カウンタ5000を踏んでくださったmiyuki様に捧げます。
ナミが目を覚ますと、目の前には緑頭の男の顔。
少し身をずらすと、無駄な贅肉一つない引き締まった身体が目に飛び込んでくる。
このたくましい身体に、昨夜抱かれたのだ。
そう思うと、全身がまた熱くなった。
宝毛
マストの上の見張り台で。
昨夜、ゾロが見張り役で、ナミが差し入れに行った。
いつもなら、それでおしまい。
でも、昨夜は・・・・。
惚れ惚れとするような肉体にいまだに身を預けながら、指で男の形をたどる。
昨夜、熱い口付けを交わした唇に軽く触れた後、顎に手を添える。
不意に男の顔を覗き込んでみると、まだまだ深い眠りの中にいるのがわかる。
続いて見事な胸筋と腹筋へ。それを斜めに縦断する傷。
厚い胸板をゆっくりと指先でなぞる。
そして、ついに指はソレに到着した。
始めは、ソレが何なのか分からなかった。
フワフワと目の前で揺れている。
朝日を浴びて、キラキラと光る。
なんだろう?と思うと、それまでまどろんでいた意識が一気に覚醒してきた。
目をこすり、ゾロの胸元をマジマジと見つめる。
ソレは、
一本の毛だった。
ゾロの胸の真中よりちょっと左寄り。そう、丁度心臓の上辺りから、一本の毛が生えている。
緑色ではない、薄い金色の毛。
よく見なければ気づかない。今も朝日に反射しなければ見逃していたかもしれない。
胸毛?いや、違う。
だって、生えてるのは一本だけ。
しかも、異様に長い。20cmはある。
つまり、ゾロの胸から長いうぶ毛が一本ヒョロリと伸びているのだ。
それが、海風を受けてソヨソヨとそよいでいる。
(ゾロにこんなモンあったっけ?)
別にこういう関係になる以前から、ゾロは無駄に脱ぎっぷりが良かったので、上半身裸の姿なんて腐るほど見てきたのに、こんな毛が、こんなところに生えているとは気づかなかった。
確かに抱き合うなどの至近距離で見ないと気づかないような薄い色の毛。
しかし、抱き合ったのは昨夜が初めてではない。それなのに、気づかなかったのは・・・・。
(そうか・・・・今まで暗いところでしか、してなかったから・・・・)
毛布にくるまっているとはいえ、朝日の下で自分達の格好に改めて思いが至り、ナミは思わず赤面した。
そして、ゆっくりと自分を抱きしめるゾロの腕を解くと、服を身に付け始めた。
その間もゾロは、とても剣士とは思えない緊張感の無さで大口を開けて眠っている。
ナミがスカートを履き、ブラウスを羽織って前のボタンを留めていると、またもや海風が二人の身体を撫でる。
その時、一緒に先ほどの長いうぶ毛がまたもやフワフワと棚引いた。
しゃがみこんで、しばしその様子を見つめる。
そうしていると、どうしてもその毛に触りたくなった。
というよりも、抜きたくなった。
ゾロには胸毛がない。
胸毛なんてあってもなくても気にしないナミだったが、この「一本だけ生えてる毛」というのが気になって仕方が無い。
これがなければ本物の「胸毛のない男」になれるのに―――
しかも、その毛はまるで抜いてくださいと言わんばかりにソヨソヨとナミの目の前で揺れている。
(抜いてしまおう)
ナミはゾロに向き直り、恐る恐る手を伸ばした。
***
「あれ?ナミさん、昼食も食べたくないって?」
陽が南中に達した頃、サンジがクルー達に昼食の時間を告げて回った。
しかし、食堂に集まったのは、サンジを含めて6人。一人足りない。
「そうなの。彼女、朝方に部屋に戻ってきて、それから寝始めたのよ。具合も悪そうだったから、そのまま部屋で寝かせておいたのだけれど。でも、今呼びに行っても『気分が悪いから食べたくない』のだそうよ。」
ロビンがそのキレイな柳眉をやや下げながら言った。
「なんだ?なんだ?腹でも壊したのか?」
「俺の出す食事は量も栄養も各個人に適切になるよう配慮してある!そんな訳あるか!」
「分かんねーじゃん。こっそりミカンをバカ食いしたのかも。」
「お前じゃねーんだから!」
そう言いながら、サンジがルフィの頭をおたまでガンガン叩く。
「チョッパー、お前、ナミを診なかったのか?」
ウソップが尋ねる。
しかし、チョッパーはフルフルと首を横に振った。
「それはまだ。ロビンが『きっと睡眠不足のせいよ。昨夜、相当激しかったんじゃない?』って言うからさ。とりあえず睡眠を取らせることが先決だと思って。」
チョッパーは、自分がサラリとすごいことを言ったことに気づいてないようだった。
この言葉を受けて、ルフィを除く全員の視線がゾロに集まった。
ゾロは、いつもの席に座ってはいるものの、腕組みをして、眉間に皺を寄せながら目を閉じ、沈黙を守っている。
「おい!てめぇ。昨夜ナミさんに何したんだよ!」
と、サンジはゾロにつっかかるが、『ナニをしたのか』を正確に伝えられても、サンジが傷つくだけだろう。
その点、幸いにもゾロはダンマリを決め込んだ。
その後、サンジとウソップが寄ってたかって吐かせようとしたが、ゾロはテコでも動かない。
しかし、ゾロは明らかに不機嫌そうだった。
この様子から見て、確実にゾロとナミの二人の間で何かがあったのだとわかる。
実は、二人は最近やっとくっついたばかり。
他のクルー達はかなり長い間、二人の関係を見てはヤキモキしてきた。
ようやく納まるところに納まって、胸を撫で下ろしていたところだった。
それなのにもう関係に亀裂が入ってしまったのということだろうか。
ついにその様子を見かねて、ロビンがチョッパーを食堂の外に誘った。
「これじゃ埒があかないわね。航海士さんから直接話を聞いてみましょう。」
「そうだな。でも、しゃべってくれるかなぁ・・・・。」
「その時は『くすぐりの刑』で吐かせましょう。彼女、首筋が殊更弱いのよ。ウフフ。」
「へぇぇぇ。・・・・それさ、ゾロに試してみたら?」
「彼が鈴の鳴るような声を立ててくれるのならね。」
「・・・・。」
ロビンとチョッパーの二人が女部屋の階段を降りると、ナミは、眠ってはいなかった。
いつも地図を描いている机に向かい、座っていた。
机の上にはいくつかの書物が開かれていた。
「気分はもういいの?」
ロビンが問い掛けると、ナミはゆっくりと二人の方に向いた。
少し虚ろな表情。明らかに疲労がにじみ出ている。
そして、口を微かに開けて、言葉を発した。
しかし、あまりにも小声であったため、二人は聞き取れなかった。
ロビンがもう一度言ってみて、と促すと、ナミは一度深呼吸して、再び口を開いた。
「あのさ・・・・宝毛って・・・・知ってる・・・・?」
「え?タカ・・・?なんだって?」
今度はチョッパーが聞き返した。
「た・か・ら・げ」
ナミが一語一語を区切ってハッキリと発音した。
「宝毛?さぁ・・・・?」
チョッパーが首をひねる。
すると、ナミが辞典をチョッパーに差し出した。
しおりが挟んであるページをめくると、『宝毛』の項目に赤ペンで下線が引かれているのが目に入った。
宝毛 【たからげ】
生えていると縁起がいいと言われている長いうぶ毛。
別名「神様の毛」「幸せの毛」「縁起毛」「天使の毛」「福毛」などと呼ばれる。
周りの毛より長生きをした毛、圧迫や摩擦が毛根を刺激して成長期を長くした毛という説もある。
抜けても抜けてもまた同じ所に生えてくる。
「生えてると縁起がいい毛かぁ。こんなうぶ毛があるんだぁ・・・・。」
辞書を見つめたまま、殊更感心してチョッパーは呟いた。
「で、これがどうかしたのか?」
「彼に、その毛が生えていたのね?」
チョッパーの声にかぶるように、ロビンの硬質な声が響く。
ナミはゆっくりと頷いた。
「それで?」
ナミは話した。
今朝方のこと。
ゾロの宝毛を抜こうとした時のことを。
ナミがその毛をつまみ、引っ張ろうとした次の瞬間、ゾロの目がカッと見開き、ナミの手首を掴んだ。
続いてゾロは、ナミの身体を地面に叩きつけるようにうつ伏せにさせ、掴んだ腕を後ろ手にひねり上げた。
片腕を後ろで固められ、関節がギリギリと悲鳴を上げる。
胸を床に圧迫されて声も出ない。
ナミは苦痛にその表情を歪めながら、非難がましく顔だけをゾロの方に向けると、ゾロが鬼のような形相で叫んだ。
「俺の宝毛に触るんじゃねぇ!!!」
その言葉に、一瞬、ナミは茫然となった。
しかし、すぐに気を取り直し、
「なんの毛だか知らないけど、この腕ほどいてよ!折れちゃうじゃない!」
というナミの必死の叫びに、ゾロは我に返ったように固めていた腕を離した。
自分のしたことに驚いているのか、少し狼狽している。
「悪りぃ。条件反射で。」
「あんたは条件反射で、恋人の腕を捻り上げるワケ?!」
「でも、お前がコレを抜こうとしたから。」
「なによ、さっきから毛、毛って。なんなのよ、その毛!」
「これは・・・。」
「何よ。ちゃんと説明してよ。」
「ええっと・・・。」
「説明もできないの?一体その毛と私とどっちが大事なのよ?!」
「なんでそんな話になるんだ!勝手にヒトのもんに手出しといて、てめぇがキレるんじゃねぇ!」
「切れてないわ。理路整然とどちらの順位が上なのか聞いてるのよ。」
「そんなもん、比較できるようなもんじゃねーだろ。ったく、うるせぇ。てめぇと違ってこっちはずっと大人しくていいよな。」
「なによ、それ。その毛の方が大事ってわけ?!」
「何もそんなこと言ってねぇだろう。」
「言ったも同じよ、もう知らない!あんたなんか!」
その話を聞いて、ロビンとチョッパーはしばし開いた口が塞がらなかった。
なんとリアクションしていいのか分からない。
「私、宝毛っていうものを全然知らなくて、その後に調べたのよ。」
ナミはチョッパーから辞書を受け取り、指でその個所をなぞりながら話し続ける。
「その毛の意味を知って、きっとゾロにとっては大切にしてる物なんだろうなって思った。それを抜こうとしたわけだから、怒るのはある意味当然よね。」
「でも、暴力を振るわれたことがショックだったのね。」
間髪入れずに言ったロビンの言葉に対し、ナミは判断つきかねるように、あいまいに首を振った。
「・・・・あいつはもともとガサツだから、そのことに対してはそんなに驚いてないの。ただ、あの時、一瞬私のことが分かってないみたいだった。起き抜けだってこともあるんだろうけど。・・・・でも、毛のことは忘れないのに、私のことは忘れてしまったのかなって思って・・・・」
それがちょっとショックだった。
あの時のゾロの目が忘れられない。
まるで敵を見るような。
仲間で、今や恋人である私に対してあんな目を。
きっと、自分はあんまり想われてないのだろう。
「私、あいつと付き合っていく自信がない。」
ついに、思い余ったようにナミが言った。
これには、チョッパーもロビンも少々慌てた。
「そんな〜。結論出すのは早すぎるよ〜。まだ付き合って2週間じゃないか!今回のことはナミが知らなかったんだから仕方ないよ。ゾロは多分もう怒ってない。ナミもこれから気をつければいいんだし。」
「そうね、毛に気を遣えばいいのよね。」
投げやりなナミの言い方。
「私、その宝毛とやらが生えてる人に会ったことがあるわ。昔、女優の卵だった女性にそれが生えてたの。首にだけど。」
ロビンの昔話に、「首ぃ?!」とチョッパーが目を剥いてロビンを見た。
「それで、彼女のメイクをしてあげた時、『抜きましょうか?』って尋ねたの。でも、断られたわ。その毛に願を懸けてて、その願いが叶った時に抜くと決めてるのだそうよ。・・・・剣士さんもその毛に何か願を懸けてるとか、何か曰くがあって、そんなに大切にしてるんじゃないかしら?」
「そう・・・・きっとそうね。だから毛が一番大切、私は二の次ってわけよね。所詮私は毛に負けた女なのよ。」
毛に負けた女
(ウッ・・・・!!)
あんまりと言えばあんまりな言葉に、二人の息は詰まった。
「でも、その毛も彼の一部なんでしょう。それも含めて受け入れてあげることもできないの?」
「・・・・。」
***
「なぁ、ナミをあのまま放っておくのか?」
チョッパーが女部屋を出たところで、小声で囁く。
ナミはあの後、無口になり、ベッドに潜り込んでしまった。おそらく不貞寝だろう。
「今は何を言っても、気持ちが降下していくだけだわ。」
「でも、あのままじゃ、本当に別れることになっちゃうよ・・・・。」
「彼女にとってはその方がいいかもね。行為の後の甘い時間に、毛のことでねじ伏せらるなんて。百年の恋も醒めるってもんでしょう。」
ロビンとチョッパーが食堂に戻ると、いまだにゾロが自白を迫られていた。
食堂の壁に背を預け、胡座をかぐゾロ。三振りの刀は腰から抜かれ、床に置かれていた。
「あ、ロビンちゃん。ナミさんはどうでした?」
「泣いてたわ。」
「え?」
「心がね。」
全員が黙り込む。
「その・・・・毛だけど、そんなに大切なものなの?」
ロビンがゾロのそばで片膝をつき、問い掛けた。
『毛?』という外野の疑問には、チョッパーが事情説明に当たった。
ゾロは眉をひそめてロビンを見上げる。ナミがそんなことをしゃべったのか、と思ってるようだ。
「言っておくけど、あなた、けっこう最低なことしたのよ?恋人の腕を固めるなんてどういう了見よ?」
察して、ロビンは付け足すように言うと、ゾロは観念したようまた瞳を閉じた。
『腕を固めるたぁどういうこった!』という外野の質問には、これまたチョッパーが事情説明に当たった。
「信じられねぇ。そんな毛一本でナミさんの愛をムゲにするなんて。」
「俺もどーかと思うぜ。宝毛っていうのは、抜いても抜いても同じところからまた生えてくるんだろ。だったらそんな後生大事に守らなくても・・・・。」
サンジはともかく、ゾロのことには割と寛大なウソップも少々呆れ気味だ。
「なぁなぁ!その毛、俺にも見せてくれ!」
ただ一人、目を爛々とさせる者がいた。ルフィだ。
そう言うやいなや、ルフィはゾロの腹巻に手をかけてずり下げた。
「!!!てめぇ!何しやがる!」
ゾロは慌てて、ルフィの手首を掴み、もう一方の手で顎を捉え、ルフィを仰け反らせた。
「だって、ナミは見てるんだろ?なんでナミだけなんだよ。ズルイじゃんか。」
「ばかやろ。ナミは、ナミはな・・・・!!」
特別なんだ
さらっとそんな言葉が口から滑り出しそうになり、ハッとした。
その一瞬のスキを突いて、ルフィがまたもやゾロに襲おうともがいた。
ゾロは間一髪免れて、ルフィの身体を放り出すと、脱兎のごとく食堂から脱出した。
すかさずルフィも追いかける。
残された者達はしばし呆気にとられていたが、気を取り直して後を追うように食堂を出る。
外では、ゾロとルフィの飽くなき追跡劇が繰り広げられていた。
ドタドタドタドタ・・・・
ガタン、ガタ、ドタン、ビヨーーーン
まるでネズミが天井裏を駆け巡っている音のよう。
船底の女部屋のベッドでまどろんでいたナミにはそんな風に聞こえた。
なんなのだ、この騒ぎは。
オチオチ感傷にも浸ってられないのか、この船は。
あまりの五月蝿さに、感傷的な気分はすっかり減退してしまった。
もう少し浸っていたかったのに。
頭に来たナミは、文句をつけるべく女部屋の階段を上がり、甲板へと出た。
そして、そこで目にした光景に愕然とした。
あろうことか、後列甲板でゾロがルフィに押し倒されていた。
ルフィはゾロの腰の上に馬乗りになり、シャツを引っぱり上げていた。
(なんてこと!私でもあんなことしたことないのに!)
そう思った次の瞬間には走り出していた。
太ももに忍ばせたクリマタクトを素早く組み立てて腕に構え、風を切り裂きながら。
目撃者は後に語る。
この時、あまりの高速で、一瞬ナミの姿が見えなくなったと。
「へ〜。これが宝毛か〜。」
いかにも楽しそうな声を上げて、ルフィがしげしげと見つめる。宝毛を。
完全に不覚を取ったゾロ。刀を置いてきたのもマズかった。
ゾロの腕の届く範囲でルフィの手足を押しとどめても、ルフィは手も足も首も伸びる。
それらを駆使されると、防ぎようが無かった。
結果、男にシャツを胸の上までたくし上げられるという屈辱を味わった。
「てめぇ!いいかげんにしろ!」
「まぁそう言うなって。・・・・コレ抜いたら、ナミが一番になるんだろ?」
「な・・・」
ゾロが反駁する間も与えず、ルフィはニヤリと笑って、そのまま鼻先をかすめてなびく宝毛の先端を摘んだ。
その先端から繋がった皮膚の部分がピン!と引っぱられ、持ち上がる。
もう少し力を入れればプツンと根元から抜けるはず―――と、その時、
「やめんかーーー!」
ナミの絶叫とともに、ルフィの脳天にクリマタクトが振り下ろされた。
ガツン!!という小気味の良い音とともに、ルフィの目から星が飛び出し、そのまま身体がガクッとゾロの上に崩れ落ちた。
「大丈夫?」
ナミが片膝をついてゾロに問う。
「あ、ああ。」
ゾロはまだ状況を把握しきれない様子だったが、とりあえず目を回しているルフィの図体を身体の上からどかした。
「宝毛は?無事?」
「宝毛?あ、そうだ・・・・ああっ?!」
なんということだろうか。
宝毛は抜かれ、気絶したルフィの指先に絡みついている。
それも風前の灯火だった。風に攫われ、ルフィの指の間から抜け出ると、そのままフワフワとそれは漂い始めた。
「大変!」
咄嗟にナミが立ち上がり、手を伸ばすが間に合わない。
宝毛は吹き付ける海風によって、船から一気に遠ざかっていく。
慌てたナミは、欄干に飛び上がろうとした。そうすれば手が届くかもと。
しかし、大きな腕で後ろから抱き止められる。
「ナミ、もういい。」
「でも、飛んでっちゃうわ! あんたの、大切な、大切なものなんでしょ?」
そう言いながら、尚もナミがゾロの腕の中でもがく。
「もういいんだ。」
ゾロが腕の力をいっそう強くして、ナミを抱きすくめた。
「分かったんだ。俺には、お前が一番大切だってことが。」
そう背後から耳元で熱く囁かれ、ナミは腰が抜けそうになった。
「すまん、ナミ。お前を傷つけた。」
「ゾロ・・・・。」
今、後列甲板の上では、恋人達の熱い抱擁が交わされている。
その様子を見て、雨降って地固まるとはこのことだな、と誰かが言った。
足元でへばっていた船長は、ロビンの“手”によって回収された。
上空では宝毛が、キラリと光った。
FIN
<あとがき或いは言い訳>
カウンタ5000を踏んでくださったのはmiyukiさん。
いただいたお題は「ゾロナミ中心の明るいドタバタ話」でした。
ドタバタ話は私の得意とするのものなのですが、「ゾロナミ中心」というのが難しかったです(>_<)。そのため、この話は製作過程で何回も空中分解を起こしました。
学生時代のサークルの後輩が私に「宝毛」の話をしてくれました。私はすごくウケてですね。彼女はいまだに会うとこの話をしてくれます(その度にやっぱり笑ってしまうのだった)。
そんな笑い話の雰囲気をこの話に込めたかったのですが、なんだかリク内容からビミョウにズレた話になってしまいました。ドタバタはしてるけど、あんまし明るくないですよね(汗)。
miyukiさん、こんなものでゴメンナサイ。もちろん返品可です。あとですね、miyukiさんには大変お世話になっていながら、メルアドをきちんと存じ上げてなかったのですよ(汗)。BBSのログに残ってるメルアドはあるのですが、随分以前のことですし、そこに送ってよいのやら迷いまして、連絡なしでいきなりアップしてしまいました。
miyukiさん、見てくださってますか?もしかしたら見ておられないかもしれないけど、このお話を捧げます!すごく遅くなって申し訳ございませんでした!!