ルフィは濡れた顔を手で拭うと、キョロキョロと辺りを見回して「滝の所に行きたい」と訴えた。
「馬鹿ね。あそこまでは水が深いのよ。アンタがどうやっていくの」
「お前らに掴まって行く」
「何でそこで人任せなのよ!」
「あ!そうだ!船に浮き輪があったろ!アレ取ってくる!」
言うが早いがバシャバシャと丘に上がっていき、素っ裸のまま船へと走っていった。
「…つくづく天然な奴だな」
「……」
流石にルフィが水から上がるときに目をそらしたナミだったが、ゾロと2人っきりになると何だか落ち着かない気分になった。
夜は急に静けさを取り戻したようで、川の音が妙に耳につく。
自分が裸で向こうが着衣のままなのが、尚一層の居心地悪さを感じさせるのだろう。
胸を隠すようにして、静かに光の届かない場所に移動しようとするナミに、ゾロはちらりと一瞥をくれた。
「そんなに警戒しなくても、何もしねェよ」
「……」
「ルフィが俺までまとめて『犯らない』って約束したろ?」
……それルフィがそう言ったからやらないって事?と聞こうとしたけど、よけいな藪はつつかないことにした。

「あのさ」
「ああ?」
「『悪魔の実』の能力者って、海に嫌われるのよね?」
「そんな話だな」
「真水なら平気なのかしら」
「どうだろな。少なくともさっきは元気だったぞ」
「そうよね」
「風呂にも普通に入れるみたいだぞ」
「そうなんだ」
そこまで話し終わると、また沈黙が訪れる。
ふいにゾロがばしゃりと動くと、着ていたシャツを脱ぎだした。
「な、何してるの?」
「あぁん?濡れて気持ち悪りぃんだよ」
ぶっきらぼうに言うと、陸に向かって濡れたシャツを放り投げた。そこらには、それだけは脱ぎ捨てたらしい靴と刀が転がっている。
ナミが見てる間に、ゾロは川の中でズボンも脱ぐとそれも放り投げた。
「ちょっと!アンタまで泳ぐ気?」
「いいだろ別に」
「少しは気を使うって事を知らないの?」
「もう入っちまったんだから、いいだろ。それより…」
「なによ」
「腕はどうかしたのか?」
「腕?」
忘れていた。
自分の左肩に巻かれた包帯の上から、手で押さえる。
「別に…ちょっと怪我しただけよ。感染しないように保護してるだけ」
「ふーん…気ぃつけろよ。化膿すると熱もつぞ」
「大丈夫よ」
胸がチクリとした。
念のため巻いていて良かったという気持ちと、心配されてしまったという気まずさが、小さな波紋のように広がった。
「ありがとう」
「ん?あぁ」
ゾロが軽く肩をすくめる。そんな事は気にする必要もないだろうというぐらいに、普通の態度だった。
この男は自分にどういう事も求めない。最初からそうだった。
男が女にする要求もしないし、媚びることも阻害する事もしない。
ただ自分がそこにいることを、黙って受け入れている。
それは少しくすぐったいような安心を、彼女に与えた。
「ねえ。競争しない?滝の方まで」
「競争?」
「そうよ。私、得意なのよ。泳ぐの」
「お前、俺に勝つつもりか?」
「アンタは私に勝つつもりなの?」
ゾロがむっとしたような顔をする。勝負事になると子供のようにむきになる。
「いいぜ。あの音がする方に向かって泳げばいいんだろ?」
「そうよ。私に勝てたら…そうね、次の港で1杯おごってあげるわ」
「1杯で足りるかよ。1瓶だ」
「いいわよ!その代わり私が勝ったら、貸し1つよ。1日文句を言わずに付き合うことね!」
「…ちょっと待て。酒1瓶とそれじゃ釣り合わないだろ」
「ガタガタ言わない。それじゃスタート!」
「お、おい!」
ナミは水を跳ねさせるとフライングで泳ぎだした。後ろでゾロの悪態が聞こえたような気がしたが、気にしない事にする。
後発のゾロだったが、力強いストロークでナミの後を追ってくる。意外なまでの早さにナミも本気になって泳ぎ出した。
2人があげる水しぶきの音が、僅かな月の光の中でキラキラと跳ねあがる。
水面に顔をあげる度に、隣で並んで泳いでいるゾロと時折目があう。
ナミは、夢中になって泳いだ。ただの純粋な勝負に全力で打ち込んでいた。
滝の回りにある石に彼女が手をついたのとほぼ同時期に、鈍い音が水の中に響いてきた。
「ゾロ?」
ナミが水から顔をあげると、彼女のすぐ隣で男のうめき声が聞こえる。
「どうしたの?」
「……っ…、なんでこんな所に岩があるんだよ……」
「岩?ああ、言ってなかったっけ。ここら辺は岩場だらけよ」
「そう言うことは最初で言え!おぉイッてぇ……畜生。思いっきり頭打ったぜ」
「なに?アンタあの速度で岩に突進したの?」
ナミはぷーっと吹き出すと、ゲラゲラと笑い出した。
「アハハハハハ!!バカねーーー!頭割れなかった?」
「テメェふざけるな!それより滝は何処だ?」
「滝はあっちよ。それより勝負は私の勝ちね」
「なんだと!まだどっちも滝についてないだろ!」
「『滝の方まで』って言ったもん。勝負はここで終わり。タッチは私が早かったから私の勝ち」
「阿呆言え!俺が着く方が早かったろ!」
「アンタはタッチしたんじゃないもん!激突したんでしょ」
「手がつくのと頭がぶつかるのなら俺の方が早いだろ!」
「ダメです。届けられません」
「お前が勝手にルール作るな!あぁ、そうかよ!それじゃあ滝まで行ったろうじゃねェか!」
暗闇の中でゾロが岩づたいに移動しようとしたので、隣のナミと思い切りぶつかった。
岩に軽く手をかけていたナミは、その手をはずしてしまいゴボリと水に沈みこんだ。
「!」
ふいの事なので、水中で慌てて水をかく。その手を強い力で引っ張り上げられた。
「ぶはっ!」
「おい、大丈夫か?」
ナミは咳き込みながら、自分を引っ張った男にしがみつき------互いの胸が触れ合ったので慌てて離れた。
「…わるい」
間の悪い沈黙。
ゾロは絶句した後で、ぼそりと呟いた。その声に僅かに動揺の色を感じて、ナミは少し落ち着きを取り戻した。
「……いいわよ。事故だったから」
「………」
「……5千ベリーね」
「金をとんのかよ!」
「なに言ってるのよ!こんなにナイスバディーな女の子の胸に触ったんだから、それぐらい安いもんでしょ?」
「バカ野郎!商売女じゃあるまいし、んなので金を取るんじゃねぇ!!」
半分マジで半分はぐらかしたくてそう言ったのは、しがみついた胸のたくましさがまだ肌に残っているからだった。ゾロはそれに気づいたのだろうか。気づいてもそれと言わずに、悪態に付き合っているのだろうか。
ナミにはわからない。ただ僅かにとった距離を、ゾロはそれ以上近づいてはこなかった。



おぉーーい。どこだーーー!



遠くからルフィの声だけが聞こえてきた。
2人、話すのを止めて闇の中で目を合わせる。
「ここだーーー!何処にいるんだーー?」





わかんねぇーー!





声は遠くにいるようにも近くにいるようにも聞こえる。


「ルフィーーー!ここよーー!滝の音が聞こえるでしょーーー?」
ナミが呼ぶと、おぉーとか何とか声があがった。
「大丈夫かしら…」
「なんとかなるだろ」
そうゾロが呟いた時に、彼らの右上方の岩場からバサバサと鳥が飛び出してきた。
「きゃっ!」
「落ち着けよ。ルフィの声に驚いたんだろ」
「別にそんなに驚いた訳じゃ…」
また声があがった。もっともルフィの声ではない。
ケェーッ。ケェーッ。という猿のような鳴き声が夜の森に響き渡った。
それに答えるように、仲間らしき複数の声が警戒するようにあがる。
どうやらルフィの騒々しい物音は、眠っていた森を起こしてしまったらしい。
「襲ってこないかしら」
「こっちから寝ぐらを荒らさない限り、わざわざ出てはこないだろ」
その時、何かがもの凄い勢いで飛び出してきて、1回転しながら川に飛び込んだ。
水しぶきが音高く上がり、ナミ達の所まで飛んでくる。
「うぎゃあうぎゃあ!おぼれる〜〜!!おぼげほごぼ」
水音だけは激しく上げながら、水面でルフィが暴れていた。
「……アイツには学習能力がねェのか?」
「ないのよ」
「ないのか」
「そうよ。いい加減助けてあげないと今度こそ溺れるわよ」
「しょうがねェな。おいルフィ!浮き輪はどうした?」
「げほ!ごぼ!ここにあ、ごぼごぼ。。。」
「あのバカ」
浮き輪らしき物だけがぷかりと浮かんだのに、肝心の本人が沈み込みそうになったので、ゾロが泳いでいって引き上げた。
「何をしているんだ、テメェは」
「わっひゃっひゃっひゃ!うおーー!気持ちいいなーー!」
ゾロが引っ張り上げて浮き輪に掴まらせてやると、ルフィは溺れたのを忘れてしまったようで、ケタケタと笑いながら水を撥ねさせた。
「んなことやってると、また溺れるぞ」
ルフィは不必要に足をバッタンバッタン動かしながら、ナミの方へと近づいてきた。
「おー!ナミ!いいな!水浴びなんて久々だーー!!」
「…そう。良かったわね」
「滝は何処だ?滝は!」
「この岩を越えた所よ」
「おおう!行く行く!」
ルフィとゾロを案内するように、ナミが岩と岩を抜けていく。
どうもルフィは泳ぐこと自体にセンスがないらしく、浮き輪に掴まっているにも関わらず、何度もひっくり返った。
その度に、前を行くナミや後ろにつくゾロが手を差し伸べて引き上げてやる。
ルフィはちっとも懲りずに、滝を見て大喜びした。
「おおーー!!スゲーー!スゲーー!ゾロ、修行だぞ修行!」
「…何がだ」
「修行だよ!打たれるだろ!滝に!」
そう言うと、バシャバシャと滝に向かって泳ぎだした。
「アンタ何するつもり?」
「だから、こうやって滝にうた…ごほ。。」
アッという間に滝に飲み込まれて、水の中に消えた。
「…阿呆すぎて、何も言えねェよ…」
「……同感」
先に浮き輪がプカプカと浮かび、後から激しくもがきながら自力で浮かび上がってきた。快挙だ。
「ゲプッ!ゲプッ!ウキワッ!ウキワッ!」
「ほらほら、もう少しよ頑張って」
「鬼トレーナーだな」
「そう言うんなら、アンタが助けなさいよ」
ルフィは腕をにゅいっと伸ばすと、浮き輪を捕まえて何とかたぐり寄せる。
「うはーー!ヒャーー!死ぬかと思った」
そう言いながらも、ゲラゲラ笑っている所を見ると心底楽しいらしい。例え死にかけてもだ。
ばた足をしながら、ゾロとナミの所まで泳いできた。
「ちょっとアンタあんまりうるさくしないでよね」
「なんでだ?」
「森の獣が起きるでしょう」
「ケモノ?」


ウオッホッホッホッホ


           
ギャー。  ギャー。



また別の声があがる。
「おお。ホントだ。怒ってるのか」
「そうよ。襲ってきたらどうするの」
「やり返す!」
「馬鹿」



カッカカカカカカカカカカと何か木を叩く音が響く。
キィーーッと言う、鳥の鋭い声が近くから届いてくる。


                   ケーッケーッ

ラッラッラッラッラッラッ



ックィーーーー!   ックィーーーー!        



カルルルルル    カルルルルル





声がまた声を呼び、様々な種類の声が森を反響していく。
静かな島に、これだけの種類の動物がいたのかと驚くぐらいだった。
「…なんだか怖い」
ナミは肩を抱くように岩に身を寄せた。
「そうか?」
「だって…」
「面白いじゃねぇか。歌ってるみたいだ」
ルフィはどこまでも暢気だ。
「ケモノの歌だ」

鳴き声は遠く、近く、響き合う。
何匹もの声が重なり合い、それにまた別の鳴き声が重なる。
ある声は高く囀り、ある声は太く長く響く。
「アイツらにしたら、俺らも獣だろうな」
ゾロが、水に揺られながら呟いた。
「俺らもケモノか」
ルフィが面白そうに、それに答える。
「そうだろ?」
「そうだな。よし。俺も吠えるぞ。ケモノらしく」
言うが早いか、近場の岩へとバシャバシャと近づいていき、手をかけてよっこらしょと登り始めた。
僅かな月明かりが、岩を登るルフィの背中を照らす。躍動的に動く身体は本当に獣のようで、ナミは何故か眼をそらせなかった。
ルフィが岩の上に腰掛けるまで、森の住人達の声は途切れる事なく聞こえてくる。
しばらくその声に耳をすませると、息を大きく吸い込み、すうっと天空の月を見上げた。空に向かって喉を垂直に伸ばす。






うおーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぅ






それが目の前のルフィの声だと思えないぐらい、その遠吠えは深く、長く、空に響き渡った。
人間というより、もっと原始に近い声。鼓膜を震わせ、腹の奥にまで届くような雄叫び。
叫ぶそばから、森の声は消えていき、シンと静まりかえっていく。
ルフィが吠えるのを止めてもしばらくその静けさは続いた。
しばらく森は静かだったが、呼びかけるように吠え声があがる。
それに答えるようにルフィが吠え返す。またそれに返すように別の獣の声があがる。さらに、また別の声が。

知らない声を聞いて警戒を強めているだけだ。とナミには判っていた。この迷惑な人間に怒っているだけだと。
なのに何故だろう。今はまるで歌い合っているように聞こえる。
響き合う声は、夜空に高く高く上がっていく。
ナミは月を見上げた。眉のような細い月だ。その月まで、重なり合う獣達の声は届いている。
「なんかルフィの声じゃないみたい…」
特に呼びかけた訳ではなかったが、岩の上でルフィがくるりと振り返った。
「そうか?俺が出してるんだから俺の声だろ」
「うん…そうだけどさ」
「お前もやるか」
「…いいわよ」
「なんで?気持ちいいぞ」
「いいの」
そう言うと、水中で岩を蹴って水面に体を泳がせる。身体を滑る水の抵抗に身を任せながら仰向けに浮かぶと、彼女の真上に月が浮かんでいた。
それをぼんやりと、ただ見つめる。
「どうした」
声がかかった方に顔を向けると、少し離れた場所でゾロがこっちを見ている。
その左の耳に飾られているピアスが、小さな光を放つ。
「別に…」
そう言おうとして、口ごもる。



なんだろう。
この感覚はなんだろう。
感動と呼ぶような、大げさなものじゃなくて。
ただ気持ちいいだけで終わるような事じゃなくて。
感じているのは、穏やかな解放。
人間よりも、はるかな昔。
ただこうやって、水の中を泳いで生きるだけで良かった魚の記憶。
本能の力だけあれば、動いていける力。
頭の中が空っぽになっていって、シンプルになっていく。



シンプルになっていく。



「おい」
ゾロがまた呼びかけてくる。
「なに」
「…胸が浮いてるぞ」
「……」

なーに見てるんだか。

ナミはゾロに向かって足で水を跳ね上げると、そのまま深く水中に潜った。
水中で反転してこっそり近づくと、ゾロの腕を掴んで思いっきり下に引っ張った。
「おわッ!!」
意外にあっさりと男は沈んできて、水中でごぼごぼと言っている。
吹き出したいのをこらえて、水中で軽くもみ合う。
男を足で蹴飛ばして、その反動で水中へと顔を出すと、息をつぐ暇もなく腰と肩を掴まれた。
「キャッ!」
軽いじゃれ合いか、半分マジな掴み合いなのかは微妙な所で、水中でもつれあって絡み合う。
「あぶないあぶない!溺れるわよこれ以上は!」
「先にやったのは、テメェだろ!」
「アッハッハッハ!また胸さわったスケベ!」
「うるせぇ!」
岩場でそれを見ていたルフィが「俺もー!」と叫ぶ。
その言葉と同時にダイビングしてきた男ともども、3人でもつれ合って深く沈んだ。
「ギャー!バカ!危ないわよ!ぶつかったらどうすんのよ!」
「おわーー!溺れる!」
「もう溺れてろ!テメェは!」
自分の首にしがみついてきたルフィの重さに、ナミも何度も沈んで水を飲んだ。
片側でゾロが掴んでなければ、きっと溺れていただろう。
「ちょっとルフィ。アンタ泳げないんだから無茶しないで」
「平気だ。溺れてもオマエらが助けてくれるじゃん」
「人を頼るな!」
ぼかりとルフィを殴って、あっと気づいた。左腕に巻いていた包帯が、なくなっている。
暴れているうちに、いつのまにか取れてしまったのだろう。気づかなかった。
「ナミ?」
「ううん。なんでもない」
「包帯取れたのか…?怪我は」
「大丈夫。平気みたい」
なるたけ明るく言うと、彼らに向かって水を跳ね上げた。
大丈夫。この暗闇が、今は隠してくれる。
今だけは。きっと今だけは。



ばたつくルフィの腕をとって、水中へといざなう。
お互いのシルエットがわかるだけで顔なんか見えないのに、笑っているのがわかるのは何故だろう。
水の中はどんな動きも自由自在で、ナミはくるりと身体を回転させてみせる。1回転、2回転。
鮫のように泳いでくるゾロを、ひらりと躱してその背中にしがみつく。
それをものともせずに、ぐんぐん進む強い力。片方の手ではルフィを引っ張っているのに。
水底から見上げれば、月の光がゆらゆらと水面に揺れている。
幻のように。








夜中までさんざん騒いで、身体が冷え切る前にそろそろ上がる話が出た。
すっかり小さくなったカンテラの明かりは心細げで、遊び疲れて帰ってきた彼らを待ちこがれていた。
「ナミ、どうした。上がらないのか?」
先に川辺についたルフィが声をかけ、そのすぐ後ろにいたゾロも振り返る。


陸に上がれば、ただの人間。


「いいわよ。先に上がって」
「お前、俺達より水に入ってるの長いだろ。いいから先にあがれよ」
そう。確かにいいかげん寒くなっている。身体の芯まで冷え切っているようだ。
「大丈夫よ。いいからさっさと上がって」
水中で左腕をそっと撫でる。僅かに触りの違う刺青の後。
「いいさ。ルフィ。さっさと上がれ」
ゾロがルフィを急き立て、自分も岸に手をかけながらナミをもう一度振り返った。
「俺らは少し離れた所で着替えるからな。カンテラはおいて…」
ゾロは話し終えることなく、ふざけたルフィに蹴り落とされる。
またギャーギャーとやり始めた男共を、ナミが怒鳴りつけた。
「さっさと上がれ!!」

やっとで岸にはい上がり消えた男達の背中に、ため息をつく。
何か見るのをはばかれるのを見てしまった気がしたが、忘れる事にしよう。
まったく子供みたいな奴らだ。


ちゃぽんと、水を指ではじく。
一人きりになると、川は恐ろしく静かだった。
もう獣達の声も聞こえない。
「きっと、呆れて寝ちゃったのね…」

森に眠る獣達は、今日の夜を覚えているだろうか。
迷惑な来訪者によって起こされた夜なんて、迷惑以外のなにものでもないだろうけど。
記憶の淵で、くるくると回る夢の魚。
せめてその中でだけは、いつまでも一緒に並んで、泳ぎ続けていてね。








END

 

 

<管理人のつぶやき>
まだ3人だけの頃。ルフィ、ゾロ、ナミが、裸になって大はしゃぎ!豊かな自然と暗闇が与えてくれた夢のような楽しい時間です。
水しぶきの音や獣の鳴き声、3人の笑い声が聞こえてくるようですね。
個人的にはゾロとナミの水泳競争の後の触れ合い(キャー・(>▽<))シーンに萌えましたvでも、時折混ざるナミの複雑な心中が切ないっす。ルフィの叫びシーンには、厳粛な気持ちにもなったり・・・。

CARRY ON」様のナミ誕企画『good girl』で出されましたフリーSSです!こんなすごいものをフリーにしてくださったrokiさんに大感謝であります♪本当にありがとうございました!!

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