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みづき様






「んぬわぁにぃぃぃいいい!?」



公園での出来事から明けて翌日、場所は移り午後を迎えたレーン。

ランチタイムが過ぎ 客足が一旦引いたこの店で大声を響かせたのはサンジで
ジュールでの仕事の後 ひと眠りをしてから此処へとやって来た彼は
座っているカウンターの奥に立つウソップを見ながら身を乗り出す。



「ナミさんが殺しの現場に居合わせた!?」
「あ、あぁ まぁな。」



この日は休日でバイトに来ていたウソップ。
彼はその声の大きさに一旦耳を塞いでいたのだが
塞いでいたその両手を離すと、そのまま頷き言葉を続ける。



「昨夜 店の仕込みの材料買いに出た帰りで銃声を聞いたらしくてな
通り掛かった公園に入ったら、撃たれたヤツがいたらしいんだよ。
俺が聞いたんは店に来てすぐだったんだけどよ〜、いやぁ 驚いたぜ。」

「・・・。」



そんなウソップを見たまま、サンジは改めてカウンター席に腰掛けると
彼は次に母親であるベルメールへ視線を向ける。



「・・・それで 店長、ナミさんは?」

「あぁ、あの子なら何とも無かったから安心していいよ。
今は丁度ここが落ち着いたから、ゾロの所に行ってるんだけどね。
あたしも昨夜聞かされた時は 生きた心地がしなかったよ・・・。」

「え・・・ナミさん今、アイツのトコに行ってるんですか?」



すると そんなサンジに続いたのは、ひとつ挟んだカウンター席に座るルフィだった。



「あぁ。ナミなら今、ゾロの事務所にいんぞ。
その殺されたヤツ、ゾロが探してた奴だったらしくてな
昨夜の事を話しに行ってる。」

「って、どういうこったよ そりゃ。」

「まぁ まんまだな。
昨夜その現場に行ったんがエースだったから、朝にエースから聞いたんだけどよ
そん時アイツ、公園を去ってく2台の車を見たらしい。」

「ってこたぁ・・・。」
「ナミが見つけたヤツを殺したんは、その車に乗ってた奴等って事になるな。」



そんなルフィを横に、サンジが顔を強張らせたのはすぐ。



「おい・・・じゃぁ 下手すりゃナミさんは、そいつ等に狙われるじゃねェかよ。」
「顔は良く見えなかったってアイツは言ってたけど、まぁ そうなるか?」
「テメェな・・・どうしたらそんな呑気になれんだよ。」

「ゾロがいるからな。」
「は?」

彼は顔を合わせたまま 分からないといった表情を見せ
ルフィはというと、言い切ってすぐニカッと笑ってみせた。



「ナミにはアイツがついてるから大丈夫だろ。
それに昨夜の暗い中なんだ、めったな事じゃナミの事は分かんねェだろうしな。」

「まぁ、そう言っちゃそうだけどよ・・・。」
「だろ? しししし。」
「・・・。」



それからすぐ、呆れた様な顔をルフィに向けてしまうサンジ。



「・・・んでよ、ちょっとお前に教えてもらいてェ事があんだけど。」
「は?」
「最近よ、何か変わった事無かったか?」

「変わった事・・・? 何だそりゃ?」
「だから ネロだよ、ネロ。」
「ネロ・・・?」

「あぁ。最近慌しいって言うか、様子が変じゃねェか?
エースもシャンクスも調べてるみてェでさ。」

「そうなのか?」
「あぁ。んで、お前なら何か知ってんじゃねェかと思ってな。」
「・・・。」

彼はルフィにそう言われると考える様な仕草を見せ
少しの間を置いた後、言葉を続けた。



「俺は何も知らねェし、アイツ等からも聞かれてねェから話しちゃいねェが
ネロの中で何かあったっていうのは間違いないらしい。」

「んあ? らしいって どういう事だ?」
「幾ら俺でも、組織内の事はベラベラ話しちゃくれねェってこった。ただ・・・。」

「お? ただ、何だ?」

「店に良く来るヤツがネロにいるんだが、そいつは動くらしい。
ヤツが動くのを聞いたのは初めてでな・・・驚いたっていやぁ驚いた。ま、そんなトコだ。」

「何だ、それだけか〜。役に立たねェなぁ〜、お前。」
「テメェが聞いたから話したんだろうが!!!」



それからすぐ、がっかりした様子を見せたルフィに手の甲を向けるサンジ。
その彼の後に続いたのは、2人の様子を見ていたウソップだった。



「けどよぉ〜、良く話したな お前。」
「あ?」
「いつもなら店の事は話さねェじゃねェか。」
「要するに、俺は何も知らねェってこった。」
「あぁ・・・そういや、そうか。」



すると再び、ルフィが2人の話の間に入ってくる。



「・・・ん? めったに動かねェヤツが動くってこたぁ、やっぱ何かあったんじゃねェか?」
「まぁな。そいつは幹部連中とも繋がってるって話しだし、上で何かあったのかもな。」
「ホントか!? なぁ、それって何だ!? 何か言ってなかったか!?」

「いや、何も言ってねェ。それに俺が聞ける事じゃねェだろ。
まぁ アイツが動いたって事は、確かに慌しくなったって事なんだろうけどな。
第一、俺が知ってたとして お前が首突っ込んでみろ・・・その瞬間に魚のエサだぞ。」

「あ? 魚のエサ? 何だ、俺 食われんのか?」
「殺されるって事だ、バカ野郎・・・。」

そして サンジは彼に思い切り呆れ顔を向けると、そのまま大きく息をはいた。



「・・・で? ナミさんが見たって言うその殺されたヤツが どんなヤツか分かったのか?」
「あぁ、それなら今エースが調べてる筈だ。お前やゾロと同じ年位な感じらしいぞ。」
「俺やクソマリモと?」
「おう。んで、ゾロに探してくれって言ったんは、そいつのダチみてぇだ。」
「・・・。」



丁度そこへ、店内に何やら不気味な音が流れ始める。



「・・・何だい、この変な音?」



その音に最初に気付いたのはベルメール。
ところがルフィはそんな彼女を気にする事無く、Gパンから携帯を取り出した。



「あぁ、俺の携帯。」
「「 不気味な音させんじゃねェ!!! 」」
「んあ? そうか?」



その何とも言えぬ着信音に すかさずサンジとウソップは同時にツッコミを入れ
手の甲を素早くルフィへと向ける。

しかし彼は気にならないのか、きょとんとした顔をしたまま電話に出た。



「おう。あぁ・・・あぁ・・・・・・は!? そりゃマジか!?
あぁ・・・・・・あぁ・・・まぁ そうなるか? ・・・おう、分かった。サンキュー。」



それから短く話し終えたルフィは 携帯をカウンターへと置き
改めて3人と顔を合わせる。



「どうした?」
「何かあったのか?」
「どうしたんだい?」

「それがよぉ〜。ナミが見たっていうその殺されたヤツ、ネロに入ってたらしい。」
「なにぃ〜!? そりゃ どういうこった!?」

「今の電話エースからでよ、情報屋ってヤツからそう聞いたらしいぞ。」
「ってこたぁ その殺されたヤツは下っ端か?」
「エースの話じゃそうらしい。」

「じゃぁ あの娘が見たって言う 車に乗ってたヤツはどうなるんだい・・・?」
「同じ下っ端のヤツじゃねェかって、エースは言ってた。」



ウソップだけでなく サンジやベルメールもルフィに続き
そのまま合点のいく様子を見せたのはサンジだった。



「成程な・・・そうなると、下っ端同士の小競り合いってトコか。」
「んあ? 小競り合い?」

「あぁ。幹部連中が直接出て来て殺しをやるなんてこたぁ まずねェし
下っ端連中はそれぞれ気に入った幹部に取り入ってるからな
・・・下っ端同士で幹部を持ち上げる為に小競り合いが起こったんだろ。
それか 余程のヘマをして、幹部に言われた下っ端が殺したってトコだろうな。
ナミさんはそれを見ちまった可能性があるって事だ。」

「おぉ・・・成程。」



そんな彼に続いたのはルフィで
更には顔を引きつらせたウソップが続く。



「って、成程じゃねェよ・・・下手したらナミのヤツ、狙われるんじゃねェのかよ・・・。」
「ん! そうだな!」
「じゃねェだろ、ルフィ・・・何でお前のカンはこんな時しか当たんねェんだ・・・。」



どうやらウソップは、ゾロの探していた被害者がネロにいた事を言っているらしい。
しかしルフィは そんな彼の心配が気にならないのか、再び笑ってみせた。



「だから、大丈夫だって。アイツにはゾロがいるっつったろ。」
「そりゃ そうかも知れねェけどよぉ〜。」

「それに、良く顔が見えてねェ以上、ナミを狙ったって何もなんねェよ。
もし顔を見てたとしたって、ナミは撃ったトコを見た訳じゃねェし
警察がそいつを見つけたって、証拠がなきゃしらばっくれりゃいいんだ。
わざわざナミを狙って大げさにする程、ネロの奴等はマヌケじゃねェだろ。」


「・・・言われてみりゃ確かにそうだが、お前が言うと説得力に欠けるな。」
「お前にマヌケなんて言われるようじゃぁ ネロの奴等も終わりだな。」

「って、失礼だなお前等!」



それから冷静に言い放つウソップとサンジを前に、言い返すルフィ。
そんな彼に続いたのはベルメールだった。



「・・・つまり 向こうも事を大げさにしたくないから、あの娘を狙わないって事だね?」
「あぁ、多分な。だから心配すんなって店長。」

「だといいんだけどねぇ・・・。
アンタも ここまで分かったんだから変に首突っ込むんじゃないよ、ルフィ。」

「おう。てゆーか、首突っ込もうにも探りようがェしな。
エースの話じゃ、その情報屋ってヤツも ネロで何か起こった位にしか知らねェらしいし
分かったら教えてくれとは言っといたけど、エースもそこまでしか分からなかったみてェだ。」

「そうかい・・・。」



それを聞き彼女が安心した様子を見せたのは それからすぐ。





時を同じくして探偵事務所の方では
ゾロに呼ばれたナミが昨夜の公園の事を話し終えた所だった。





「・・・それで昨夜は、警察に話して帰って来たんだな?」

「うん。その車に乗ってた人の顔は良く見えなかったわ。
だから今みたいに話してすぐ家に帰れたの。」

「そうか・・・。」



テーブルを挟み 向かい合わせのソファーに座るゾロは
彼女から聞き終えるとそれまで以上に眉を寄せる。



「ねぇ、ゾロもこの人の事は調べるんでしょ? 」
「さぁな。調べるとしても、守秘義務でお前に話す必要は無いと思うが?」
「あっそ。」
「・・・?」


そんなゾロの態度を見て、ナミが短く言ったのはそれからすぐ。


「・・・ッ・・・・・・!!!」


途端にナミは履いているヒールでゾロの足を思い切り踏み付けると
にこやかに笑顔を向けたまま 押し付けるように足を踏み続けた。



「どお? 話す気になった?」
「テメ・・・ッ・・・!!!」

「このナミちゃんの目は節穴じゃないわよ。
昨日コーヒーを運びに来た時、このテーブルの上に乗ってた写真が目に入ったの。
あの殺された人をアンタが探してる事はすぐに分かったんだから。」

「・・・!?」



するとゾロは、あからさまに驚いた様子を見せ
ナミはそんなゾロの足から自分の足を離す。



「・・・やっぱりね。あの人一体どんな人だったの?」
「どんなって・・・只の大学生だ。」
「あのねぇ、只の大学生が失踪した上に、殺される訳ないじゃない。」
「・・・。」



こうしてゾロは、仏頂面でナミを見たまま自分の髪を掻くと それから話す事に。
やはり こうなった時の彼女に勝てる者は誰もいなかった。



「ったく、テメェは・・・。
いいか・・・この事は誰にも話すんじゃねェぞ。勿論アイツ等にもだ。」

「う、うん・・・。」



そしてナミは、そのまま彼の次の言葉を待つ。



「俺が受けた依頼は人探しでな・・・依頼人はお前も昨日見た奴だ。
1週間程連絡が取れなくなっちまったから、探してくれっていう依頼でな。
親も警察に捜索願いは出したらしいが、別で俺に依頼してきた。
急にダチと連絡が取れなくなって心配になったらしい。」

「じゃぁ あたしは、その話の時にコーヒーを此処に持って来た訳ね?」
「まぁな。それで調べ始めたトコに、昨夜お前が見つけたって訳だ。」
「え? 調べ始めた? 探し始めたじゃなくて?」

「あぁ。最近慌しいらしくてな、念の為調べてみた。
こっちに来て 大分裏の方に顔が利く様にもなったしな。」

「え・・・それって、どういう事?」


「お前が昨夜見た害者・・・俺の捜索人は、ネロに入ってたんだよ。」
「・・・マジ?」
「あぁ。どうやら下っ端らしいがな。」
「それじゃぁ・・・昨夜あたしと会った時は調べてた時だったの?」

「そういう事だ。エースって刑事から連絡があったのは、あの後向かった出先でな
そのまま依頼人に連絡をして、レクター市警で会った。依頼の事を話したのもその時だ。」

「・・・。」

「まぁ 顔を良く見てねェなら、奴等がお前を狙う事はねェだろ。
お前は殺したトコを見た訳じゃねェし
そんな事して騒ぐ程 向こうもマヌケじゃねェだろうしな。
万一警察が犯人を見つけたとしても、証拠が無い限り無視すりゃいい事だ。」

「はぁ・・・。」



ルフィと同じ様に言うゾロのそれを聞きながら
そのあまりの話に空返事になってしまうナミ。
彼女はそれからすぐ、気付いた顔を見せた。



「って、ちょっと待ってよ! 狙われない保障なんて無いじゃない!」
「あ?」

「だって、ネロにいたんでしょ あの人!?
あたし 殺されてるトコ見ちゃってるのよ!どうするのよ!」

「だから、お前を狙ったトコで何もなんねェよ。・・・多分な。」
「こらぁ! 何よそのワザとらしい『多分な』は!」



そんな彼女を見ながら一旦言葉を区切り、意地悪く言ってみせたゾロ。
しかし次には、ナミを安心させる様な柔らかい表情を見せていた。



「心配すんな。害者は下っ端のヤツだし、ネロの奴等は何もしねェよ。
幹部の奴等は めったな事じゃなきゃ動かねェし
お前が見た車に乗ってたヤツも下っ端のヤツだろ。
大方、上の連中に取り入る為に下っ端同士で揉め事を起したか
余程のヘマをやらかして、幹部に言われた下っ端が殺したかだ。」

「う、うん・・・。」


「ホントなら俺も調べたいトコなんだが
相手がネロじゃ突っ込んで調べられねェし
犯人を捜してくれとも依頼された訳じゃないんでな。
捜索人が害者になっちまった時点で、この仕事は・・・。」





「あのぉ・・・。」





そこへ突然聞こえて来たのが、少し高めの声。



「「 ・・・!? 」」



2人が同時に声のする方向を見ると
そこにいたのは、ゾロにとっての依頼人。
ナミが昨日、コーヒーを運びに来た際、顔を合わせた青年だった。



「ラトさん・・・。」
「こんにちは。」



そのままラトはぺこりと頭を下げるとゾロと顔を合わせる。



「あの、依頼料の支払いに伺ったんですけど・・・。」



そしてすぐ 彼はナミに気付き
その事で察したナミは、そのまま立ち上がった。



「あ、じゃぁ あたし行くね。」
「悪ぃな。」
「うぅん。」

「念の為だ、あんま出歩くんじゃねェぞ。」
「うん、分かった。」



そうしてナミは改めてラトと顔を合わせると、一礼してからすれ違い事務所を後に。





「昨日も此処にいらしてましたけど、可愛い人ですね。もしかして彼女ですか?」
「は!?」



それを見送りながら、ラトはそれまでナミの座っていたソファへ腰掛け
続けてそう言われた為、ゾロは思わず間の抜けた声を出してしまう。



「いや、アイツはそんなんじゃないですけど・・・。」
「え? そうなんですか?」
「えぇまぁ。」
「・・・。」



するとラトは、露骨に意外だというような様子を見せた後
取り出した封筒をテーブル上へと置いた。



「あ、あのこれ、1日分ですけど、依頼料です。」
「有難う御座います。すいませんでした、全然役に立てなくて・・・。」



それをゾロは有難く受け取る事にし手にすると、改めて彼と顔を合わせる。



「いえ、俺がちゃんと依頼したものですから。
あんな事になって驚きましたけど、連絡を貰って良かったです。
アイツ・・・ネロにいたんですね。」

「えぇ。詳しくは警察の方で調べてるみたいですけど
どうやら仲間同士の抗争に巻き込まれたみたいですね。
俺も調べたんですが、ネロは今 何かしらでごたついてるらしいんです。
それに巻き込まれてしまったと見て間違いないと思うんですが・・・。」


「そうですか・・・。じゃぁ やっぱり、刑事さんが言ってた事と同じなんですね。」
「刑事・・・ですか?」

「はい。午前中アイツのお母さんから電話があったんです。
赤い髪の刑事さんが来て、同じ事を言ってたみたいで。」

「赤い髪・・・?」
「はい。それで、アイツの事で何か思い出したら教えてくれって。」
「そうですか・・・。」



そんなゾロが眉を寄せたのはそれからすぐ。



(赤い髪っていうと、確かシャンクスとか言う刑事だったな・・・。
何でアイツが・・・? 今回の件はエースが調べてんじゃねェのか・・・?
それに何で、ネロがごたついてる件を知ってるんだ・・・? エースから聞いたのか・・・?)



「あ、あの・・・? どうかしたんですか?」
「あぁ、いえ・・・。」



その様子を不思議に思いながらも、ラトはそのまま立ち上がった。



「じゃぁ 俺はこれで。ホントに有難う御座いました。」
「・・・。」



そしてお互いに頭を下げると、事務所を後にするラト。
見送ったゾロはというと、更に眉間の皺を深くする。



(どうも引っ掛かるな・・・。
下っ端同士のごたつきで起こった殺しに見えるが、表向きにしか見えねェのは気の所為か?
裏に何かある様な気がしてならねェ・・・。)





その頃 場所は変わり、とある小さなアパート。





「すいませんね、無理言っちゃって。」
「いえいえ。けど、2度も刑事さんが来るなんて、どうかしたんですか?」



このアパートの2階へと続く階段を 管理人と共に上がっているのは
ゾロが気に留めた赤い髪の刑事・シャンクス。



「あぁ・・・昨夜来た刑事は事件担当で、俺は別で探し物してるんですよ。
まぁ 無いとは思うんですが、念の為見ておこうと思いましてね。
昨夜来たのって黒髪の刑事だったでしょ?」

「そうそう。その刑事さんから聞きましたけど、いやぁ 驚いたよ。
今日になって、部屋にある物引き取ってくれって実家に連絡取ったんだけどね。」

「そうですか。」



どこか世間話の様に話をしながら
階段を上り終えた2人がやって来たのは204号室の前。

昨日までのこの部屋の住人は、ゾロの捜索人でありナミが居合わせた被害者であるリン。
その部屋の前に立った時、2人は反射的に顔を合わせた。



「け、刑事さん、これは・・・。」
「無理矢理こじ開けられてますね。」



見ると出入口のドアノブが壊されているだけでなく
ドアも少しだけ開いた状態になっている。



「・・・。」



それを見たシャンクスは管理人を少し遠ざけると
ジャケットへ手を掛け、内側から相棒とも言える銃を取り出す。



「・・・!?」



そして 勢い良くドアを開け部屋の中へと銃を向けたのだが
そこには誰もいないだけでなく、あちこちが荒らされた部屋になっていた。



「ヤラれたか・・・。」



舌打ちする様に言いながら取り出した銃をジャケットへ仕舞うと
シャンクスはそのまま部屋の中へと入っていく。



「け、刑事さん・・・!」



その様子を見ていた管理人も部屋を覗き込んできたのだが
部屋のあまりの荒らされように驚くしかなかった。



「昨夜の刑事が来た時は、こうなってなかったんですよね?」
「は、はい。」
「って事は午前中か・・・。」



それから次にシャンクスが取り出したのは携帯電話。



「おう、俺だ。害者の家が荒らされてる。悪ぃがちょっと来てくれ。
あぁ・・・あぁ、そうだ。まぁ 何も出ねェと思うがな。
それと 害者の実家に何人か張り込ませてくれ。
こっちの様に夜にでも進入される恐れがある。
あぁ・・・あぁ、場所は・・・。」



彼が電話をかけた相手は、部下でありこの件を担当しているエース。




「どうやらお宝の話はガセじゃなさそうだな・・・。」



今いるアパートの場所を話し電話を終えたシャンクスは
携帯を手にしたまま、改めて部屋を見渡すのだった。





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