アニバーサリーの夜に

            

マッカー 様





ここは オールブルーというとっても美味しいケーキ屋さんです
お店のご主人サンジはいつものように多くのお客に喜んでもらえるよう
朝早くから夜遅くまで 
たくさんの美味しいケーキを魔法のように作っていました
そんなサンジが作り出すケーキは まるで宝石のような形と
口に入れた瞬間思わずため息と共ににんまりと笑顔になってしまう美味しさでいつもたくさんの人で賑わっていました


そんなある日


もう閉店時間も過ぎてお店の電気を消そうとしたその時

コンコンコン

ひかえめなノックの音がしました
サンジは気のせいかと思い また片付けにとりかかろうとしたその時

コンコンコン

とまたもやノックの音がしました

「誰だこんな時間に」

サンジは不思議に思い もう閉めたドアに向かいました
そして少しドアを開けるとこういいました

「あー すまねぇが 今日はもう閉店なんだ また明日来てくれるか?」

外はもう真っ暗
都会とは違いこの辺りは蛍飛ぶ山ふもとのケーキやさんです
その少し空いたドアから外を見ると 
小さな子供がレインコートのフードを目深に被って立っていました

「おまえ 一人か? 親はどーした?」

するとそのフードの子は 
夏も近いのに小さな手袋をはめて握り締めていたお金を差し出しました

「フルーツケーキください みかん‥のったやつ」

すこしふるえた声でそう言って

サンジはびっくりしました
こんな夜遅くに子供が一人でケーキを買いにくるなんて
近所の子供でもない 見かけたことのない子です
そして思いました
何かワケがあるな?

「とりあえず こっちに入りな」

ドアを大きく開けると中に入るように促します
ですがその子は入ろうとしません

「どうした?」

少しどうするか悩んだみたいですがその子はまたこういいました

「いいんだ おれ ここで  フルーツケーキ一個ください」

サンジはまたまた不思議がりました
目深に被ったフードの中を見て見たいとも思いました
ですが またふと思いました
やっぱり何かワケがあるな と
そこでサンジはドアを大きく空けたまま店の中に戻ってウィンドウの中のみかん
が上にのっているスポンジの間にくだもの満載のフルーツケーキを二つ出て箱に
入れると戻ってきました

「ほら サンジ特製フルーツケーキだ  
閉店時間過ぎたから金はもらえねぇな 持って帰りな」

フードの子は嬉しそうにそれを受け取ると丁寧に御礼を言いました

「ありがとう サンジ」

そして大事そうに箱を抱いて 森へと小走り行きました
サンジはまたびっくりしていました

「あいつ なんで俺の名前知っているんだ?」


それから

また何日かしてそのフードの子は閉店してから現れました
同じようにサンジは何もきかず快くフルーツケーキを渡しました

それはまた不定期に続きました


サンジはずっと不思議に思っていました
あの子は誰なんだろう?

そしてとうとうある日サンジは尋ねました

「なぁ お前名前はなんていうんだ?」

「名前? 俺の名前は チョッパーだ!」

その子は元気よく答えました

「あー‥と ケーキはウマいか?」

「うん すっごく! サンジがつくったケーキはみんなの評判だぞ!
じゃ ありがとうな!」

そう言うとケーキを抱えて森へと戻っていきました

サンジはますますわからなくなりました
そこで いてもたってもいられず その子の後を追いかけました
蛍飛び交う森の中へ


森の中はひんやりとしていましたが
蛍の光があるのでサンジは心細くありませんでした
いつの間にか チョッパーの姿が見えなくなりましたが
サンジはそのまま まっすぐ走りました

すると どこからか声が聞こえてきました

「みんな サンジのフルーツケーキだぞ!」
「やっほー! おれイチゴんとこな!」
「ずりーぞ ルフィ! お前こないだもそうだったじゃねーか!」
「だめだ! まずはナミが最初だ!」
「いつも悪いなチョッパー」

よくよく目をこらすと3匹の動物がチョッパーの周りをかこんで何やら話しているではありませんか

「なんだ あいつら サルに オウムに オオカミじゃねーか」

サンジはチョッパーが森の動物に襲われやしないかと思いましたが
レインコートを取ったチョッパーを見た瞬間
それは心配しなくてもいいと思いました 
なぜならチョッパーも立派な角を持ったトナカイだったからです

3匹ではなく4匹の彼らは大きな木の根元にある穴の中に入っていきました
サンジも気になってこっそりその穴を覗きこみました
穴の中はあたたかく やわらかい雰囲気で満たされていました
そしてそこには 綺麗な薄茶色の毛並みをしたおなかの大きなオオカミがいたのです

「ナミ もってきたぞ フルーツケーキだ みかんのってるやつだ」

チョッパーは箱からケーキを取り出してその綺麗なオオカミの前に置きました
その横でよだれをたらした麦藁をかぶったサルと 
その頭に乗っかって必死に何か言い聞かせているおしゃべりなオウム

「ありがとうチョッパー ごめんねいつも」

薄茶色のオオカミはナミと呼ばれていました
チョッパーは少し照れくさそうにしていました
サンジはやっとわかりました
フルーツケーキはこのナミというオオカミのために買いに来てたのかと
二本足のトナカイなんて不思議だけど 
この中で唯一まともにおつかいができそうだったのは彼だったからかと
お店に入らなかったのはヒズメの音をきかれない為だったのかと
そう思い 元来た道をゆっくり引き変えそうとした時 ぎくりとしました
さっきまでと森の雰囲気が変わっていたからです
あれだけいた蛍もどこかにいなくなって ただ光るのは 
いつの間にか正面に来ていたさっきの大きなオオカミの目

片耳が傷ついているその大きなオオカミはうなりました

「お前‥後つけてきやがったのか」

サンジはとてもけんかは強いのですが そう不用意に誰かと傷つけるのは好きじゃありませんでしたし このオオカミがさっきの薄茶色のオオカミを守ろうとしているのがわかりましたので自分に敵意が無いことを伝え 道を空けるよう試みました

「確かに後はつけたが おまえたちをどうこうしようって気はない 
おれは帰るんだ そこをどけよ」

その割には偉そうでした

「フン 人間はみんなそう言ってウソをつく」

オオカミはキバをむき睨みをきかせながら近づいてきました
いつ飛び掛ってきてもおかしくない状態になりました

「待って!ゾロ その人サンジだよ ケーキやさんなんだ!」

この雰囲気に気づきあわてて飛び出したチョッパーが
ゾロの前に転がるように走ってきました

「このケーキつくってくれるケーキ屋さんなんだよ!?」

「そんな事は匂いでわかる だがお前をつけてきたんだ! 
人間の仲間を呼びに行くかも知れねぇ!」
「サンジは悪いやつじゃないよ! こんなに美味しいケーキつくるんだ!
サンジのケーキ ナミも美味しいって言ってただろ!?」

オオカミのゾロはまだサンジを睨んだままでしたが 
チョッパーが一生懸命説明すると
しぶしぶながらも 引いてくれました
サンジはみんなに知るところになりました

「なんだ お前がケーキ屋か! おれ ルフィ!」
「ルフィ! お前何どさくさにまぎれてイチゴ食ってるんだ! ずるいぞ! あ おれ ウソップだ よろしく!」

サルのルフィとオウムのウソップが来て一気に賑やかになりました

「ごめんなサンジ びっくりしたろ? あいつゾロって言うんだけど
悪いやつじゃないんだ 奥さんが初めてのお産前でさ だから‥」

チョッパーはサンジに申し訳なさそうに謝りました
そして 巣穴の中にいるナミの事を説明しました
甘いものをいきなり食べたくなること みかんがだいすきなこと
街に降りて行くのは危険なので 
チョッパーが人間の格好をして山のふもとのサンジの店に来ていたこと
サンジは黙ってきいてましたが ある事を思いつきました

それから数日後の満月の夜

その森の奥では古い倒れた木をテーブルにしてパーティが開かれていました
動物たちが用意した森の果物でサンジがつくった特大のみかんたっぷりのフルーツケーキが並んでます
それにすぐ手を出して怒られるサルもそのとばっちりを受けるオウムもたくさんの仲間を呼んできました
森中で響き渡る歌声と笑い声のもと
新しく誕生した命はあまい匂いをまとって たくさんの祝福を受けました


今にも落ちてきそうな空の星たちは そのささやかなアニバーサリーの夜をやさしく包みこんでいました










おしまい




 

<管理人のつぶやき>
なんて心温まるお話なんでしょうか〜。
サンズィがいい男だなぁ。おなかの大きなナミオオカミのためにお使いに行くチョパがかわいいv自分の子を宿しているナミを気遣うゾロオオカミもかっこいいよ!
新しい命とともに甘くてやさしいアニバーサリーな夜になりましたね。

なんと私の実生活での引越し祝いにと、マッカーさんがくださったSSです!
この前ギャングものというハードな作品を書かれたかと思えば、一転してこんなハートフルなお話も書かれるマッカーさんに脱帽です。
マッカーさん、素敵なお話をどうもありがとうございました♪

戻る