このお話は「
愛のある島」の続編です。先にそちらを読まれることをお奨めします。
不親切設計で申し訳ありません(汗)。

 



7月2日。俺は仕事場であるレストランの営業時間が終わると、急いで旅立った。

あの二人が住む、カテドラルアイランドへ向けて―――





この愛すべき家族を





入国審査に約2時間費やされた。
いつもなら、1時間くらいで終わるのだが。

ここ、カテドラルアイランドは入国審査が厳格なことで有名だ。
外部から武器になる可能性のあるものを持ち込めない。
俺の武器は足。だから簡単に済みそうなものだが、ところがどっこい、愛用の包丁、ナイフ類が厳しい審査対象となった。前回までは、これらを持ち込んでもノーチェックだったのに。
それについてクレームをつけると、「規則が変わったのです」というつれない返事。
いつも俺の担当をしてくれる入国審査官ジェニファーは美人でやさしかった。
しかし、今日の担当者はなんだ?ムスッとしやがって。
ようやく審査が終了し、入国許可が出たところで、言ってやったよ。

「ジェニファーは今日は休み?いつもは彼女が担当なんだけど。」

そしたら、本日の審査官様はチラッと俺の方を見て、俺にとっては最悪のことを言いやがった。

「彼女は先月、結婚退職しました。」

なんでイイ女はすぐに結婚して、俺から離れていっちまうのかね?


そんなこんなで、目的地に辿り着いた時には、日付が変わろうとしていた。
夜道を歩いていく。今夜は月がすこぶる綺麗で、街灯がなくても楽々歩ける。
そして、高台の閑静な住宅街の一角にその家はあった。
家には明かりが灯っていない。住人はもう休んでいるようだ。

「そりゃ寝るよな。もうすぐ12時だ。」

腕時計を見ながら独り言を漏らし、呼び鈴も押さず、いきなりドアノブを回す。
鍵がかかっていた。
それでも特に動じることもなく、スーツのポケットの中をまさぐると、鍵を取り出した。
それで施錠を解き、ドアを開ける。
開けた途端に明かりが灯った。瞬間、俺は目を細める。
目の前には、オレンジ色の髪の少年が立っていた。顔はおそろしくあの船長に似ている。

「よう!ジュニア、久しぶり!」
「なんだ、サンジさんか。」

開口一番、少年はいかにもガッカリしたような口調で言った。

「あー?なんだとはなんだー?」

そう言いながら、ジュニアに近づくと、その両頬を摘んで左右に伸ばすように引っ張った。

「ひぃへへ!やめてよ!」
「目上の者への口の聞き方がなってねぇからだ。」

俺が手を離してそう言うと、ジュニアは頬を抑えながら幾分不貞腐れた表情になったが、素直にゴメンと呟いた。
うん、よろしい。さすがに俺が躾ただけのことはある。
それにしてもエラソウな口を叩くようになったもんだ。誰が大きくしてやったと思ってるんだ?

ジュニアことモンキー・D・ルフィ・Jrは、ルフィとナミさんの子として10年前にゴーイングメリー号内で産声を上げた。
この新しい小さな命を、俺たち仲間はこぞって大歓迎した。
しかし赤ん坊には世話が必要だ。そしてもっぱらその任に当たったのは、母親のナミさんとコックの俺だった。お〜い父親は〜?と言いたくなるような状態だったんだ。
ルフィは赤ん坊の機嫌の良いときだけ相手をする父親の典型。赤ん坊が大きくなるにつれてそれは変わっていったが、少なくとも最初はそうだった。
遊んでいたジュニアが泣き出すと、サッとナミさんに手渡す。ナミさんが航海士としての仕事に従事している時はわざわざキッチンまでやって来て、俺に赤ん坊を差し出す。

―――こいつ、おっぱいだって

いくら俺でもおっぱいは出ねぇっての。

ついでに言わせてもらうと、「モンキー・D・ルフィ・Jr」という名前も俺がつけたようなもんだ。
ルフィもナミさんも子育てに関しては非常に鷹揚に構えていた。
名付けもその一つ。普通、親ってのは子の命名には多少知恵を絞るもんじゃないか?
ところが、二人は実に無頓着だった。生まれる前も生まれてからも名前をなかなか考えようとはしなかったのだ。
もともとナミさんには、こう言っちゃなんだがネーミングセンスが無い(「まつげ」「はさみ」レベルだしな)。
それでルフィに期待の目が向けられたが、これも土台無理な話だった。
赤ん坊の世話をする俺は、必要に迫られて「ルフィの子供だから、ルフィ・ジュニア」と仮名をつけた。
俺がジュニアと呼ぶ。
それに倣って、チョッパーがそう呼ぶようになる。
続いてウソップが、ゾロが。
他の仲間達も次々とそう呼ぶようになる。
もちろん、ナミさんとルフィも・・・・。
それから7年後。
ナミさんがカテドラルアイランドへ移る時、ジュニアは初めて戸籍を持つことになった。戸籍には本名を入れなければならないが・・・・ナミさんは迷わずに「モンキー・D・ルフィ・Jr」と書いて書類を提出した。
当然といえば当然のこと。もうその頃にはジュニアはジュニア以外の何者でもなかった。

そのジュニアもすっかり大きくなって、今、目の前に立っている。もうナミさんの胸辺りまで背があるのではないか。

「随分遅くまで起きて、何してたんだ?」
「別に。」
「ナミさんは?」

その問いにジュニアは答えず、くるりと向きを変え、居間の方へと行ってしまった。
俺もその後をついていく。
居間に入ると、ジュニアはそのまま浮かない顔でソファに深く身を沈めるようにして座った。

「なんだ?どした?」

様子がおかしいことに気づいて訊いてはみるが、ジュニアは黙り込んだまま。

「ほら、おとーさんに話してごらん?」
「・・・・誰がお父さんだよ。」

うまく引っかかった。言葉を返してくれるのなら、ずっとあやしやすい。

「将来、俺が正式にお前のおとーさんになるかもしんねーし?」

更に言うと、あからさまに呆れたような目をジュニアは向けてきた。

「どうせなら、サンジさんよりも、ゾロさんがいい。」

ゾロ―――クソ忌々しい名前だ。

「あんな音沙汰もないヤツがおとーさんじゃ、ルフィと変わんねーだろ。」
「来たよ。」
「は?」
「この前、ゾロさんがうちに来た。」

なんだって?

「ゾロが?この国に?」

入国してきた?
刀の没収が嫌で、今まで頑なにこの国への入国を拒んでいたゾロが?

「それで?アイツ、何しに来たんだ?」

急に血相を変えた俺に、今度はジュニアが驚いたようだ。

「え・・・・何って、家に来て、一緒に夕食を食べて泊まっていったよ。そんで、翌日海へ遊びに行って、相撲取ったり、一緒に泳いだりしたよ。」

後半はろくすっぽ聞いちゃいなかった。
泊まっていった!ナミさんの家にゾロが!ルフィがいないのを承知の上で!
泊まったって、ちゃんと別々の部屋だろうな?!とは、さすがにジュニアには聞けなかったが・・・・。
ゾロとナミさんの関係が終わっていることは、よく分かっている。
しかし、焼け木杭に火がつくの諺もある。
以前、仲間達と一緒にこの島に来た時、今日と同じように入国審査を受けることになった。
カテドラルアイランドへは自分の武器を持ち込むことができない。
入国審査所に刀を置いて入国する以外に手はない。
しかし、奴は頑なにそれを拒んだ。

―――刀置いてまで入りたかねぇよ

まったく、大人気ない。
ナミさんが呆れつつも金網越しにヤツと喋っていたのをよく覚えている。
そんなゾロが入国してきたってことは、相当な決意があってのことだ。
ナミさんとヨリを戻しに来たのか、と思わずにはいられなかった。
しかし、

「ゾロさんとはそのままビーチで別れたよ。なにか用があるんだって。」

その言葉で少し思い直す。
あのビーチには海軍基地がある。
ということは、もしかしたらヤツは・・・いやいや、ここから先は憶測の域を出ない。


いつ頃だったかはもうはっきりとは覚えていない。
ゾロとナミさんがキスしている姿を初めて見た日。
月明かりの夜、メインマストの影に隠れるかのように二人は寄り添って座っていた。
静かな凪の海。普段なら聞こえないような物音もその日は耳に届く。
そんな中、ナミさんの鼻を鳴らすような声が何度も聞こえた。
時折ゾロの荒々しい息遣いが混じる。
それで、俺は全てを悟った。
ああ、あの二人、ついにくっついちまったか、と。
打ちひしがれた気持ちになったが、どこかでそんな予感を感じていたことも確かだ。
これで俺の希望も潰えた。どうかお幸せにマイ・ラブ・ナミさん・・・・などと俺が心の中で悲しさ半分やさぐれ半分でおどけているそばで、たまたまそのシーンを一緒に見ていたルフィがうるさく喚きだした。


―――なんだあれ
―――おかしい。ぜったいにおかしい
―――変だ、ぜったいに変だ


初めは、ルフィは単に驚いてるんだと思っていた。
しかし、違う。
これは怒ってるんだと、しばらくしてから気づいた。
なぜルフィがそんなに怒るのか理解できなかった。
仲間同士が恋人になるくらい、全然構わないヤツだとばかり思っていたから。

しばらくすると、ルフィはあろうことかナミさんを口説き始めた。
これにはさすがに驚いた。
そういうことをするタイプには全然見えなかったし、ナミさんをそういう風に考えてるとは思わなかったし、何よりも恋愛なんていう高等で複雑な感情をヤツが持ち合わせているとは思わなかった。
それに対してナミさんは「ハイハイ」と軽くあしらっていた。

バカだよ、ルフィは。
ナミさん想い歴最長記録保持者の俺は、ナミさんのことをずーっと見守ってきたんだ。
それで気づいた。ナミさんはあの馬鹿剣士のことを想ってるんだなぁって。
その想いが通じて晴れて両想いになったんだ。
そう簡単に別れたりする訳がない。
早めに諦めろってんだ。

ところが、それから数ヶ月後、ナミさんがみんなに向って発表した。

「お腹に赤ちゃんができたの。」

この言葉に、「ああ、ゾロのヤツ、興奮のあまり失敗しやがったか」なーんて思いながら、ゾロの方を見る。
はっきり言って、この時のヤツの顔がなかなか見物だった。後にも先にもあんな顔のゾロを見たのはあれが初めてだ。実はいまだにあの顔を思い出すと笑えてくる。
ヤツは、鳩が豆鉄砲喰らったような顔をしていた。
やがてゾロはその表情を引っ込め、苦虫を噛み潰したような顔でルフィを睨みつけた。
ルフィはルフィで得意げにニシシと笑い、そんなゾロの目を平然と受け止めていた。

情けないことに、俺はその時になって初めてナミさんとルフィの関係を知った。
それどころか、ナミさんとゾロが別れていたことにも気づいていなかった。
俺は人の機微には敏感なつもりだったのに、なんてこったろうか。
それほど、この3人はごく自然に振舞っていたのだ。誰にも気づかれないくらいに。
昔からこの3人には独特の絆を感じていたが、この時またもやそれを強く意識した。

ナミさんがゾロと別れることになった事情には薄々気づいてはいた。ゾロにはもう一人別の女がいたのだ。しかし、相手は海軍の女性だったから、まさかゾロがナミさんを捨ててまで本気でそっちに走るとは思ってもみなかった。

ナミさんに子供ができたと聞いて、ゾロはすぐにルフィを見た。ということは、ゾロはナミさんが自分と別れた後、ルフィと付き合い始めたことを知っていたのだ。
そりゃそうか。あれだけルフィがアピールしてりゃな。
しかし、あの豆鉄砲顔から察するに、深い関係にまでなってるとは思ってなかったのではないか。だとしたら、ハハハ、いい気味だ。

そして一方で、それじゃあ俺にもチャンスがあったんじゃねぇの?と思う。
俺もルフィに負けずにアピールし続けていれば、ナミさんは果たしてどっちを選んだか。
けれど、


ナミさんとゾロが付き合ってると知って諦めた俺
ナミさんとゾロが付き合ってると知って挑んでいったルフィ


その時点で勝負はあったのかもしれない。


「それにしても、ナミさん、遅いじゃないか。」

話題を変えて、俺は再度問い掛けた。
ジュニアの態度から、ナミさんが不在であることは察しがついた。

「何か連絡入ってないのか?もう日付が変わって―――7月3日になっちまったぞ。」

俺の声を聞いて、ジュニアは振り仰いで掛け時計を見た。

「遅くなるって連絡はあったよ。」

ジュニアは弱々しい声で言った。

「でも、こんなに遅くなるなんて。何かあったのかなぁ。」

ジュニアが不安げな顔をして立ち上がり、カーテンの隅をちょっとめくって窓の外を見る。

「連絡があったのはいつ頃だ?」
「夕方の・・・・5時くらい。10時には帰るって言ってたのに。」

そうだな、ここまで遅くなるなら、もう一回くらい連絡が欲しいところだ。
本人は作業に没頭してそれどころではないのかもしれないが。

「大丈夫だって。きっと大学の作業が佳境に入ってるんだよ。」

それは嘘ではなかった。俺が次はいつ頃行ってもよいかのお伺いを立てた時、ナミさんは「今すごく忙しいの。あんまりサンジくんの相手してあげられないかも」と恐縮していた。
ナミさんは現在カテドラル大学の教授として研究室を構え、そこで念願の世界地図の完成に向けての作業で忙しい毎日を送っている。
それで、ナミさんが絶対に休みを取ると言っていた彼女の誕生日に合わせて、俺は今日ここへやって来たのだ。
そして、日付が変わって、とうとうその誕生日当日になってしまった。

押し黙ったままのジュニア。これは相当様子がおかしい。

「おい、ジュニア。一体どうしたんだ。ホラ、言ってみないと分かんねーだろ。」
「・・・・。」
「言ったら気持ちが軽くなるぞ?遠慮する仲でもあるまいし。さっさと吐け。」
「・・・・・母さんまで、いなくなったりしないよね?」

やっとジュニアがポツリと呟いた。
ようやく漏れた本音。
お前、そんなことを心配してたのか。
たかが帰宅が遅いくらいで大げさな、と一瞬思った。
でもすぐに思い直す。ジュニア様子から見て、彼にとっては深刻なことのようだと。
ナミさんがいなくなる・・・・俺にはいささか唐突なことに思えたが、ジュニアは何度もその考えを頭の中で巡らせていたのだろうか。
おそらくナミさんが帰宅が遅いのは今日始まったことではないのだろう。
10歳の子供にとって、深夜の12時まで親を待つのは相当辛いことに違いない。しかもそれが幾日も続いたりしたら。
仕事に没頭して時間を忘れるナミさんを、いつもこの広い家で一人で待ってるんだ、ジュニアは。
ひたすら帰ってくるのを待ちわびて。
でもある日突然帰ってこなくなるかもしれない。
そう、ルフィのように―――

ルフィが海軍との戦闘後に海に落ちていったのが2年前。それ以降ルフィの消息は不明となった。
世間の大勢は溺死したと考えているが、俺たち仲間は誰一人としてそんなこと信じちゃいない。
ヤツは必ず生きていると。

ジュニアはというと、ルフィの消息不明を比較的平静に受け止めたようだった。
もともとジュニアには、父は海賊なのだという達観があって、海賊なのだから、いつかこうなることもあると覚悟していたようでもあった。
そういうところが、むかつくほど子供らしくなかった。
でも実際のところはどうだったのか。今から思うとジュニア特有の周囲への気遣いで強がっていたのではないかという気がする。
また、その一方でジュニアがそこまで平静でいられたのは、母親のナミさんの存在があったからに違いない。
母が自分の傍にいる。
それはジュニアにとっては何よりも心強いものだったはずだ。
けれど、父親の次に母親までもがいなくなったら。
それが今のジュニアが最も恐怖することなのだろう。

「母さんがいなくなったら、俺、どうしたらいいんだろ・・・。」

ジュニアはソファに乗り上げて、両膝を抱えて座り込み、膝の上で腕を組み、そこへ顔を埋めた。

親は無くとも子は育つ。
俺やナミさんがその典型だ。
でも、今のジュニアにそんな無神経なことは言えない。
親が現に存在し、親を必要としている今のジュニアには。

ふと2年前の海軍との激戦を思い出す。
決戦に挑む間際に、船上でルフィが俺の方を振り返った。


―――ナミとジュニアのこと、頼むな
―――バカ野郎。遺言みたいなこと言ってんじゃねーよ
―――ノリだよ、ノリ。保険みたいなもんだ
―――保険って、そんな言葉どこで覚えたんだ?とにかく俺は聞かない。そんなもん、ゾロに頼め
―――ゾロはだめだな
―――なんで?
―――ゾロはナミをとっちまうもん
―――俺だってとっちまうぜ?
―――いいや、お前はとらないよ
―――へぇ・・・?なんで・・・・そう言いきれるんだ?
―――お前はとる気なら、もうとっくの昔にとっちまってる。それを今までしなかったってことは、これからもしないってことだ


これは信頼の言葉だろうか?それとも呪詛の言葉だろうか?
とにかく、この言葉を最後に、ルフィは海に沈んでいったんだ。

俺はこのルフィの呪縛のような言葉に囚われて、決してナミさんに手出しはできないようになっている・・・・。
まったく大したヤツだよ。
ルフィ、お前はここにはいないのに。
それでもお前は今も俺たちの船長なんだ。

それにしても、最後の最後に二人のことを思いやるなんて、かっこよすぎるんじゃねーか?
まぁいいさ、俺が、お前の大切な家族を守ってやる。


「心配すんなって。ナミさんがいなくなるワケないだろ。それにもし何かあったとしても俺がいる。俺はルフィから二人のことを託されてるんだからな。」

俺が力強くそう言うと、ジュニアは少し安心したように、照れくさそうな笑みを浮かべて俺を見た。
まったく。ルフィと同じ顔してこっちを見やがる。

その時、キキーッと自転車のブレーキ音が微かに聞こえた。
ジュニアがソファから弾かれたように立ち上がり、そのまま玄関へと駆けていく。
そして、勢いよくドアを開け放ち、戸外へと飛び出していった。
俺も後を追うように玄関先に立った。

「母さん!!」
「ジュニア!遅くなってごめん〜。」

自転車の鍵チェーンを掛け終ったナミさんに、ジュニアが駆け寄って抱きついた。
ナミさんはよろけながらもそんなジュニアをしっかり抱きとめる。

「どうしたの?ジュニア。」

いつになく激しくしがみついてくるジュニアを不思議に思って、ナミさんが問い掛ける。

「泣いてるの?」
「泣いてない!」

明らかに強がってる。

「・・・・・本当にごめんね。遅くなって・・・・。」

ジュニアの気持ちが伝わったのだろうか。ナミさんは胸に顔をうずめるジュニアの背中を何度もやさしく撫でた。
門灯の光で照り返るナミさんとジュニアのオレンジ色の髪。
不意にナミさんが顔を上げ、俺を見た。穏やかな笑みを向けてくれた。

月明かりが、やわらかく今はたった二人だけの家族を包み込む。
その光が、まるでルフィのようだ、と思った。
あいつはこういう大きな愛で今も変わらずナミさんとジュニアを包み込んでるんだ。


たとえこの場にはいなくても
遠く離れていても想い合っている
離れていても、家族なんだ


俺は玄関のドアにもたれながら、その美しい光景をいつまでも見つめていた。


ルフィ、早く帰って来いよ
お前はここにいるべきだ
でも、それまでは俺が守ってやる


できることなら、
俺もこの月の光のようにやわらかく見守っていきたい

この愛すべき家族を






FIN






<あとがき或いは言い訳>
まずは、ゾロナミサイトを標榜してるのに、ルナミでゴメンナサイと謝ります(T_T)。
昨年のナミ誕で「
愛のある島」を上げた直後から書きたいと思ってたサンジ編。
一年後にようやく実現とあいなりました(汗ふきふき)。
着手が遅くて、完成できないかもと危惧しましたが、なんとか形になってよかった。不満も多いのですが、書きたいことは詰め込めたかなという気持ちです(笑)。
どうにか書き上げることができたのは、ナミ誕期間中だったからだと思います。これが他のキャラの誕生日企画だったら諦めてたね(←オイ)。
ナミ誕は、やはりいつも私にすごくパワーをくれます!!

最後に。昨年も書きましたが、このお話の中のルフィは死んでません(^_^;)。

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