過去も今も、これからも  −3−
            

味海苔 様




15分程で席に呼ばれ、進行役ウソップの(本人曰く)感動的な演説を聞いた後、いよいよナイフが渡された。ゾロと手を重ね、まさにウェディングケーキを切ろうとしたところ、私達はあることに気が付く。ケーキの側面に、等間隔に薄くハートが描かれていたのだ。慌ててハートを避け、今度こそナイフを入れた。
「ここで、ファーストバイト・セレモニーです!まずは新郎から新婦へ、“一生守り抜く”という決意を込めて!」
少し震えるゾロの手に、ケーキを食べさせてもらう。ほんのり蜜柑の香りがしたが、真っ白な頭では味もさっぱりわからなかった。
「そして、新婦から新郎へ“一生を照らし導く”という気持ちを込めて!」
「んナミすゎん!の光の分だけ、食べさせてやってくださぁ〜い!!」
「おい、てめ「分かったわ!本当は足りないところだけど、ゾロならこれくらいいけるわよね☆」
言うが早いか、拳大のケーキを差し出す。まだお話の途中らしい口に、タイミング良く突っ込んだ。
「むぐ、むぐぐ……あんま甘くなくなくて良かったぜ、まったく」
他の皆も笑っていて、固まっていた私をフォローしてくれたサンジ君に目を向けると、ラブビームを飛ばしてくれた。ごめんねとありがとうを込めて微笑めば、マイクへとスキップして行く。
「えー、僕からは2人への祝福と新しい命への期待を、料理にのせてお届けしたいと思います。待ちきれない奴がいるんでメニューの読み上げは省略しますが、チョッパーの話を参考に、ノンアルコールで体に優しい食卓を心掛けました。それでは、」
「「「「「「「「「頂きます!」」」」」」」」」
たちまち賑やかになり、テーブルのあちこちで笑い声が上がる。そっと傍らを見やれば、ゾロとぴったり目が合った。
「…なァ、これで本当に“夫婦”なんだな。」
「ふふ、そうね。すぐに“親”にもなる、っていうかなってるし。」
「おう、気ィ付けろよ。それに、俺も待ってるからな」
そう言ってお腹にそっと重ねられたゾロの手に、私も自分のを重ねる。
本当に美味しいのは、料理だけでなく、こうした一瞬間も、だった。




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(2013.06.02)


 

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