Was Bone .
雨月 凍夜 様
「 おい、ナミ。」
「 ん・・何?」
時は真夜中。
ナミはゾロによって起こされた。
こんな時間にゾロが起きていること事態が珍しい。
この船のクルーが全員寝静まったころに
ゾロはナミの部屋へとやってきた。
そんなゾロにナミは文句を言いながらも、
今日一日のことを振り返ったりしながら、酒を飲み交わした。
酒豪が2人もそろうとさすがに酒を飲み交わすペースもあがってくる。
1時間がたつというころ、ゾロはいきなり『 寝る 』と言い出した。
しかもナミの部屋で、だ。
ナミは不思議に思った。
いつもなら酒を一通り飲み交わした後は、ゾロは男部屋へ戻るか
ベットへと傾れ込んで行為を始めるかのどちらかだったから。
( たまにはこういう日もあるのかしら・・・?)
そう思いながらナミはその時はおとなしくゾロに従い、2人で寝ることにし た。
しかし真夜中――――
ゾロによって起こされることとなった。
真夜中にゾロが起きるぐらいだ、もしかしたら敵襲が・・・
とも思ったナミだが、どうやらそうではないらしい。
その証拠にクルー達のおきている気配がしない。
「 どうしたの?」
「 ・・・・。」
「 ゾロ?ねぇ、どうしたの?」
『 どうしたのか 』とナミが何度訊ねてもゾロは何の反応もしない。
ただナミの顔を、いや、瞳を見つめているだけだった。
そんなゾロにナミはもどかしさを感じる。
「 もう!なんでもないなら私寝るからね!?」
そう言ってまた毛布をかぶって寝ようとするナミを
ゾロはその手をつかんで阻止した。
「 ・・・なんなの?」
「 お前・・・誕生日だろ?」
「 えっ・・・?」
―――誕生日―――
めまぐるしく過ぎていく日々によって
そんなことなど吹き飛ばされていた。
『 誕生日 』そんな自分でさえも忘れていたことを
ゾロは覚えていてくれたのだろうか・・・・?
「 そっか・・。明日は7月3日・・。 私の誕生日だ・・・・。」
「 はぁ〜。やっと思い出しやがったか。」
「 ゾロ覚えててくれたの?」
「 バ、バカ野郎!!別に覚えてたわけじゃねぇよ!!」
「 ふぅ〜ん?」
「 あいつ等が、明日はナミの誕生日だって騒いでやがったから・・・。」
「 でも一応は気にかけてくれてたんだ?」
「 まぁ、一応はな・・・。」
「 で?」
「 あ?」
「 何で起こしたわけ?しかも真夜中に。」
「 あっ・・いや。」
「 まさかそれだけを言うために、とかじゃないわよね。 それだけなら明日の朝言えばすむことだし。」
「 ぐっ・・。」
「 ねぇ、どうして?」
「 お前に・・・。」
「 私に?」
「 一番に言いたかったんだよ。」
「 何を?」
「 ダ―――ッ!!!それぐらい気付け!! この鈍女が!!」
「 なっ!!あんたに言われたくないわよ!!この鈍男!!」
「 あんだと!?」
「 なによ!?」
さっきまでの嬉しさはどこへ行ってしまったのか・・・。
しかしそんな言い合いをしている間にも、刻一刻と秒針は
時を刻み続けている――――
―――そしてその秒針が11時59分をさした
「 あっ!」
「 なによ!?」
「 こんな言い合いしてる場合じゃねぇ!!」
「 はぁ!?」
「 ナミ!!」
真剣みを帯びたゾロの声にナミの体が竦む。
肩をつかまれ真正面から瞳をとらえられる。
「 な、なに・・・」
「 ナミ・・」
そしてそのままゾロの硬い胸板に顔を押し付けられるようにして
抱きしめられる・・・・。
分けがわからないナミはゾロにされるままになる。
顔を持ち上げられ、ゾロの顔がゆっくりと近づいてくる・・・。
( ああ、キスされるんだな・・・)
そんなことをナミが思ったと同時に、ゾロとナミの唇が重なった―――
しかし、それは触れるだけですぐに離れてしまう。
「 ゾロ・・・?」
「 ―――お前が生まれてきたことに感謝してる。」
「 ゾ、ロ・・・?」
「 ―――お前と会えなかったら、お前が生まれてきてなかったら、
俺はどうなってたんだろうって事を考える・・。」
「 ・・・・・。」
「 きっと俺は、ずっと一人だっただろうな。
ルフィ達にも会わずにずっと、一人で暗い闇を背追いながら
生きていたんだと思う。」
「 ・・・・ゾロ。」
「 お前に会って俺は変われたんだ。それを不快だとは思ってない。
むしろ今の状況を楽しんでんだ。
だから―――お前が生まれてきたことに感謝している。」
「 ・・ゾロ・・・・。」
「 ん?」
いつの間にかナミの両の目には涙がたまっていた。
―――色を持たないその液体が、頬をつたう
後から後からその液体は流れ、とどまる事を知らないかのようだった。
「 ナ、ナミ・・・?!」
いきなり泣き出してしまったナミに、ゾロは惑った。
何か泣くようなことを言ってしまったのだろうか・・・・。 おそるおそるその涙を親指でぬぐい、もう片方の手で背中をさすってやる。 しかしナミが泣き止む様子はない。
「 ・・・・どうした?」
「 ゾロが・・・。」
「 俺、なんかしたか・・・?」
「 ううん。ゾロが、私が生まれてきたことに感謝するって・・・」
「 ・・ああ。感謝してる。いくらしても、し足りないぐらいだ。」
「 それが、嬉しくて・・・。」
「 ・・・・・。」
「 誰にもそんな事いわれたことなかったし、ゾロが言ってくれて
すごく・・嬉しいの・・・。」
「 そうか。」
「 うん。」
そう言ってゾロはまたナミの体を抱きしめた。
今度は少し腕の力を強くして、強く、強く抱きしめる。
ナミが壊れてしまわないように気を使いながら・・・。
ナミの手がゾロの背に回りギュッと抱き返してくる。
そんなナミが愛しくて、ゾロはその唇に激しく口付けた――――
「 んっ・・は、ぁ・・・。」
「 ・・・・。」
「 ゾ、ロ・・はっ・・苦し・・。」
「 あっ、悪りぃ。」
そう言ってゾロはナミを解放する。
ふと時計を見ると、秒針は0時2分をさしていた。
「 いくつになった?」
「 19かな。」
「 そっか・・・。」
「 ゾロ?」
「 誕生日おめでとう、ナミ。」
「 ・・・ありがとう、ゾロ。」
そう言って軽く唇をあわせる。
『 チュッ 』と軽く音がたち、
その音を聞いたゾロの頬が赤く染まる。
そのゾロの顔を見たナミもつられて頬を赤く染める。
「 ・・・なに赤くなってんのよ。」
「 ・・・うるせぇ。」
「 相変わらず慣れないのね。」
「 しょうがねぇだろうが!」
ゾロはそう言うと、横になってしまった。
その姿はまるで照れ隠しのようで・・その様子を見ていたナミは
知らず知らずのうちに口元が緩む。
「 何笑ってやがる。」
「 別に。ただこうやって誕生日を迎えるのも悪くないなって。」
「 そうかよ。」
「 うん。そうなの。」
「 ・・・・良かったな。」
「 うん。」
そう言った後、ナミもゾロの隣へと横になる。
そんなナミをゾロは自分のほうへと引き寄せた。
「 ほら、もう寝ようぜ。このまま寝不足で起きたら
絶対明日あのコックに何か言いわれるぜ。」
「 フフ・・そうね。」
そして2人は再び眠りについた。
―――1人は大切な者をその胸に抱きながら
―――もう1人は大切な者の胸に抱かれながら
END
<管理人のつぶやき>
なんだか様子がいつもと違うと思ったら、そんなこと考えてたんだ、ゾロ。
誰よりも早く、一番に大切な言葉を伝えたいというゾロの気持ちが胸を打ちます。
あえて「おめでとう」とは言わず、「感謝している」と言うところが、ゾロらしい。
でも、これ、実に深い言葉ですね。こんな風に言われたら、すごくうれしいと思います。また、ラストのフレーズが感動的でした!
今までもたくさんの作品をくださった雨月凍夜さんが、投稿してくださいました!
雨月さん、素敵な作品をどうもありがとうございました!!