白い花

            

ばなな平井。 様

 

季節は冬。

けれどもここは夏島。

雪が降ることはないのだ。





「よし。これでそろったぞ。」

「もう良いの?」

「うん。このところ、あんまり減らなかったからな。」

チョッパーとナミは、夕方の街を歩いていた。

ログが一日でたまると言う、この島。

上陸したのはつい先ほどのこと。

消耗品を買うため、ナミに金を借り、一緒に街へと出た。

人目を避ける為、すっぽりと被ったフードが暑い。

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか。」

「うん。」

夕方の街。

少しずつ、陽の光は薄れて暗くなりだした。

二人は並木道をゆっくりと歩く。

「ねえ。」

「何だ?」

「ねえ、チョッパー。雪、やっぱり見たい?」

「?」

「ほら、もう直ぐ誕生日じゃない。」

「覚えててくれたのか?!」

「当たり前よ。」

「でも、何で雪?」

「冬島出身でしょう?誕生日は雪が見たいかなあ、って。」

「見たいけど、、、雪かき大変だしな。」

「そう言えばそうね。」

他愛もない会話を二人楽しみながら、道を行く。

「あれ、、、、。」

突如、チョッパーは足を止め、鼻をひくひくさせる。

「?どうかしたの、チョッパー?」

「ゾロの匂いがする。」

「でもゾロ、確か昼寝してたはずよ。」

「でも、、、するぞ。絶対ゾロだ。」

「何処から?」

匂いは並木道の向こう側から。

木がまばらに生えていて、道なんてない。

「あっちだ。」

チョッパーは木々の間をすり抜けるよう歩き出した。









「本当に居た、、、、。」

「ほらな。」

木々の間を歩くこと数分。

二人はゾロの姿を目にすることとなった。

ただし、思いっきり寝ているが。

ゾロは大木を背もたれ代りにし、昼寝を楽しんでいた。

「ゾ、、、え?」

チョッパーが声をかけるより早く、

ナミはダッシュで駆け寄り、



ぱかあんっ



天候棒でゾロの頭を殴りつけた。

「い、、痛ぇ、、、」

「痛いじゃないでしょ!!いくら夏島だからって野っ原で寝てるんじゃない!!」

「何だよ、別に寝てた訳じゃ、」

「寝てるじゃないの。」

「、、、、。まあ、それより、チョッパー居ねえか?」

「え?そこに居るじゃない。」

ナミの剣幕に気おされ、中々近寄れなかったチョッパー。

少し離れたところで怯えている。

「おう。おいチョッパー。ちょっと来い。」

「う、、うん。」

呼ばれて、躊躇いがちに歩み寄る。

「あんた一体どういうつもりで寝てた訳?」

「これ、見せようと思って。」

『これ?』

ナミとチョッパーの声が唱和する。

これ。

ゾロは少し笑って、木を指した。背もたれ代わりのその木。

ナミはゾロへの怒りの所為で、

チョッパーはその怒りに怯えて、

二人はすっかり気がつかなかったが、大木は白い花をつけていた。

生暖かい風が吹くたび、花びらがゆらりゆらりと散っていく。

「何よ。この木が、どうかしたの?」

「風情無え女。」

「何ですって!!」

「雪、、、、、。」

「え?」

ケンカが始まりそうな雰囲気を拭い去ったのはチョッパーの一言。

「これ、、、、雪みたいだ。」

ゆらり、ゆらりと散る花びら。

それはまるで、暖かな日に降る雪の様。

「雪、みたいだ。」

呟き、チョッパーは木へ寄り添う。

白い花びら。

雪のような花びら。

「雪、見たいんじゃないかって思ったんだ。」

「俺が?」

「もうじき、誕生日だろ?」

ゾロのその台詞に、ナミは先ほどの会話を思い出したのか、笑い出した。

「何笑ってんだよ。」

「フフ。べーっつに。ただ、随分気が利くなーって。」

「、、、、どうせ似合わねえよ。」

「そーんなこと無いわよー、って。ゾロあんた。」

「何だよ。」

「結局どういうつもりで寝てたの?」

「いや、、、ぶらっと散歩してたら丁度木があったからな。

 離れるともうわかんなくなるだろうから。」

「ってことは、誰かが探しに来るまでずっとここに居るつもりだったの?」

「ああ。」

「堂々と言うんじゃない!!」

ぱかん

「痛ってえな!ぱかぱか殴りやがって!」

「言ってもわからないから殴ってるんでしょ!!」

「起こす時まで殴らなくても良いだろうが!!」

「普通に起こしたって起きないくせに良く言うわ!!」

「ゾロ、、、、。」

「大体手前、、、あ、何だ?チョッパー。」

「ありがとう。俺嬉しいよ。」

「、、、、おう。」

「なーにさ。照れちゃって。」

「うるせえなバカ女!」

「何よバカ剣士!」

再び始まったケンカ。

チョッパーは二人に目もくれず、

ただ、その木を見続けた。





ここは夏島。

雪が降ることはない。

それでも、



「雪みたいだ。」



花の雪の中、

チョッパーは懐かしそうに微笑むのだった。








FIN

 

<管理人のつぶやき>
ヒラヒラと白い花が雪のように舞っているのが目に浮かぶよう。夏島でこんな情景にめぐり合えるなんて。
チョッパーを喜ばせようと思いついたのが「雪」。ナミもゾロも同じものを思いついているのが大変萌えますvvv
ラストのチョパの微笑みは何よりの宝だなー。

ビバ!罪無き神学者様で12月24、25日の二日に限りDLフリーとなったチョパ誕小説です。
ばなな平井。さん、素敵な作品をどうもありがとうございました!

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