「11」-eleven  後編
            

モロッコ☆ 様



現在ナミは中学3年。
そしてこの男・・・つまりナミの叔父は25才。彼は「鳶職人」とゆうやつである。
たまの休みは家でグータラ、仕事の日はド汚い格好で帰ってくるというこのどうしようもない叔父のことをナミは「叔父さん」ではなく「ゾロ」と呼ぶ。
本人曰くまだおじさんじゃねぇとかなんとか。こうゆうところが”姉”ベルメールに似ているとナミはつくづく思う。ベルメールも自分のことを名前で呼ばせていた。ベルメール曰く「まだあたしは女だよ。」だとか・・・ますます似ているとナミは思わず笑みをもらしたものだった。

まぁそうゆうわけで、ナミはこの11才年の離れた叔父のことを「ゾロ」と呼んでいる。

最近このゾロはナミにちょくちょくある質問をするようになった。

「お前、彼氏はできねぇのか?」

新聞を読むふりをしながらさり気なく聞く。しかしその新聞は逆さまだったりする。

「いないわよ。」

ナミも皿を洗いながらそっけなくこたえる。

「おーおー、その性格じゃぁなぁー。」

「失礼ねっ!!こんなかわいいナミちゃんがモテないハズないでしょっ??」

いかにも不服そうにナミが皿を憤慨する。

「ホントかよ・・・。」

ゾロはゾロで訝しげな目でナミを見る。新聞を読むふりはどうやらもうやめたらしい。

「いいのよ!あたしはずっとゾロと一緒にいるんだから!!」

「・・・・・。」

「なによ?幸せ者じゃない?こーんなかわいくて優しいモテモテナミちゃんがずっと一緒なのよ??」

なんてゆう会話が最近この二人の間でよくかわされるのだ。
「ゾロとずっと一緒にいるんだから」――――――それがナミの口癖になっていた。

ナミは今中学3年生だ、青春まっさかりのまさに恋愛とかそうゆうたぐいの事に興味が注がれる時期。
それなのに男の名前一つ出さないナミが心配になるのも当然である。正直叔父であるゾロとしてもナミは十分かわいいと思っている。それなのにそうゆう話を話さないのは、自分が本当のおやじゃなくて、しかも男だからだろうかとゾロなりに心配してのあの発言だった。

しかし実際ナミはモテる。
顔はもちろんスタイルも文句なし、性格は少々きついが男に媚びないところがいいと、モテる系男子からの支持も厚い。(モテない君たちは優しい女が好き。てゆうかナミには手がだせない。笑)が、ナミは彼氏いない歴15年である。原因はゾロだった。中学一年あのあの引き取られた日から今まで、ナミは日々ゾロに惹かれていった。それはゾロの厚い胸板だったり、たまに見せる笑顔だったり、顔に似合わず心配性な所だったり、ナミの誕生日のために彼女にふられちゃった所だったり、あげればキリがなくて、汚い格好で帰ってきてそこらへんに脱ぎ捨ててある作業着を片づけてる自分も嫌いじゃなかったりするあたり重症だったりするが、そうゆうゾロとずっとすんでいるナミにとって学校中の男子はあくまで「男子」、男ではないだ。
だから「ゾロとずっと一緒にいる」はあながち冗談でもなく、ナミはゾロを本気で「男」として好きなのだ。
これだからナミは学校でだれか彼氏をみつけようなんて一度もおもわず、そして作ることもなく現在に至る。そしてその「誰にもなびかない美人。」の噂は今や学校中に知れ渡り、今となってはちょっとした有名人でもある。まぁ、その一つの要因はゾロのこともあった。




それはある台風の日。朝は晴天だったのに台風は進路を変えナミたちの住む町もおそった。
案の定かさを持って出かけていないナミのもとにゾロが迎えにきたことがあった。(仕事着のまま軽トラで;)
それをめざといクラスメートが発見したのが事の始まり。

「えっ!?誰あれ!」
「門のとこで誰か待ってるっぽくない?」
「ってかチョー格好いいじゃん!!」
「うそっ誰っ?ナミの知り合い?」



「あたしのおじさん。」



このナミの一言が発端で、その日からゾロファンクラブらしきものが結成されたとか。
とにかくこの親子ならぬ叔父と姪は学校中でかなりの知名度である。ナミとしては初めは叔父であるゾロが回りに認められて嬉しかった。
しかし、自分だけのゾロじゃなくなってしまったような気さえして少なからず寂しかったりもするのだ。

そしてナミの気持ちは未だゾロに伝えることなく秘めたまま今日に至る。
ナミとしても自分が叔父であるゾロとは「結婚」はできないとゆうことは知ってはいる。しかし好きは好き。片思いでもいまはゾロに彼女もいない、暇なときは家にいるだけ、普段は仕事、それでもこの関係でまだ満足していた。
なのに最近「彼氏」のことを気にしだしたゾロに少しムッとしているのも事実。
確かにナミはゾロに言葉で「好き」と伝えたことはないが、ふつうの男ならば嫌でも気づくほどのアピールはほぼ日々しているというのに、なぜそんなに彼氏をつくらせたがるのか。大体なんで気づかないのか。それに加えて今のこの態度。

そう、ナミが今いつも以上に怒っているのには理由があるのだ。

今日はナミの誕生日だ。

しかもかなり前から誕生日に一緒にナミの好きなところへどこへでもいく「約束」をしたのだ。

にもかかわらずゾロはおこしてもグーグーと、起きる様子も見せない。

ナミがおこっておたまでたたいたって無理は・・・・・・ない・・・・ですよね?





――――――バッコッ――――――――――――

それは思ったより鈍くくぐもったショボい音をたててゾロの頭に直撃した。

「っっっっっっ!!!!??」

ガバッと起きあがると何が起きたのか分からないとでも言うかのようにゾロはふくらみつつある頭をおさえてキョロキョロする。

「おはよーうw」

ナミはこれでもかというほどの猫なで声でやっさーしくゾロに声をかける。

「おい!痛ぇ!!お前なんつー起こし方するんだっ!そんな風に育てた憶えは、」

――――――ゴンッ――――――

ゾロが途中までいいかけたところで再びおたまがふってくる。

「うるさいっ!!!今日なんのひだとおもってんのよっ!」

「今日・・・・・。」

「なに?それも忘れて寝てたわけ?起こしても起こしてもグーグーとっ!」

「・・・・さぁなんだったか?」

ゾロのこの発言にはナミの頭に全身の血が上った。

「さぁ?さぁですって?今日がなんの日かわからないわけ?あんっなに前から約束したじゃない!!3ヶ月も前から!今日は休みをとるから一日あたしにつきあってどこへでも連れて行ってくれるんじゃなかったの?毎日家事をまかせて悪いし何か好きなもんでも買ってやるんじゃなかったの?しんっじらんない!!!!ゾロは約束だけは守る奴だと思ってたのに!なによ、今日まで楽しみにして健気に頑張ってきたあたしがバカみたいじゃない??!!」

そこまでゆうとナミはプイとそっぽを向いてしまう。
まだ成長途中の、ゾロにくらべるとだいぶ小さい肩がふるえてるのは泣いているからか怒りのためか、ゾロからはみえなかった。

「そうか。そうだったな、今日はお前の誕生日だ。」

「もう、遅いわよ。」

今日は出かけるためにナミは早起きした。台所にはまだ温かい朝食が湯気をあげたままだ。

「ああ、わりぃな。お詫びにこれでもやるよ。」

――――――バコッ―――――――

「いったぁ。なにすん・・・の・・・ょ」

ゾロが投げたそれはナミの頭に心地よい音をたててヒットする。
その痛みにナミは抗議の声をあげかけて・・・・ふとなにかにきがついた。

その箱には見覚えのあるロゴ。
ナミの・・・ナミの好きなブランドの。学校の友達が良く持ってるような高いブランド物のロゴ。
高くて、高くて、ほしくても手の届かない、それでいていつもあこがれていた。
ナミとゾロが住むのはボロアパート。お金がないのはナミだって重々承知。
そんなナミはスニーカーしかもっていない。ナミがそんなの気にしないというようにいくらふるまったって年頃の女の子。
たまに買い物に行くときにナミがそこの靴を見つめているのをゾロは知っていた。

「ゾロ・・・これ・・・。」

そういってナミが視線を向けた先ではゾロがも薄手の布団にくるまっていた。耳が赤い。

「あけてもいい?」

ナミはゾロの返事も待たずにリボンをほどく。
箱をあければ少しヒールのある渋い赤のパンプス。
全体は大人っぽいのにそこについているコサージュがなんだかまだどこか幼さの残るナミにはぴったりで思わず部屋の中ではいてみる。

――――足にもピッタリだった。


「お前は、やすくていいもんがすきなんだっけか?」

寝ているのかとおもったゾロから声がかかる。

「ううん。これ欲しかったの!!!」

「そうか。」

「そうよ!」

「おう。」

「見て!?これなんかあたしにはいてもらうためにあるのよ!??」

「そうかよ。」

そう言ってゾロはこちらへ寝返りをうつ。

「ね?」

「あぁ・・・。よく似合ってる。」

「でしょ??まぁ、あたしに似合わない物なんてないんだけどねー。」

そういってさっきまでの不機嫌は嘘のようにナミはその場でターンしてみせた。

「あーあー、そうかよ。それ高かったんだから大事にはけよ?」

「はいっ!」

「それから・・・約束のことだが・・・・。あと1時間だけねかしてくれ。」

「うん!」

「おし!!」

ナミの返事をきくとゾロはもういちど眠りに入ろうとする。





「ねぇ、ゾロ?」

「ん。」

「ありがとっw」

ナミはそういうと上からゾロに抱きつく。

「わかった。重ぇ。」

「いいの。今こーしてたいの。」


「なぁナミ。」

「なに?」

「今日どこいくか?」





「どこでもいい!」

ナミは心底嬉しそうに笑う。

「なんだそりゃ。」

ソロもつられて笑う。

叔父さんだけど好きな人。
好きって言いたい。けど言いたくない。まだ幼い恋。成長途中の恋。
矛盾もいっぱい、好きもいっぱい、嬉しいのもいっぱい、幸せもいっぱい。


だけどナミがホントは抱きつくんじゃなくてキスしたかったことはまだ内緒にしておこう。




<Fin>


←前編へ


(2004.10.26)

Copyright(C)モロッコ☆,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
ナミの幼い恋心。相手は11歳年上の叔父ゾロ。母と死別した彼女を引き取ってくれた唯一の人。結婚はできないけれど、走り出した想いは止められない。
なんて甘くも切ないんでしょう〜(うるる〜(;▽;))
叔父と姪がケッコンできないなんて法律をぶっとばしたくなるよ!
モロッコ☆さん、素敵なお話をありがとうございました!!高校生偏、書いてねー♪

 

戻る
BBSへ