おいしい生活 −1−

            

マッカー 様





それはちょっとどこか何かが違う海に囲まれた大陸でのお話

その大陸にはいくつかの国が点在しており
今回はそのうちのひとつ「メリーランド」王国での出来事
メリーランドは賢王コブラが治める大変美しく豊かな国であった‥はず そう15年ほど前は

場所は王国宮殿内国王執務室
「国王様 およびでしょうか?」
「おぉ 勤務中すまなかったなドルトン。事は非常にゆゆしき事態でな」
「‥‥ルフィ王子ですね」
この苦い顔をしている男は
メリーランド国政務外交官ドルトン 
いかつい役名がついているが実際は温厚でそれゆえ人望も厚い仁義の男である
全てがうまく周っているように見えるこの秩序あるメリーランド
だがしかし内部の事情に頭を悩ますといった点ではこの国も例外ではなかった
普通常識では考えられない問題が非常に深刻な事態となっている
深刻...そう深刻さではこの問題ほど恐怖あるものはないだろう
それは第二王子の名を冠する大きな黒いねずみがやらかす
国全体を食い尽くす勢いのおそろしい食欲
勿論宮殿内の食料から果ては街や村中の食料まで
彼が通った後は草一本軽石ひとつ落ちていないそんな現状
もっとはっきり言うと
「第二王子の異常なまでの食欲により 
宮殿ひいては王国内のあらゆる食料が今将来的な危機にひんしている」
ということである。
まったくもって恥ずかしい こんな恥ずかしい原因で国が傾きかけているなんて...

これについては賢王もあらゆる手を尽くしたが
まるで巨大な空腹ネズミを相手にするようなもので
まさか人間相手に殺鼠剤は使うわけにもいかず
かといって 目を光らせると民家の畑や果樹園にまでもぐりこんで片っ端から食べあさるといった始末

「しかし‥ 王子の大食は今に始まったことではないのでは‥」
「そうなのだ そこでドルトンお前の部下を
ドラムロッキーに住んでいる魔女のところに使いに出してほしいのだが」
「魔女のところにですか? またなぜ?」
「奴の食の量は生半可な物ではない 極めて悪質で異常だ
そこを考えるとあれは何か悪い魔法にかかっているのではないかと思ってだな」
「魔法ですか‥しかし 王族は古代より魔法にはかからない体質ではありませんか‥」

メリーランド王国の王族は大昔一人の魔女を助けたことにより
その恩返しとして 魔女からアンチマジックの術をかけてもらったという云われがあり
現に今の国王やその子供にはあらゆる呪いから身を守るよういかなる魔法も効果のない体を持った血筋になる
それ故の国王であるのだが 真逆の一面としてこれまた身を助ける治療魔法も効かない体になってしまったというわけで...

「ドラムロッキーの魔女なら人生経験も豊富だろう 万が一ということもある
無駄足になるかもしれないが ごく内密に頼まれてはくれないだろうか?」

ごく内密‥だが
第二王子は実際国中の食料を食べつくす恐れのある要注意人物‥
それは国中の誰もが知っている暗黙の了解なのだ
特にレストラン経営者などにとっては今では最凶にして最大の天敵となっている

「しっかし ドラムロッキーの魔女なんてアテになるのかねぇ」

結局 白羽の矢が立ったのは
腰に三本刀 片耳にピアス 腹に腹巻の目つきの悪い剣士一人
めっぽう腕は立つとの上司推薦もあっての辞令であった
ただめっぽう道に迷うという一面もあるのだが

宮殿から出てしばらくたったそのとき

「よぉ ゾロ!」
「!! ルフィ! ‥ってめこんなところで何してやがる!宮殿から出ていいのか!?」
「いひひ〜 抜け出してきた〜 それよりよ 今からどっか行くんだろ?俺も連れてってくれよぉ!」
「アッホかおめぇ!! 早くもどれ!」

ゾロを待ち伏せしていたのは このかなりはずかしい原因を作った張本人
メリーランド第二王子ルフィ

「ま そう固いこというなよ! 旅は股ズレというだろ!」
「道づれだ...」
「そっか どっちでもいいや ところでどこに行くんだー?」
「ドラムロッキーだ それこそどうだったいいだろーが」
「気にスンナ! そっかドラムロッキーか なんだよすぐそこじゃね〜か! 
まぁ 宮殿でべんきょ〜してるよかましだけどな! イシシ!」
「俺はどうなってもしらねぇぞ‥」

こうなったルフィの意思を変えるのは容易ではないことを知っていたゾロはルフ
ィの教育係に同情しながらもドラムロッキーへの旅路へついたのであった

*************


城を出て数時間したほど見えてきたのは静かな森
昔からここの里の名は無かったがいつしか魔女の里と名がついた

ここメリーランド王国には一人の魔女が大昔から王の相談役として
のんびり暮らしている
勿論ダレでも彼でも入れるわけではなく
魔女が通行を許した者のみが入り口まで導かれる

「なんだい 思ったより早かったね」
「まぁな」
「お前さんたちのことだからもっとかかるかと思ったよ」
そうして魔女がにやりと笑い 部屋に招き入れる
「久しぶりだね 若いの」
「おう! バァさんも達者みてぇだな」

吹き飛びぺしゃりと壁にたたきつけられる王子

「しつけがなってないのも前と一緒さね‥」
「あ〜あ〜...」
「いてて‥相変わらずだな〜」

「あんたらが来た理由もわかっているよ
だがね こいつは呪なんかじゃぁないね
王族に呪なんてかけようものなら どうなるか知らないわけじゃないだろう?」

テーブルの上の茶菓子にかぶりついている奴にちろり視線を送る

「そんなことわかっちゃいるがぁなぁ‥これも仕事なもんでな」
「おう もうねぇのか茶菓子は!? ゼンゼン足りねぇよ〜」
「人様の家に来てなんだいそのいいグサは!
大体お前さんの問題なんだよ ちょっとは考えな!」

「ふぐふぐ‥? なんだ? どうした二人して?
あ 茶菓子一人で食ったのがまずかったのか?
わっり〜なぁ〜 もうね〜んだよ〜」
「いらんわ!!」
「大体こうなったのもアンタのそのバカみたいな食欲にあるんだからね 少しは
自重しな!」
「ふがふが ジジューってなんだ? ふがふが...」
「馬鹿に馬鹿というものほどむなしいものはないね...」
「‥どうやらここにいても拉致があかないようだな」

ため息を吐くゾロと魔女

「いいだろう お前たち 
こっちもこのままでこんなアホな理由で国をつぶされてはたまらないからね 
ひとつ手助けしてやろう とっておきさ ココヤシビーチをしっているかい?」
「!!」
なぜか表情の固まるゾロ
「しらね〜なぁ おい ゾロおめぇ知ってるか?」
「‥ま まぁ知っているとはいえるが‥実際自分で行ったことはねぇな‥」
目が泳ぐ...
「イーッヒッヒッヒッヒ!
だろうさね!! 腹巻は因縁があるからねぇ
いいだろう道案内を貸してやる おいで チョッパー!」

呼び名と共にひゅるりと酒つぼから現れる獣

「なんだいドクトリーヌ‥ ってあぁ! ルフィ!」
「ヨッ! なんだお前ここに住んでいたのか」
「なんだい お前たち知り合いかい?」
「う‥うん‥実はこないだ森にお使いに行っただろ?
そしたら こいつがアトラス探しにきてて...一緒に遊んだんだ!」
「おう こいつはチョッパーってゆってよ 七段変身ができるんだぜ〜 すげぇだろう!!」
「いや‥紹介になってねぇし」
「こいつの名はチョッパー 知り合いから譲りうけた召喚獣さ
チョッパー、今からココヤシビーチにこいつら連れて行ってきな」
「ココヤシビーチに? なんで?」
「行けばわかるさ いいね?」
「うん わかったよドクトリーヌ!」



さて 同じ時間ここ宮殿では大変な騒ぎが起こっていた

「たあぁあああしぃぃいぎぃいい!!!」

まるで地の底から響く怒号それはルフィお付の教育係スモーカーの発する声である

「は はい! スモーカーさん!」

そのスモーカーに呼ばれ大慌てで小走りに走ってくるのはその助手たしぎ

「見つかったか!?」
「は? 身篭ったか? えぇ!そんな!スモーカーさん‥」

なぜか赤くなるたしぎ

「アホか! 見つかったか!と言ってるんだ!
ルフィだ! あの野郎 また消えやがった!‥ってさっき説明しただろうが!」
「あ! そうでした す、すみません!まだ見つかってません!」
「クソ‥ やはり外か‥」
「スモーカーさん 一応ルフィ様は王子なのですから‥ そんな言葉使いは‥」
「あいつが王子らしくしていたらな!」


「ち... 残すはここだけだな まだ今日の課題のさわりもしていねぇ
それどころか今月は一度もまともに授業を受けてねぇ!!
このままじゃ いつまでたっても進歩がねぇ‥」

二人は数あるなかでも特に重厚な青いドアの前に立つ
そこはこの国のたった一人の王女の部屋

「失礼いたします」

光がさんさんと入り映し出す空間を十分に意識したこの宮殿内でも一番あたたかな場所にいる主に声をかけ入った

「アッラー!煙ちゃんじゃぁないのよぉ! ドゥーしたのぉ?! がーっはっはっはっは!」

そこにいたのは 真っ白な純白のチュチュに身をつつんだ‥



「てめぇ! 何こんなところでしてやがる!」
「ボン・カレーさん!」
「ちっちっち!  アァ〜ちしの名前はボン・カレーじゃぁなっくてボン・クレー!!
じょぉだんじゃなーいわよぉー! ガーッハッハッハッハ!」
「あ ごごめんなさい!」
「あやまるんじゃぁねぇたしぎ!
おい てめぇ ここで何してやがる! 無断進入もはなはだしいぞ」
「しっつれいねぇ〜  ア〜ち〜し〜はそぉんな事しっないわぁよぉ〜!
きょぉは マイフレンドの王女ちゃんのお茶会にさ〜そわれたってのよぉ!」
「あの スモーカーさん‥」
「んなわけあるか! 何でてめぇが」
「あの‥」
「いいえ スモーカー 確かに私が招待したんです
ごめんなさい ちゃんと報告するべきだったわ」
スモーカーが十手式教鞭を抜き 盆暮れに一発かまそうとした瞬間
本当の部屋の主がテラスからこちらへ来ていた

「王女! 本当にこいつを?」
「えぇ 午後のお茶会に...」
「だっしょ〜! ほぉんとやぁんなっちゃうわぁん! ねぇ〜王女ちゃぁん!」

少なからずショックを隠せないスモーカー

「本当なんです スモーカーさん ビビ様はバレエのおけいこのときはいっつもボン・クレーさんと一緒に‥」
「‥たしぎ‥ なんでそれを早くいわなかった‥」
「え...っと...」

怒りと照れ隠しの矛先がたしぎに向かうのはそう時間がかからなかった‥

「誰です? ここは王女の私室ですよ そんな品の無い声出して‥」

スラリとドアから入ってきたのは第一王女お付の教育係ヒナ
その容姿ゆえにファンは多い ただ人は外見では判断できないという見本でもある...
彼女もまたイガラムよりひっぱられてきた人物である

「あら スモーカー君 オホホホ まさかまた! また! どなたかに逃げられたんじゃないわよね? ヒナ滑稽!」
「‥フン」
「あら‥ またあなた 来ていたのね‥ まったく何度追い払っても来るんだから ヒナ憤慨」

まるで薄汚いものをみるかのように盆暮れにガンを飛ばすヒナ嬢

「なぁによぉ〜! ア〜タ!ちょぉおっつとばっかり王女ちゃんに気にいられてるからって
友情まで阻むことはでっきないって〜のょ! ガーッハッハッハ!」
「なんですって...?」
「ヒナさん!」
「ヒナ ボンクレーさんは私の大事なお友達よ 今日はお茶におよびしたのよ あまり失礼なこと言わないで」
「いいえ ビビ様 こういう輩からは有害物質が多々放出しているのです ヒナ反対
それにスモーカー君! いくら君がルフィ様お付だからといってもここまで来る権利はなくてよ 今すぐに立ち去りなさい ビビ様の御前でしょ 少しは自覚してほしいものね ヒナ落胆」
「ちっ わかってるよ こっちの用が済んだらな」
「ごめんなさい ヒナさん」
「たしぎ、もうこんな男の教育方針なんて古いのよ
 これからは教えるにも美しくなければ‥あたしの助手には空きがあるわよ」
「フン そんな教え方でよければあいつが良くなるなんて思ったら大間違いだ」
「どうかしら 現にビビ王女は教えれば教えるほど吸収されていらっしゃるわ」
「ビビはまだいい 常識があるからな ところがあいつはソレがない
なんでもかんでも不思議なんとかでまとめてしまう‥理ってもんがわかっちゃいねぇ」
「教官が悪いからよ」

あっさりと言い放つ

「何ぃ‥」

もはや部屋は一触即発
ただでさえ頑固にかけては人一倍の王宮家庭教師

「たしぎ 用件は... もしかして また兄のことですか?」

いたたまれなくなった部屋の主人からの一言で話はまた第二王子についてに

「ハッ! そうなんです王女 また どこかに雲がくれあそばされたみたいで...」
「そうですか はぁ やっぱり一緒についていったのね」
「? 何がです?」

ビビはルフィの異母兄妹にあたり 年も近いせいか非常に仲がよくスモーカーの授業をさぼるときには必ずと言っていいほどここに潜んでいたものであった
だが兄とは違い聡明であることは説明するまでもない

「じつは 外に出るって‥」

     ピシ...

スモーカーは軽いめまいを覚えた
普段めまいなんて感じたことは無かった
そうここに来るまでは

「昨日お父様とドルトンの打ち合わせを聞いていたみたいで
これで外に出られるとかなり喜んでいましたもの」

     ピシピシ‥

「あぁ あのスモーカー...さん? 大丈夫ですか?」
「あなた顔色青いわよ...」

「行き先はどことおっしゃっていました?」

だんだんと声が低くなっていくスモーカー

「さぁ それは本人もわかってないみたいでしたから まさか本当だなんて」
「...奴は やります‥」

「あぁ 麦ちゃんのことねぇ! アちし今日来る前にみぃたわよぉ!」

宮殿のおひざもとアラバスタシティ
ここメリーランド王国の中心となる街
その噴水前で大男は今日も踊る

「あっつあっあ〜ん! きょっおも よ〜くレッスンレッスン! 
アンドゥV くらぁ! アンドゥV くらぁ! ってアラ?」
「お 盆ちゃん!」
「あっら〜 麦ちゃんじゃないの! 腹ちゃんまで! なにしてんのぉ〜?」
「腹じゃねえ‥」
「おう! 俺たち今からドラムロックのばぁさんとこまで行くんだ 盆ちゃんも行くか?」
「なっあによぉ〜ん! あんなとこ行ってもなぁんにもなぁいわよぉ
アちしはこれから 王女ちゃんと ち〜タイムなぁのよぉ! ガーッハッハッハ!」
「なんだ そうか そういやビビの奴そういってたな じゃまたな」
「さそってくれてあぁりがとぉ〜ん ぢゃね〜ん! アンドゥ くらぁ! アンドゥ くらぁ!」


「ってわけよぉ〜ん!」



「ふふっふ!」

噴出すヒナ

そして 眼球に血管を浮き出すスモーカー
怒りの怒号パート2がとどろいたのは言うまでもなかった






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