魚人の支配は終わった。希望の夜明け。八年。長かった年月。
今ようやく絶望が消えた。希望が生まれた。
そう
彼らの手によって…。






辿り…  −1−
            

ラプトル 様




村を救った英雄は。
麦わらと。
剣士と。
コックと。
うそつき。
男達は戦った。満身創痍で戦った。たった一人の女を救うため、命を賭けて。


宴は二日のぶっ続け。朝から晩まで騒ぐ。なにせ魚人の支配が終わったのだ。
喜ばない方がおかしいのだ。その中にはあの麦わらにコック、うそつきに彼らを慕ってきた紙一重の賞金稼ぎもいる。
ただ姿が見えないのは、死にかけた剣士と救われた女。どこに行ったのか。


ゾロは宴の場とは程遠い岬で一人呑んでいた。身体中には白い包帯。少し血が滲んでいる。
一度は死にかけた。鷹の目に斬られ生かされた。生きろそして倒しに来い。そう言う事なのだろう。
ならば生きる。そして倒す。あの男を。約束を果たすために。強くなる。超えるのだあの男を。
敗けるわけにはいかない。たとえ誰であっても。
「二度と…」
全てはあの男に勝つ為だけに。


ナミは岬へと歩く。ゾロが歩いて行くのが見えた。何故あの男のもとへ行くのか分からない。
ただ自然と足が動くのだ。あの男へと。

いた。ゾロが。片膝を立てて酒を呑んでいる。相変わらずな所に思わず笑みが零れる。
しかし。その後から身体中に巻きつけられた真っ白い包帯に目が痛む。

「宴の主役が何の用だ」
ゾロが後ろの気配に気付いた。
何故ここにいる。来る場所が違うだろ。
「大怪我人がどうしてお酒なんか呑んでるのかしらね」
身体に悪いでしょう。ドクターが探してたわよ。
診療所を抜け出すなんて怪我人が良い度胸ね。
「ほっとけ」
ナミはゾロの隣に座り込んだ。
「終わったのね」
何もかも。魚人の支配から。魚人の悪夢から。
八年間。長かった。こんな時が来るなんて夢にも思わなかった。
利用されてるだけだと知ったときは悔しかった。憎かった。
殺してやろうと思った。結局は一人芝居。粋がって。強がって。
そして気付いた。傍に本当の仲間がいた。裏切ってしまった仲間がいた。
小物だとこの男に言われた時は無性に腹が立った。あんたに私の何がわかるの。
何も知らないくせに。殴った。この男を。包帯の身体を。
だけどこの男もいた。ルフィと一緒に。戦ってくれた。
「ありがとう」
あんたは戦ってくれた。魚人と。
「相手が違うだろ」
何故俺にそれを言う。ルフィに言え。
「あんたは追ってきた」
この私を。裏切った私を。
「船長命令だ」
知ってるわ。そんな事。あんたがあんたの意志で私を追ってくるわけが無い事ぐらい。
「お前は自由になった。それでいいじゃねえか」
八年の束縛は終わった。確かな希望が見えてきた。
これからこの村は、楽しくやっていくだろう。
まるで魚人の支配に脅えていたことが嘘のように。
村人は強かった。耐えた。犠牲が出ぬように。
ナミを救うため。敵わぬ相手と知っていても。
「強い村だ」
心からそう思う。
生き抜いたから。
村人も。ナミも。希望を捨てなかった。
だから強い。
「私の誇りなの」
この村は。全ての人が私の誇り。
いままでも。これからも。




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(2005.03.21)

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