AM 5:42  −4−
            

モロッコ☆ 様



しばらくナミが待っていてもいっこうにゾロからの言葉は返ってこないのでしかたなくナミはスクッと立ち上がった。
女性にしては長身のナミが立ってもゾロの顔は見上げる位置にあった。
ナミはポケットに手を突っ込み中身を手に納めると、まだ涙のあとの残る目でゾロをみつめた。

「これ、ずっと渡したかったの。」

そう言ってナミは拳をゾロの胸板にぶつける。
ゾロは一瞬面食らって、それからナミの手のしたに手を出した。その手に、クシャッとまるまった紙が転がり込む。
ゾロがそれをそっと開けば、中には080・・・・という番号とアドレスらしきローマ字がならんでいて、それから「友だちになってv」という文字がしわくちゃの紙にボロボロになって辛うじて読みとれた。
ゾロが紙から目をあげるとナミはまた俯いていて、ゾロは場違いにも「睫が長ぇ。」などと思ってしまった自分に苦笑して口をひらこうとした。

「ダメっっっ!!」

「あ?」

ナミに言葉を遮られてわけがわからないゾロは眉をひそめる。

「やっぱヤダ!!ダメ!ダメよ!!!」

そう言っているナミの顔はさっきまでよりいくぶん女の子っぽく、目元はピンク色だった。
ナミは今まさに自分が言おうとしていることが自分でも大胆だ、とはおもったが熱のせいだと思いこませ一度唾をのみ下してまっすぐゾロを見つめ直した。


「友だちだけなんて嫌なのっっ!!!」

「・・・・。」

「「・・・・・・。」」

ナミは言ってからやっぱりはずかしくなってそっぽをむき、ゾロはゾロで何をいったのか理解するまでに時間がかかって、しばらくしてから耳を真っ赤にした。

「ご、ごめん。もう、あたしおかしいみたい。そ、そうあたし風邪ひいてんだった。熱あんのかも、あーそういえば頭痛いなーーなんて、あは。じゃ、じゃあそうゆうわけでか、変えるわ!おじゃまさま。」

そういって無理矢理笑って帰ろうとするナミの手をゾロが思いっきりつかんで引っ張る。

「ちょっとついて来い。」

そう言われて手を引かれ、ナミは周囲の視線を痛いほどに感じながら「松葉杖はいいのかな?」なんておもってしまった。
ゾロが足を止めた先は屋上の入口だった。思い空気の中で先に口を開いたのはゾロの方だった。

「お前、本気で意味わかっていってんのか?」

ナミはだまってコクリと頷く。

「熱のせいにしてあとで謝るなよ?」

ナミはもう一度しっかりと頷いた。

「な、なら・・・まぁ・・・その・・・。」

ゾロはおたおたと何か言おうとして、目線を落とし自分がまだ手を繋いだままなのに気づいてその手を力まかせに引っ張った。
ナミの体は簡単にゾロの腕におさまった。

「!!!!」

驚いてゾロを見上げるナミにゾロは耳を赤くして苦笑する。

「こーゆーことだ。」

ナミは「どーゆーことよ?」と聞きたかったが嬉しかったからおとなしくゾロの首に腕をまわした。

「ねぇ?」

「ん?」

ゾロが低いけれど優しい声で聞き返す。

「足、痛くないの??」


「・・・・。」

「「・・・・・・・・。」」


「イッテェ!!!!!!!!」



ソロの叫びは病院内にこだまして、後で婦長さんにこっぴどく叱られたのは言うまでもない。




















ウィ――ン。

「いらっしゃいませ。」
「541円になります。」
「いってらっしゃいませ。」

朝のコンビニはいつもと変わらない。

「ナミちゃん。悪いんだけど今何分かわかる?」

バイト君がおにぎりを並べながらナミにきく。

時計を見なくたって分かる。
外ではゾロが牛乳パックを傾けている。


「42分よきっと。」

ナミはバイト君の方を見ずに答える。

ゾロがこっちに気づいて目を細める。

すかさずナミは口をうごかす。バイト君にばれないようにその形だけで何かを伝える。

そうすればあの日のようにゾロは牛乳を吹き出し顔を赤くしたまま走っていってしまう。

ナミは見えなくなっても、ゾロの走っていった方を見つめたまま―――――


――――ヴヴヴヴ、ヴヴヴヴ――――    

――――ケータイがメールを受信する。―――――



開けばナミの顔がほころぶ。
件名はRE:のまま、内容はたったの3文字。








『俺もだ』





メールの受信時刻は5:47。
それはたった5分の幸せ。
あなたならあの時ナミが何を言ったかおわかりですよね?




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(2004.08.05)

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<管理人のつぶやき>
バイトにいそしむナミ。毎朝AM5:42にコンビニに現れる男ゾロ。
ゾロは無口が定番ですが、ここまで無口なのは初めて見ました。「ん。」「ん。」て(笑)。しかし、腕っ節と度胸はなかなかのもの。不良達を一瞬の内にやっつけてしまう。それもそのはず、実は柔道家だったのだ(この設定も珍しいよね。剣道はよくあるけど☆)。
それからナミはゾロのことを意識し始めてアプローチ。逆にゾロはタジタジとなってしまう。
不良よりもナミの方が強敵のようだ(笑)。
ラスト、ゾロはどんな顔してこのメールを打ったんでしょうかvv 想像すると楽しー♪

モロッコ☆さんの初投稿作品でした。素敵なお話をありがとうございました♪

 

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