「おい、サボテン!何で体育教官でも無い担任が、柔道着着てここにいんだ?」
「……知るかっ!」
厭な予感がする………。
「痛ってぇ〜!てめぇ、この…」
「と、いうようにだな。ちゃんと受け身をとらないと、こんな無様な姿になる訳だ。いくら棒っきれ持って、全国一位と謂えども、基礎となる体が中途半端なら、簡単に放り投げられる、ってこった!解ったら皆続けて…」
「やろーっ!ふざけん……」
『おーっ、ゾロが飛んだぁ〜』
クソッ、覚えてやがれっ、赤髪っ!…痛ってぇ〜
娘の彼氏は、とりあえず殴っとけ! −1−
CAO 様
「たっだいまぁ〜!パパのお帰りだぞぅ〜。」
「何?ご機嫌じゃない?」
「おぉ!麗しのベルメール。ダーリンのご帰還だっ。愛してるぞ!」
「…アンタ、何言ってんの?頭でも打った?」
いや、いや。打ったのは俺じゃない。あのバカガキだ!しかも頭じゃない、男の命ともいえる『腰』だっ。まっ、俺が投げてやったんだが…これで当分使い物にならないハズ。ふっふっふ。
て事は、うちの可愛い末娘の貞操も守られたって訳。流石、俺。家族の危機に敢然と立ち上がる、一家の大黒柱。やるねー。
先週夕方の職員会議前、校内見回りやってた時、最愛の我が子が普段は見せない最高の笑顔で、正門へ走る姿を見付けた。後を追うと、其処には俺が担任するクラスの問題児生徒ロロノアがいやがった!しかも、抱き合って…俺の娘に手ぇ出してやがる!
最近は俺だってたまにしか、抱きつかれたりしないんだぞっ!確か最後に抱きつかれたのは?小遣いアップの話…いや、そんな事はどうでもいいっ!
兎に角、公衆の面前で破廉恥な行為に到る様なヤツに、うちの娘が騙されているとなると…これが、許せるかっ?父親じゃなくても、一人の常識ある大人として、聖職にある教師として放っておけるか?だから、俺は決心したっ!
『娘を守る!!』
事もあろうか、我が愛し子ナミは、そんな親心も知らず、このボンクラ男を彼氏だと言い、仕舞にはこの筋肉バカと「ヤル」とヌカシやがった!高校生のクセに!まだガキのクセに!
そんなフザケた事、口にする娘じゃなかった筈…こんなになったのは、万年寝太郎!迷子小僧!ロロノアが唆したに違いないっ!
それからというもの、それとなくエロガキの様子を伺ってたんだ。毎日、学校で…
そう、そして今日!待ちに待ったチャンスが訪れた。
体育:柔道
うちのクラスにゃ、珍しく柔道部員がいない。アホ剣道部員は若干一名いるが…体育教官も剣道部とくりゃ、黒帯の俺の出番ってこった!普段俺のナミに、寝技かけようと虎視眈眈狙ってる発情期野郎をコテンパンに…じゃなかった、可愛い教え子達に本物の技ってモンを見せてやるって寸法よっ。
その時に、どんな不可抗力が起こるかは、知ったこっちゃねぇが。
柔道部員がいないから仕方なく、そこそこ体力がある奴相手に見本をみせる事にした。ざっと見渡すと、いたいた!筋肉だるま…ロロノアが。
中々骨がある様で、投げられても、投げられても向かってきやがる。そっちがその気ならと、みっちり投げ飛ばしてやった…てな訳で、気分爽快なんだなー。
「愛しい娘達よー!淋しかったかい?パパが帰って来たから、もう大丈夫だぞ!」
「何が大丈夫なんだか?」
自室の扉を開けて出てきてパパのお迎えとは、うんうん、良くできた長女だ、ノジコ。やっぱその辺のチャラチャラした女子大生とは、一味も二味も違うなっ!
「…何浮かれてんの?」
今の呟きは、耳に届かなかった事にしよう…問題は、ナミだっ。
いけすかねぇーロロノアが、今日の顛末をナミに告げ口してる可能性は大だ。それならそれで、奴のケツの穴が小せぇトコが解っていいかもしれない…な!
リビングの扉を開けると、
「……あ、お帰りシャンクス。」
「あぁ、今帰ったよぉ〜待ってたかい?」
「……きしょっ!」
なーんだ。普段通りの可愛いナミだ。別に喰って掛かる様子も無い。考え事でもしてたのか?面食らった顔してはいるが。さっきの一言も聞かなかったからいいし…。
「そうだ!シャンクス。今日何か変わった事あった?学校で。」
うっ。まずいなーこりゃ。
「い、いやー、別に。どうかしたのか?」
「何も無いなら、それでいいわ。…大した事じゃないから。」
「そ、そうか。ならいいけど…。」
そんな不信な顔するなよ…
「こっ、困った問題があるなら、何時でも父さんに相談しろよっ。俺は何があろうと、どんな事が起ころうと、ナミの味方だからなっ!」
「………はぁ?」
…ロロノア、言ってねぇのか?
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