こんなにたくさんの幸せを、私は初めて味わった。






過去も今も、これからも  −1−
            

味海苔 様




目が覚めると、明日が今日になっただけなのに、妙にそわそわしている私がいた。
そう、今日は結婚式。
最初は勿論結婚なんて考えてなくて、ただ少しだけ男女を意識するようになっただけだった。いつしかずっと一緒にいられるための確かなものがほしくなって、ゾロと相談して、夢を叶えたら私の村で式を挙げると決めた。でもつい先月に妊娠しているとわかり、子供を産む前に、二人の誕生日の間の今日、9月6日に結婚することになったのだ。
それからはずっとドタバタで、衣装だの料理だのプログラムだので話し合いばかりして、それも皆今日のためだと思うと、やはりどこかむずむずする。

「ほら、出来た」
「ありがと、ロビン!」
早速姿見の前に立ち、自分の格好を確認する。我ながら、すごく綺麗だ。ゾロが見たら、何と言うだろうか…
「では、剣士さんを呼んで来るわね?」
私の心を読んだかのように、ロビンが立ち上がる。と入れ替わりに、開いた戸からゾロが入ってきた。
「悪ぃな、ロビン。終わったと聞こえたんで、つい…」
「ふふ、いいのよ。早く見たかったのでしょう?私は支度をして来るわ」
図星を指されてガシガシと頭を掻く。照れている時の癖だ。
足音が遠ざかり、沈黙が訪れる。ああ、夜でなくこういう時にこそ、自分から褒めてほしいのに。望みすぎだろうか。まあ良い、言わせるコツは心得ている。
「…ゾロ、どう?」
少し上目遣いで名前を呼び、少し首を傾げる。私でないと、効かない魔法。
「…すげぇ、綺麗だ。」
目の端を染めながらぽそりと呟くゾロは、とても可愛くて。でも。
「だめ。せめて夜にして。あんた、止まんないでしょ。」
キスしようとするゾロを止め、意識を他に向ける。
「もう時間じゃない。ほら行くわよ」
丁度よく合図のベルが鳴り、私達は甲板の式場へ向かった。




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(2012.11.12)


 

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