このお話は管理人作の「
というわけで」のパロディです(笑)。

 

 

上下逆さまの世界を見つめながら、ルフィは面白くなさそうに呟いた。

「・・・・サンジのやつぅ〜・・・・」

その後、大きくため息をつく。

ルフィはまたもやつまみ食いが見つかり、ただいま刑の執行中・・・。

今日は『簀巻きの上マストから逆さづり』の刑だ。
ルフィいわく、『D難度』の刑であった。

「・・・・サンジのやつぅ〜・・・」

ルフィは血の回った頭でモヤモヤ考え込む。

「俺がつまみ食いすることを見越して、食い物つくれってんだ!!」

お門違いも甚だしい台詞を一人つぶやく・・・。

「・・・いつか『ふくしゅー』してやる・・・」

ルフィは半眼になって暮れ行く海と空を見ながら心に誓った。

そして『ふくしゅー』の日はやってきた!!





というわけで
            

ててこ 様






夕食の仕込みを終えたサンジは食堂で一人、後片づけをしていた。
慣れた手つきで、汚れたボールや鍋を次々に洗っていく。

「〜〜♪」

昔は流行った歌を鼻歌で歌いながら、サンジはいつになく上機嫌だった。

そう・・・『ふくしゅー』を誓ったその男が来るまで・・・。

バタンッ!!

乱暴にドアが開く音がしたので、振り向くとそこには何やら真面目な顔をしたルフィが突っ立っていた。
そして、ルフィはツカツカとサンジに歩み寄ると、その肩をガシッと掴み、サンジの身体を無理やり自分の方に向けた。

「何しやがんだッ!!クソゴムッ!!」

サンジはいきなりのことに額に血管を浮かせてうめくように怒鳴った。

「サンジっっ!!」

ルフィはそんなことはおかまいなしに、怒っている男の名を叫ぶように呼ぶと・・・


「・・・・・好きだ!」

とのたまわって、サンジをそりゃもうギュ〜ってな感じで抱きしめた。

(あわわわわわ・・・)

サンジは一瞬にして、足のつま先から、金髪の先まで鳥肌を立てた。釣り上げた深海魚のように口から胃が出そうになる。

あまりの衝撃で『あわわ』になっていたサンジがルフィの身体を自分から離そうと身をよじった。
その瞬間ルフィはサンジの身体を壁に押し付け、そして、自分はサンジが逃げられないように、サンジの顔の横にバンっと手を突いた。サンジを覗き込むようにじっと見つめ、甘く切なく囁く。

「・・・好きだ・・・。サンジ・・・。」

(はんげれぴよるか、ぽぽるひげー!!)

言語中枢を殺られた模様のサンジ・・・。
あまりの気色ち悪さに声も出なければ、足も出ない!

ちょうどその時ナイスな・・・いや最悪のタイミングでもう一人の男が食堂に入ってきた。

「サンジ。水・・・」

その男、ゾロはトレーニングを終えたばかりなのか、タオルで顔を拭きながら、こちらの方を見た。

そこには、壁に押し付けられているサンジと、押し付けているルフィの2人の姿があった。

「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」

しばらく固まったままの3人の男達・・・。


ポトリ・・・。ゾロの手からタオルがこぼれ落ちた。


「・・・ん・・・・。」

ゾロはコホン小さく咳き込むと、ノロノロと落ちたタオルを拾い上げ、2人から目線を逸らして、呟くように言った。

「・・・・・わりぃ・・・・」


(悪くないッ!悪くないッ!)

サンジは首をブンブン横に振って心の中で叫んだ。
その時、ルフィはゾロに向かって怒鳴った。

「邪魔するなっ!ゾロッ!!」

(がぼーんッ!!)

その台詞にサンジの顎が床までのびた。

ゾロは珍しく困ったような顔をしてガシガシ頭をかきながら、低い声で言った。

「・・・ルフィ・・・あっ・・・そのぅ・・・今更なんだが・・・・。気づいてなかったらいけねぇから、この際言っとくけど・・・・・。サンジは・・・・・」


「・・・・・『男』だぞ・・・・。」


ルフィはゾロのその問いかけに、おっとこまえな顔をして力強くこう答えた。

「誰にだって欠点はあるっっ!!!」

どどーーんっ!!


「・・・・・・。あぁ・・そうだ・・・。そうだな・・。うん・・。そうだ・・。そうに違いない・・・・・。」

無理矢理自分を納得させようとするゾロ・・・・。

(そこで、納得するなっー!!!)

サンジは心の中で叫ぶ。
ルフィはなおも、腹から声をだして続ける。

「いいか!ゾロ!俺達は愛という名の自由の海を航海する冒険者だっ!!」

「愛は自由だっ!!冒険だっ!!」

「・・・・・・・・・。」

そんなルフィを見つめながら、ゾロはしばらくしてから
「そうだな・・・。冒険、冒険、大冒険だ・・・・」
と、吐き捨てるようにつぶやくと、ルフィに向かって懇願するように続けた。

「ルフィ・・・。頼みがあんだが・・・」

「何だ?ゾロ?」

「そのお前の言う『俺達』の中に・・・・」



「俺を入れないでくれ・・・・」



ゾロは『いやっ ホンマ、頼んますっ!』って感じでルフィを片手で拝んだ。

「んっ!ゾロは入れない!」

ルフィは『あいわかった!』という風に大きくしっかり頷くいた。
ゾロはそれを見て安心したようにほっとため息をつき、「じゃあ、ごゆっくり」などと、彼的には最大限気を利かした台詞を残し、食堂を後ずさりしながら、去っていった。

パタン・・・。

(行かないでぇ〜。行かないでぇ〜)

サンジはハラハラと大粒の涙を流しながら、演歌歌手の振り付けのような手つきで、ゾロの消えたドアに向かって手を伸ばした。

ルフィはそんなサンジにはおかまいなく、両者の鼻先が触れんばかりの距離まで、顔を近づけあま〜い声で囁いた。

「と、いうワケで。いいだろ?」

「んなわけあるかーー!!」

どこぞで聞いたことのある台詞を叫んで、復活したサンジはルフィの顎を膝蹴りし、とび蹴りし、踵落としをくらわせ、コブラツイストを決め、おまけに頭突きをお見舞いしてから、慌ててゾロを追って部屋を出て行った。

「ゾロッー!待てッー!今のは誤解だッー!幻だッー!誰にも言うなッー!!!!」

サンジの懇願を含んだ絶叫が廊下に響いた。

ニヤリ・・・・。

床に倒れこんでいたルフィが意地悪く笑いながら起き上がった。

「あー!気持ち悪かったッ!」

開口一番舌を出しながら吐くように言った。

しくぅわぁーし!そのおかげで、今食堂には誰もいない・・・。

ビバッ!!つまみ食い天国!!

ルフィは骨付き肉にかぶりつきながら考えた。

(んー。でも もうこの手は二度と使えないねぇなー他の手 考えねぇとなー!)



ゾロの誤解を解くのにサンジは一週間かかった。






FIN




 

<管理人のつぶやき>
ホンマにあわやルサンですよ。
ルフィの復讐は、サンジにとっては想像を絶する恐ろしさ(笑)。
その場面に鉢合わせたゾロの反応がいちいち笑えますな。
しかも、誤解を解きにサンジが部屋を出て行くとまで読んでいたとは、このルフィ、やりおるな。おかげで「つまみ食い天国」が実現しました。
それにしても、サンジのあの慌てふためきよう。ゾロにだけは誤解されたくなかったのか・・・はッ!もしかしてサンゾロ?!(←やめれ)

ててこさんから「『というわけで』のパロディいる?」というメルが来て、「もちろん、いります!」と即答です(笑)。ご本人はナミが出てないことを気にされてましたが、「というわけで」繋がりなので、良いのですー。
ああ、面白かった!ててこさん、どうもありがとうございましたーー!

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