「あーっ!!!お前何飲んでんだよ!」
「・・・?」
レーンを後にしてから数時間が過ち、此処は5階にあるゾロとチョッパーの住む
自宅。
その後ナミとウソップはそのまま店へ・・・サンジは仕事へ向かい
ルフィとビビは約束通り買い物とそれぞれ別れており
2人もまた仕事や診察を終え戻って来た所だった。
「別にいいじゃねぇか、酒の1本位。」
「あのなぁ・・・そうやってしょっ中飲むから食費が嵩むんだぞ。」
チョッパーはいつもきちんと計算して買い物をしているのだが
ゾロが酒豪な為、お酒だけはどうしても余計に買う事になってしまっている。
どんなに計算して買ってもその通りになった試しがなく、無くなっては渋々追加
して買っていた。
「お前・・・あいつに似てきたな。」
「あいつって・・・ナミか?俺、似てねぇぞ。」
実感がないのか、チョッパーはそのままきょとんとした表情になる。
「・・・。」
丁度その時事務所から転送で繋がる様にもなっている電話が鳴り
チョッパーはすぐ受話器を手にしたのだが・・・。
「あ・・・おい!待てよ!おい!」
「・・・。」
その様子はたった今とは明らかに違っていた。
「チョッパー?」
「ゾロ・・・。ナミが・・・ナミが・・・。」
受話器を戻したチョッパーは振り向くと、そのままゾロに言う・・・。
その声は明らかに狼狽えていて、帽子を被っている為表情は良く見えていない。
その様子を察したゾロは、すぐに屈むとチョッパーの左肩を掴んだ。
「ナミがどうした?」
「オレンジの髪をした女を預かった・・・。
1時間以内にこの女から渡されたカギを持ってジャクスン港・第3倉庫へ来い。
警察に知らせたり時間内に来なければこの女を殺す・・・って・・・。」
「・・・。」
聞いてすぐゾロは立ち上がり部屋を出ようとする。
しかしチョッパーはすぐ、そんなゾロの左腕を掴んだ。
「ゾロ、ダメだ!」
「・・・。」
「すぐに行ったって何にもならない!相手が誰か分かってないんだ、危ないぞ!
1時間の間に相手が誰か考えるんだ・・・でなきゃ、このまま行ったってカギを
渡したら2人共殺されるぞ!」
「・・・。」
見るとチョッパーは泣きそうな顔をしている。
ゾロはそんな彼の頭にすぐ手を置いた。
「悪かった・・・お前の言う通りだ。」
「ゾロ・・・。」
そしてゾロはすぐ、ズボンのポケットにしまったままだった封筒を取り出すと中
からカギを出す。
「今のヤツは、この女から渡されたカギって言ってたんだな?」
「あぁ・・・。」
「電話が掛かって来たのも俺達が此処に戻ってすぐだ・・・レーンにいた時から探ってたんだろう。」
「おおおおお!?それホントなのか!?」
「多分な。向こうにとっちゃよっぽど欲しいカギ・・・。」
カギを見たゾロはその瞬間言葉を止めると、暫く黙り込み時々髪をかく。
これは彼が考えを纏める時の癖で、チョッパーはその間ただゾロを見ていた。
「チョッパー・・・確かレクター街の地図あったよな。」
「へ?あるけど・・・。」
「話は後だ・・・とにかく持って来てくれ。」
「あぁ・・・。」
首を傾げて聞くチョッパーにそれだけ答え、彼はすぐ携帯を取り出す。
「・・・ルフィ、俺だ。これから言う事良く聞けよ。」
相手はルフィらしく、チョッパーはその間に地図を取りに行き
その地図を受け取ったゾロは話をしながら座り込むと
チョッパーに地図の方を任せながらルフィに続けて話し
彼はゾロの言う通りに地図を調べながら、その話をただ聞いていた。
「あぁ・・・これから行く。後は任せたぞ。」
そのまま通話を切り立ち上がるゾロを見たチョッパーは、とにかく驚き目をパチクリさせる。
「すげぇ!絶対そうだぞ!」
「さぁな・・・立証すんのは警察だ。」
「けど、ナミを浚ったヤツはこれで検討がついたな。」
「あぁ・・・とにかく行くぞ。」
そのチョッパーが連れられて来たのは3階のベルメールとナミの自宅。
玄関先で話を聞いたベルメールは、努めて平静に2人を見ていた。
「そうだったの・・・買い物からそのままそっちに行くって言ってたんだけど・
・・。」
「ルフィに連絡を取ったんで、ビビと一緒に来ると思います。
そしたらルフィにこれを渡して下さい。」
「・・・。」
そのままカギを受け取ったベルメールは、すぐにゾロを見る。
「・・・預かっていいのね?」
「はい。そのカギを渡すわけにはいかないんで。」
ゾロはそんなベルメールに、自分の家のスペアキーを見せた。
「それにあいつと同じで、俺はギャンブルに向いてますから。」
「そうだったわね。」
聞いたベルメールはゾロに小さな笑みを見せた後、そのまま真っ直ぐに彼を見る
。
「あの娘をちゃんと無事に連れて来て・・・あの時みたいに。」
「はい。」
「大丈夫だぞ、店長!俺もついてるからな!」
「あぁ。頼んだよ、チョッパー。」
そして彼女に見送られやって来たジャクスン港・第3倉庫・・・。
しかし倉庫内に入ったのはゾロ一人で、彼はすぐ横たわっているナミを目にした
。
「・・・ナミ!」
背中を抱え彼女の身体を起こしたゾロは
香水と一緒に薬品の匂いにも気付き、眠らされたのだとすぐに判断する。
同時に今入って来た出入口に6人の男が現れ
彼はその男達を目にしながら、退路を断たれた事を察した。
「随分と早くボロを出したもんだな・・・そんなに早くこのカギが欲しかったのか?」
何段も積み上げられている木箱にナミを寄り掛からせ立ち上がると
ゾロは偽のカギ・・・自宅のスペアキーを見せる。
「別にボロなど出してはいませんよ・・・あなた達にはこのまま死んで貰いますから。」
「だろうな・・・。」
「分かっているのならカギを渡して貰いましょうか。」
「・・・。」
ところが言葉に反しスペアキーをポケットにしまうと、ゾロは言葉を続けた。
「ネロの幹部争い・・・元はそれだろ。」
「・・・!?」
それを聞いて残りの男達もそれぞれ顔を見合わせる。
「誰かは知らねぇが・・・てめぇらは丸め込んだ幹部候補者側の奴等なはずだ。
正確には丸め込もうとしてる・・・だな。
ここ何日かの銀行強盗もてめぇらがその候補者に命令され実行した・・・そんな
トコだろ。
いくら裏社会のヤツだろうが、そう簡単にこの短期間で大金は手に入らねぇから
な。
ところがその金を持ち逃げしたヤツがいた・・・。
俺に後を頼むなんて書いた手紙を出したトコからみて、罪に耐えかねたんだろう
・・・。
そいつは何処かに金を隠しカギと一緒に俺へ送った昨日、てめぇ等に殺されメイスン川に捨てられた。
送った事を知ったてめぇらは、今日になってこのカギが届けられたのを見てたはずだ。
でなきゃ、こいつを浚って俺を呼び出すなんて事は出来ねぇからな。」
ゾロは男達にそう言うと、右手の親指を後ろにいるナミへ向けた。
「いきなり何を話し始めたかと思えば・・・探偵お得意の空論ですか。」
「・・・空論?笑わせんな。今は紙からでも指紋が採れるんだ・・・たとえそれ
が札でもな。
盗んだ金の札束には、必ずてめぇらの指紋がついてるはずだ。その札束の入った入れ物にもな。」
それを聞いて男達の表情がとたんに険しくなる。
ゾロはその中の一人・・・右から2人目の男を睨み付けた。
「それに昨日殺したのはてめぇだろ。殺した場所もここだ・・・違うか?」
「何だと・・・。」
「警察の科学捜査を甘くみんなよ・・・その腕に貼ってあるもんは何だ?
首を絞めた時、害者に傷を付けられたんだろうが。
害者の爪に残った皮膚と、てめぇの皮膚や髪を調べりゃDNAが一致するはずだ
。
これ以上の証拠はねぇだろうが。」
「・・・。」
「それにあいつが寄り掛かってる木箱・・・頭の上辺りが少し削れて血も付いてんだろ。
血液型を調べるのは難しいかも知れねぇが、爪ん中に残ってた木カスとは一致するはずだ。
藻掻くか何かであの木箱の端を掴んだ・・・そんなトコだろうな。
襲われた銀行も、全てこっから半径20km以内でメイスン川とも近い・・・証拠には充分だろ。」
その時カギと一緒にズボンのポケットに入れていた携帯が振動を起こす。
その振動に気付いたゾロは、口元に笑みを浮かべた。
「言っとくが・・・これから捕まった所で、命令されたなんて言い訳は通用しねぇからな。
てめぇらに命令したその候補者は、間違いなくシラを切るだろうよ。
てめぇらは害者にカギを盗られた時点で見捨てられたんだからな。」
「っ・・・まさか警察に・・・その女が惜しくないのか!?」
「あ!?ハナから殺る気だった奴等が、甘ぇ事言ってんじゃねぇよ・・・。」
途端にゾロは低い声を響かせる。
その直後・・・今度は倉庫内に高い声が響いた。
「ゾロは警察に知らせてないぞ!」
「そいつは俺に知らせてきたんだ・・・警察に知らせたのは俺だ。」
男達の後ろ・・・倉庫の出入口の外にいたのは、チョッパーとルフィ。そして数人の刑事。
抵抗する間もなく男達は捕まり、事が収まったのを確かめたチョッパーはすぐにゾロへと駆け寄った。
「ゾロ、大丈夫か!?」
「あぁ・・・それよりナミを頼む。」
「お・・・おぉ。」
そのままチョッパーはナミの状態を確かめる為、後ろで寄り掛かっている彼女の元へ。
ゾロは歩み寄るルフィと顔を合わせた。
「電話よこすの早かったじゃねぇか。」
「まぁな。カギもちゃんと渡したし、金は今頃エースが見つけてんだろ。
何か駅前のコインローカーのキーみてぇだぞ。」
「そうか・・・。」
そしてそのままルフィは言葉を続ける。
「これだとネロまでは踏み込めねぇだろうし、警察はここまでだな。」
「あぁ。ネロは随分マヌケな手下を使ったもんだ。」
「それだけ早く金が欲しかったんだろ?俺はよく分かんねぇけどな。」
「ゾロ!ルフィ!」
「「 ・・・? 」」
そこまで話した所でチョッパーに呼ばれ、2人は彼を見る。
「ナミは大丈夫だぞ。眠らされてるだけだ。
ただ、嗅がされたコーデリアは強い睡眠薬なんだ・・・明日の朝にならないと目
は覚めないぞ。」
「ん〜・・・じゃぁ早ぇトコ家へ連れてった方が良さそうだな。」
「あぁ。その方がいいぞ。」
「んじゃ、腹も減ったしビビも待ってるし店長ん家に帰っか。店長メシ作って待
ってるって言ってたぞ。」
「ホントか!?」
しかしルフィとチョッパーが話をしている間にナミを抱え上げていたゾロは・・
・。
「おい・・・行くぞ。」
2人にそれだけ短く言い、歩き始めていた。
「おい、待てよゾロ!」
「先に行くなんて、ずりぃぞコノヤロー!」
そんなゾロの後にルフィとチョッパーも続いていく。
こうして倉庫を後にした3人は、眠っているナミと共にベルメールの元へと戻るのだった。
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