ナミちゃんだって、花咲くお年頃なんですってば。
瞬斎 様
「ねぇ、ゾロ。これ、ウソップが描いたのよ。あたしだって。似てる?」
「ルフィがね、肉やる、って。おかげでお腹が一杯だわ」
「サンジくんったら、飲み過ぎて目を回してたわよ」
「チョッパーったら、お肌のためにビタミン剤だって。一番実用的だわ」
「ロビンはこの本をくれたの。昔の神話が書いてあるんだって」
「ちょっと、聞いてるの!?」
ゾロは、無表情でこっちを見て、「あぁ」とか「おう」とか言うだけ。見張り台で月を仰いで酒を喉に流し込むばかり。
いっつも、こう!!何かといえば、ルフィの肩を持つくせに。たまにはあたしの相手もしてよ。
いっつも、面倒臭そうな顔をするだけで、ちっともあたしの話なんか聞いてくれないんだから。抗議したって、「八つ当たりすんな」とか、「シワ、増えるぞ」とか言って、聞く耳なし。
でも、今日くらいは相手してくれてもいいと思うのよ。
だって、今日は、誕生日なんだから。
「ねぇってば」
「だから、聞いてるさ。よかったな」
お座成りなことを言ってゾロは夜風に吹かれてる。
「だから、あんたも。プレゼント」
「そんなもん、ねぇ。金もねぇ」
そんなの、知ってるわよ。本当はプレゼントなんていいから、借金返済してもらいたいわ。でも、今日はサービス。そんな無粋なこと言わないから、ね?
「気持ち、ないわけ?」
「お前、うるさい」
うるさくさせているのは、どこの誰なのよ!!
少しくらい、まともに相手してよ。あたしだって、これでも花も恥らう乙女なんだから。
「ねぇ、おめでとう、とかさ、そんなんでいいから」
「おめでとう」
「そんな、気の無い言い方なら、いらない」
「そうか」
この、朴念仁め!!でも、ここは我慢だわ。
「もっと、甘く言えない訳?目を見てさぁ」
「クソコックにでも頼め。あいつなら頼まれなくてもやるだろうけどよ」
そう来るか。この分からず屋。
「あんたに、言ってもらいたいの!」
「そりゃぁ、無理だな。もう寝ろよ。うるせぇから、お前」
うるさいですってぇ!!失礼もここまで来れば芸術だわ。もういい。頭に来た。
こんな分からず屋、もう知らない。こっちから御免だわ。
ちょっとでも甘い事考えていた自分に腹が立つわ。
「あっそう、うるさくて悪かったわね!!だったら、静かな女にでも乗り換えればいいじゃない!!冗談じゃないわ。こっちだって、あんたみたいなトーヘンボク御免よ。あんたなんかより、ずっと良い男みつけてやるんだから。そうね、サンジくんだったら、あたしの話だって聞いてくれるし、ルフィだって、あたしのこともっとかまってくれるもの。男はあんただけじゃないんだからね!!」
くっそう、涙が出て来そうだわ。
なのに、このマリモ男ときたら。平然として、表情一つ崩さないじゃない。
頭なんかポリポリ掻いてるんじゃないわよ。
「そりゃ、だめだ」
「何であんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ。いっつも、いっつも、あたしのこと鼻にもかけないくせに。いいわ、100歩譲って、普段は良いとしてよ。今日くらい、相手してくれてもいいじゃない!!寝たら自分の女だなんて思わないでよね!!」
一発、右の拳で緑色の頭をぶん殴った。
「いってぇな、何すんだ」
良い気味よ。こっちの手も痛いけど。あたしの怒りはそんなの通り越してるんだから。
「もう、ほんとに、ほんっとに、知らないんだから!!」
「とにかく、ダメなものはダメだ」
「だから、何でよ!!」
「お前が、俺の女だから」
はぁ?何言ってくれてんのよ、今更。
「ちょっと、な、何するのよ!?」
ゾロの腕があっという間に腰に回ったかと思ったら、次の瞬間には身体はゾロの胸の中。必死で逃れようとするけれど、この男の馬鹿力の前では暖簾に腕押し。
「離しなさいよ!!」
「相手、して欲しいんだろ?」
「もういい!!」
「自分で言ったくせに」
「あんたは、あたしのことなんか、どうだっていいんでしょう!?」
「俺は、お前がそうやって喚いてるのが好いんだよ」
・・・・・・そうなの?やだ、身体から力が抜けちゃうじゃない。
ゾロの顔を上目使いで覗き込んだら、全然いつもと変わらない顔しているゾロと目が合った。あ、でも少しだけ、鼻が赤い気がする。
「あたしのこと、からかって遊んでるわけね?」
「まぁ、そういうことだな」
「最低」
「乗り換えるか?」
もう、この意地悪。首、横に振るしかないじゃないの。
あーあ、ゾロと2人だと、どうしてコイツのペースになっちゃうんだろう。
でも、今日はそれだけじゃ、悔しいわ。
「ねぇ、もし、あたしが本気で乗り換えるって言ったら、どうする?」
「とりあえず、相手をぶん殴りに行って、二度と面を拝めないようにするかな」
コイツらしい答えだな、と思うと喜んだものか、呆れたものか。でも、これって「アイ」が深いってことかしら?
「ねぇ、あたし、誕生日、なのよ、今日」
「知ってる」
誕生日にこだわるわけじゃないのよ。本当はなんだって良いんだ。理由はさ。
「心に沁みる、何か、欲しいんだけど。今日だけでいいから、ね?」
ゾロは少し困った顔でしばらく考えてから、あたしの左耳に口を寄せた。
「・・・・・・」
・・・・・・どうしよう、心臓がダンスでも踊りだしてるみたい。顔が熱湯みたいに火照りだして、クラクラする。
「これでいいか?」
「うん、いい」
ゾロも顔が赤いじゃない。なのに、平静を装おうとしているのは、なんだか微笑ましい。
「じゃぁ、3倍にして返せよ」
反射的に頷いてから、しまった!と思ったら、もう遅い。まだ顔は赤いけど、してやったり、とゾロが笑った。
あたしの台詞、取るんじゃないわよ。バカ。
ゾロがさっきまで飲んでいたお酒を手にして、振って見せた。
「じゃぁ、乾杯ってことで」
グラス無いのにどうやって乾杯するのよ?・・・・・・あ、グラスは、あるわよね。
じゃぁ、改めて。
誕生日、おめでとう、あたし。
完結
<管理人のつぶやき>
ナミの「みんなからこんだけプレゼントしてもらったの!」攻撃も軽くいなすゾロ・・・。ナミはプンスカ怒りますが、ゾロの「俺は、お前がそうやって喚いてるのが好いんだよ」のセリフにコロッと参ってしまう(笑)。うう、さすが花咲くお年頃のナミちゃん。可愛いよーん♪
R18esistance様(閉鎖されました)でナミ誕生日SSとして出されたDLフリー小説です!
メルで「せっかくのナミ誕ですからぜひ書いてみようよ〜。」とそそのかしたら、やってくれました、瞬斎さん!(笑)
素敵なお話をどうもありがとうございました〜vvv また書いてね(オイ)。