High school・days2  −3−
            

離羅 様



校舎内は綺麗だった。
伝統的な歴史が残っている学校。
建物自体は古く、壁紙はところどころ剥げている。
一年生の教室は三階にあった。
一階の暗さと冷え冷えとした環境とは違い、暖かな陽気でよく日が当たっている教室だった。
「クラスは・・・・・?」
「あそこにあるの、違うか?」
ゾロが指差した先には、大きな紙が貼られており生徒たちが群がっていた。
「・・・・随分、たくさんクラスがあるのね・・・・」
「今年の一年は人数が多いんだと」
レベルが高いといってもナミの親友はほとんどが合格している。
(クラス替えとかって、一番嫌だったなぁ・・・・毎年毎年、コイツと同じクラスになって・・・・・)
ナミは、一度もゾロと違うクラスになったことが無い。
「俺ぁ、1−Bだ」
「ルフィとエースもじゃない?」
「あー・・・・あのお騒がせ兄弟と同じクラスか・・・・・」
ルフィとエースは双子の兄弟で、エースが兄。ルフィが弟だ。
「あとは・・・・?サンジ君は?」
「あの変態グルマユとは、同じクラスになりたくねぇっ・・・」
「サンジ君は、1−Dよ」
サンジはゾロの悪友・・・・・・とても仲が悪い。
しかも、影でタバコを吸っているという金髪の男。
女ったらしで、女の子を見ると目をハートに変えてやってくる。
「カヤとウソップは・・・1−Aなのね。よかったわ」
「・・・・ナミ。人の事はいいから自分のクラスさっさと見つけろよ」
「うるっさいわねー・・・・人の見ながら探してんの!」
「あ、ビビは1−Bか」
「ふーん・・・・って、あんたが邪魔してくるんじゃない!」
そう言ってゾロの脇腹に拳を一発入れてやる。
ゾロは呻きながら何も言わなくなった。
「お前・・・番号は?」
「番号?ああ・・・・そっか。うーんとねぇ・・・」
これは、事前に通知された自分の番号を見て、その番号の隣に自分の名前を書く。そんなシステムになっているのだ。
「あった。・・・・・56番よ」
「おーお。残念だったな。その番号は俺の番号、39の真下にあるぞ」
ゾロは自分の番号が書いてある紙を、ひらひらとナミの前で振って見せた。
それを嘘だ、と思い込みたくて紙を見た。
(・・・・22番、49番・・・96番・・・・)
番号の順番はバラバラだ。
(109番、・・・・39番・・・・56番・・・・)
確かに、その数字は「39番」の真下に刻まれていた。
「俺は名前書いたから先行くぞ」
「うん・・・・・」
私はゾロという疫病神から離れられないのか。
口から漏れた溜め息は、小さかったが深かった。

「ゾロ〜!」
「・・・・なんだよ、ルフィ」
「会いたかったぞー!!」
「ヤメロ、気色悪ぃ」
教室に入った瞬間、ルフィに抱き付かれるのは毎度のこと。
その後ろでは、エースが順番待ちをしていた。
「エース、言っとくが俺はルフィ一人で十分だ」
「残念だなぁ。そういうこと言うなよ」
癖っ毛のエースが笑ってくる。
ルフィも十分癖っ毛だが、エースのそれはその倍ほどだ。
「ナミさん!!」
「ビビ!久しぶりね!」
その後ろでは、ビビとナミが再開を果たしていた。
「ゾロ、ちょっといいかしら・・・?」
「げ!姉貴・・・・・」
だが、その「姉貴」はショートヘアのくいなではなかった。
黒髪でロングヘアの女の人だった。
「ロビン姉さん!」
「ナミちゃん。やっぱり、私の見込んだ女の子ね。一番レベルの高い高校を首席で合格したのね」
「そんな・・・・」
「で?何の用だよ、姉貴」
ゾロは心底嫌そうな顔をして、ロビンを睨み付けた。
「そう、怒らないでゾロ。私はくいな姉さんから預かった「ゾロが購買で買うためのお金」を持って来たに過ぎないのだから」
「はぁっ?!購買で買うぐらいの金、持ってる・・・・あ?」
「・・・引越しのときにお財布を、リビングのテーブルに置いて行ってしまったのは紛れも無く貴方でしょ?ゾロ?」
いつもならズボンのポケットに入っている財布が、無い。
ロビンの言っていることは本当なのだろう。
「・・・・・・ちっ」
軽く舌打ちをしてロビンの手から財布を受け取る――――いや、奪い取った。
「あら、お礼の一つもなし?」
「どうも」
「・・・・・実の姉に対して向ける言葉ではないわね・・・・」
ロビンが顔を顰めた。
「おら、もう始まるんだろ?さっさと戻らなくていいのか?仮にも、「優等生」なんだろ?」
「・・・・家に帰って来れなくなっても知らないわよ」
ロビンは怪しげな笑みを浮かべて去っていった。
「ゾロ〜・・もったいねぇぞ〜。あんなに綺麗な姉ちゃんがいるのによー」
「誰が。あんな奴、腹黒いだけだ」
その言葉にいち早く反応したのは、ナミだった。
ロビンはナミに勉強を教えてくれたりしてくれた、「お姉ちゃん」のような存在だったのだ。
「・・・ナミみたいにな」
「問題発言により、教育的指導!!!!!」
ゾロの広い背中に、改心の一撃が決まった。

「ゾロ〜、部活行かないのか?」
学校の諸注意などが終わり、クラスでの授業はなくなった。
今日、部活の申し込みをしておかないと、明日から部活に出れないのだそうだ。
「いや・・・行く。・・・体育館はどこだ?」
「お前、覚えてねぇのかよ〜。相変わらず方向音痴だな〜」
そう言ってくるルフィとて、方向音痴ではないとは言えない。
「ゾロ、分かってるとは思うがルフィについて行って辿りつけるとは思わないほうがいい」
「それは、分かってる」
ゾロは青ざめた顔をルフィに見せないように、エースと話していた。
「連れて行ってあげましょうか?ロロノアさん?」
「・・・・ナミ」
「有料でねv」
「オイッ!」
ナミはゾロの手を引いて、体育館の方向に向かっていった。
「荷物は?・・・持ったわね。行くわよ!一回で道は覚えなさいよ!」
「・・・おー」
ゾロは「何かが気に食わない」というような顔で、ナミの後をついていった。

「なあ、エース」
「なんだよ」
「今さっき、ゾロとナミが体育館に行ったじゃん?」
「それがどうかしたのか?」
エースが不思議そうに、弟に尋ねた。
「あん時の二人。なんか、恋人同士に見えたぞ〜」
「っ!・・・それは、ゾロの前では言うんじゃないぞ・・・・っ!」




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(2009.01.16)


 

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