このお話は「宝毛」の続編です。
「最後、どうする?」
「・・・ん・・・後ろからがいい・・・・。」
「了解。」
ゾロはナミをうつ伏せにすると、腰だけを高々と掲げる。
ナミの花弁に焦らすように己を擦り付けた後、ゾロはナミの背後からゆっくりと中に侵入した。
「あ・・・・ああ、ああン・・・あン・・・・」
宝毛奇憚
女部屋のベッドでぐったりと横たわる二人。
昼間のわだかまりが解けて、仲直りとばかりにその夜も結ばれた。
いつもよりも激しく。
身体の奥底にじんわり余韻を残して汗ばむ肢体。
気を緩めると、そのまま深い眠りに落ちてしまいそうなほどの気だるさ。
ナミは顔を上げ、横で満足気に仰向けに横になって目蓋を閉じているゾロを見る。
そのままその逞しい裸の胸に、頭を預けた。
「ねぇ。」
「んー?」
目は閉じたままの、ゾロにしては珍しい生返事。
それだけで彼が今いかに無防備であるかを物語っている。
自分に対してそうなってくれることが、ナミは素直に嬉しい。
自らの細い指でスッと心臓の上辺りをなぞる。
今日の昼間まではあった宝毛の部分を。
ゾロは不明瞭な声で「くすぐってぇ」と言った。
「ね?それで、ゾロはあの宝毛にどんな思い入れがあったの?」
「あ・・・・?」
ゾロがようやく目を開いて胸元のナミの方を見る。
「ロビンが言ってたの。そんなに大切にしてるのは、何か意味があるんだろうって。」
「・・・・・。」
「聞かせてよ。どうしてそんなに大切にしてたの?」
ナミは再び顔を上げて、ゾロの顔を覗き込んで小首を傾げる。
その仕草が妙に可愛いと思い、我知らずゾロの口から笑みが漏れる。
そして、ゆるゆるとあまり働かない頭の中で思考を巡らせた。
(そういえばなんでこんなに大切にしてたんだっけ。)
(ああ、あれは・・・・。)
「俺がまだガキの頃で、母親と一緒に風呂に入った時・・・・」
ゾロ自身いくつだったか覚えていないが、まだ母親と一緒に風呂に入っていたのだから、相当小さい頃なのだろう。
体を洗っていた時、初めて自分の胸にある、その「毛」に気づいた。
何も考えずに抜こうとしたら、母親に止められた。
そして、これは「宝毛」といって大切な毛だから抜いてはいけない、と諭された。
“これがある限り、お前の身は安泰です。絶対に死んだりしません”
それ以降は言われるままに大切に守ってきたが、歳を経るにつれて、友人達にその毛の存在を知られるようになった。
鍛錬で上半身裸になることが多いから、気づかれてしまったのだろう。
悪友達は必死に宝毛を守るゾロをからかい、こぞってゾロのその毛を抜きにかかった。
ゾロがムキになってそれを阻止しようとするのが、また面白くてしょうがないのだ。
それからは気が抜けなくなった。
いつ何時狙われるか分からない。
どんな時に、どんな形で襲われても対処できるようにならないと。
その鍛錬の果てに、いつでも他人の気配を察知する能力を身に付けることができた。
これも宝毛のおかげだ。
この能力は、有形無形でゾロの身を守ることになった。
母親の言葉が蘇る。
“これがある限り、お前の身は安泰です。絶対に死んだりしません。”
母親の言った通りだった―――
ここまで語って、我ながら青くさい話だと思った。
ああまでも宝毛に執着してたのは、実は単に母親の言いつけを忠実に守ってきただけだったなんて。
苦笑いを隠せなかった。
それにしても、こんなことを口に出して語ったのは初めてのことだ。
くいなにさえ話したことがない。
その上こんなことを、恥ずかしげもなく語れるようになったことにも驚きだった。
きっとナミが相手だからだろう。
ナミになら何でも打ち明けられる、そんな気がする。
ゾロは、感慨深げに自分の胸元に寄せられたオレンジ色の髪を愛しそうに撫でた。
「こんなことを話すのも、お前だけだ、ナミ・・・・。」
「くかぁ〜〜〜〜〜」
「って寝るなぁ!」
FIN
<あとがき或いは言い訳>
ゾロがこんなんでスミマセン・・・(汗)。
何を血迷ったのか「宝毛」の続編、というか補足話・・・だから短い。
どうしてゾロが宝毛にあんなにこだわっていたかの説明が本編ではできなかったので。
別にしなくてもよかったのに、という意見はこの際置いておく(^_^;)。