちがはっきりと分かりました。そして今回のお話でナミさん、自覚してきましたね♪ちょっとずつ近づいている感じがステキです。
ゾロがナミの誕生日を覚えていたのは驚きつつも嬉しかったです。まさか前作でこんなエピソードがあったとはね。
編集長、さすが年の功か。よく見てるね。そしてラッキョの皮がむけるように正体が現れてきた。奥さんがいる。密かに格闘技をやってるらしい。サンジとも知り合い。ああ、眉毛をマジック(油性)で繋がった顔を見てみたい(笑)。

ライムさん、楽しくて素敵なお話をどうもありがとうございました。
さあ次でいよいよ?待ってます!

 

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