High school・days2  −4−
            

離羅 様



ナミは歩いていた。
まあ、ある「お荷物」を引き連れて、だが。
「おい、どこまで行けばいいんだよ?」
緑頭の(マリモ)を引き連れて。
ここは、体育館に通じる小さな道。
それを、ゾロが覚えられるとも思ってはいないのだが。
時折、体育館から聞こえてくる竹刀がぶつかり合う音。
ゾロは、「面倒臭い」という顔をして、大きなあくびを繰り返した。
「ほら、ゾロ。着いたわよ、さっさと入部の手続きしてきなさい」
「・・・てめぇに命令される趣味はねぇな」
ぼそり、と呟いた言葉には拳という、お返しがついてきた。

「おお、ロロノアか。久々だな」
「去年の県大会以来でしたっけ・・・?先輩」
「嫌なことを思い出させるなよ。で?今日は、またくいな先輩か?」
苦笑する2年の先輩と親しげに話すゾロ。
「いや・・・今日はコレ、持ってきたんで。申請してもらおうかと・・・・」
ゾロが制服のポケットから、皺だらけになった紙を取り出した。
「ふーん・・・・」
2年の先輩、アーロンが紙をしげしげと眺め、部員全員に大声で収集をかけた。
「・・・入部試験の時間だぜ、ロロノア。竹刀は持ってきてんだろ?」
ゾロが肩にかけていた袋を指差して、アーロンが言う。
「・・・まあ」
「そんじゃあ、2年生から。順に倒していけ。もちろん、審判はシャンクス先生にお願いするさ。・・・・平等にな」
アーロンを始めとする2年生が、竹刀を肩に担ぎ並ぶ。
「成績の悪い順よ。さァ、やれよ」
ここの学校の剣道部には変な「掟」があると、ゾロは言っていた。

「この学校の剣道部では、「入部試験」っつー形で、試合をやるんだ」
「・・・2年生と?」
「いや。2年だけじゃない。3年もぶっ倒さなきゃなんねぇ」
体育館に行く途中の廊下で、ゾロはこう呟いた。
「・・・新入生は、防具着用禁止っつーオマケつきのな」

「ゾロっ!!」
「あ゛?」
体育館の入り口からキン、と響く高い声。
(連れてきた気は無かったんだけどな・・・・)
「チッ」と舌打ちをして竹刀を構える。
「あんた、下手したら死んじゃうのよっ?!ねぇっ!」
「・・・・くだらねぇ。「死」とかには興味ねぇんだよ」
はぁ、とゾロは溜め息をついて目の前にいる先輩の方を向いた。
「・・・・いつでもどうぞ。先輩?」
ニヤァ、と鬼も逃げ出すような笑みを浮かべて、余裕な素振りを見せた。
(・・・せいぜい、2年は大会にも出れねぇような雑魚と考えてもいいだろう・・・)
頭の中の知識を振り絞る。
去年の大会には、ほとんど3年しか出ていなかったはず。
ならば、2年では本気を出す必要は無い、と。
「隙ありぃっ!」
前からの堂々の攻撃。
ブツブツと独り言を繰り返しているゾロは、それに気が付かない。
「・・・ッ!」
体育館の入り口に立っていたナミは、ぎゅと目を閉じた。
パァンッ!!
「・・・・・ったく、これしきで隙をついたつもりですか?先輩?」
2年の竹刀がゾロに届く寸前。
ゾロはニヤリ、と笑って左手を容赦なく叩きおろした。
瞬間、乾いた音が体育館内いっぱいに広がり。
「・・・・一本」
シャンクスが呆気に感情を盗られた様に、判定をする。
「・・・・嘘」
ナミは、愕然とした。
今までの幼馴染のゾロは、こんな人だったのか?
ドクリ、と心音が跳ね上がった。
(動悸・・・・?そんなこと、絶対にない・・・・)
少し、体育館内から目を逸らして外を見る。
そこで、その音は収まったが。
再び、体育館を見てゾロを見る。
また、心音が跳ね上がる。
「・・・???」
ナミには体験したことの無いことだった。




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(2009.03.19)


 

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