BED IN 2
ソイ 様
男子校の昼休みに男が面つき合わせてする話題など、ほとんどが女の事ばかりだ。
ゾロは教室の窓際の席で、同じクラスでなおかつ同じ剣道部の数人と購買で買ったパンを頬張りながら、誰それの彼女がどこの女子高の女だの、昨夜手に入れた無修正のDVDはどうだったの、そんな日常的な会話を聞き流しながら、暖かくなりすぎた感のある5月の日差しに眠気を受けいれる準備万端整えていた。
うとうとと瞼が落ちてくるような最中だったので、その場の話がどう進んでいたのかは分からない。気づくとなにやら小さなアルミのパックを手渡される。「ついでにおまえにもやるよ」とクラスメイトがにやにや笑っていた。
コンドームだ。
「あ?」
「ま、彼女のいねえお前にゃ当分必要ねえかも知れねえけどよ。いざっていうときないと困るだろ。オトコとしてのじょーしきだ。じょーしき」
知ったかぶったような口ぶりで、にきび面の級友に後ろから小突かれる。ゾロはふーんと興味なさげに軽く手の中でもてあそんだ後、無料でもらえると言うのならもらっておこうと無造作に鞄のポケットに突っ込んだ。
ゾロがいつも使うものはナミが用意していて、いつもベットサイドの引出しの2段目に入れてある。なくなりそうになってもいつのまにかまた増えているのでナミのほうで買い足しているのだろう。そうか、こういうものはオトコが用意するものなのかと、大あくびの片隅でそんなことをふと考えた。
その場の話題は、女のタイプ別落とし方についての議論に移り変わっている。男子校で、しかも校内一練習の厳しい剣道部に属しているとあれば、目の前のやつらのほとんどは彼女なんて作る暇が無い。たまにできても、遊べないという理由であっさりと振られてしまう。その議論も実践するというよりは夢見がちな少年の妄想に近いものだった。
そんな議論に参加する気も無いので、ゾロは四つ目の焼きそばパンを齧りながら、飛んでいく意識を追いかけもせず頬杖をついた。話の中に頻繁に出てくる「彼女」「彼女」という単語のせいか、つぶった瞼の裏にふとナミの顔が浮かぶ。
ありゃ、"彼女"っていえるもんじゃねえしなあ・・・・。
一緒の部屋で暮らし、 一つのベットで眠り、ほぼ毎晩のように抱いて抱かれていても、そんな心地いい実感はゾロの胸には湧いてこなかった。
一月後の大会に備えた特別練習のため、帰宅した時は夜10時を回っていた。部屋に入ると電気はついていない。ナミは新人歓迎会やら新規プロジェクトの顔合わせやらで、最近は深夜に酒臭くなってから帰宅することが多くなっていた。
ゾロは 3人分のコンビニ弁当を平らげて入浴を済ませた後、さすがにくたびれた身体をソファに投げ出した。打ち込みでやられた肩を擦りながら、することもなく天井を見上げて、目を閉じるとすぐに睡魔が襲ってくる。
・・・・ここで寝たら、またナミがうるせえな。
でかい図体が邪魔だと、後頭部を直接かかとで蹴り上げられる。そんな何度かの経験を思い出すが、いかんせん今日のランニング30Kmはきつかった。一度横になってしまうとベッドのある隣の部屋に行く気分が湧いてこない。ナミが待ってりゃ違うんだけどなあと寝ぼけた頭で考え、大きく息を吐くと、すこんとぬけるように意識が飛んで視界が暗転した。
・・・・ピピピピピ・・・・。
電子音が、鳴っている。
ゾロはゆっくりと目を開けた。開けた瞬間に止んでしまったその音。一瞬聞きまちがいか夢かと疑ったが、テーブルに放り投げていた携帯のサブ画面が赤く点滅しているのに気づいて、身を起こした。
メールだ。
携帯を持っているということをあまり周知していないので、差出人は見なくても分かる。彼にこれを買って、常に持って置くように厳しく言いつけたナミからだった。
『10分後にマンションの玄関に出て』
短いメールはいつものことだ。そしてこの内容も何度か見覚えがある。ゾロは小さく舌打ちして、携帯をパジャマ代わりのスウェットのポケットに突っ込んだ。時刻は0時45分。スニーカーを突っかけるように履いて玄関のドアを開ける。
1階のエントランスフロアにエレベーターで降り、郵便受けを横に見て、大きなガラスの扉を押し開けた。マンション住居者用の私道を抜けると植え込みの影から大通りが覗けた。ゾロがひょいとそこから顔を出すのと同時に、交差点の先からタクシーが一台こちらに向かってくるのが見える。思ったより早かった。すぐに降りてきて正解だったらしい。時間指定されていてもナミの所望する用件に間に合わなければ何を言われるか分かったものではなかったからだ。
タクシーは歩道と車道を区切るガードレールの切れ目で止まる。ゾロの目にも後部座席の二人の男女が確認できた。やや問答をしているのは、どちらが料金を払うかとか、そんな平和的な言い争いではないだろう。
それを見やって、ゆっくりと近づく。
「・・・・送ってくれて・・・・これ私の・・・・タクシー代・・・・」
「・・もう夜で・・・・危ないから・・・・部屋まで・・・・」
自動で開いた車のドアから、車道を走る車のエンジン音に混ざって人の声が切れ切れに聞こえてきた。降りようとしているナミと、それに続こうとしているスーツを着た男。
ああ、何回目だよてめえ。
再度大きな舌打ちを響かせて、ゾロは後部座席の窓をごんごんと叩いた。
いい加減、学習しろってんだ。
半開きのドアを勢いよく開くと、ナミとその男、そして無関係なタクシーの運転手の視線が一点に集中した。ほっとするようなナミの顔と、訝しげに睨み付ける男の顔。
「あ・・・・、大丈夫。弟が迎えにきてくれたから!」
ナミは安堵の笑顔を浮かべて男を見やり、強引に千円札を数枚押し付けて慌てて車外に出る。なおも手を伸ばそうとする男をドアを閉めることで遮って、運転手に目配せすると静かにタクシーは走り始めた。
歩道に残るのは、酒で頬を上気させたナミとこれ以上ないほど仏頂面のゾロ。ゾロはそのままナミの二の腕をぐいと引っ張り、無言のままマンションの中に歩を進めた。
「なんか不機嫌ねえ? 寝てたの?」
酔っ払いの無邪気な上機嫌が、ゾロの神経に触る。指で割ろうとするかのように力をこめてエレベーターのボタンを押すと、抱きつかんばかりにしなだれかかって下から自分の顔を見上げるナミの頭を、手のひらでやや強引に押し戻した。
「酒臭え」
「臭いとは何よ! 臭いとは!」
深夜にも関わらず大声を上げるので、ゾロは大きな手でナミの口を押さえ込んだ。そのまま引きずるようにちょうど到着したエレベータ に乗せる。窓の無い扉が無音で閉まると同時に、5階のボタンを押した。
ういん、と音を立てて上昇する密室。もがもがと腕の中で暴れ出すナミがうるさくなって手を離すと、予想された文句の変わりにつややかな唇がゾロの口元に噛み付いた。
「ん・・・・、ふ・・・・」
酒のせいか、漏れ出る息がひどく熱い。それに妙にナミはハイテンションだ。唇が触れ合った瞬間にゾロの舌を自らのそれでからめとり、自分の唾液を流し込む。ゾロが反射的に抱きしめようとすると、自分から強く身体を摺り寄せてきて、その柔らかな感触でゾロの理性を崩そうとする。
「おい・・・・」
「ふふふ・・・・、迎えにきてくれた、ご褒美」
そして笑う。
ゾロは衝動的にその頭を乱暴に掴み、荒々しい口付けを繰り返した。
だが、エレベーターの到着とともに、さっとナミはその身を離す。
「なんだよ・・・・」
ゾロは不服そうに、離れ際にナミの手首を掴んだ。だがそれもナミは振り払った。
「弟クンと手を繋ぐ歳じゃないでしょう? あんたも私も」
馬鹿にしたような笑みを浮かべて、マンションの廊下を軽快な足取りで進む。
「弟じゃ、ねえ」
その三歩後ろを苦虫を噛み潰したような表情でゾロが歩く。その言葉にナミは振り返ってゾロを睨みつけ、そのまま黙って玄関の鍵を開けた。滑り込むように、ゾロが後に続く。扉の閉まるガチャンと言う音が収まったとき、ナミは靴を脱ぐ間もなく再度ゾロに捕らえられていた。
「弟じゃ、ねえだろうが」
壁に押し付け首筋に噛み付いて、その腰を強く抱く。ナミのハンドバックが音を立てて床に落ち、倒れた瞬間に中身が少し散らばった。筋に沿ってきつく吸い上げると、赤い吸い痕が大きく残った。
「・・・・あんた、そんなこと怒ってンの?」
「わりいか」
「だって、そーゆーことにしようって言ったじゃない。あんたまだ高校生で。世間体が悪いでしょ」
「てめえのな」
「・・・・そうよ。私にとっては、どうしたって、犯罪だもの。未成年と知ってて食べちゃいましたーってね」
「喰ってンのは俺だ」
「あらあ、どーてーだったくせによく言うわー」
そのナミの人を小ばかにしたような無邪気な笑顔に、かっとなってゾロはそのままナミの身体をフローリングの床に押し倒した。まだ脱いでもいないハイヒールの踵が玄関のタイルに硬質な音を立てる。さすがの衝撃にナミが小さく悲鳴を上げると、その悲鳴ごと大きく直に飲み込んだ。
口内を吸い上げながら、 ボタンを引きちぎる勢いでジャケットとその下のブラウスを脱がす。暴れる足を自分の足で押さえ込んで、膝を太腿の間に突っ込んだ。ブラジャー越しにでも質量のある胸を揉みしだくと、次第に抵抗が止んでいく。酒が入るとナミはいつもより感じやすく、いつもより乱暴な所作を喜ぶことをゾロは知っていた。
「・・ん・・・・あん・・・・ゾロ。痛い・・・・もっと優しくして・・・・」
「そう言う割には・・・・」
胸元に顔を埋めながら、空いた左手はスカートの下からもぐりこんでいる。ストッキングのざらざらとした感触ごしにショーツをなぞれば、じわりとした湿っぽさがゾロの指に感じられた。わしづかみにするようにストッキングとショーツを一度にずり下ろす。さらされた秘所に直接指を這わすと、粘着質な液体がどろりと指先に絡みついた。
・・・・濡れてる。しかも、いつもより。
とろとろと指に絡み付いてくるあたたかなそれを指でかき混ぜると、ナミの小さな喘ぎが耳を打った。その声も、いつもより高い、ような気がする。
普段のセックスの時より淫靡に見えるナミの態度に、指をゆっくりと秘所にねじ込みながら、ゾロの頭に興奮とは違う感情が芽生える。
いつもより酔っているからだろうか? それとも廊下の上でレイプまがいに愛撫されているせいか?
・・・・それとも、その前。タクシーで、いや、それに乗る前。
目の前に、ナミになれなれしく手を伸ばそうとした男の顔がちらついた。
「・・・・ったのか?」
不思議なくらいに声がかすれるのを、ごくりと唾を飲み込んでごまかそうとする。
「・・・・あ・・・・ん。な・・なに・・・・?」
「・・・・あの男とヤったのか?」
こんなに濡れているのは、その余韻なのか?
ゾロの目がナミを見据えている。その真摯な視線の裏側に、隠しようも無い情念の炎をナミは見つけた。それを見取って、ナミはゾロの首筋にしがみつき、くすりと勝者の笑みを浮かべ、噛み付くようなキスを与える。
「妬いてるの?」
否定も肯定もせず、 舌先でゾロの唇をなぞりながらナミは魔女の微笑でそう言った。
瞬間、ゾロの頭の中が沸騰する。
「・・・・ふざけんな!」
叩きつけるようにナミの身体を床に押し付け、そのままくるりとうつぶせにひっくり返した。まだ腕に絡み付いているブラウスやブラジャーを、本当に引きちぎりかけながら取りさる。レースの糸が切れる音がナミには聞こえた。だが、それに不平を言う間もなく、背中を這い回るゾロの舌に嬌声をあげた。
「あ・・・・、あう! あん! あん!」
背中はナミの性感帯の一つだ。乳首を食まれたときの痺れるような瞬間の快感ではなく、焦らされるようなもどかしい刺激に耐えられずに、ゾロの手によって高く突き上げさせられた尻が震える。突き刺さしたままのゾロの指が溢れ出す液体を中で大きくかき回した。
「あ! いや・・・・、ダ、ダメ。あ・・・・ああ!」
肩の骨筋に沿って、ゾロが歯を立てる。その痛みにさらに奥所の熱を上げてナミが悶えた。
背中という弱点はゾロに責められるまでナミは知らなかった。まだ一緒に住み始めて間もない頃。飽きることなくセックスを求めてくるゾロに身体の全てを明渡している時、全身を、それこそ爪先から髪の毛先まで全て食い尽くそうとするゾロの指と唇が、いままでに無かった快感をもたらしてくれるこの場所を見つけたのだ。
ゾロは噛み付いたままそこをきつく吸う。歯形といっしょに赤い痣が小さく残る。
自分しか知らないはずの、背中と言う弱点。・・・・他の男にも教えていたりするんだろうか?
あられもないナミの姿と、顔もろくに見なかった男の姿が交錯した。
・・・・確かに、好きだ、好かれたから始まった関係じゃない。
もしもナミが他所で別の男に喘がされていたとして、文句を言えるだけの根拠が、自分にはないことも、ゾロは分かっている。
だが。
「・・・・てめえは『彼女』じゃねえけど、俺は『弟』じゃねえんだ」
ゾロは自分の下でびくびくと身体を震わすナミの身体を押さえつけながら、はちきれんばかりに膨れ上がった自分自身を取り出し、スカートを巻き上げて晒したナミの白い尻にこすりつけた。
「挿れるぞ・・・・いいか」
「は・・・・う・・・・。ん・・ちゃんと・・・着けて」
ナミが息も絶え絶えにそう言うのを聞いて、ゾロは少し戸惑ったように視線をベッドのある部屋のドアに送った。コンドームはあの部屋にしか置いていない。このままナミを抱え上げてベッドに運んでもいいが、それをゾロはひどくもどかしく感じた。
今、この場で、挿れたいのだ。
と、目に付いたのは、帰宅した時に玄関に投げ出したままの鞄。そういや、と今日の昼休みのことを思い出して、ゾロは手早く片手でポケットのファスナーを開けてアルミのパックを手に取った。噛み千切って中身を取り出しながら、ふと、下から自分を見つめているナミに気づく。
先ほどまでの扇情的な表情が消え、ナミは大きく目を見開いて一点を凝視していた。
ゾロが手に持っている、銀色のパックに。
「・・・・なんだよ?」
装着しようとした手を止めて、ゾロは訝しげにナミにそう尋ねた。瞬間、ナミの腕がゾロの手首をきつく掴む。
「私が買ったやつとちがう・・・・」
手にしていたゴムをゾロから取り上げて、しげしげとそれを眺めた。その表情のままゾロの顔を見る。怒って睨んでいるわけではない、唖然とした、子供のように呆けた表情で。
「・・・・もしかして、外で他の女ともヤってるの?」
その質問に、今度はゾロが唖然とする番だった。 が、ゾロの腕の中から逃れようとしているナミに気づき、我に返って再度、今度は少し丁寧にその身体を床に押し付ける。あんぐりと口を開けたナミの表情を見つめながら、考えていることをようやく悟って、可笑しさのあまり口の端を少し上げた。
・・・・なんだ、こいつ。
「・・・・妬いてんのか」
今度はナミが沸騰する番だった。
「ち、違うわよ! 何言ってるの! う、うぬぼれないでよね!」
突然暴れ出したナミの身体をようよう抑えていたゾロだが、腹に膝蹴りを一発喰らった隙にするりとその腕からナミの肢体が抜け出した。慌てて手を伸ばして引き寄せるものの、ナミはなおも逃げ出そうともがく。
「おい、なんだよ。どこ行く気だ」
「う、うるさい! も、もうヤメ。今日はそんな気じゃなくなったの。もう寝る! おやすみ!」
「ちょっと待て! こんな状態でやめられるか!」
今度は仰向けに押し倒し、足を足で、身体を身体で体重をかけてナミが身動きをとれないように押さえつけた。おあずけを食らわされてなるものかと、ナミの腹に彼自身をこすりつける。先走った液が白い肌を薄く汚す。
「知らない! 別の女にヤらせてもらえばいいじゃないの!」
「いるか! そんな女!」
耳元で悲鳴のように騒ぐナミの声に負けじと、ゾロも腹に響く怒声で返答を返した。
そしてそのまま面倒だとばかりに唇を唇で塞ぐ。舌を噛み切られないように用心した、しかしねっとりとしたキスは、ナミが抵抗の為に全身をこわばらせた力が完全に抜けるまで続けられた。
「・・・・いないの? そんな女・・・・?」
つっと引いた糸を舌先で絡めながら、唇を触れ合わせてナミがそう呟く。
「・・・・毎晩毎晩、てめえとヤりまくってて、んな体力あるかよ・・・・」
「・・・・絶倫のくせに、何言ってんだか」
くすり、とナミの口元が微笑んだ。それを見やって、ゾロはもう一度ぬかるみに指を這わす。
「・・あん!」
「・・・・お前よくこの状態で、やめるなんて言えるなあ」
ついでに二本ほど奥まで突き刺して、それでも優しく出し入れを繰り返すと、焦らされたと感じたのかナミの腰が小さく震え出した。
「あ・・・・ん。ゾ・・ロ」
「・・・・挿れていいか?」
この押し問答にも少しも萎える気配を見せないそれは、びくりと震えたナミの腹の上で、さらにはちきれそうに膨らんでいる。
「・・・・ダメ。・・・・ちゃんと、着けなきゃダメ・・・・」
指に絡んだままのゴムを投げ捨てながら、ナミが微笑む。
「私が用意した奴しか、・・・・ダメよ」
「・・・・分かったよ」
一つ深いキスを交わして、ゾロはナミを担ぎ上げた。寝室の扉を開けると同時に、ベットの上にナミの身体を放り投げる。
「きゃあ!」
「じゃあ・・・・お前は?」
覆い被さりながら、ゾロがナミを覗き込んだ。
「・・・・何?」
質問の意味が分からず、ベットサイドの引き出しを開けながらナミが聞き返す。
「てめえは、あの男と、ヤったのか?」
「ああ・・・・」
何を聞かれたのかようやく合点がいったナミは、しばし思案顔で視線を逸らし、再びゾロの目を見つめて、悩ましい微笑を浮かべた。
あるいは、まだ、酒が残っていたのかもしれない。
「ヒ・ミ・ツ」
・・・・ゾロの神経はもう一度焼き切れた。
ナミが手渡そうとしたゴムを跳ね除けて、荒々しく手首を掴んでベットに拘束する。
「・・・・人をからかうんじゃねえよ! ・・・・ナマでぶちこんでやる!」
「ちょっとゾロ! それはダメだって言ってるでしょ! こら、ダメ! 乱暴者! さいてーよあんた!」
「悪かったな! ちょっと黙ってろ!」
「きゃー! あんたそれレイプよレイプ!」
「うるせえ! そういうのも好きだろうが、てめえはよ!」
・・・・喧騒は深夜遅くまで続けられたという。
*******
「・・・・は、・・・・うん、ゾ・・ロ、もう・・・・勘弁して」
「・・嫌だ・・・・」
高々と持ち上げた尻に、腰骨をぶつけるように何度も注挿を繰り返す。ナミの汗ばむ肌に、掴んだ細い腰をすべり落としそうになるのを堪えながら、カーテンの隙間から差し込み始めたまだ薄い朝日に照らされた、その白い背中に意識を集中させた。
シーツに乱れるオレンジの髪が、なお一層波打つ。それを見やって、ゾロはさらに下からねじ込むように幾度も攻め立てた。
「あっ! やあ! ・・・・も、もう無理・・。・・・・死んじゃ・・う!」
今夜何度目になるか分からない悲鳴を上げて、か細い指先がシーツをきゅっと掴む。
だがその手をさっとゾロは掴み上げた。
「あうん!」
「まだ、・・・・イッたらダメだ」
その手を捻り上げるようにナミの背中に縫い付ける。痛みこそなかったが、力の逃がしどころを失ったナミは、懇願するような涙目を背後のゾロに向けた。
「・・・・意地悪・・・・」
「・・・・うるせえよ・・・・」
どっちがだ、という言葉をようよう飲み込んで、ゾロはさらにナミの腰ごと強く震わせた。
引き抜き、差し入れるたびに、ナミの秘所から溢れ出す愛液が、互いの太腿を伝って濡らす。
「あっ! ああっ! ゾロ! ゾロ・・・・、お願い! お願い!」
泣き声に近い叫びが、自分の名を呼ぶ。
くらりと覚えた陶酔に近い眩暈に、ゾロは唇を噛み締めて耐え抜いた。
溶けるような熱いたぎりが、頭の奥を侵食していく。
後は、全てが白く、弾けるまで。
全身の力を使い果たしたかのように、うつ伏せで折り重なるように脱力していた二人は、心地よい眠りに身を攫われる時間もなく、起床時間を告げるアラームに気だるい意識を送った。
「・・・・何時?」
それでも重たい身を起こしてその音を止めたゾロに、シーツから這い上がれないナミがくぐもった声で問い掛ける。
「6時」
「・・・・一眠りも出来ないじゃない。今日も会社なのよ・・・・」
「俺だって学校だ。朝練もあるし、もう出ねえと」
「もう! あんな無茶して! 殺す気!?」
頭の下に敷いていた枕を投げつけられて、それをひょいと交わしながら、ゾロは人の悪い笑顔を浮かべて睨みつけるナミに軽くキスをする。近づいた隙に顔やら腕やらを引っ掻かれたのは予想の範囲内だ。
「悪かったって。・・・・いいじゃねえか、あんなに善がってたくせに」
「ち、違うわよ!」
「結局は、ちゃんと着けたんだから問題ねえだろ?」
その言葉に、ナミは幾分頬を染めながら、ちらりとベットのヘッドボードに視線を送った。開封した銀色のパックが、そこにいくつ転がっているかは数える気にもならない。
「うるさい! バカ!」
もう一度飛んできた枕を今度は顔面で受け止めて、ゾロは笑いながら服を拾い寝室を出て行った。眠気覚ましにバスルームで熱いシャワーのコックを開く。
その水音では、寝室に残されたナミの、溜息混じりの独白が聞こえる筈もなく。
「・・・・まったく。ヤりたい放題ヤってくれちゃって。何よ、あのさっぱりした顔! ・・・・まあ、満足したらすぐにご機嫌になるところは、可愛いと言えば可愛いんだけどさ・・・・」
ゆっくりと半身を起こして、悲鳴を上げる腰を擦る。
「・・・・あんなケダモノと暮らしてて、他の誰かとヤる体力なんて、私のほうが無いってば・・・・」
朝日の輝きは、今日一日の晴天を告げていた。
−FIN−
(2005.05.24)
<管理人のつぶやき>
OLナミさんと高校生ゾロ再び!恋人同士とはいえない微妙な関係の同棲生活を送っている二人です。
ナミの背後に見える男の影に嫉妬してしまうゾロ。でも、それはお互い様だったり。
嫉妬がスパイスとなっていつもよりも荒々しいえっちになりましたv
しかも朝までとは・・・ホントに絶倫男なんだなゾロは(しみじみ)。
それにしても二人の関係が気になります。どんな風にして知り合って同棲することになったのなぁ・・・。
「BED IN」の続編でした!時間的にはこちらの話の方が前だそうです。
ソイさん、またまたえろえろどうもありがとうございました〜♪