過去も今も、これからも  −2−
            

味海苔 様




ブルックのヴァイオリンの音と同時にテントの幕が開き、私達は一歩ずつ、ゆっくりと前へ進んで行く。本当は父と一緒のはずだが、今感じるのはゾロの腕。普段と違う服の中にあっても、それは確かにゾロのもので。自然と微笑めば、もう突き当たりに着いていた。
「ヨホッ、皆さんお願いします!讃美歌312番より、麦わらバージョン!」

慈しみ深き 母なる海は、
我等が命を 育みたもう。
試練の中にも 笑み交えれば、
皆して届かぬ 追える幸へと。
アーメン。

「御斉唱、ありがとうございます!一同、着席!」
ブルックの号令で皆座ったのはいいが、次が始まらない。サンジ君の注意で、やっとルフィが喋りだした。
「シシシシシ、忘れてた!…俺、本物の牧師じゃないんでよくわかんねぇんだけど、」
「愛って、強いし大切だ。親子愛も、兄弟愛も、仲間愛も、師弟愛も、友達愛も、隣人愛も、どれもすげぇんだ。でも、一番難しくて一番すげぇのは、夫婦愛だと俺は思う。俺らにとって、夢とか約束とか仲間とか肉とかは強さの材料だけど、愛もそうなんだ。だから、愛は絶対になくしちゃいけねぇ。」
「そのために、ゾロ、お前はナミを幸せにする自信があるか?」
「ったりめぇだ。」
「んじゃナミ、ゾロの隣で一生笑って生きていけるか?」
「当たり前じゃない。」
胸を張って、笑顔で返せば、ルフィ牧師もニカッと笑って返事をくれた。
「だと思った!指輪交換と、約束のちゅーだ!」
ゾロと、結婚指輪を交換しあう。すごく大切な時間。一度も瞬きをしたくないと頑張っていたら、目が乾いて少しだけ涙が出てきた。誤魔化すようにちらりと客席を見ると、最後列のロビンに、何やら意味深な微笑みを返された。
「…おい。」
「!ゾロ、ごめん」
ちゃんと目を合わせたら、いつもよりふわふわしたキスをされた。誓いの、キス。きっと、いえ絶対に、忘れない。
「ゾロ、ナミ!これでお前ら、本当の夫婦だな!おめでとう!」
私の夫に促されて、拍手とお祝いの言葉の中を退場する。チョッパーとウソップが、抱きあって泣いている。サンジ君がハートを飛ばしながら漂っている。ブルックがクルクル回りながら楽器を奏でている。フランキーとロビンが手をつないで笑っている。ルフィが、満面の笑顔でこちらを見ている。そして、
「ビビーーーっ!!お・れ・た・ち・も、だぞーーーーーっ!!!」
…幸せだ。


「野郎共!片付け及び披露宴の準備だ、ぬあみすゎんのために、頑張るぞー!  
畜生、嬉しいんだか悔しいんだか、さっぱりわかんねぇ。…彼女が幸せなら、それが一番、だな。




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(2012.11.24)


 

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