何?これ……ケーキよね?ん?この貼り紙……

ぷっ……あはっ。
笑っちゃうわ。

ふーん。そういう訳だったんだ。
全部分かっちゃった……

全く、格好つけちゃって、バッカじゃない?


食べちゃお…ケーキ。






ミイラ取りはミイラになる覚悟が必要   後編
            

CAO 様



「ちょ、ちょっと。いきなり過ぎない?」

「そのつもりで来たんだろ?いいじゃねぇか、手間が省けて。」

「そういう問題じゃ…」

「それとも何か?尻尾まいて逃げるか?」

「!…冗談でしょ!第一、アンタに言いたい事があんのよ、私は!何で逃げなきゃなんないのよっ。」

「だから、纏めて聴いてやるよ。イイ声をな。」

「聞くって!…そういう意味な訳?」



連れて来られた先は、ゾロの部屋。ドアを開けると10疂ほどのワンルームが広がり、奥にダブルのベッドと部屋中央にあるソファ、右手窓際にパソコンがあるだけの至ってシンプルな空間。
なんだか越して来たばかりの様な、味もソッケもない変な場所だ。
パタンと音がするので振り向けば、カウンターで仕切られたキッチンの隅で、何やらゾロが冷蔵庫をアサっている。一瞬、顔色が変わったと思ったら、ツカツカとナミの居るソファまでやって来て、いきなり服を脱ぎ始めた。
あまりに唐突な行為に、そういう顛末を予想してたとはいえ、ナミが面喰らうのも致し方ない。



(ヤリながら聞くのも、手よね?)


ナミの思惑を知ってか知らずか、ゾロの口付けは思いの外熱が篭っていた。

上半身の裸体を晒し、ナミの上着を剥ぎ取り、その分厚い胸に抱き寄せる。オレンジの髪を鷲掴み頭を強引に上に向けさせ、噛みつく勢いで唇を貧り食う。口内で逃げ腰のナミの舌に絡められるゾロの舌は、決して逃さぬ蛇の攻撃を思わせる。知らず溢れる唾液が、互いの口角の端から溢れ、顎から咽を濡らしていた。

ナミにとっては初めてと言っていい程、激しいキス。何度か強引に迫られた事も過去にはあったが、それはあくまで一方的なもので、こうして自ら応えている事が彼女にとっては驚くべき事実だ。それも、自然に…誘われるまま。

「あ…ふっ…」

息苦しくて、声が洩れる。唇を離し、肩で息をする。掴まれた髪をそのままに、引き寄せられた腰を更に強く抱き締められ、ゾロの目に紅潮した顔を晒される。
ゾロの舌が溢れた唾液を舐め取り、そのままナミの顎から喉、頬、耳たぶへその舌を這わせる。
ゾロの両腕にガッチリ固められ身動き取れないナミに、容赦無く浴びせられる愛撫が彼女を翻弄し、立って要られない位に膝の力を失わせて行った。

「どうした?立ってらんねーか?」

ナミはその両手でゾロの首を掴みつつ、必死に抜けて行く力を堪えていた。

「へ、いきよっ…」

その途端、ゾロの腕が弛められる。思わず膝下がガクンと崩れ、首筋に捕まる腕で躰を支えると、自然オレンジの頭がゾロの肩に埋もれた。
その隙を逃さず、ゾロの手がキャミソールの裾から侵入し、直接ナミの生肌に触れてきた。再度、腰を引き寄せ支え、ナミの背を縦横無尽に這い回る。

「やっば、無理だろ?…ひとつ、聴かせろ。そうしたら、連れてってやるぜ。ベッドへ。」

「何を?」

「…お前の名前。」

「何で……名前なんてどうでも…」

額と額をくっつけ、鼻同士触れ合わせ、囁くゾロの息が熱い。

「お前は俺の名前知ってんのに、俺は知らねぇつうのは、フェアじゃねぇ…だろっ?ん?」


「………ナミ、よ。」


それを耳にしたゾロは、この場にそぐわない、子供の様な笑顔を浮かべた。
そして、さも嬉しいといった声音で彼女を呼ぶ。


「ナミ。」


そう呼ばれたナミは、自分からゾロの唇を求め顔を寄せる。再度重ねられた口付けは、更に深く熱いものになった。
いやらしく纏わり付いて来た視線が、目の前で急に色を変え、その所作とは正反対の純粋な喜びに満ちた瞳に魅せられてしまった。


この時初めてナミは、男が欲しいと思った。


互いの欲望を含んだ口付けを続けながら、ゾロはナミの躰を横抱きにしベッドへ運ぶ。横たえた躰から邪魔なキャミソールを剥ぎ、ナミの上から覆い被さり、素肌同士を重ね合わせる様に、一度しっかり抱き締める。ただ、それだけの行為に、体中が熱くなる。
ナミは固く抱かれた躰が、ジッとしていられなくなる衝動にかられ、ゾロの背に回した自分の腕をひっきりなしに動かしていた。


「ナミ…」


再度名を呼ばれる。その声を発する唇に引き寄せられる。抱き締められたまま、柔らかく唇を重ね、深緑の瞳に釘付けになる。

少し体を離し、ゾロが指を這わせてきた。頬、顎、喉元、鎖骨、肩口…そして、熱く高鳴る胸元へ。
ユルリ、解きほぐす様に、優しく触れる。何度も何度も往復し、その度愛でる様にナミを見つめる。
その動きに切なさが溢れてきて、ナミは甘美な吐息を洩らす。

「はぁ……んっ。」

それと共に、今度は唇が降ってきた。耳を舐め喉を屠る。強く弱く。通り過ぎた後に紅い傷痕を残し…。
ナミの胸元に回されていた指は、その掌を伴い、全体を揉みしだいては、時折敏感な先端をも刺激していた。
加えて降り注ぐキスの嵐。鎖骨から降りてきた唇が乳房を縁取り、舌先が硬く起立した先端を舐め上げる。
初めて襲われた快感に声を上げる余裕もなく、ナミはひたすら歯を悔い縛り、その快楽の逃し所を探していた。

乳房の片方を強く優しく揉む掌に包まれ、もう片方はゾロの口中で舐め吸い上げられ、時に軽く噛みつかれ、唾液の海に泳がせられる。それを交互に攻め責なまれ、刺激に反応しどんどん敏感になって行くナミは、洩らす吐息を止められない。

「んっ…あん……っ。」

ゾロの唇が、一旦乳房を離れ、項を通り耳朶に寄せられる。それと時を同じくして、左手がナミの下腹部を経て、スカートの下から小さな下着へと伸びて行く。
耳朶に這う舌の感触に翻弄され、いつの間にかスカートが取り払われたのにも気付かず、ナミは溶け出す躰を必死に抑えていた。

そして、
下腹部に電流が走る。

秘された部分に、ゾロの指が侵攻を開始したのだ。

下着の上から愛玩する指の動きに、溢れ出す愛液でナミの下着は要をなさ無い。
蟲めく指が下着の裾からゆっくり侵入する。焦らす様に。

「感じやすいのな?お前。」

耳元で囁かれる。

「あっ…嘘。そんなの言われたの…初めて。」

「じゃ、何でこんな濡れてんだ?」

「…濡れてる?」

「あぁ、こんなに…」

指が挿入され、クチュクチュと音を立てられる。

「あぁっ…」

「な?凄げぇ、濡れてるだろ……男日照りで、溜ってたか?」

揶喩するゾロの瞳を見つめ、上がる息を抑えつつ言葉を洩らす。

「……そう、かも?」

ナミを翻弄する手が止まる。ゾロは虚空を見る様な鵄色の瞳に、自分の姿を映す様に覘き込んだ。
ナミも深緑の瞳を正視しながら、己の右手をそっと自分の濡れている部分へ這わせた。
触った其処は、まるで水浸しの様で…掬い上げた指先をジットリ濡らしている。
その指を眼前に晒す。自分の人指し指と中指の間で、透明な液体が糸を成し、艶やかに煌めいている。

「ほんと…濡れてる。」

「あぁ、だろ?」

(いつも、キスをされても、胸を触られても感じた事なんてなかった。酷い時は局所を刺激されても濡れなくて、男に気付かれぬ様自分の唾液を擦り付けた事さえあった。なのに…)

「こんなの初めて……私、感じてるのね?嘘みたい…どうしてかしら?」

ゾロはまたひとつ、嬉しそうに笑い、低く甘い声を聴かせる。

「俺、だからじゃね?」

「アンタ…だから?」

「そ、俺だから。」

そう言うと、ゾロはナミの手を取り、その指に舌を這わせた。ヌラリと光る指を、その液体ごと舐め上げる。

「……凄っげ、うめぇ。」

「バカ…エロいんだから。」

「もっと食っていいか?」

ナミは自分の指を、ゾロの口元へ差し出す。満足げな表情を浮かべ、ゾロが指を喰らう。口中で舌が絡まりながら、液体を舐め取り、同時に指を愛撫する。
ナミの表情を窺いつつ、ゾロが一頻り飲み干すと、解放された指を見つめ、

「足りねぇ。」

と溢す。

「まだ、欲しいの?」

「お前も、足りねぇんじゃねーのか?」

キスをひとつ。
笑顔で、ナミが告げる。

「足りないわ。」

ゾロは待ってましたとばかりに、ナミの股間に顔を埋める。
じっと視姦した後、一言。

「いい事教えてやる。気持ちいい時は、俺の名前を呼べ。絶対な!」

「何よ、それ?」

「呪文みてぇなもんだ…もっと感じる様になるぜ!」

言うが早いか、ゾロが襞に軽くキスを落とす。舐め、吸い、そして貧ぼる。その指を使い襞を広げ、中に舌を這わせ舐め上げては、尖らせた舌の先端を中へ挿入する。
その行為を余す所なく感じ取るナミの局所は、呼応するかの様に細かく痙攣し、次々と甘い蜜を溢れさせた。

「んんっ…あん、はっ…」

ナミの吐息が嬌声に変わる。ゾロの与える刺激が、其処を中心に躰全体へ広がり、僅かに残っていた羞恥さえ浸食され快楽の渦へ流されて行く。

止めどなく溢れる愛液と嬌声…ゾロの指が二本ナミの中を掻き混ぜ、舌と唇が襞と秘された核を攻めた。
思わずナミは、声を上げてしまう。

「あぁ…ゾロ…ゾロっ!」

と。
ゾロはその声に促され、更に熱い愛撫を施す。
前後の見境なく躰が勝手にゾロを欲して、ナミは自分の腰を浮かせ緑の髪に両手を伸ばす。
更に、言葉は止まる事を知らず……

「ゾロ…いいっ!あっ、ゾロっ、ゾロ、ゾロぉ…」

呼べば呼ぶ程、その動きで応えてくれる男に愉悦を感じ、躰だけで無く心までも彼を欲し始める。
止まらぬ想いと躰。ナミ自身何を欲しているのかさえ解らなくなる。
ひたすら、名を呼ぶしか術を知らぬ様に。

(掻き混ぜられてる。あのカクテルみたいに…ゾロに。でも足りない。もっと、もっと欲しいの…何か…ねぇ教えて、ゾロ。もう少しで見えそう…けど…ゾロ、ねぇ何なの?)


突然、止む愛撫。


虚を就かれ、放り出されたナミの心と躰。


むず痒い思いに支配され、不平を洩らす。


「どうしてよっ!」


愛液に塗れた口元が、意地悪く歪む。


「こんなんで、逝かれちゃたまんねぇ。」


「……?」


「約束したろっ?…一緒にイクって。」


「何処へ……?」


「さぁな…何処がいい?」


そう言いながら、ゾロが侵入してくる。
破裂せんばかりの熱く滾るソレで、止む事を知らぬ愛液の蜜壺に。

「やあっ〜……」

ミシりと括り込む感覚に、自然と躰がずり上がる。それをさせまいと、ゾロがナミの肩を抱き、引き寄せる。

自ずと深く繋がる二人。

互いの圧力に苦痛を分かち、そして共に歓喜を味わっていた。震える様な甘い痛みを感じているのは、躰か?心か?…判断できぬまま、見つめ合った。


「……全部入ったぜっ!」


「んっ。何か…嬉しい。」


「俺もだ。」


どちらからともなく、口付ける。

味わう様に、舌を絡ませ。
戯れる様に、唇を重ね。


「もいっこ、呪文教えてやる。」


「うん、何?」


「嘘でいい……好きと言え。」


「す……あんっ、あっ、あ……」

返事を返す隙もなく動き始めるゾロに、躰が反応して甘い嬌声が迸ばしる。
はじめはゆっくり、味わう様に深く。
次第に早く、煽る様に浅く。
角度を変え貫き、止まったまま揺すられ、痺れるくらいの快楽の波を連れて来る。

愛撫の時とは異なる、ひたすら求められる快感。
ナミの中に納まるゾロ自身が、まるで別の生き物の如く這い回る。

(躰がついて行かないっ!心に追い付いて来ない!もっと欲しいのに。どうすれば……ゾロっ!)

「ゾロっ!イイッ…凄いのっ……あっ、あぅっ…」

「…言えよ!」

迫り来る悦楽を振り払う様に固く閉じていた瞼を開けば、ナミの乳房を鷲掴み腰を送りながら切ない表情をうかべるゾロの姿が目に写る。ナミは握り締めていたシーツを離し、擦りつく勢いでゾロに手を伸ばす。
手を引かれしっかり抱き締められたその瞬間、確かな想いが溢れ出す。



「すき…好きよ、ゾロ。」



揺れるピアスの先から耳に飛び込んだ溜め息に似た言葉に、驚きを隠せず、ゾロはナミの顔を覗き込む。


「今、何て……」


「好き、って。…こんな時に、嘘なんて付けない。」

瞬きすると、涙が溢れた。後から後から溢れてきて止まらない……


「好きなの。ゾロが好き。凄く好きみたい…好き、好き、好き、好き…」


「……ナミ…」


愛しげに名を呼ばれ、ナミの全身に幸せが満ちる。
ゾロに女としてでは無く、『ナミ』として見て欲しかったのだと気付いた。
あの絡み付く視線が持つ女の意味に、ナミという呼び名を与えたかった。だからこそ、厭うた…あの深緑の瞳。


ゾロが頬を伝う滴に、唇を寄せる。そのまま、唇をナミの唇に重ね温かなキスを施す。労りに満ちた口付け、溢れる涙が呑み込まれ、ナミは悦びに包まれる。
唇を重ねたその形のままに、ナミは口移しに呟く。確かめる様に。


「ほんとにすき。」


「ナミ。」


「ねぇ、名前呼んで…たくさん…連れてってくれるんでしょ?」


「あぁ。一緒にな!」


ナミをキツク抱き締め、躰を引き起こす。ゾロの膝に乗り座り込む形になり、ナミとゾロの繋がりは一層深くなる。

「動くぞ…もう、止まんねぇかもしれねぇ。いいな?」

コクコクと頷き、湿った肌を擦り付け、全身でゾロの熱に包まれる為しがみつく。
放たれた言葉に嘘はなく、ゾロの動きは烈しさを増す。
突き上げられ歓喜し、奥に到達する度震え、加速する律動に悦び、淫美な音に興奮し、高鳴る心臓が先へ先へとナミを煽り続ける。
その快感をくれる男に、感謝と愛情を込め、嬌声と言葉を届ける。感極まった涙を添えて。


「あっ、いっ…ゾロ。はっ、ゾロッ……」


「ナミ。」


ナミの膝裏から腕を通し背を抱き、何度も何度も引き上げては落とし深く貫く。

「あんっ、あん。んんっ…いいのぉ。ゾロ…」


「感じるか?ナミ…そんないい…のか?」


美しく乱れるナミに煽られ、ゾロも息が上がる。更に深く繋がりを求め、腰を強く抱き締める。


「ん、好き。ゾロ、好きぃ…」


「っナミ!」


再度、名を呼ばれた瞬間、ナミの躰に大きな変化が訪れた。繋がる部分のその奥から、ジワリと甘美な細動がやって来る。


「やっ、何…これ…ゾロ、あっ。変なの?おかしくなる…やっ、あん……ゾロっ!ねぇっ…」


「イキそうかっ?」


「わからなっ……怖いっ!」

「怖くなんかねぇ。大丈夫だ。俺が、抱いててやる。…そのまま……」


「でも…ああっ…やっ…」


「ぐっ、ナミ…一緒だ!」



更に早まる律動と、耳に響く『ナミ』を呼ぶ声。極まる想いが拍車をかける。
深部に止まっていた快感が、微細な振動と共に這い上がり、ナミの躰を覆う。
固く抱き締められた躰が張り裂けんばかりに震え、心はゾロを求めて切なく悲鳴を上げる。
現実とは思えぬ快感が走り抜ける、その時…


「ゾロッ…抱いてて…あっ、どっかイッちゃ…」


「ナミ!俺の………」


「あっ。ゾロッ、ゾ…ロッ……」

「くっ、ナミ〜!」


何も入り込む隙間も無い程キツク抱き締めあったまま、二人は同時に登り詰め、最後の瞬間を『一緒に』迎えた。






ゾロの腕に包まれその厚い胸に顔を埋め、ナミは初めて体感した絶頂の名残に浸っていた。

これまでは、事が終わるのをまだかまだかと思っていた。男が放出し、自分の中から抜け出すのを、心待ちしていた。

こうして、終わってからも肌を寄せていたい、そう思える男が現れるなど、想像だにしなかった。
ナミの中からゾロが抜き去った時の喪失感を埋める為、まだ息が整わない躰でゾロの肌に擦り寄っている。

(コイツを翻弄してやろう…そう思ってたのにね。いつの間にか、私が手玉に取られてた。もう、離れられないかもしれないわ。悔しいけど…ミイラ取りは私だったのかしら?)

「…ミイラになっちゃった。」

「?はぁ〜何言ってんだ?」

「いいのよ、独り言…」

「あっ!いっぱい濡れてたから、水分がなくなっちまって干からびた、ってか?」

「アンタねぇ〜!」

拳を握り、臥せていた顔を上げ、愉快そうな表情をしたゾロを睨み付けた。
するとゾロは、上げた拳の手首を掴み、ナミを引き寄せ、怒った唇に優しいキスをする。
触れるくらいに、何度も。
唇を合わせたまま、呟く。

「…あんだけヤッたんだ。吸い取られたのは、俺の方だ。ミイラになったのは、俺だ……」


(バカ、意味違うのよ…)


「そう言われてみれば、喉渇いたわ。何かない?」

「蛇口捻りゃ、水がでるだろっ。…コップはキッチンにあるぞ。」

「カクテルのひとつも作ってやろう、とか言えない訳?」

「言うかっ!お前のお陰で、ヘトヘトなんだよ。」

「じゃ、水持って来て!」

「自分で行け!」

「…優しくないっ!もうっ。」

唇を離し、躰を起こす。ゾロを一睨みして、キッチンへ向かった。
全裸のままで、ドスドスと歩く。少し怒ってたから…
辿り着いたキッチンにコップは見当たらない。
仕方なくナミは缶ビールのひとつでもあるだろうと、冷蔵庫の扉に手を掛けた。その中央に鎮座する異質な物体、この部屋にもその持ち主にも全く似合っていない。


『デコレーションケーキ』


直径7〜8p程の丸く小さな白い生クリームのボディに、ちょこんと可愛らしい苺が一個乗っかっている。

首を傾げて見ると、ケーキを乗せた皿に貼り紙があって…………。



キッチンへ向かったナミの後ろ姿を満足げな気持ちで見送った後、ゾロは天井を仰ぎサッキまでのナミの様子とは一変した彼女に溜め息を吐いていた。

(あんだけ好き好き言っといて、可愛いとこ見せてたのはなんだったんだ?いきなりマッパで歩き回りやがって!羞恥心てのはねぇのかよ……けど、まっ、それもまた好みじゃあるが。さて、どうやって仕込むか?……!)

『パタン』という音で、ゾロは我に還った。

嫌な予感がして、恐る恐るキッチンに目をやる。

其処には……


満面の笑顔で、ケーキを手に(全裸が間抜けだが)、カウンターに座ろうとするナミがいた。


(…やべぇ!)


顔面を引きつらせ、これまた、全裸で駆け寄るゾロ。その慌てっぷりは、ナミの苦笑を誘った。

「ナミッ!てめぇ…何勝手に食おうと…嫌、そうじゃなく…そ、その…」

「あら?ゾロも食べたい?なら、食べさせてアゲルわよぉ。ほら、アーン…」

「ちげーよっ!その、左手にある…」

「ああ、コレ?……読んだわよっ、勿論。だから、食べようとしてるんじゃない?アンタ、バカ?」

顔を真っ赤にしたゾロが手を伸ばし、ナミの左手にある一枚の便箋を奪おうとする。
それをさせまいとナミも応戦する。
ケーキを挟んで小さなバトルが開始された。


……ゾロが漸くナミの左手首を掴んだ時には、ゾロの膝の上で羽交い締めされたナミの姿があった。
ばつの悪そうな顔したゾロに、ナミは嬉しい表情を向け頬に軽く口付ける。


「ねっ、一緒に食べていいわよね?」

ソッポ向いてゾロが答える。

「……食やいいだろっ。」

天辺の苺を摘み、口元に寄せナミが問う。

「ゾロは要らないの?」

其所へ横からゾロの唇が近付いて来て……『パクリ』苺が消えた。

「ウッソ!いっこしかないのよー!何でたべるのよー!楽しみにしてたのにぃ…」

困った顔したままゾロは、ナミに唇を寄せた。重なる唇の間で、小さな苺が踊る。互いの舌先が苺を奪い合う。押し付けた唇と歯列に挟まれ、弾けた苺から果汁が口内に広がる。甘酸っぱい果汁と潰れた果肉を分け合い呑み込み、口中の残沚を絡ませた舌で味わう。


「旨かったろ?」

「少しだから、分かんないわよっ。」

「んじゃ、もうちょっと食うか?」

ゾロは生クリームを指に取り、ナミの唇に寄せ見つめる。
開いた唇から妖しく蟲めく舌が現れ、ゾロの指に絡み付く。
舐め上げる舌の感触に魅せられ、ゾロも唇を寄せる。指を挟んで舌が踊りはじめ……。


キッチンから嬌声が聞こえ始めるのは、もう間もなく……



ハラリ……

ナミの左手から、一枚の紙が落ちた。そこに書かれたメッセージは……




ゾロへ

祝・片想い成就☆

やー、おめでとう!
お前が次の仕事を延ばしてまで、恋焦れた『オレンジ色の髪の女』を、漸くモノにする事が出来て、俺達は心底喜んでいる!
今まで女なんて目もくれなかったお前が、一人の女に入れ込む姿に、俺達は感動したぞ(彼女に近付く男共を次々に威嚇してたのには、正直笑わせて貰ったが)…成長したな、ゾロ!

そんな訳で、このケーキは俺達からのささやかなお祝いのプレゼントだ。有り難く受け取れ!

あの可愛い(恐ろしそうな)オレンジの彼女と、一緒に食ってくれ!

お幸せに……。

ウソップ・チョッパーより

追伸
玉砕した場合は、残念賞って事で…







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(2006.04.03)


<管理人のつぶやき>
エチーに至るまでのゾロとナミの駆け引きや心理戦からしてもう艶やかな雰囲気が満載。
絡みつく視線、唇をなぞる指。すごく官能的でした^^。
男性経験は豊富でもイくことを知らなかったナミが、ゾロによってようやく開花しましたネv
心も身体も満たされたエチーを、これからもしていってほしいです!
いやぁ、ケーキが残念賞にならずに済んでよかったね(笑)。

CAOさんの6作目の投稿作品でした。床部屋へのご投稿ありがとうございました〜。

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