Name the greatest of all inventors. Accident


                                りうりん 様

scene1


その日は朝からいろいろアウトだった。

夏休みに入って何日目かの朝、勤勉なわたしは夏休みといえども学生の本分である勉学を怠ることなく…要は、遅くまで勢いに乗っちゃって勉強をして、朝寝坊をしてしまっていた。でも夏休みなんだから、慌てることもない。クラブ活動に参加しているわけでもないし、特別な約束をしているわけでもない。そう思いながら歯ブラシ動かして何気なく見上げたカレンダーの日付に何となく引っ掛かりをかんじた。


「…?」


なんだろう、この気持ち。なんかこう、締め付けられるような、忘れてはいけないような切ない…


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


ある事実に到達した瞬間、できる限りの速さで洗面所を飛び出すと、制服に着替えて玄関に向かった。


「おかーさん!おかーさん!おかーさん!」
「何?ナミ。うるさいわねえ。夜勤明けなんだから静かにしてよ」


赤毛をかきながら顔をのぞかせる母に


「わたし!今日!学校があるのを忘れてた!」


慌てて向った玄関の三和土には片方しか靴がない!どういうこと!?


「いまは夏休みでしょ。寝ぼけてんの?」


時間との闘いのゴングがなって焦りまくっているわたしは火のついたタバコを加えたまま器用にあくびをする母に


「ナースなのにタバコ!いいかげん、やめたら?」


ないないない。どこへ行ったのよ〜。ストライキでも起こしているのか、靴は見当たらない。


「ささやかな精神的一服を邪魔するなんて、ひどいことを言うね。で、その傍若無人なお嬢さまは夏休みだっているのに、どちらへお出かけ?」
「生徒会の打ち合わせがあるのを忘れてた!」
「生徒会の打ち合わせ〜?何の?」
「休み明けにある、文化祭と、体育祭の…」


なんで片方しかないのよ!!
半泣きになっているわたしに


「今朝、ルフィが邪魔だと何とか言って、まとめて下駄箱に突っ込んでいたわよ」
「ル〜フィ〜!!」
「は、部活」


脳内再生された弟に思いつく限りの文句を言いながら下駄箱を物色する。チビだったくせに中学に入ってから妙に大きくなって、あいつの靴が広いはずの下駄箱を無秩序に占領している中、サッカーで泥だらけになった靴に埋もれた学校指定のローファーを発見。


「あああああもおおおおお!片づけるならもっとキチンといれてよね!」


たとえ目の前で言っても「シシシッ」とおかしな笑い声を立てるだけの弟だ。言うだけ無駄ってものかもしれない。磨く暇のないローファーの泥をざっくり拭くだけ拭いて鞄を持ち直した。


「行ってきます!」
「昨夜は雨が降っていたみたいだから、足元に気を付けるんだよ」
「はーい」


母の忠告を背中で聞きながら、バス停へ猛ダッシュするその時にタイムスリップすることが出来たら、わたしはわたしにきっとこう言うだろう。


「だからお母さんが足元に気をつけろって言っていたじゃない」


ってね。

いつもは遠く感じることのないバス停の位置を呪いながら走る。目指す時刻のバスに乗ることが出来れば遅刻は免れる。道路のあちこちに出来た水たまりをいくつか飛び越えた先に見慣れた車体が止まっていた。「やった!」と喜んだのもつかの間、ゆっくりバスは扉を閉めようとしていた。


「待って!乗ります!乗りますー!」


乗車に間に合うと幸運を神さまに感謝し、息を整えながらバスのステップを踏んだ。ギリギリの状態だったとはいえ、バスを呼び止めてしまった気恥ずかしさとなかなか収まらない荒い息に乗客の視線を感じ、誰に言うともなく俯きながら謝罪した。ああ、でも本当に間に合ってよかった。滑り込みだったけど、これも日頃の行いの賜物ね。あとはどこか座れるところがあればなんて間に合ったことで安心して気が緩んでいたのかもしれない。

お母さんの「足元に気を付けて」は雨上がりの水たまり以外も含まれていたわけで。街中を走る路線バスの床はほかの乗客の靴裏によって持ち込まれた水分で十分すぎるほど床を湿らせていた。そして、全力で走ったからしっかり立っていることが出来なかったわたしが足を滑らせる条件は揃っていた。


「ひゃあっ」


おかしな悲鳴を上げたわたしは転倒を避けるためとはいえ、とっさに近くの人につかまった。それが腕ならよかったかもしれない。100歩譲っても膝に手を置いちゃうとかなら「すいませ〜ん」と愛想笑いをトッピングして謝ればいい。

だけど。
でも。

両腕を伸ばしてしがみ付いたものは、わたしの胸元に抱え込むような形となっている。


「・・・・・・・・・・・・・」


それを目撃した乗客のすべての時が止まったと感じた瞬間だったと思う。もちろんわたしも。

わたしは、
たぶん、
全く見ず知らずの人の頭を、
…胸に押し付けている。


「お客さーん。大丈夫ですかー?出発しますよー」


ミラー越しだからか、車内の状況をいまいち把握していない運転手さんのアナウンスが間抜けに響いた。

感謝、取り消し。

神さまのバカ。




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<管理人のつぶやき>
めっちゃ気になるところで続く・・・!ナミちゃんの豊満な胸に頭を押し付けたのは一体誰!?
なんか出会いの予感がいたしますね^^。

【投稿部屋】の投稿者でもあるりうりん様の投稿作品です。連載、がんばってくださいー!




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