ロロノア・ゾロなんて、今じゃしらねぇって奴はいないくらいで
まさかなぁ、地方バンドからあんなに成長していくのは初めてよ
俺も知らなかったけど、ただの高校生からってんだからたまげたってもんじゃないよなぁ





Armlost   ♯9
            

雷猫 様



ピピピピピ・・・

遅く寝たせいかいつもより目覚し時計がうるさく聞こえた。
ゆっくりと体を起こし、カーテンを開ける。
涙の後が、かすかに頬に残っていた。


ゾロに別れを告げた。

そんな現実が自分でも信じられない。
開け切らない目をこすって鏡を見る。



「・・・・ひどいカオ。」



涙が出そうになるのをこらえながら、ナミは学校の身支度を整えた。
と、ちょうどその時窓の外から声が聞こえた。



「ナミ〜!!!」


自分の部屋、つまり二階の窓から外を眺めると、そこには笑顔でこちらに手を振っているルフィがいる。


「ルフィ・・・。」


あまりにも無邪気な顔に、ナミは優しく微笑んで、朝食にするパンを持って家をでた。



「おはよう、ルフィ。あんた来るの早過ぎよ。」

「俺は早起きなんだ!毎朝5時には朝のジョギングにいってるんだから。」

「ジョギング!?あんたただのバカじゃなく体力バカでもあるのね・・。」


ハハハ、と本当にルフィは楽しそうに笑う。
それが少し、ナミには羨ましかった。


「ねぇ、ルフィ。あたし・・・・・」

言い詰まったナミをルフィは不思議そうに見る。

「ん?」


「・・・・・・ゾロと別れた。」




「!!っえ?なんで・・・・ナミ・・・・・・ぢゃぁ・・。」

「でもね、ルフィ。」




「私ルフィとは付き合えない。」

ルフィはとても切なそうな顔をしている。


「もちろんアンタの事は大スキよ。」

「ぢゃぁ付き合おう!俺もナミが大好きだぞ!!」


「そう言う事じゃなくて、私はルフィと付き合う為にゾロと・・別れたわけでもないの、・・・分かる?」



「ん〜〜、わかんねぇけど、でも俺ナミが好きだから我慢するよっ!・・・元気出せよ。」



ふと見せるルフィの男らしさに、また涙が出てきそうになった。











-昼休み-


「別れちゃったのね・・・・・・。」

食堂の一角で、ナミはロビンにその話しをした。

「うん・・。ごめんね、ロビン。いろいろアドバイスしてくれたのに・・・。」

「それはいいのだけど・・・、もう会わないの?」

「えっ?」

「そのカレは、明日イギリスに帰ってしまうんでしょう?最後に会わないでもいいの?」

「・・・・・・。」


そうだ、ゾロは明日またイギリスに帰ってしまうのだ。それはナミも痛いほど分かっていた。


「だけど・・・・・。」




「Armlost」



「・・・・・・・は?」


「意味分かる?」

「アームロスト・・でしょ?腕を・・失うじゃないの?」

「そうね・・・・。」


ふぅ、と溜息をつくロビンを、ナミは不信そうに見つめた。

と、ナミの目の前に1枚の紙がさらされた。


そこには「Armlost」と書いており、その下には走り書きのように汚く薄い字で歌詞のようなものが書いてある。


「カレのバンドのデビュー曲のサビ、カレがかいたらしいのよ。」

「デビュー曲・・・・・?」


「あなたに渡せって、真っ赤な顔で。」

クス、とロビンは笑った。

「・・・って、ロビン ゾロに会ったの??」

「向こうから来たのよ。私とあなたは仲いいからって・・・・・。」


「アームロスト・・・・・?」


「意味はね、たしかに腕を失う・・だけど、そうじゃないのよ。カレはドラマーでしょう?ドラマーにとってドラムを叩く腕はとっても大切なものってこと・・・なんですって。」

「それがどう・・・・・?」


「腕とはあなた。」


「・・私?」




「読んでみて。」









Armlost



お前自身を生かせ     自分自身を生かせ

人生なんてただの祭り

なんでも利用して

自分の好きなことをしろ

それが後悔することのないように

失敗しても別にいい


たとえ腕をなくして     なにもかもが敵となっても

それがお前の選んだ道なら

それでお前が幸せになれるなら

それでお前が苦しまなくていいなら 

誰がお前を止める?   誰がお前を蔑む?




そう 人生は祭りだ


失敗したらやり直せばいい

0から












「昨日そういうことがあってから・・・、大急ぎで書き換えたって朝、通学途中で渡されたわ。」

「・・バカじゃないの・・・・・。バカ・・・・・。らしくないじゃない、全然・・・。」


真っ赤にした頬を涙が伝った。


「ロビン・・・・。」

「なぁに・・?」


「ありがとう・・・!」

涙でぐしゃぐしゃになった顔で笑った。


「じゃ、そうと決まったら行くわよ。」


ナミはロビンに手を捕まれ立たされた。


「っえ?」

「ちょっと遅くなったわね・・。昼にあなたを校門で待ってるって。最後に会いたいから・・。間に合うかしら・・・急ぐわよ!」


「ロビン!?」

叫んだ時には引きずられながら走っていた。



外に出たら、見なれた緑頭がもう校門から離れ去っていっている所だった。


ロビンにトン、と背中を押され校門まで行く。そこでもう離れてしまっている彼の背中めがけて思いっきり叫んだ。




「ゾロッッッッッッ!!!!!!」



あまりの声の大きさにびっくりしたのか、少しビクッとなってから振り向いた。



「・・・・ナミ・・??」



「・・・・仕事なの?」

「・・あ、あぁ、ちょっと立てこんでて・・・。」



時間が無い。
文句も、
皮肉も、
言いたい事はたくさんあった。

でも・・・・
本当に言いたかったのはこれだけだった。




「ゾロ!!」




「もし!私がもうダメになって・・・・・!!訳わかんない位あんたに会いたくなって・・・・それで!あんたに電話したらっ!!」




「帰って来てくれる・・・・・?」







枯れるくらいの大きな声で、ゾロに聞いた。


ゾロは、フンと笑って




「どこだって行ってやるよ。」










そう行ってゾロは去っていった。



「バーカ。」



そう呟いて、空を見た。



信じられないくらい綺麗な青空で、なにももやもやがなくなったナミの心と同様に澄んでいた。







そう 人生は祭り



やり直せばいい     何度でも


0から




end


←♯8へ

<雷猫さんのあとがき>
すごい短いくせにすごい時間かけて書きました。
こんなトロイ私に最後まで付き合ってくれて四条さん、ありがとうございました!!
そしてこれを読んでくれた皆さん!!!本当にありがとう^^おぉ〜感無量(某CM

最後に、果たして2人はヨリを戻したのか?それともそのままの友達以上恋人未満ってヤツかぁ?なんて思う方もいる(と思う)でしょうが、それはご想像にお任せです☆(無責任)


(2005.01.28)

Copyright(C)雷猫,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
この作品はいつも冒頭のフレーズにすごく惹かれました。簡潔でありながら余韻が残る。
この部分を読んで「今回はどんな話なんだろ〜?」と頭を巡らせていました(笑)。
そして最終話は、実は第1話と同じ冒頭なんですよね。ああ、こうやって物語は最初に連なっていくのかと得心がいったのでした。
また、タイトルである「Armlost」がここで登場。
そうか、こういう意味だったんだ!って思いました。
この後二人はどうなったのか?雷猫さんが仰る通り、想像することにいたしましょう。
けれど、二人の絆はいっそう深まったと確信しています。

なにはともあれ雷猫さん、長期連載お疲れ様でしたーー!

 

戻る
BBSへ