カウンタ2222を踏んでくださったベルさんへ捧げます。







その島に到着した時から、雨は降り続いていた。
その日、ナミとゾロは買物のため、少し内陸の町へと向かうことになった。
沿岸の町は、品不足でロクなものが置いてなかったから。
内陸までは乗合バスで行く。約30分ほどで着くらしい。
ナミは少し浮かれていた。





別の女の名前





船には嫌というほど乗ってきた彼女だったが、自動車やバスなどの陸上の乗り物にはあまり縁が無かったので。
彼女は自分の体調のことも考えずに嬉々として乗り込んだ。そこまではいい。
ナミは自分で乗り物には強い性質だと思っていた。事実、船酔いなんてしたことが無かったのだが。
しかし、バス独特のエンジンの振動、ガソリンの匂い、客でぎゅうぎゅう詰めの車内、異常に高い湿度、そして暑さなどに晒されて、気分が悪くなるのは時間の問題だった。
あとその日、ナミは2日目で、お腹に鈍い痛みを抱えていたことも、彼女がすぐに車酔いをした原因だったに違いない。
額に冷や汗が浮かんできた。背中にも嫌な汗をかく。

「おい、大丈夫か。」

ゾロがそんなナミに気づいて声をかけた。
ナミは少し顔を上げる。目の前にゾロの顎が見える。あまりに近すぎてボヤけるくらいだ。
ナミとゾロは向かい合って立っていたのだが、非常に込み合った車内なので、背中からの強い圧力で、自然と互いの身体が密着する形となっていた。
自分の目で見ても分かる。自分の胸がゾロの胸に押し当てられるあまり、その形を潰しているのが。
当然、ゾロも気づいているだろうが、お互いそのことには気づかないフリをする。

「大丈夫よ・・・。ちょっと酔っただけ。」

そうは言うものの、ナミの声は弱々しかった。

「しんどいんなら、俺にもたれとけ。」

いつにないゾロの親切な申し出。ゾロがそんな発言をしてしまうほど、ナミは具合が悪そうに見えたのだろう。

本当はしゃがみこみたかった。立っているのが辛い。けれど、そうするだけの場所の余裕が車内には無かった。今、カバンを手離したとしても、それは人と人との間に挟まれて、床に落ちることは無いだろう。

ナミはゾロの申し出にありがたく従うことにした。額をゾロの肩に乗せ、体重をゾロに預けた。

車外では、雨が段々と激しさを増してきた。
気圧が下がっていることには気づいていたが、その感じは内陸に近づくほど強くなっている。
おそらく、行き着く先は豪雨となっているだろう。

ゾロの肩にもたれかかったまま、目を閉じて、雨音を聞く。
その時、ゾロの手が不意に動いた。
ゾロの手はナミの背中に回り、そのまま指先で辿るように真中まで動いたかと思うと、おもむろに服ごと摘み上げるような動作をした。

バチン

という音とともに、ブラのホックが外されたことに気づいた。
ナミは口から心臓が飛び出そうなくらいに驚いた。

「ちょっと!一体何のマネよ?!」

肩に乗せていた顔を上げ、ゾロを睨みつけて、ナミは思わず叫んだ。
それなのに、ゾロはしれっとした顔をしている。

「なんだよ。楽になったろ?」

「はあ?」

確かに、胸を窮屈に締め付けていたものが無くなり、身体が楽にはなっていた。
では、ゾロはそのためにブラのホックを外したというのか?
しかし、普通、女が気分が悪くなったからといって、男はそんな所作をするものなのだろうか?

―――慣れてる。この男はこういう動作に慣れているのだ。以前にも、こういうことを何度となくしてきたに違いない。

ますます気分が悪くなる。

「てめぇが車に酔うなんて、鬼の霍乱もいいとこだな。」

ナミの内心にも気づかず、ゾロはそんなことを言う。
頭にきたが、ナミの気分の悪さはピークに達していて、いつものように言い返すことができなかった。

気圧はぐんぐん下がる。雨は激しくなる一方で、とても窓を開けていられない。
だから、車内の温度と湿度はどんどん上昇する。
不快指数は天を突き抜けるほどの勢いだ。
更に突然、バスが急停車した。
何故止まったのかわからない。
車内の他の乗客がざわざわとささやき合いを始める。
車酔いというのは動いている時よりも、止まっている時の方が症状がひどくなるものだ。

「吐きそう。」

ナミはやっとのことでそれだけ呟いた。
ピクッとゾロの肩が反応した。

「今、ここでは止めてくれ。」

心底嫌そうな声が頭上で響く。
その声も次第に遠くなって、キーンという耳鳴りが聞こえてきた。
貧血の症状だ。
ナミが意識を失う直前に、いびつなマイク音声の車内放送が響いた。

「えー無線連絡がありました。上流のダムが決壊したため、避難勧告が出されました。当バスはこのまま高台にある避難指定場所へ向かいます。」



車内放送が一通り終わった後、突然、目の前のナミの膝から力が抜けたのが分かった。ゾロは慌ててナミの両脇に手を突っ込み、その身体を支えた。下を向いたナミの顔を覗き込むと、完全に意識を失っていた。顔色は青ざめ、眉間に皺を寄せて苦悶の表情をしている。

「おい?ナミ?」

そう呼びかけながら、頬を軽く叩くが、ナミの目が開くことは無かった。
なんでこんな時に意識を失うのかとイライラしたが、そうなってしまったものは仕方が無い。
吐かれるよりかはずっとマシだ。
観念して、そのままナミの右腕を自らの首に回し、左手でナミの腰を支えることにした。
腰に腕を回して、そのあまりの細さに驚く。
と同時にこんなことをしてもいいのかとも。
しかしこの状況ではこれも仕方の無いことなのだと自らを言い聞かせた。

バスはどんどんと高台を目指して走っていく。

避難所はまるで学校の体育館のような場所だった。
着くなりドアが開いた。車外は土砂降りの雨。人々は雨を避けるため、バスを降りると一目散に施設に向かって走っていった。
車内がある程度、人がまばらになったところで、ゾロは今度はナミを背負い、バスの昇降ステップを降りる。
地面に降り立った時に背後に気配を感じて振り向くと、100歳に達するかと見まごうような老婆がステップを危なげに降りているところだった。ゾロは咄嗟に右手を差し伸べてやった。
老婆は無言でゾロの手に捕まり、一段一段慎重にステップを降りた。
降りきったところで、ゾロが手を離そうとしたが、存外強い力で握り返されていて、離すことができない。
仕方がないので、ゾロは老婆と手を繋いだまま、施設の方へと向かう。
背中にはナミ、右手には老婆を引いて歩くという姿を自分で想像し、なにか奇妙な気分に陥った。

(これじゃあ、走れねえな。)

車外の雨に少しでも濡れないよう、走るつもりだったのだが。
そう思った時、老婆は空いているもう片方の手に持っていた傘を器用に開き、無言のまま老婆がゾロとナミに差しかけてくれた。
避難施設まで辿り着いたところで、老婆はようやく手を離してくれた。

「ありがとよ。」

とゾロが礼を言うと、老婆は顔をゾロの方に上げ、幾筋も深く皺の刻まれた顔に笑みを浮かべた。





****





ナミが次に目覚めた時には、床の上で毛布をかぶって横になっていた。
見慣れないドーム状の天井が目に飛び込む。
寝ながら、顔だけで辺りを見渡す。
周りは喧騒でごったがえしていた。
広い体育館のような施設の中で、人々が思い思いの場所を陣取って座り込んでいる。その人数はざっと200人くらいか。
身体を起こすと、額の上からタオルがずり落ちてきた。

「気が付いたか。」

背後からゾロの声。
ナミ達はこの施設の中の壁際にいて、ゾロは壁にもたれて胡座をかいて座っていた。3本の刀は外し、床の上に置かれていた。
振り返って話し掛ける。

「ここ、どこ・・・?」

「避難所。」

「避難・・・。」

ナミは思い出した。意識を失う直前のバスの車内放送。
上流でダムが決壊し、水浸しになる目的地の町を回避して、避難施設に向かったこと。

「町に行けないの?」

「ああ。」

「港にも帰れないの?」

「・・・ああ。」

「じゃ、今夜はどうするの?」

どうするもこうするもなかった。ここに泊まるしかない。

「ついてないね。」

「そうだな。」

「みんな心配してるわね。」

「そうだな。」

「あんた、もう少し気の利いた返事できないの?」

「気の利いた返事をしたところで状況が変わるわけでもなし。」

まぁ、確かにそうなんだけど。

「それより、もう具合はいいのか。」

「あ、うん。もう大丈夫。」

事実だった。車酔いだったのだから、車から降りたことで大半のことは解決していた。
その時、不意にブラのホックが外れていることを思い出し、毛布をかぶって背中に手を回し、急いで留める。
その後、毛布から抜け出すと、ゾロの横に並んで壁にもたれて座り込んだ。

「あのさ・・・ちょっと訊くけど、さっきみたいなこと、よくするの?」

「ああ?」

ナミは自分の背中に手を回し、ブラのホックの部分を叩いた。
それで察しがついたのか、ゾロは納得顔で言った。

「よくってことはねぇけど、酒場とかで、酔っ払った女はいつも気分が悪くなると、それを外してくれって言ってくるんだ。」

なるほど。
つまり、女は気分が悪くなると、そこを外すと楽になると学習してきたわけね。
覚えるくらいに何度もね。
ゾロは女性への親切心でやっていたのかもしれない。
けれど、ゾロは気づいていないのかしらね。それって女に誘われてるってこと。

「ふーん、それでいつも外してあげてたんだ?」

「お?おお。」

「それで?その後はどうしたの?」

「・・・・・・・別に、何にもねぇよ・・・。」

(なんか間があったわね。目も泳いでるし。どうもあやしい。ま、別にこの男が過去に女とどうなっていようと私には関係ないけどね。)

「それにしても腹減ったな。」

話を逸らすようにゾロが言った。

「配給とか無いのかしら。」

「無いって言ってた。配られたのはその毛布1枚だけだ。」

そう言って、ナミがかぶっている毛布を指差した。

「これ1枚で今夜寝ろっていうの?」

昼間は温暖だったが、陽が翳ってきて、段々と冷えてきたというのに。

「仕方ねぇだろ。俺たちは2人に1枚だが、他では5人に2枚っていうところもあったんだぞ。」

「結構厳しい状況ね。」

「まあな。しかし考えてもラチがあかねぇ。無駄に体力を消耗するだけだ。さっさと寝ようぜ。あとのことは明日考えよう。」

寝る。
その言葉にナミはわずかに固まった。
それに気づいたのか、ゾロがすかさず言う。

「お前、その毛布使えよ。俺はいいから。」

「でも、悪いわ。」

「俺はいつも何も被らず寝てるから、平気だ。」

そう言われて、毛布を一人で独占して使うことになり、ナミは再び横になった。
壁に掛かっている時計を見ると、丁度10時を差していた。
その時、フッと明かりが消えた。消灯時間であるようだ。
上に毛布を被ってはいるが、下には何も敷いていないので、床の冷たさがじんわりと身体に伝わってくる。毛布を被っている自分でもこうも寒さを感じるのだから、何も被っていないゾロはどんなに寒いだろう。
ナミはゾロに向かって言った。

「ねえ、一緒に被らない?」



ナミにはいらないと言ったものの、段々と寒さが堪えてくる。
だから、ナミのこの申し出は非常にありがたかった。
しかし、ここで毛布の中に潜り込むのは、一緒のフトンで寝る行為のような気がする。
そういうことは、していいものなのだろうか?
ナミが男だったら、何の躊躇もなく潜り込んだろう。
でもナミは女だ。そして仲間でもある。
ゾロは今までの経験で、女と一つのフトンで寝る行為には一つの目的しか思いつかないので、仲間であり女であるナミとそうすることを、頭の中でどう捉えたらいいのか分からない。

「いや、いい。」

考えがまとまるよりも早く、口が勝手に答えていた。
この答えで間違ってないような気がする。
しかし、

「あんたが良くても、私が気になるのよ。」

尚もナミがそう言うので、ゾロは渋々といった風に毛布の中に潜り込んだ。
その途端、ナミの身体が震えたのを感じたので、やはり失敗だったかと内心思う。
心配すんな、何もしねぇよ、と言うと、分かってるわよ、そんなこと、という少し怒ったような返事が返ってきた。



2人は並んで、仰向けで寝る。互いの身体をできるだけ離して。
頭では分かっている。ゾロは決して自分に対して変なマネはしないと。ましてや、ここは公共施設の中。寝ているとはいえ、周りには人々が大勢いる。
それでも否応なく緊張感がみなぎる。どうにかならないものか。何か話すしかない。

「私が8歳の時、ココヤシ村でも集中豪雨があって、川が決壊したことがあるの。それで、やはりこんな風に高台に避難して、村中の人と一緒に夜明かししたわ。」

「へえ。」

ゾロの返答は相変わらず素気無かったが、聞く耳は持っているようだ。

「私の家も水浸し。それに水が引くのに3日ほどかかった。その間、ずっと村の人達と寝泊りしたの。大人達は大変だったんだろうけど、子供の私には面白くて仕方なかった。だって、めったに無いことでしょ?そんな機会。普段と違ってて、ワクワクするのよね。今から思うと不謹慎なんだけど。ゾロにはそんなことあった?」

「俺の村では災害とかは一度も無かったな。でも修行の一環として、道場で門下生20人くらいと寝泊りしたことがある。それがこの状況と似ていたといえば似てたかな。」

「それ、いくつくらいの時のこと?」

「さぁ?いくつだったかな。覚えてねぇ。」

その返答にナミはあからさまに溜息をついた。

「私前から思ってたんだけど、あんたが道を覚えられないのって、出来事と時間との関係を覚えられないからだと思うのよね。」

「なにぃ?」

「だって、20年や30年も前のことじゃないのよ。それなのに。」

「覚えてる!12歳・・・・頃だ。」

「それなら最初からそう言いなさいよ。」

「・・・・・。」

ゾロはそれきり返事もせずに寝返りをうって、ナミに背を向けてしまった。

「ごめん、ごめん。言い過ぎた。」

ナミはそんなゾロに慌てて取り繕うように言葉を掛けた。戯れでゾロの両肩に手を掛け、軽く揉む。
すると、

「うお!」

という奇声がゾロから発せられた。

「ど、どうしたの?」

驚いて、ナミが問い掛ける。

「それ、もう一回やってくれ。」

「え?何?」

「肩。」

ああ、肩揉みね。
合点がいったナミは、もう一度、今度は力を込めて、ゾロの肩を揉んだ。
けっこう凝っている。

「もっと力入れろ。」

「そんなこと言っても、ゾロの肩、硬いんだもん。」

「分かった。じゃあ、ちょっと背中に乗ってくれるか。」

「はあ?」

「背中に乗って歩いてほしい。いつもチョッパーにしてもらうんだが、あいつは獣型や人獣型では軽いし、人型では重いしで、具合が良くねぇんだ。」



周りが寝静まった暗闇の中、ナミはゾロの背中に跨り、渾身の力を込めてツボと思われる場所に指圧を加える。立って歩こうとしたが、バランスが悪く、怖くてやめてしまったのだ。
うつ伏せのゾロからは何度も呻き声が聞こえる。気持ちいいようだ。
その様子がうらやましくなったナミは、ゾロに次は自分の背中を揉むよう頼んだ。
役割を交代して、今度はゾロがナミの背中に馬乗りになり、ナミの首筋に指圧を加える。

「痛っ!もっとやさしくして。」

次いで指は肩に移動し、

「もっと右。あ、そこ!そこ!」

さらに指圧は背骨に沿って行われ、

「あ、あ、あ!」

やがて腰まで達した。

「あん!」

小さいながらもナミが声を発してよがるので、ついついゾロも熱が入ってしまう。

「気持ちいいか?」

「うん!すごくいい。ゾロ、上手いわねぇ。」

「まぁな。これも道場の仲間同士でよくやったんだ。」

「へぇ。たまには役に立つことも習ってんのね。」

ナミのその発言に頭に来たゾロは、一際強く腰に指圧を加えた。

「ああん!」





****





翌朝、ナミは体内時計通りに目覚めた。
目の前に自分以外の腕を伸びているのが見えて、ぎょっとする。
横向きに寝ている自分の背後をすっぽり包むように、ゾロが寝ていることに気づいた。

「うわ。」

と叫び、慌てて上体を起こし、少しゾロから離れた。
思わず声を出してしまったが、すぐに口をつぐむ。
周りを見渡すと、まだ誰も起きてる人はいない。広い施設内全体が静かな寝息で包まれている。人々の睡眠の妨害をするわけにはいかない。
自分の声では誰も起き出さなかったことを確認する。
とその時、

「さみい。」

まだ目を開いていないゾロから呟きが漏れた。眠りながらも気温の変化に敏感に反応した様子。
ナミは自分が上体を起こしているために、冷たい空気が毛布の隙間から入り込んでいることに気づき、急いでもう一度毛布の中に潜る。
おお、あったかい、とかなんとか思いながら、少しだけゾロに身を寄せた。
ナミは目の前のゾロの寝顔をじっと見つめた。
ついつい夕べのことを思い出すと笑みがこぼれてしまう。お互いにツボを圧し合って、すこぶるリラックスして眠りにつくことが出来たのだから。

まだ起床時間までは一息ありそうだ。もう少し、このまどろみの中で横たわっていようとナミが思ったとき、突然ゾロの腕が動き、ナミの身体を掻き抱いた。
え、と思う間もなく、ゾロの左手がナミの背中に回る。背筋を辿るように腰まで降りていくとシャツをたくしあげて、間髪入れずにシャツの中にその手は滑り込み、ナミの肌に直接触れてきた。今度は逆の動きで指先が背筋を登っていく。
そして、

“パチン”

という小気味のいい音とともに、ブラのホックが外された。

その音をナミはまるで遠くの出来事のように聞いた。

(ななな!)

文句をつけようと、ゾロの顔を覗き込むと、彼はいまだに目を閉じたままだった。

(寝惚けてる!この男、完全に寝惚けてる!!)

ゾロの行為はそれだけに留まらなかった。
その手がすでにナミの身体の上をあやしく這いまわり始めていた。
ナミは驚きと眠っている周囲への気遣いから、咄嗟に大声を発することができなかった。
その間もゾロの行為はエスカレートし、やがて、ナミは両手首をつかまれ、ついに完全にゾロの下に組み敷かれた。
ナミは身を捩って逃れようするが、最早びくともしない。
覆い被さるゾロがナミの唇を求めてきたが、それは首を捩ることでなんとか避けることができた。しかし、露になった首筋に吸い付かれ、ナミの全身に震えが走った。

(信じられない寝惚けてこんなことするなんてどうしよう困った私今日は2日目じゃない3日目だから絶対にできないのにどうしたらいいのかしらああもうなんでこんなことになったのやだそんなところ触らないでよ。)

そんなナミにお構い無しにゾロはナミの耳に息吹を吹きかけてきた。
そして熱っぽく名前を呼ぶ。





それはナミの名ではなく、





――――――別の女の名前。





****





降り続いていた雨がウソのように上がり、空は爽やかに晴れ渡っていた。
ルフィは見るでもなく、ゴーイングメリー号の甲板の上から港町を見ていた。
すると、昨夜は帰ってこなかった仲間の姿が目に飛び込んできた。

「おー帰ってきた。おーい!ナミー!ゾロー!」

すこぶる元気の良い声でルフィが2人に呼びかける。
ルフィの目に映ったのはまずナミの姿。そしてその随分後ろをゾロが歩いているのが分かった。
ナミは縄梯子を上って来た。

「おかえり。夕べはどこに泊まったんだ?」

ルフィはナミにそう訊いたが、ナミはルフィに目もくれず、ものすごい勢いで船室のドアを開くと、これまたすごい音をとどろかせて、そのドアを閉めた。

(?)

ナミの表情は髪に隠れて見えなかった。ただ、口がへの字に曲がっているのは見てとれた。
続いて間を置いて、ゾロが縄梯子を登ってきた。

「おかえり。夕べ、どこに泊まったんだ?」

同じ質問をゾロにしてみる。

「避難所。」

「へぇ。」

「他にもいっぱい人がいたんだぞ。」

言外に二人きりだったわけではないと、ゾロはルフィに伝えていた。

「ふーん。ところでゾロさ。」

「ああ?」

「その顔どうしたんだ?」

ゾロの右目の周りは見事に青く縁取られていた。

「俺もよく覚えてないんだが、どうも何か――――」

ゾロは眉間に皺を寄せ、額に手を押さえて言った。



「失敗したらしい。」






FIN






<あとがき或いは言い訳>
正式にカウンタリクを受け付け始めて、一番最初にカウンタを踏んでくださったのがベルさんでした。彼女が踏まれたカウンタナンバーは2222。そして、お題は「ゾロとナミが初めて一晩ともにしてしまったお話し(ハッピー話で…)」でした。
もしも期待されていたのなら(何を?)、ゴメンナサイ!!
所詮は私が書くお話ですので、このような結果にあいなりました。しかも全然ハッピーじゃないし、無駄に長い!

ベルさん、こんなもので許していただけるでしょうか・・・。返品可でございますよ〜。
また、大変遅くなりましたこと、慎んでお詫び申し上げます。

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