The Seven Gods of Fortune
            

マッカー様






「あ〜 腹へったなぁ〜」

「さっきも何かつまんでただろ サンジにばれたらまた蹴っ飛ばされるぞ」

「イシシ 今回は大丈夫だ!」

「なんだよその自信は」

「捨ててあったからな!」

「お、お前 そこまでして‥ きたね〜だろ!」

「大丈夫だ! たっぷりあった!」

「たっぷり? ‥ルフィそれどこからとってきたんだ?」

「おう つぼの中だ!」

「つぼ?」

「そうだ つぼの中にいっぱい入ってたぞ 形は悪いけどまだ食たぞ!」

「‥お前そりゃ 捨ててるっていうんじゃないぜ‥」

「‥そうだあれは捨ててたんじゃないな」

「ゲッ! サンジ!」

「おうサンジ あれは捨ててなかったのか?」

「そうだクソキャプ あれは〜な〜 漬けてあったっていうんだよ!!!」

「サンジが怒った〜!」

「わっ! どけルフィ!オレには関係ねぇ!」

「なんだ長っぱな てめぇも共犯か‥」

「ちちちちちっちがう! オレは断じて無実だ! 離れろルフィ!  お前が後ろに隠れたらオレまで‥!」

「なんだよ〜 全部ぐちゃぐちゃだったじゃね〜かよ!」

「ぐちゃぐちゃでいいんだよ! マーマレードなんだからな! ナミさんのオレンジ‥それを‥!!」

「わ〜血迷うなサンジ! オレは無実だぁ〜〜〜〜〜〜〜」

「じゃかぁしかぁーーーーー!!」





ウソップは海へと落ちてしまいました
深い深〜い海の底 意識が途切れるところで頭上に光が差しました 不思議な光はウソップを包むと海から引っ張りあげます

「げへっ げへっ!」

「おい! おい!しっかりしろ!」

「カヤ‥おれは‥おれは最後に‥」

案外平気そうです

「おい! コラ何寝ぼけてんだよ」

誰からかの呼ぶ声に 正気に戻るウソップ
そして彼が見たものは‥

「なんじゃこりゃーーーーーーーーーーーー!!」

船首を見れば黄金のメリー
はためくのは海賊旗ではなく大漁旗と宝旗
みかん畑を振り返ればおい茂るのは虹色に輝く葉と大粒の真珠

「メリーが‥」

なにもかもが‥ ゴールデンスペシャルリッチーリッチなエクセレントブルジョアなのです
膝をついている甲板を良く見るとこれも大理石
そして極めつけは甲板の上に立っているその姿

「ハハハ みんなどこかおかしくなったのか? 服もおかしなのに変えて‥
はは〜ん 俺のこと騙そうってんだなそうはいかねぇぞ!
このウソップ様を騙そうってのは一億年早いってモンだ!大体おれはなぁ‥」

思わず声が上ずるウソップ
そう そこに佇んでいたのは

「オレたちは七福神! 俺たちはお前に福をさずけるぞ!」

と叫ぶ船長を筆頭にしたクルーたちだったのです
唖然としたウソップを尻目に話は続きます

「そっつぉなぁのよぉ〜ん あたちは寿老人! あんたに長寿と繁栄を授けられるのよ〜ん」

いつもの格好×三倍バージョンが白鳥ではなくツルがついた
Mr.2

「オレは恵比寿だ どうもはじめまして 商売繁盛漁業の福だ ま よろしくな 」

背中の刺青が白ひげではなく福と鯛のロゴになっている 礼儀正しいのは変わっていないエース

「お前を海から上げたのはオレ大黒天、台所と豊作の福だ!」

と打出の小槌にいつもよりひねりが効いている眉のサンジ

「お おれは福禄寿だぞ! 無病息災と長寿の福だ!こんにゃろ〜」

テレテレしながら自身より大きな福袋を持つチョッパー

「あたしは弁財天 芸術と財福の女神よ」

とてもとても美しく慈愛に満ち溢れた天女ナミ

「おれは毘沙門天 武神、財宝の守護者だ」

偉そうに腕組みしながらいかつい甲冑に腰の三本刀は健在のゾロ

「そしておれ布袋な! 笑門来福、所縁吉祥の布袋だ」

ゴムなのかただの食べすぎなのかお腹がたっぷり出ている福耳ルフィ
ずらっとウソップを取り囲む7人の神様たち

「みんなそろって 七福神だ!」

しっかりキメのポーズまであるようです
愕然とするウソップ

「お‥おまえらが‥かみさま?」

「ガーッハッハッハッハ だからぁ ハナちゃんに福を授けてあげるってわ〜けぇ」

「何よ あんた自分で呼び出したんでしょ? さて じゃはじめましょうか」

「おう!宴会だ!!」

唐突に宴会が始まります
今まで何も無かった船上に一瞬で大小様々な料理や酒が現れます
色とりどりのその料理はまるで夢のように尽きることなく食べても食べても減ることがありません

「ほらお前も食べろよ 俺がつくったんだぜ」

大黒天がにこりと笑い勧めます
彼のことがサンジにしか見えないウソップは多少その笑顔を薄気味悪がりますが
確かにお腹がすいていたのでは初めは遠慮がちに
やがてはあまりの美味しさに我を忘れたように食べ始めます 
笑いの絶えない宴会 楽しげな時間 
しかし‥

「おい お前それでダレがいいんだ?」

「ハッ?」

唐突な毘沙門の問いに声を失うウソップと一瞬で空気を変える宴会場

「本当はみんなで平等に福を分けてたんだが 最近それも芸がないって事でな
やっぱ呼び出した本人の希望を取ることになったんだよな やっぱ実り豊かな福がいいよな」

ウソップの肩を抱きダークサイドに笑う大黒君

「ずり〜ぞ大黒! 縁が良いに決まってるじゃないか! だよな!」

「てめ〜はだまってろ 男たるもの強さが一番だ おい 世界最強になりたくは ないか?」

「ふっる〜いいのよぉん 世界最強なんてぇ! ねね それよか長生きはどぉ〜  友情よぉ〜」

「友情は関係ないだろ〜 長生きするなら健康が一番だよ! なぁ〜!」

「健康もいいけど金儲けもいいよな! 商売繁盛だぞ〜」

「あら 金儲けならあたしでしょ〜  あたしに任せてくれたら尽きることない財福と才能を約束するわ!」

「うるせ〜な! 金は勝ち取るものなんだよ!」

「あんたこそうるさいわよ! 今はそんなヤツいないわよ! バカ!」

「なんだと〜」

「こら!弁天さんにその態度はね〜だろ!毘沙門!」

「健康第一 健康第一!」

「縁だ! おれがいろんなところと結びつけてやるぞ〜〜〜〜」

「あちしがいないとそんなものも短命で終わりよん!」

とたんに船上は大混乱になってきました

「あわわわ‥」

ウソップは迫られる7人になすすべもなくがたがた震えるばかりです

「お前 異常に長い鼻してるな! 俺にかかればまともな鼻にしてやるぞ!」

ぎゅうっとウソップの鼻を挟むチョッパー

「なんだ青っ白い腕しやがって こんなんで戦いに勝てるわけがねぇな!
俺のとこにすれば見違えるようにしてやるぜ!」

ぎりぎりとウソップの二の腕をつかむゾロ

「戦いに勝てないなら平凡な人生で長生きすればいいわ〜ン いい家庭もてるよ うにするわよ〜ん!」

「モテそうにない顔だな お前はこりゃ亭主関白は無理だな 主夫としてやるに は台所の腕は必須だぜ」

「貧乏そうなやつね! だけどあたしと組めばそういう空しい人生も終わりよ! 」

「平凡な人生より刺激的な人生だろ!一発商売‥Zzzz」

「恵比寿寝るならあっちに行けよ〜 あ〜あ幸薄そうな顔だな おれなら素晴らしい縁とむすびつけてやるぞ」

本当の事とはいえ歯に衣着せぬ勢いの7人の福の神
身も心もぼろぼろのウソップ
そのうち話はエスカレートしてゆき 止まる気配がありません
毘沙門は剣を構え 大黒は小槌を握りしめます
あちらこちらで 気合の入った叫びが聞こえます
酒が飛び交い 紅白饅頭が投げつけられ 鯛やエビが踊ります

「大体ね! あんたのその力ずくで何事もおさめようなんて野蛮よ!」

「なにを‥! おまえも口を開けば金だ金だなんて 少しは色気のあること言っ てみやがれ!」

「何言ってるんだ 弁天はいつも色っぽいよな〜 こっち来いよ弁天 俺と一緒 にいかねぇか?」

「そうねぇ〜」

「行くか! ちくしょぅ‥恵比寿‥勝負だ!」

やきもちやきの毘沙門天はすぐに挑発に乗ります

「てめ〜ら! 食べ物を粗末にするんじゃね〜よ!」

怒る大黒天の顔に何かが飛んできます

「あ〜らン ごめんぅ〜 手がすべっちゃったわーん ガーッハッハッハッハッ ハ!」

「ははは 大黒ほっぺに饅頭が〜 ははは!」

「クソやりやがったな〜 布袋も笑うんじゃねぇ」

「ぎゃ〜」

もはや話合いというよりも罵り合いになりバトルロワイヤル状態です
宴会は殺伐となりかわいそうなウソップは船上を逃げ回ります
その後ろをちょこちょこと小さい影がメスと注射器持ってついて回っています

「な 俺が!治してやるよ〜! 待てよ〜逃げるなよ〜 痛くないから〜」

「頼むからついてくるな〜チョッパー!」

船室にまで追いかけっこをするウソップとチョッパーいや‥福禄寿
ところがウソップはその長い鼻が災いして横切る柱に鼻をぶつけてしまい ひっく り返ってしまいます

その目の前に白い紙がひらりと落ちてきました  
慌てて福禄寿はその紙大事そうに拾います

「もう! これはなくなったら大変なんだぞ!」

「あぁ〜 悪い悪い〜 なんだそりゃ?」

痛む鼻を摩り覗きこむウソップ そこには‥



場所は変わって船上はますますエスカレートしていっていました

「うらぁ〜〜〜 恵比寿様必殺!鯛拳!」

恵比寿の拳から新鮮な活きのいい鯛がざばざばざばと何十匹と飛び出し

「なにを 山舞降し!」

その魚を次々と三枚におろしてゆく毘沙門  さらには

「ガーッハッハッハ! くらえぃ 寿老人拳法! 爆撃白鶴!」

いつの間にかツルの頭を足につけて大黒に狙い打ちしている寿老人

「なんだ!? これが蹴りの跡か!? クソ新技だな」

間一髪で避ける大黒天

「ねぇ 布袋 今回譲ってもらえたらこれあげるわよ」

毘沙門の捌いた鯛の刺身を布袋につきつける弁天

「う〜んどうしようかなぁ〜」

真剣に悩む布袋

「てめ〜が捌いたんじゃね〜だろ!」

どこかで毘沙門のつっこみ




ウソップは船室から出てきてその現状に顎を落としました

「お〜い みんなぁ〜 大変だぁ〜」

そんな彼の横を さっきの紙を握り締めちょこちょこ出て行きます

「あ〜〜!チョッパー!ちょっと待ってくれ〜〜〜」

勿論チョッパーという名ではない福禄寿がそれで立ち止まるわけがありません

「あのな! こいつ! これに載ってないんだ!」

そしてそれを掲げます

「何だこりゃ?」

「進行予定表だわ 載ってないって‥ どういう事!?」

「なんだ?」

弁天が握り締める紙を覗きこむ他5人
ちらりのウソップの顔を見て尋ねます

「アンタ 名前は?」

「ウ‥ ウソップ‥」

その紙は 七福神が訪れる予定の人物の名が書かれてありました

そう

‥そこにはウソップの名は無かったのです!


「あんた‥ウソ ついていたのね?」

ぎらりと弁天の目が光ります

「い‥いや俺は何も一言も言ってね〜って 大体そっちが勝手に俺のこと‥!! 」

焦るウソップ 
ですが事態は非常に深刻です

「何?お前ウソついてたのか?」

「しかも この七福神様に対して とんでもね〜やつだな」

「ひっど〜いいんじゃな〜いいン?」

「騙してたんだな ひどいぞ!」

「こりゃぁ 問題があるな」

「どうするよ?」

福の神たちはとても怒りました
ウソをつくなんてもってのほかです
ウソップは怒った神様たちをいさめるのはとても無理だということは良く知って ました

「しょうがないわね‥」

弁天だけは先ほどとは打って変わり 優しげな微笑を浮かべてこちらのほうを向いているじゃありませんか

「ナミ‥」

その笑みのもつ希望にすがってみたウソップでしたが

彼女はにっこりとわらったまま親指を首もとに持っていきすっと一直線に横に引 きました
一体ソレが何を表しているのか
それも ウソップにはわかりきってました

かわいそうなウソップ

その後 ノーマネーでフィニッシュした彼は
一生福に恵まれた人生を送ることはなかったということです





「はい これでナミさんの昔話「七福神」はおしまい!」

「だからウソップはいつも報われないんだな〜!」

「そうよぉ ま 世の中が何も苦労せずにいい思いをしたらいけないという教訓ね 
それと ウソはいけないってこと!! さ チョッパー もう寝れるでしょ? あたし部屋に帰らなきゃ」

「おう! ありがとうな!ナミ 明日もまたしてくれるか?寝る前のお話!」

「いいわよ チョッパーがいい子にしていたらね おやすみ」

と言いチョッパーの鼻先にキスをするナミ

「えへへ〜 おやすみな ナミ」

テレながらも眠りに落ちるチョッパー
そこはいつものゴーイングメリー号の男部屋
チョッパーを寝かせて立ち上がり女部屋に戻るナミ
その後には滝のような涙を流してスピリチュアルアタックを食らっているウソッ プただ一人


「‥マーマレード食ってないのに‥」


「ってか 七福神ってねぇよそんな昔話‥」


あぁ ウソップ君に幸多かれ






後日談 海軍居留地

「‥おい 枕の下に何を入れた?」

「え? あぁ この紙を枕の下に置いて寝れば七福神が出るらしいんですよ!
スモーカーさんもやってみます?」

「宝船か‥おめぇ‥ そりゃ正月だけだろ‥」

「えっ‥」

紙を握り締め固まるたしぎ

「‥そんな古いことは知ってるクセに 肝心なとこがぬけてるな‥」

「でっでも! もしかしたら! 出てきてくれるかも‥!」

「‥好きにしろ‥」

「‥出ますよね!?」

「‥」

その後二人がどんな夢と出会ったのか


特に大佐には刺激的な夢であったのは間違いなかったのである





終劇




 

<管理人のつぶやき>
マッカー・ザ・ワールド2でした(笑)。皆様、ご堪能いただけましたか?
ゴーイングメリー号を宝船に見立てるなんて、思いつきそうで思いつかないですね〜。また、七福神の配役が絶妙でした。
整理しますと、以下のようになっています。

寿老人(長寿と繁栄の福)=Mr.2ボンクレー
恵比寿(商売繁盛漁業の福)=エース
大黒天(台所と豊作の福)=サンジ
福禄寿(無病息災と長寿の福)=チョッパー
弁財天(芸術と財福の女神)=ナミ
毘沙門天(武神、財宝の守護者)=ゾロ
布袋(笑門来福、所縁吉祥の福)=ルフィ

そうか、七福神ってこういう神様たちだったんだ・・・と、読ませてもらった後、思った私です。とても勉強になりました(笑)。
何気に恵比寿(エース)と毘沙門(ゾロ)が、弁財天(ナミ)を巡ってぶつかっているのが嬉しい(ニヤニヤ)。
それにしても、ウソップにはかわいそうなお話でありました・・・。
また、おまけ話の海軍さんの様子がなんだか微笑ましかったです。

マッカーさん、またもや楽しい作品をどうもありがとうございました!

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