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のお様

甘い花の香りがする・・・と思った。

次の瞬間、あんまり月並みな発想なんであきれ返る。ありきたりな小説のようだ。ウソップあたりが後生大事にしまい込んでいる三文雑誌にでも出てきそうだ。或いは、あのラブコックなら、臆面もなく口にできるかもしれないが。

焦がれた身体は俺の下にあり、直接ふれあった皮膚を通して、ナミの鼓動が伝わってくる。

ナミの首筋を屠り、途切れぬ喘ぎに震える喉の感触を楽しむ。

柔らかい唇を捉えると、湿った吐息が俺の頬にかかる。

ああ、また・・・だ。澄んだ蜜のように甘やかな、混じり気なしの官能的な香り。





何度もくちづけをかわし、唇から溶かしていった。肌を伝ってたどり着いた胸は、白く滑らかだった。肌理の細かいふくらみに舌を這わせ、ふっくらと立ち上がった頂上を軽くついばむ。ナミがちいさく泣き声をあげる。

片手で、質感のある乳房に触れる。思わずしっかりと掴みかけるが、ひゅっと息を呑むナミの様子に、慌てて力を緩める。

逸る気持ちを抑えるのに、けっこうな意志の力が要るもんだ。

俺には不似合いなほど慎重に、そっとそっと力加減して、柔らかなふくらみを揉みしだいていく。唇の間で反対側の乳頭を挟んで転がせば、反対側の頂きも同じように、ツンと立ち上がってくるのがわかる。

ナミの身体はしなやかで、ふんわりと柔らかく、俺の気持ちを煽った。ちょっと顔を上げてナミの表情を確かめる。軽く目をつぶっている。乳頭をちょっと指でつまんでやると、唇を開いて、ああと深い吐息をもらした。仰け反った体の線に満足して、初めて訪れる場所を味わう作業に没頭する。

手を伸ばして両脚のラインが交わる処にそっと触れた。白い身体がビクッと震える。構わずに指を進めると、すぐに熱い滴りが溢れる場所に行き着いた。

「やっ・・・んんっ。ああっ・・・ゾロ・・・」

ナミのもらす声が、端っからちっぽけな理性を、さらにかぼそいものに変えていく。

イヤイヤをするように首を振りながら、反射的に俺の指の侵入を拒もうとするナミに、辛抱しきれなくなって俺は身体を離し、その脚の間に滑り込んだ。

両脚を持って広げようとすると、強い力で抵抗された。それならばと膝の下から手を入れて脚ごと抱え上げる。

ナミの隠されていた秘所が露わになった。

そこにゆっくりと、唇を触れさせる。

「ああっ、ゾロ、ダメ・・・ソコは・・・ああ」

ナミがはっきりと泣き声をあげる。秘所はふっくら開いて淡い色合いの襞が覗いている。そっと舌を這わせると、とろりとした甘いしずくが、つうっと糸を引くように滴り落ちてきた。

「イヤっ・・・ああん、ゾロっ」

軽く触れるか触れないかのうちに、ビクビクと身体を震わせて反応するナミ・・・俺は、さっきからぼんやりと抱いていた思いつきが、次第に確信になってくるのを感じた。

「ナミ」

脚を離して身体を沿わせ、視線を合わせて訪ねた。

「おまえ、初めてだな」
「えっ、ち、違うわよっ・・・」

とろっとしていたナミの表情が、すっと硬くなった。

「隠してもどうせすぐばれるんだぜ」
「・・・・」

ナミは顔をそむける。その沈黙が、すでに雄弁に事実を語っている。

「なによ・・・トウが立ってるって言いたいの?」

ナミのふくれっ面は、もうめちゃくちゃに愛らしくて、俺は思わずぎゅっと抱きしめたくなる衝動を抑えた。処女性をありがたがったりする男と思われるのは癪だった。

「仕方ないでしょ・・・だって、ヤリたくなるような男が回りにいなかったんだもの・・・」

ナミは、ぶつぶつと言い訳めいたことを、ひとりつぶやいている。

が、・・・違う。

俺にだってわかる。コイツが、自分の身を守りぬいたことの、あまりにも重大な意味が。今までの厳しい生活の中で、あえて女を盾にしてこなかった事実が、それを守った過酷な現実が、コイツの思いを明らかに代弁している。

それを思うと、月並みだが聞かずにはいられなかった。

「俺でいいのか」

ナミはクスリと笑った。

「なによ、海賊でしょ?・・・欲しけりゃ奪い取るんじゃなかったの?」
「ああ」

その優しく引かれた唇の端に、確かに許しを見たと思った。

「じゃ、イヤって言ったら?」

からかうような口調も、もう睦言にしか聞こえない。

「言えないようにしてやるさ」

まだちょっとむこうを向いている顔を、まっすぐに引き寄せる。そして、その、甘い花のような唇を、もう言葉にならないように、しっかりと俺の唇で塞いだ。

ナミの唇が開いて、更に甘くしなやかな、小さい舌が侵入してくる。それを迎え、互いの舌を絡めあいながら、もういちど時間をゆっくりかけて、ナミの身体を、甘くやわらかく、とろりととろけさせてやろうと自分に誓う。

ナミが俺の唇をもぎ離して、荒い息をつきながら、笑った。

「もう、これじゃ、あんたがいいとも言えないじゃない」

「別に、いいぜ。これからイヤでも言わせてやる。『ああ、イイ、ゾロ』ってな」
「バカ・・・」





俺の首にするりと飛びついてくる子猫は(実は牝豹かもしれないが)、花の唇から出した小さな牙で、俺の深いところにがっちりと喰らいつく。




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<管理人のつぶやき>
昨年のゾロ誕の頃に、
時間の澱様の【なかよし病棟】に「ココヤシ医院の事情」を投稿したお礼に頂いた作品です。
「お礼に裏にあります14のお題の中から何でもひとつもってってください」と言われまして、選んだのがこの「唇」(ここでは「唇−2−」)でした。
ナミを求めて切羽詰ったゾロと、初めて男に身体を許すナミ!そう、これはナミの処女喪失話なんです。ゾロの「おれでいいのか」に込められたナミを思いやる気持ちにはぐっときます。
「よければ表の『唇』もいっしょに」という言葉に甘え、表作品であった「唇−1−」も頂戴してきました(^_^;)。こちらも大好きなんです〜〜!
このお話の続きにあたる作品は時間の澱様にあります。どうかご堪能くださいね♪
のおさん、素晴らしい作品をどうもありがとうございましたーー!

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