そしてルフィはニャーと鳴く  −2−
            

ててこ 様






「案外片付いててるのね〜。あぁ・・・物がないだけか・・・」

ナミは2人が立つと余裕のなくなる玄関先でスニーカーを足で脱ぎながら、
一通り部屋を見渡して感想を述べた。


いちいち一言多い女だ・・・。


ゾロは嫌でも自分の鼻先をくすぐるいい匂いのするナミの髪を意識しながら心の中で呟く。


さっきからこの女のペースに巻き込まれっぱなしだ!気にいらねぇ!


ナミは自分の腕の中で身をよじったルフィを床に置いてやる。
ルフィはまっすぐにテレビの元に行きピョンとテレビの上に飛び乗ると、
丸くなって「ニャー」と鳴いた。


「あんたんちでもお気に入りの場所はテレビの上なのね」


ナミは台所のシンクを小姑よろしくスッと指でなぞりながら言う。



「名前なんだっけ・・?」

「あぁ!?」

ゾロはペロータスを丁寧に手で脱ぎながら片眉を跳ね上げて聞き返す。



「あんたの名前よッ!!」


ナミは怒った口調で再び聞く。

「あっ・・ゾロ・・・・。ロロノア・ゾロ」

「んっ!じゃあゾロね。ねぇゾロお皿とかお茶碗とかないの?」

いっそ潔いいくらい何もない台所を見渡してまた不躾に尋ねてくる。
シンクの下まで勝手に開けて中を覗く。

「ねぇ〜フライパンとかお鍋とかもないの?あんた霞でも食って生きてるわけ?」

「コンビニの弁当とかパンに食器はいらねぇだろ!」

ゾロはようやく靴を脱ぎ終え、リュックを奥の八畳間に置いてある簡易パイプベッドの上に放り投げながら怒鳴った。


このベッドに押し倒すぞッ!!厚顔女ッ!!


「食器を使わないなんてあんた文明人!?ルフィだって専用の食器で食べてるわよ!」

ナミは蜂のようにくびれた腰に手を当てて叱りつけるように言う。


「あぁ!俺は猫以下だよっ!」


ゾロはうんざりしたように答えた。


「近くに100均の店ある?」

「はぁ!?」

ゾロはその問いかけに思いっきり顔を歪めて聞き返す。

「ダ○ソーとか・・・ないの?」

「近くの・・・スーパーにあるけど・・・。」

「行くわよっ!!ルフィ留守番お願いねッ!!」

ナミはゾロの手を掴むと引っ張り、再びスニーカーをはいた。
途中ゾロのペロータスをムギュッと踏みつける。


「:;#%&%$・・@!!」


ゾロは声に出すここともできず無言のまま叫んだ。

傷心の靴フェチ・ゾロは引っ張られるようにまた部屋を後にせざるをえなかった。



近所のスーパーはその敷地の半分が100均の店になってる。

ナミはカゴをゾロに押し付け、自分は手ぶらで食器のコーナーを物色している。

「この大きさのお皿はよく使うのよね・・・。あとお茶碗と・・・お箸と・・・・」

「うぉいっ!!」

ゾロはご機嫌でドンドン食器をカゴに放り込んでいくナミに向かって突っ込んだ。

「何で2セットづつ買ってんだっ!!」

かごの中には皿も茶碗も端も小鉢も・・・全て2枚づつ入っている。

「・・・・私の分」

ナミは自分を指差してさも当たり前でしょってな顔をして答える。

「あ〜の〜な〜!」

ゾロはもう何から怒っていいのかわからず、怒りのあまり口ごもった。

「あんた!自分は食器を使って、私には紙皿やパックの蓋で食事しろって言うの〜?
あんたには良心ってものがないの?」

「お前は良心を母親の腹ン中に忘れてきたんだろっ!!」

「・・・・ひどいわ・・・」

ナミはその言葉に顔を伏せてポツリと呟いた。

ゾロは流石に慌てる。少し言い過ぎたかな・・・?



「・・・・・あんたの態度・・・・」


「俺かよッ!!」


「♪〜♪」

ナミは鼻歌を歌いながら買い物を続行する。

ゾロは言うだけ無駄だとやっとこさ悟り、何気なくナミの横顔を睨みつけた。

彼女の横顔はよくテレビに出てくる『隣のお姉さん』的なアイドルなんかよりずっと綺麗だ。


ゾロはその時に気づく。


店にいる男達は全員ナミを見ている。


ゾロは何やら落ち着かなくなりそわそわしだした。

そう言えば女と二人で買い物なんて今までしたことがない・・・。


まっ・・・・悪く・・・ねぇか・・・・。



「ねぇ!ゾロこれもいい?」

ナミはそんなゾロにお構いなく猫の絵柄の皿を指差して聞いた。
ルフィの餌皿にするらしい。屈託なく笑っている。

「あっ・・・・あぁ」

ゾロはそう言うと、ナミから視線を外した。




お会計の段になるとナミはふっと姿を消した。

(プリンセス天功かっ!お前はッ!)

ゾロはレジで財布から紙幣を取り出しながら、消えたナミに文句を言った。

ナミは早くも隣のスーパーで野菜やらパックのご飯やらを買っている。

「じゃ!よろしく!」

そのかごもゾロに押し付け、さっさといなくなる。

(奥さん・・・ここ笑うところらしいですよ・・・。ここで笑わなかったらもう笑う所ないですよ・・・・)


ゾロはまた財布を取り出しながら、『こちら』を向いて呻いた。

右手に重い食器の入った紙袋を持ち、左手には食材の入ったスーパーの袋を持ち、
元気よく自分の前を歩くナミの背中をいつか蹴り飛ばしてやろうと計画しながら
ゾロは家路についた。



部屋に帰るとルフィが待ちかねたように2人に擦り寄ってきて交互に甘えた。

「ごめん!ごめん!今ごはんにしてあげるから!」

ナミはゾロの手から袋をひったくるように奪い、さっさと台所に立つ。

「すぐ作るから待ってて」

ナミはゾロに向かってそう言うと手を洗い始めた。

「・・・・・あぁ・・・・」

ゾロはルフィを抱きかかえながら奥の部屋に行き、ベッドの上に腰を降ろした。

ルフィの小さな額を撫でてやり、ざらざらした舌を引っ張り出してルフィをわざと怒らせる。

「ニャッ!ニャッ!」

「ニシシシ!」

肩を揺らして笑いながら、怒ってつめを立てネコパンチをくりだすルフィを軽くいなし、ふと視線を台所に向ける。

華奢な身体つきをしたナミが、案外てきぱきと調理している姿が目に入る。

(・・・・・何だかなぁ・・・・)

ゾロは困ったように眉間に皺を寄せる。



隙ができる。



「ニャッ!!」


ルフィの会心の一撃がゾロの頬に3本の朱の線をつけた。


「いってぇっ!!」






「馬鹿ねぇ。ルフィは結構強いのよ」

ナミはゾロの頬についた血を、濡らした自分のハンカチで押さえるようにして拭いてやりながら言う。

ベッドの上でゾロの横に身を寄せるように座って治療をしてくれている。

「大丈夫だ・・。こんなの傷のうちに入らねぇ・・・」

ゾロは自分の腕に嫌でもあたるナミの柔らかな胸のふくらみが気になって仕方がない。どんどん横に移動して離れようと身をよじりながら答えた。

「駄目よ!猫にひっかかれたらちゃんと消毒しなきゃ!ルフィには悪いけど、どこで何触ってるかわからないのよ!」

ルフィは満足げにテレビの上で、自分の毛並みを舌で整えてる。


勝者の威厳まで感じる。


ナミは壁際にゾロを追い詰め、彼の頬にハンカチを当てた。
顔を避けようとするので、彼の顎を掴み固定させる。

「じっとしてっ!!」

「・・・・・・・・・・・。」

ゾロは腹を括り、抵抗しなくなった。それでも何となくしゃくなので、
さりげなくナミの腰に手をまわしてみた。


「調子に乗るなっー!!」

ナミの鉄拳を顎に受け、余計な傷を作った。



ルフィがテレビの上で「ニャー」と鳴いた。





ベッドの脇にいつもは使わない小さなちゃぶ台をだして、2人は向き合い刺身とおかずを交互につっついている。

その横でルフィは猫の絵皿に盛ってもらった刺身をがっついて食べていた。



「・・・・・・・・・・。」怒った顔のナミ。

「・・・・・・・・・・。」頬と顎に傷をつくったゾロ。



無言のまま晩餐は進む。

「・・・・・もう二度とあんな真似しないでね・・」

低い声で凄むナミ。刺身を一切れ箸でつまむ。

「あぁもう金輪際お前には触わんねぇ!!・・・ってまた来るつもりかよッ!!」

ゾロは持っていた缶ビールを落としそうになりながら叫んだ。

「あたりまえでしょ?あんたが鮮魚でバイトしてる限り、魚には事欠かないもの」

ナミは当然でしょってな顔をして答えた。

「・・・・・・・・・・・。」

ゾロはあんぐりと口を開けたまま声も出せなかった。

そのあつかましさの源は何何だっ!!少し分けてくれッ!そしたら今すぐお前のケツ蹴り飛ばして、部屋から追い出してやるッ!!

「まっ、せいぜい頑張って良いもの持って帰ってきてね!お刺身なんて貧乏学生の私には高嶺の花だもん!」

ナミはやっとニッコリ笑ってゾロを励ました。

そして理不尽に励まされたゾロを尻目に自分のことを喋りだした。



彼女はゾロより2つ年下の20歳。地方から出てきて大学に通いながらバイトで雑貨屋に勤めている。
案外雑貨屋というビジネスが気に入り、勉強して将来は故郷に帰って雑貨屋を開くことが夢だそうだ。

ルフィはその雑貨屋の前に捨てられていた野良猫だった。拾った時は子猫だったが、目に下の傷はその頃からあったらしい。

そのルフィがまだ足りないとゾロの膝に擦り寄ってきた。チョコンとゾロのまたぐらの間に座り、

「ニャ〜」

と鳴く。


ナミは指でお刺身を摘むと、その小さな口の中に入れてやる。

「食欲魔人ッ!あっ・・・人じゃないか」

ナミはクスリと笑う。笑うと幼くなり可愛い・・・。



うっ・・・・。

そう思ってしまう自分が情けない。

こんな大胆不敵で、なおかつ無敵な女を『可愛い』と思ってしまうなんて・・・。



「はぁ〜」

ゾロは食事中にもかかわらず、大きなため息をつきナミからジロリと睨まれた。

ナミは散々飲み食いし、食器も洗わず、ルフィを抱えると「じゃ!また来週!今度は白身の魚ね!」とリクエストまでして去っていった。


「全く・・・・・。でけぇ猫だったな・・・。」

ゾロはぐったりと身体をベッドの横たえた。





6日後・・・・・水曜日。


本当にナミは玄関前にいた。

ゾロは肩に担いでいたPX21を落っことしそうになった。

ナミはルフィを抱えており、ゾロを見つけるとルフィと一緒に「ニャ〜」と鳴いた。


そして次の日にもナミは玄関前でゾロの帰りを待っていた。


「ロロノア君ッ!今日の魚は何ですか♪」


「・・・・・・・・・・・・。」


ゾロは本格的に腹を括った。


とりつかれた・・・・・。えれぇ女に・・・・。



チーフッ!前言撤回しますっ!

賞味期限切れの魚を喜んで食べる女は案外身近にいましたっ!!


ゾロは苦々しくナミを睨みながら、伸びてきたナミの手の平の上に鍵を置く。

ナミはルフィを抱えて鍵を開け、例のごとく住人より先に部屋に入り・・・


そしてドアを閉めた。

バタンッ!!

「おいッ!!」

ゾロはまたつっこんだ。





彼女の素足の指先の爪にに塗られた美しい色は、「マニキュア」ではなく「ペディキュア」というものであり、
彼女が自宅から持ってきた、鍋の底をかき回すへらみたいなものは「スパチュラ」という舌を噛みそうな名前のもので、
紙ナプキンだとばかり思っていたものは実は「パピエ」などという洒落た呼ばれ方をしているということなどは・・・・


多分、彼女と知り合ってなかったら、死ぬまで知らない事柄だったろう・・・。



彼女が定期的にやってくるようになって一ヶ月・・。


ナミの持ち込んだきたものが、どんどんゾロの部屋の中に増えてくる。

センスのいいカレンダー。小さなグラスに入ったグリーン。デンマーク製のモビール。年代物のファイヤーキングのマグカップ・・・・。


部屋がナミに占領されていく・・・・。


ついでに・・・・。


ハートん中も・・・・。




水曜日・・・。彼女に会えると思うとバイト先で包丁を落っことしそうになる。
PX21のペダルを踏む足にも自然と力が入る。

階段を登って、恐る恐る廊下を見て、彼女の姿が見えると、ホッとする。

「お帰り」

ニッコリ笑って言われると、つい・・・・

「ただいま」

なんて答えてしまう。
いつか渡そうと思って合鍵をこさえたが、つき返されるのが怖くて渡せないでいた。


えぇいっ!情けねぇ!絶対今日渡す!
つきかされたらポケットの中に無理矢理ねじ込めばいいっ!!


いつものように鍵を手渡す。

「・・・・・それ・・・・やるから・・・・・。」

ゾロはできるだけさりげなく言い、逃げるように部屋に入った。

「・・・・・・ありがと・・・・・。」

ナミの小さな言葉が背中越しに聞こえた時、思わず小さくガッツポーズをした。




彼女は当たり前のように長居するようになった。

いつの頃からか、食事をした後も居座り、レンタルビデオを一緒に観たり、
本屋に立ち読みにいったり、公園で紙飛行機の飛ばしっこをしたり、
人の多いゲーセンなんかでは、どちらともなく手を握り合ったり・・・・。



彼女はゾロの傍に当たり前のようにいるようになっていた。



「ねっ!ビデオ観ようよ!『初恋の来た道』借りてきた!」

ナミは食器を洗い終えると、自分のトートバッグからビデオの袋をとりだし、
ベッドの座ってルフィの丸くなった身体を撫でてやっていたゾロに向かって言った。

「何だ!?それ・・・」

ゾロは映画には詳しくないので憮然とした表情で聞き返す。

ルフィが起き上がり、ゾロから離れまたテレビの上に乗っかった。

「いいんだってっ!すっごく泣けるってッ!!」

ナミはそう言いながらビデオをセットすると、当たり前のように電気を消し、
ちょこんとゾロの隣に座った。

ナミはビデオを観る時は、必ず電気を消す癖がある。
「映画館みたいでしょ?」と彼女は笑って言うが、どっちかってぇーと
「ラブホみてぇだ」とゾロは思っている。

ドキドキするのだ。つかず離れずの距離感や、暗がりの中で浮かぶ彼女の横顔が、
「誘ってるのかな?」なんてあらぬ妄想を引き立てるのだ。

そんなゾロの思いを知ってか知らずか、映画は始まり、ナミは集中しだした。



ルフィの尻尾が時々画面を横切る。

「・・・・・・・・・・。」

ゾロはチラッとナミの横顔を盗み見る。

オレンジの瞳の中に映画のワンシーンが映っている。



彼女は・・・・綺麗だ・・・・。


彼女は・・・・

彼女は・・・・1人の22歳の男を勘違いさせるに十分なことをしている・・・。


これで勘違いしない男はいるのか?

今まで手ぇだしてねぇ俺は天使か、大バカのどっちかだ・・・・。


ゾロは意を決し、映画も中盤に差し掛かった頃、何度もためらった後で、
ナミの肩にそっと手をまわした。

「・・・・・・・・・・。」

ナミは少し肩を震わせたがそのまま嫌がる様子はなかった。

そしてしばらくしてからゆっくりと自分の方に引き寄せる。

チョコンとゾロの首元に彼女の頭が乗っかる。

「・・・・・・・・・・・。」

ナミはやっぱり無言のまま大人しく彼の腕の中に収まった。

ゾロは片方の手でナミの顎を上に少し上げた。

少し不安げな顔をしている。

見なかったことにして、そっとくちづけた。

「・・・・・・・・。」

触れるだけのキスだ。ナミの唇は想像していたよりずっと柔らかく、温かく、しっとりしていた。

少し話し角度を変えてもう一度くちづける。

彼女の上唇をいたずらっぽく挟み、最後に前髪をかき上げて額にキスをした。



「・・・・・嫌・・・・だったか・・・?」

ゾロはキスをする前のナミの不安げな顔を今更思い出し尋ねた。

ナミは子供のようにかぶりを振る。
彼のシャツの胸元をぎゅっと握り締めている。



愛しさがこみ上げる。



「俺・・・勘違いしてねぇよな・・・?」

ゾロは今もって俯いているナミの耳に唇を寄せ、尋ねた。

「・・・・うん・・・。してない・・・。」

今まで聞いたことがないほど小さい声で返事をする。

ゾロはほっとして、彼女の身体をギュッと抱きしめると

「・・・・今日・・・・泊まってくか・・・?」

と聞いた。

腕の中で小さくナミが頷く。


ルフィがテレビの上で「ニャ〜」と一声鳴いた。




彼女のしなやかな白い身体がしっとりと汗ばんでいる。

ゾロは覆っていた彼女の身体からゆっくりと身体を離した。
異性の前で初めて裸身をさらしたナミは恥ずかしげに身体を丸くしてシーツに身を包もうとした。
ゾロはそんなナミを引き寄せ、額にキスを落とす。




「・・・・・好きだ」

情事の後の火照った身体が少しおさまった頃
ゾロは唐突に告白し、

「・・・・順番バラバラ・・・」

とナミに苦笑された。

ナミは身体を摺り寄せて甘えてくる。

「悪ぃ・・・」

「私はずっと好きだったわよ」

「あん!?ずっとっていつからだよ」

「会う前から・・・」

その台詞にゾロは片眉を跳ね上げてナミの方を見る。

「・・・・なんだ?そりゃ・・・」

ナミはクスリと笑うと言う。

「だってルフィが『ニャ〜』って鳴いたんだもん!」

ますますわからない・・・・。

「そりゃルフィは『ニャ〜』って鳴くだろう・・・。『メェ〜』とは鳴かねぇ」

「違うの!」

ナミはクルリと身体を反転させるとゾロの胸の上にのしかかってきた。
彼の喉仏をまるでルフィにそうするかのように指で撫で付ける。

「・・・・ルフィは鳴かない猫だったの・・・・」

「あぁ!?」

「・・・・拾った時からね・・・ルフィは一声も鳴かない猫だったの・・・あの目の下の傷・・・人間につけられたんだと思う。」

ナミは少し声のトーンを落として言った。

「一度も鳴かなかったの・・ルフィは・・まるで置物みたいだったの・・・・」

ナミの髪を撫でながらゾロはチラッとテレビの上にいるルフィを見た。
ルフィは2人には背を向けて寝ている。


「でね・・・ある日いなくなったの・・・。二日間も・・・そして三日目に帰ってきて・・・」



「・・・・ニャ〜って鳴いたの・・・・・」



ナミは当時を思い出して嬉しそうに言った。

「鳴いたの・・・ルフィ・・・。そしたら毎週水曜と木曜には必ずいなくなるようになって・・・・。どこに行ってるのか知りたくって・・・・。」

ナミはふとゾロの顔を見上げる。

「餌もらってるみたいだから、誰かのうちに通ってるんだろうなって・・・・」


「・・・・・会いたい・・・と思って・・・」

「ん!?」

「ルフィを鳴かせてくれた人に会いたいって思って・・・」

ナミが顔を摺り寄せてくる。

「もしその人が女の人なら大親友になれるって思ったわ。
そして男の人だったら・・・」


「男だったら・・・?」




「・・・・・・好きになるって・・・・思った・・・・」



ナミはポツリと言い、ゾロの頬に手を寄せた。

「・・・ルフィの後をつけて、このアパートに辿り着いて、その人が来るのを待ってたの・・・。そしたら足音がしてルフィが鳴いて・・・しばらくしてから・・・・」




「・・・・・あんたが現れたの・・・・・」





「・・・・・・・好きになってた・・・・・・」




ナミは花が咲くように笑ってそう言った。

その瞬間、ゾロは心の奥にある柔らかい何かを根こそぎ持っていかれた気がした。

・・・・・これ以上持ってくもんねぇぞ!泥棒女ッ!



「・・・・そりゃ・・・・どうも・・・」

ゾロは呆けた声で言った。ナミはクスクス笑う。

「ルフィのおかげよ!こんな可愛い彼女ができたのはっ!」

ナミはいつもの調子の戻ってゾロから身体を離そうとする。ゾロは慌てて彼女の細い手首を掴み、もう一度自分の方に引き寄せる。

「・・・お前だってルフィのおかげでこんないい男と付き合えるんだぞ・・・・」



「・・・・・・しかも魚つきの・・・・・」



「アハハハハ!」

ナミが腕の中で爆笑した。

その声で起きたのかルフィがテレビの上で身体をくねらせこちらの方を向いた。

ベッドの上で裸でじゃれあう2人を見つめ・・・・



そしてルフィは「ニャ〜」と鳴いた。




FIN


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(2003.10.12)

Copyright(C)ててこ,All rights reserved.


<管理人のつぶやき>
『ダ○エーグランドライン支店』の鮮魚のゾロ。
コワモテの自転車フェチで靴フェチで鞄フェチで筋肉フェチ(笑)。
そんな彼のもとに現れた一匹の黒猫ルフィ。可愛いオレンジ髪の女の子まで付いてきて、ゾロの生活は一変です。それは恋の始まりでした〜ラララララ〜♪
ゾロがナミに惹かれていく様子にウキウキわくわくそわそわしました、私が(笑)。
黒猫ルフィにこんな事情があったとは・・・ルフィを鳴かせたゾロに憧憬を抱いたナミの気持ちがよく分かりますね。
そして、ててこさん初チューと初エッチv ほんのりと薄味の関西ダシ風味でステキでした!

ててこさんは今、R18esistance様(閉鎖されました)で西部劇もののパラレルを書かれてます(すごく面白いので、見に行ってみよう)。なぜ『西部劇』か。それはR18esistance様(閉鎖されました)の管理人の瞬斎さんが『西武』ファンだったから。もしも瞬斎さんが『ダイエー』ファンだったら、この話は瞬斎さんに進呈されていたでしょう(笑)。
そして、このお話を「投稿部屋」開設記念として投稿してくださいました!ててこさん、どうもありがとうございましたーー!

ててこさんは現在サイトをお持ちです。
こちら→GOSPEL ACCORDING TO LUKE

 

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