蝶はどこへいった   −5−
            

ててこ 様






〜 ナミの髪 〜



暗い天井が目に入った。

ボンヤリとしたオレンジ色の優しい光が写っている。

目が覚めたのか、それともこちらが夢なのか・・・・
しばらくゾロにはわからなかった。



ふとオレンジの香りがした。



なぜかひどく懐かしい気がして、その香りの主を捜す。それはすぐに見つかった




ナミが自分の傍らに座って、ただじっと自分を見つめている姿が目に入った。



「・・・・・・・・どう?」


ナミが控えめな声で聞いた。



・・・・・いい声だ。心をくすぐる優しい声だと思った。


「・・・・悪くねぇ・・・」



ゾロはできるだけ元気に答えてやったつもりだったが、自分でもびっくりする位
微かな囁き声にしかならなかった。

「・・・・もう大丈夫だって・・・。チョッパーがもう峠は越えたって・・・・」

ナミの瞳がその時大きく緩んだ。自分自身が言った言葉に自分で
安心したように・・・・。

次の瞬間、大きな涙がポトリと頬を伝って落ちた。

そしてゴメンね、ゴメンね、と何度も呟きながら、そっと寝ているゾロの首筋に
自分の額をゆっくりとためらいながら押し付けた。

ナミの絹のような髪がサラサラと、ゾロの頬や首に広がる。



「ゴメンね・・・ゴメンね・・・」



しゃくりを上げながら、小さく何度も謝る。



ゾロは大丈夫だと言ってやりたいのだが、声が出せない・・・。
自分にふりかかる美しい髪を撫でてやりたいと思うのだが、
腕に力が入らない・・・。



(「彼女が泣いてわ・・・」)



(くいながそう言ってたな・・・そうか・・・ナミ・・・お前が泣いてたのか・・・?)

その時、ナミの髪から黒い蝶がヒラヒラと舞い上がったのが見えた。


ゾロは思わず目を見張り、軋む腕を無理矢理伸ばしてその蝶をためらいなく掴んだ。



蝶は音もなく霧散する・・・。



「せかいがゆがんでいるのは おまえのせいだ」


(あぁそうだ。それでいい。そんなことはずいぶん前から知っている・・・)



世界の歪みをなおそうなんて思わねぇし・・・・・。

それに・・・・



(歪んでる方が・・・・おもしれぇだろ?)






世界の高みに登ろう・・・。

唯一無比の存在になろう・・・。


『強い』ということはどういうことなのか知りたい。


頂上に立つというのはどういうことを意味するのか理解したい・・・。




――― 本当の強さをこの手に掴みたい ―――


―― 俺にしか掴めない未来を知りたい ――

 


(・・・・・生きなきゃ・・・・)



ゾロはそう思うと、伸ばしていた手でナミの髪を1、2度撫でてやった。


ナミがそっと顔を上げる。


固定されたままのゾロの手が、ナミが顔を上げるのに従い、その頬、顎に順番に触れていく。

ナミはゾロの手の平にそっと顔を預けるように、首を少し傾げると、
精一杯の笑顔を向けて聞いた。




「・・・水・・・・飲む?」



「・・・・・・・・・・・・。」


ゾロはその問いかけにゆっくりと首を左右に振ると
こう言った。



「・・・・酒くれ・・・」



ナミはやっと本当に笑った。






〜 アイと愛とあい 〜



ゾロは3日前からやっとベッドから起き上がることができるようになった。

少しやつれて無精ひげをはやしたゾロは少し痛々しくは見えたが、それでもなお翡翠色の瞳は以前にも増して強い光を湛えていた。

心配だった彼の回復力はチョッパーに言わせると・・・。




「・・・・・カルーチャ並み・・・・・」




ということで・・・・。


本人を目の前にしてその単語を言うのをはばかったチョッパーが隠語にして呟いたのだが、ゾロはそれを聞くとチョッパーの後頭部を足で押さえつけた。


「とうっ!!」





『カルーチャ』とはラテン語で『ゴキブリ』という意味だ。





サンジは毎日三度三度、病人食を持って病室となった女部屋に現れる。

てんこ盛りの病人食・・・。

思いやりのベクトルが間違った方向に向いている。


「ほら食え!やれ食え!もっと食え!」


「・・・・・・・・・・・・・。」


ゾロはケンカを売ってるな・・・と解釈し、売られたケンカなら買う!と決心。
山盛りの病人食をドカ食いして、キレーなお皿にしてサンジにつき返す。
サンジはそれを見ると顔を引きつらせ、次の食事の時には前にも増して量を増やして持ってくる。

ゾロはまた完食→量が増える→完食→量が増える→完食・・・・・・・。

それを五回繰り返した時、ロビンが2人の頭にげんこを落として呆れるように言った。


「・・・・いい加減にしなさい!」




ウソップとルフィは連れ立ってよく顔を出し、『暇だから』という理由で女部屋の中でかくれんぼを始めた。


「お前、オニな!」


などとルフィ達は、ベッドに上半身を起こしてやっと座っているゾロに向かって
勝手に決めつけ、勝手に隠れる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」


ゾロは勿論ルフィとウソップがどこに隠れているかななんて一目瞭然だし、
それより何より動ける状態ではないので、何もしないで唖然としてベッドの上に座っていると、隠れている場所から二人は同時に出てきてゾロに向かって不満げに言った。



「「・・・・ノリ悪いなぁ・・・!ゾロッ!!」」



「出て行けッッ!!!」






ナミは時間があるとちょくちょく顔を覗かせる。

ゾロはナミから自分が倒れた後のことを教えてもらって正直驚いた。


チョッパーは本当に優秀な医者で、彼の適切な処置がなかったら、自分はもうここにはいなかったであろうこと・・・・。


ロビンは自分の能力は一切使わず、懸命に看病してくれたこと・・・。


サンジは食べないとわかってても、毎日毎日三食必ず食事の用意をしてくれていたこと・・・・。


ウソップは口数が少なくなり、ゾロのトレーニング用具の整備をずっとしていたこと・・・・。


ルフィはずっと羊の上に座って怖いくらい真面目な顔をして海を見つめていたこと・・・。



ゾロはたくさんのクッションを背もたれにしてベッドの上に座っており、ナミは丸椅子に座って、りんごをむいてあげている最中だ。



「いらねぇ」

というゾロに、

「滋養があるから」

とナミはピシャリと言い放ち、無理矢理一個食べさせてたところだ。


「・・・・・でお前は・・・?」


ゾロはもしゃもしゃとりんごを頬張りながらナミを見て聞いた。


プツンッ・・・・・。


ナミはずっ〜と途切れずにむいていたりんごの皮を思わず切ってしまってから、うわずった声で答えた。


「わっ私は・・・べっ別に普通・・・通りよっ!いっいたって普通!」




実はナミはゾロが倒れている間、ずっと女部屋のドアの前の廊下に座り込んでいたのだ。

自分の看病の番と、航路をチェックする時以外は、ずっと壁によりかかって座っていた。

他のクルーは順番にナミを説得したが、ナミはそこを動くことを頑なに拒否した。

ロビンは「病人が2人になってしまうわ・・・」と呟いて隣にいるチョッパーを見下ろした。

チョッパーはコクリと頷くと、膝を抱えて暗く冷たい廊下に座り込んでいるナミに静かに声をかけた。


「・・・・ナミ・・・・?少し休もう?せめて部屋に入ってくれ・・・」


ナミは膝に額を押し付け顔を見せないまま首を左右に振った。
そして小さい声で言った。


「・・・・・怖くて・・・・入れない・・・」


「・・・じゃあ・・・キッチンのソファで少し休め・・・」


「・・・・離れるのはもっといや・・・・・」



チョッパーはもう何も言えなくなり、その場を立ち去った。

クルーはゾロだけではなく時々ナミのかたわらに座り、話しかけたり、ただ黙って一緒にいてくれたりした。




クルーは2人分の看病をしたことになる・・・・・。





ナミは話題を変えようと前から気になっていることを聞いた。床に落ちてしまった細長い皮を拾い上げながら・・・。


「ゾロ・・・『クオ・ヴァディス・ドミネ』って何で知ってたの?」

ゾロは横目でチラッとナミを見て、しばらくしてから答えた。


「・・・・・聖書に出てくる・・・」


「聖書!?あんた聖書なんて読んだことあるの!?」

思わず大声を出してしまい、ゾロがしかめっつらをしたのでナミは咄嗟に自分の口を手で押さえた。そして呆れたように言った。

「あんた、神様なんて信じてないでしょうが!!」

「あぁ。全然。まったく。これっぽっちも信じてねぇ」

ゾロはきっぱりと言い切る。

「じゃあ何で!?聖書なんか・・・・」

「俺は信じてねぇ。でも・・・・・」

ゾロはそこまで言うと、気まずそうにナミから視線を外しポツリと答えた。



「・・・・俺が殺してきた連中の中には、信じてる奴がいたかもしれねぇ・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・。」


「・・・・そんなことしても気休めだってわかってたけど・・・どんな安い木賃宿でも聖書だけは置いてるだろ?・・・人を殺した夜なんかは特に・・・・・読まなきゃいられなかっただんだ・・・。ガキの頃は・・・・」 



ナミは唖然となった。言葉が出ない。


そして思う。


(・・・あぁ・・・この男はこういう男なんだ・・・)




自分が殺してきた男達のために、祈りの言葉を知りたかったのだ・・・。




その瞬間ナミは自覚する。




―――  私はこの男が好きだ。





何という強さと・・・・・。


何というはかなさだろう・・・・。



敵の血潮が降りかかる中で、何の躊躇もなく舞うように戦うこの男も・・・・

人を殺した後で、自分の血だらけの両手をじっと見つめるこの男も・・・・




――― 両方、自分は好きなのだ。





ナミは思わず笑ってしまう・・・・。


そして切なくて泣けてくる・・・・・。



ゾロはナミがあんまりいい笑顔で自分を見つめるので、少し戸惑って目線を
益々逸らして呟いた。


「・・・自己満足だ・・・。自分のためだ・・・。少しでも罪悪感が残らねぇように・・・・」



「・・・それでもいいんじゃない。そうでもしなきゃ・・・・」



「生きていけなかったんでしょ・・・?」



ナミの問いにゾロは軽く頷いて言った。

「あぁ・・・。そうだ。生きていけなかった・・・。」



ナミはゾロが変わったと思う。


弱さを否定しなくなった。


それは多分もっともっと強くなれるという証拠なのだろう・・・。

ナミは皮を剥いてしまったりんごを小さく切ってからゾロに渡す。

ゾロは不満げな顔をしながらそれを受け取る。

指と指が触れ合う・・・・。

ナミはその刹那でさえ、愛しいと感じた。

彼は信じてないと言うが、ナミは神様に感謝する。




彼にめぐり合わせてくれてありがとう・・・。


愛しい人を救ってくれてありがとう・・・・。






〜 羽化 〜


チョッパーとゾロは並んで甲板の上に座っている。

ゾロは足を投げ出し、腕を後ろについて自分の身体を支えながら、
青い空にゆっくりと流れていく白い雲を眩しそうに目で追っていた。

チョッパーはその隣で乾燥したリステアルの葉っぱを粉末にする作業をこなしていた。

すり鉢に3,4枚リステアル入れると、すりこ木で円を描くように丁寧にすっていく。

女部屋から外に出たのは久しぶりだ。
ただしトナカイの見張り付きなのだが、この際それには目を瞑ろう・・・。

新鮮な空気や、まぶしい太陽、髪を揺らす風は病後の身体に優しい・・・・。



何気ない会話の中でゾロは平然とこう答えた。

「・・・・マスターベーションだろ。俺の夢は・・・」

カクッ・・・・ゴンッ・・・・!

チョッパーは思わずすりこ木の先に額をぶつけた。

「・・・・マッ・・・マッ・・・!」

チョッパーは顔を真っ赤にして作業の手を止め、ゾロの顔をしげしげと見つめた。
穴が開くほど・・・・。

「・・・だからぁ、マスかいてるみたいなもんだって、俺は・・・」

ゾロはうろたえているチョッパーを横目で見て言った。

「・・・・・マスって・・・・自分の・・・夢を・・・・」

チョッパーは上擦った声で呟いた。

ゾロは肩を揺らしながら笑って、また空を見上げた。

「だってそうだろ?世界で一番強くなったって、誰がどんな風に認めてくれるっていうんだ?」



「・・・・・・・・・・・。」



チョッパーはそう言われて、すり鉢の中に視線を落とした。返事が出来ない。

「『世界剣豪委員会』なんてのが存在してて、ある奴をぶっ倒したら、認定書とバッチでもくれて『ハイ、今日からお前が世界一強い男です』って言ってくれるわけじゃねぇだろう?」


「・・・・・・・・・・・うん。」


「となるとだ、俺はいつどんな風に自分が世界で一番強くなったって思えばいい?」


「それは・・・・・・」



チョッパーはしばらく考えてから、ハッとなってゾロを見上げて言った。



「鷹の目ッ!鷹の目のミホーク!あいつが今世界で一番強い剣士なんだろ?
あいつを倒せば、世界一の剣豪になれるんじゃないのか?」


ゾロは口の端を少し上げて答えた。


「そうだな・・・。前はそう思っていたけど、ちょっと違うな・・・。あいつは強い。文句なしに強い。もう一度戦ってみたい相手だ。」



「・・・でもあいつが世界最強かなんて誰にも断定できねぇ・・・」



「・・・・・・・・・・・・・・。」



「もしかしたら、小さな孤島に隠居している剣の達人のじいさんなんてのがいるかもしれねぇし、本当は強いのに何かの理由で、剣を捨てた元海軍なんてのもどっかにいるかもしれねぇ・・・。きさくな魚屋だけどそれは世をしのぶ仮の姿で、滅茶苦茶強いオバハンってな奴もいるかもな・・・」



「・・・確かめようがないんだ。世界で一番強い奴なんて・・・」



チョッパーはまた視線をすり鉢の中に落とした。

ゾロは続ける。


「誰かと比べてそれより強いっていう相対的な強さってのは・・・・・


・・・・・・・・・・確かめようがねぇんだ。・・・誰にも・・」



「世界中の人間を殺すわけにもいかねぇしな」



ゾロはそこで一息つくと身体を支えていた腕を戻し、胡坐をかくとその足首を手で掴んだ。

「じゃあどうやって俺は自分が世界最強になったって自覚すればいい?」

ゾロは自分に聞くように尋ねて、そして自分で答えた。




「・・・それは多分・・・その瞬間になったら自分の中でわかるんじゃねぇかと思う・・・・」


「あぁ・・・もうこれ以上高みには登れない。今この瞬間に登りつめたっていうのが心の中でわかるんじゃねぇかと思うんだ・・・・・。




―――  大悟ってやつかな・・・」




「・・・・・・大悟?」

チョッパーはまたゆっくりと手を動かし始めた。

「大悟する瞬間ってのはやっかいだ。それは突然明日やってくるかもしれねぇし






「・・・・・・・永遠にこないかもしれねぇ・・・・・」



ゾロは少し間をおいてからゆっくりと言った。

「相対的でない絶対的な強さが欲しいんだ。他人と比べてどうだとか、
あいつを倒したから強いとか・・・そいうのはもういいんだ・・・。」




「世界の高みに登ろうと思う・・・・。



てっぺんに行きてぇ・・・。」




―――  未来を・・・掴むんだ・・・・。



ゾロの翡翠色の瞳に少し金色が混じる。
チョッパーはそれを見るとゾワリと背中の毛を逆立てた。


チョッパーはおずおずと言う。


「・・・・辛い道だぞ・・・。ゾロの行く道は・・・・・」




「あぁ。覚悟は出来てる・・・」

ゾロはしっかりと前を見つめて答えた。

するとゾロは突然ニヤリと笑ってチョッパーに向かって言った。

「自分で夢を見つけて、夢のために突っ走って、夢の終わりを決めるのも自分だ。
他人の介入一切なし。全部自己完結だ・・・・


――― これ・・・マスターベーションだろ?」


ニシシと笑う。

チョッパーは困ったような顔をしてため息混じりに言った。

「・・・お前、頭良いんだか、良くないんだか・・・」

ゾロはその呟きに愉快そうに笑って答えた。

「そういう時は良いって言っとけよ!」



「・・・お前、変わったな。病気してから・・・」

『野望』って言わなくなったな・・・・ゾロ・・・・。

チョッパーは何だか口元が緩んでしまう・・。

「・・・・・・・・・・・・・。」

ゾロは笑うのをやめてしばらく甲板の上を見つめていたが、ややあって口を開いた。




「・・・・・・・ルフィが許してくれた・・・・。」




そしてチラッと自分の横に立てかけてあった白い刀に目をやって続ける。


「くいなはあそこではなく・・・・ここにいる。」


そう言って自分の胸に手を押し当てた。



「・・・・・だから俺は羽化できたんだ。」


「・・・・・・・・・?」

チョッパーがその言葉が理解できず、小首を傾げた。


「・・・・蝶になれたんだ・・・やっとな・・・・」

ゾロは船が進む方向を見て言った。





――― 風が吹く。





ゾロのピアスをサララと撫でて去っていく。


この船の行く先に、俺に行く道がある・・・・。




そして、ふと思う。




晴れ渡る空のようなすがしさの中で思う。







「あの蝶は・・・・・



        ・・・・・・どこへ行っただろう」






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<作者ててこさんからの補足>
このお話は完全なフィクション・パロディです。

ある特定の宗教を揶揄するつもりは毛頭ありません。

聖書や人物を引用させていただきましたが、教義を深く理解した上で記述したわけではありません。
軽率だと立腹される方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまでもフィクションの上の引用ということでご理解頂ければ幸いです。

ただ執筆者の未熟さ、いたらさなさがクリスチャンの方に不愉快な思いをさせたとしたら、ここでお詫びさせていただきます。申し訳ありません。

なお「クォ・ヴァディス」に関しては「聖書」には出てきません。出典はシェンキェーヴィチ作の「クオ・ワディス(下)」です。ご注意下さい。(↑読み物として大変面白いそうです。良かったら是非)

また以前「パウロ」と人物名を記述しておりましたが完全な誤りです。正しくは「ペテロ」です。平身低頭謝罪致します。

アップされてから随分長いことほったらかしにして間違いを流布してしまいました。ご一読いただいた方々にも申し訳なく、謝罪致します。

また間違いをご指摘していただきました○さんには本当に心から感謝しております。ありがとうございました。

それでも「やっぱり不愉快だわ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
その時はご連絡下さい。削除していただくこと考えております。








<管理人のつぶやき>

黒い蝶がなんとも不気味さと不吉さを暗示しています。そして、ゾロが倒れるという事態に。一人の少年が背負うにはあまりにも激しく辛い修羅の道を、くいなのためにと思って歩み出してしまったことが歪みの発端。自分がそうしたいのか、彼女がそうしたいのか、未分離のまま人生を歩み始めてしまった。当然ゾロの中では葛藤が生まれます。しかし歪みはいつかどこかで矯正される日が来る。

仲間達とのエピソードの中で語られるゾロは強く優しい。彼の深い懊悩がそうさせてるのですね。その分ゾロの言葉には深く重みがあり、仲間達を勇気づけてきたのでしょう。

宗教画に求めていたものが「許し」だと知った時、そこまでゾロが追い詰められていたのかと胸が痛くなりました。でも、ルフィが救いの手を差し伸べてくれた。ルフィが分かってくれた。ルフィが許してくれた・・・。すごいよ、ルフィ。ゾロの遥か上を行く達観者だ。

終着駅の場面ではうるる〜(;_;)となりましす。くいなの諭しには胸を打たれます。
なりふり構わず縋ってくるゾロに、あんな素晴らしい言葉を残していくなんて・・・。
目覚めた後のゾロは、やっと自分の人生を自分のものとして生きていけるという躍動感に満ちてるね!それはまさしく羽化したばかりの美しい蝶のようでした。

「ナミ誕生日2003」で5作品を投稿してくださったててこさん。今回これまたすごいのが来たと、メールを開けた途端に思いました(笑)。長く温めてこられたお話だそうです。
ててこさん、素晴らしいお話をどうもありがとうございました!そして、長編執筆お疲れ様でした!!

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