不機嫌な赤いバラ  序章

            

マッカー 様




「恋人にでも贈るのか?」

「‥え?」


ちょっと驚いたようにこちらを見返す
明るいオレンジの髪でちょっとハデめのドレスを着込んだ女
こういったハナ屋とはちょっとムエンな感じのする いわばどくとくの香りがする女

「違うわ あなたこそ恋人に?」

ちょっと肩をすくめてへんじをする

「そうだ どんな花がいいと思う?」

「ふふ そうね どういう子なの?」

「そう‥だな ‥」

ちょっと考える あたまに青い髪のあいつが浮かぶ

「‥おじょうさま‥だな」

「そんなの答えになってないわよ ‥‥大切に想ってるの?」

「まぁ‥なぁ〜」

改めて聞かれるとちょっとテレる
その表情に女はふわりと笑う

「なら どんな花でも喜んでもらえるわよ あなたの心が伝わればね」

「そうか?」

「そうよ!」

女はそう言うとハナ屋がつつんだそのドレスと同じ色のハナ束を受け取り かねをはらう

「おい ルフィ 探したぞ 何してたんだ?」 

店の中に入ってくる長身の男
赤いドレスの女をちらりと見る

「ししし 悪いな ちょっと な!」

オレはその女が買ったハナと同じハナの違う色を指差し店員に言う

「なぁ!これ 全部くれないか?」

「? お前花買うのか?」

「あぁ 喜んでくれるんだと!」

「おまえまでコックみてぇな事言い始めたな‥」

女に 俺はすれちがいざまウインクをしてみせた

俺たちと同じ香りのする女は 静かにほほえみ返してくれた





「ルフィ‥今の女‥知り合いか?」

ハナ屋からでてすぐ なんともなしに聞かれた

「しらねぇ」

そうか とヤツはつぶやく
おれはというと両手いっぱいのハナにどこかちょっとしたコウヨウカンがあって 気分がよかった
すこし歩くと もくてきの家のまえにつく

「1時間だけだ」

「わかってるって ゾロも迷子になるなよ」

「迷子っていうな」

いつもの言いなれたセリフをかけあう





おれはギャングだ 組織の名は『モンキードルフィン』 いつからなったのかは すごく昔のような気がするし 最近のような気もする

おれのチーム
こんな事してて いいも何もないけど おれは気にいっている
ゾロにウソップにサンジ それにチョッパーがいつもの顔ぶれ

おれたちの縄張り 「プライド」 
グランドフィールド西の土地イーストフィールド

言っとくが薬はしない売らない手を出さない
これがポリしー
買うやつはかってだが そんなものをここで売るやつはゆるさない

ギャクセツテキだとサンジに言われた

ゾロはひとつ大きくあくびをすると どことは無しに消えていった
近くには いるだろう

ヤツはあいぼう
おかしな話だが こいつになら殺されてもいいかと そうむかし言った時

「そうか」

と言って口もとを引いてこたえていた

とにかく今は

「ルフィさん!!」

「ヨッ ビビ!」

お目当ての部屋の窓から忍び込む 今日は ハナがあるから とくべつしんちょ うに

「これ! おまえに!」

大きなハナ束に目を真ん丸くしてすぐにうれしそうに受け取る
その姿がたまらない
部屋の主は大好きなオレの女‥なんて言ったらきっとサンジにうるさく言われる ‥

「ルフィさん!とにかく中へ そんなところにいたら危ないわ」

心配性で やさしくて やわらかい オレの居場所



あの赤いドレスの女 いいこと教えてくれたな なんて感謝しながら
俺はいつもここで生き返る


ゾロには悪いが‥



そうだ あいつにも花がいるな






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