ルフィは語る―――



なんだ?何かヒミツの匂いがする。
俺に隠れて、皆で何かやってるな?
そんなの、絶対許さねぇぞ。





愛しいあの娘





サンジは語る―――



うっかり彼女のことを「ナミ」と呼んでしまった。
今から思うと、それが全ての始まりだった。
初めてこう呼んだ時、彼女はとても嬉しそうな表情をして近づいてきた。
彼女もこの呼び方をいたく気に入ってくれたらしい。
しばらくすると、愛しくてたまらない彼女を見つめながら「ナミ」と、そう口元を動かしただけで、俺の胸に飛び込んでくるようになった。
そんな彼女を思い切り抱きしめる。

皆が寝静まった夜。
そこからは俺たちだけの時間だ。
誰にも邪魔されないし、させはしない。
ナミは俺だけのものだった。
あの野郎に知られるまでは。





ゾロは語る―――



夜中に目を覚ます。
何かとても官能的な夢を見ていて、その余韻を逃すまいと思うのに、その記憶は頭の奥で急速に剥落していく。
やがて世界はポッカリと虚ろに開いた穴だけとなった。
ひどく喉が渇いて、水を飲みにキッチンへと向かった。
扉を開いて、そこで初めて目撃した。
コックの腹の上に乗っかってるナミを。
しかも、ナミは悦びの声を上げ、息も絶え絶えにコックの野郎にじゃれついていた。
俺が目を剥いて声も出せずに突っ立っていると、サンジはバツの悪そうな顔をして小さく舌打ちし、「バレちまったか」と呟いた。
その後、ヤツは信じられないことを口にした。
“お前もどうだ?”と―――
そして、次の日の夜にはもうナミを俺の腹の上に乗っけていた。
時にはコックと二人がかりでナミを弄ぶ。そうするとナミはいっそう悦ぶので、俺達ももう衝動を止められないでいた。
まさかこの俺がこんなにも溺れるとは思わなかった。まさに夢中というヤツだ。

夜、俺とクソコックはナミという秘密を共有している。
その事実が背徳感を呼び覚まし、いっそうの興奮を誘う。
この関係がいつ露見するのかと恐れながらも・・・・。





ウソップは語る―――



あれは見張りの夜だった。甲板の上で気持ち良さそうに寝転ぶナミを見た。
それだけじゃない、なんとサンジとゾロが愛しげにナミの肢体を撫でている。
まるでお姫様にかしづくかのように。
当人達は夜の暗闇の中だから気づかれないと思っているのだろうが、俺様の暗視スコープ付きゴーグルなら何でもお見通しだ!
麦わら海賊団の双璧が、何だらしない顔してんだ〜〜〜!!
昼間は何気ない顔をして、ゾロなんか硬派を気取っちゃって、それなのに夜はこのザマかよ!
お前らもっとしゃんとしろッ!!
こんな姿をルフィが知ったら泣くぞ。
と、そこまで思ってゾクッとした。
ルフィがこの事実を知ったらどうなるだろう。
ルフィが見過ごすはずがない。
もしルフィが知ったら、おそらくナミを横取りして我が物にするだろう。
いや、ルフィよりももっと怖いのは・・・・
そこんとこ大丈夫なのかよ、あいつら。あんなに大っぴらにやっててさ。
バレないようにうまくやってくれよ。
面倒事はゴメンだ!





チョッパーは語る―――



夜、サンジとゾロが雁首揃えて俺をこっそり起こしに来た時は驚いた。
声を上げそうな俺の口は素早く手で塞がれた。見ると、二人とも暗い表情をしている。
ついて来いと目で語るので、他の3人を起こさないようにしてそのまま大人しくついていき、俺の領地である医務室に入る。
その簡易ベッドに横たわるナミを見た時、どうしてこんなところにナミがいるのかということにまず驚いた。
しかしそれよりも重要なのは、ナミがひどくグッタリしていることだった。
二人から話を聞いてみると、ナミと遊んでいてしばらくしたらこうなったのだという。
一体どんな遊び方したんだよ!
こんなに疲れさせるなんて。
ナミは玩具じゃないんだぞ!
「つい調子に乗っちまって」なんて言ってるけれど、何事もホドホドが大事なんだ。
ヤリ過ぎていいことなんて何にも無い。
二人には厳重注意をした。
反省したようにうな垂れる二人の姿は殊勝に映るが、これだけは言っておかなくてはならない。
しばらくはナミとの接触禁止って。
そうしたら、サンジもゾロもひどく顔を歪めていた。





ロビンは語る―――



初めて見かけた時から、なんて可愛い娘かしらと思っていた。
でも何よりも剣士さんもコックさんが夢中なよう。
医務室に見舞いに来た時の、ポーカーフェイスの彼らの顔が、彼女を目にした時に一瞬で崩れる様の可笑しいことといったら。
けれどナミを見たら誰もがそうなるんじゃないかしら。
特に啼き声の可愛らしいこと。
か細く高く、男二人に代わる代わる抱かれては悦びの声を上げている。
なんて甘美な音色。
ああ、私もあんな風な声を上げさせたい。喘がせたい。
私のこの手なら、もっと彼女を悦ばせることができるはず。
その声は誰にも聞かせたくないわ。
そう、彼女の全ては私だけのもの。
なんとか愛しいあの娘を一人占めできないかしら・・・・。





フランキーは語る―――



俺はナミを医務室の片隅に追い詰めた。
怯え逃げ惑った末でのこと。
ロビンに、皆に内緒でナミをこっそり連れてくるよう頼まれたんだ。
しかし、まだ出会って間もない俺のことを、ナミが警戒するのも道理。
ナミは背中の毛を逆立てて、勝気な茶色の瞳で俺を睨みつけている。
そんな可愛い顔で睨みつけられたって怖いもんか。
むしろそそられる。
それに、嫌がる娘を無理矢理っていうのも悪かねぇ。
ほら、もう観念しろ。
ロビンには手荒なまねはするなと言われたが、あの女だってナニするつもりなんだか。
その前に俺と遊んだって構わねぇだろう、なぁ?
そう唸るなって。おとなしくしてりゃ、イイ思いさせてやるからさ。

ガバッとナミに迫り、押さえつけようとしたら、ガリッと顔を爪で引っ掻かれた。
続いて、「フミャーーーーーーッ!!!」と金切り声を上げて、ナミは狂ったように部屋の扉をすり抜けていった。





ナミは語る―――



芝生の上にデッキチェアを置き、パラソルを立てて読書を決め込もう思っていたら、一匹のネコが物凄い勢いで飛び出して来た。
ホップ、ステップ、ジャンプで私のお腹の上に飛び乗ると、しがみついてぶるぶると震えている。
何かに怯えているみたい。
それにしても、どうしてこの船にネコがいるの?
よく見ると、そのネコは三毛猫で、白い毛に顔とお腹の部分に斑点のようなブチが入っている。
そのうちお腹にあるブチがオレンジ色で、まるで自分の髪の毛を見ているようだった。
それに、まだこの子は子猫だ。大人になりきってない華奢な身体つきが儚げで、けれど刹那的な美しさを醸し出している。
お前はどこの娘なの?どうしてこんなところにいるの?
優しく背中を撫でてやると、一通り恐怖が去ったのか、顔を上げ、円らな瞳に私の顔を映し、一声高くにゃぁと啼いた。
なんて可愛い声かしら・・・・もっと聞きたくて、顎の下を撫でてやると、ゴロゴロと気持ち良さそうに喉を鳴らす。
そうしていると、ドタバタと周囲がにわかに騒がしくなった。
いつの間にか仲間達全員が揃っていて、こちらを見ている。
その中でチョッパーが、

「ああッ!ナミ!!」

と叫ぶと、サンジくんとゾロが慌てたようにチョッパーの口を両手(合計4本の手)で塞いだ。
見ていると、ルフィだけはキョトンとした顔をしてるけど、残りの3人は訳知り顔で、ウソップなんかは明らかに目を逸らして挙動不審だ。
ナニこの雰囲気?
私は可愛い娘を抱き上げて、皆をジロリと一瞥した。

さぁ、説明してもらいましょうか!




FIN




<あとがき或いは言い訳>
ありがちな、ちょっとエロっぽく見せかけたギャグ話でした。
昨年のナミ誕時に思いついたネタなので、ナミ総愛風味なのだ^^;。
因みにネコちゃんを船内に連れ込んだのはサンジです。

2008年になって最初の作品がなんじゃこりゃ的な話で申し訳なく・・・・。
でもまぁリハビリも兼ねて楽しく書けました(笑)。


 

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