眠れる森の姫君  −4−

roki 様




(さて……どうするかな……)
唇から惜しむように離れて、ゾロは困ったように苦く笑った。
まさか、こんな今にも眼を覚ましそうな状態で眠っているとは思ってなかった。
実際の所、ゾロは骨と化した相手を抱くと腹にくくってここまで来たのだ。
「自分でよければ抱いてやる」と言ったのは、そこまでの覚悟があった。
逆に、これほど美しい相手だと動揺が走る。本当に抱いて良いのかと悩んでしまう。
「……紛らわしい言い方するんじゃねぇよ……ったく」
確かに滑らかな頬も身体も、カチカチに凍り付いてしまっている。
このまま強引に自分を受け入れさせたら、壊れてしまうのではないか思えて怖い。
「まぁ、やってみるか……後で怒るなよ」
どこかで聞いているかもしれない相手に一声かけると、ゾロはズボン以外を脱ぎ捨てた。
ギシッと音をさせて寝台に上がり、眠る姫の上に覆い被ろうとしてふと気づく。
小さな花を刺繍された白いベールに、見た目はシンプルだが細かいレースで編み込まれた白いドレス。
これは花嫁衣装だ。
呆気にとられた後、思わず頬笑んだ。
城全体にあんな仕掛けの魔力をかけた上、眠りにつく際にどうせならこれを着て眠ろうとするバイタリティに感心した。
(いや……違うな)
自分の処女を奪う相手。己の与えた試練を乗り越えてここまでやってくる相手なら、自分も全てを捧げよう。それだけの覚悟をもってわざわざこれを選んだのだろう。
それなら自分もなるたけ気持ちよくなって貰うよう努力するとしよう。
なにせ相手は300年もこの日を待っていたことになるのだから──

まずオレンジ色の頭を抱えて、ベールを丁寧に剥ぎ取ろうとする。
しかし、その柔らかな髪の感触に思わずドキリとした。
そっと唇で触れると、爽やかな柑橘系の香りが鼻孔を甘くくすぐる。
ベールを取り去り、なるたけ優しく髪を撫でる。
意外に広い額にそっと唇を落とすと、固く閉じた瞳や鼻梁、頬や耳、唇に次々と口づけを降らしていく。
髪を撫で、頬を撫で、耳たぶをやわやわと揉み、うなじをさする。
そうしているうちにゾロ自身も、じわじわと熱が上がってくる。
己の体温が少しでも届けられたらと、頬を寄せ、背中に手を入れて抱きしめた。
「ナミ……」
息を吹きかけるように耳元で名前を囁き、舌を這わせて甘く噛んだ。
かすかに反応があったように覚えた。
「ナミ?」
もう一度名を呼んで、唇に触れる。
先程より、しっとりとしてきたような唇を親指の腹で撫でて、また唇で塞いだ。
先程より深く口づけをし唇を舐める。そのまま中に差し込んだ。
閉じられていた唇が、少しずつ柔らかくなっていく。舌の進入が少しずつ深くなっていく。
氷のようだった頬が、細い首筋が、撫で続けていくうちにだんだん人肌になっていく。
もう片方の腕で己を支えながら、柔らかな髪を撫で続けた。
舌で歯列をなぞり、唇の裏側を舐める。
可憐な唇に軽く歯を立てて、少しずつ口元を緩くさせる。
髪を撫でていた手を首の下に回して、頭を支えた。
その時、初めて姫は深い呼気を吐きだした。
背筋がぞくりとするような甘い息を吸い込み、代わりに己の息を吸わせる。
やっとで隠れていた舌を探り当てた時、確かに息を呑んだことを感じる。
やがて、舌を絡ませる湿った音が天蓋に響き出す。
口内を舐りながらも、もう片方の手はゆっくりと肢体を撫で始めた。
厚めのドレスに包まれながらも、胸元だけは比較的柔らかい。
それを下から持ち上げるようにすくい、先端を指で引っ掻く。
だいぶ受け入れるようになった唇を離すと、滴が糸のように繋がった。
顔を見ると、先程とは顔色が随分と違ってきていることに気付いた。
陶器のように冷たく青白かった頬が、うっすらと赤く染まっている。
唇も互いの唾液で濡れて光るせいか、だいぶ血の気が戻っているようだ。
触ってみると、あれほど硬くなっていた頬がしっとりと柔らかくなっている。
安堵で顔が緩んだ。これならいけそうだ。
ゆっくりゆっくり、丁寧に時間をかけて、眠り姫の時間を戻していく。
体重をかけずに腰の上に跨ると、そっと肩口から腕にかけて手を這わした。
関節の辺りは、とくに時間をかけてほぐしていく。
光沢のある袖の上からでも温度が伝わるようにゆっくりと。
しだいに関節がスムーズに曲がるようになると、お腹の上に乗せられた両手をそっとさすった。
静かに持ち上げて掌から指先までを撫で、口付けを落とす。
それでも足りないとばかりに指と指の股の間も舌を這わせ、1本ずつ口にくわえて根本から扱いた。
どれも時間をたっぷりかけているので、すでに身体中から汗が吹き出している。
それだけでなく、己の股間も既にズボンの中から硬く存在を主張していた。
寝ている人間を犯すなど全く興味を感じなかった自分が、今は異様な興奮状態に陥っている。
しかもこんなゆっくりとした愛撫は、己のやり方ではない。
自分が与える行為に、眠り続けていた女が少しずつ覚醒しようとしている。
背徳感と達成感が男の性欲を掻き回し始めていた。
すっかり柔らかくなった両腕をベッドに置くと、たっぷりとした胸元を両手で掬い上げる。
胸元が広い為、そうすると魅惑的な谷間がくっきりと浮かぶ。そこに広く舌を這わした。
眠り姫の身体が、確かにピクリと反応した。
「……反応がいいじゃネェか」
ニヤッと笑ってそう呟くと、音を立てて鎖骨に強いキスをする。
柔らかく胸を揉みしだきながら服の上から舌を使った。
胸元から背中までをまんべんなく撫でながら口付けを落とし、あるいは軽く噛みつく。そうしてゆっくりと下に下がっていった。
両手で掴めそうなウエストで臍に口付けをし、さらに腹の上を這って股間に顔を埋める。
再び身体がピクリと動く。次第に反応が顕著になってきた。
ゾロは姫の足先に身体を移動すると、細かなレースが施された絹繻子のスカートをさわさわと掻き分けた。幾重にも細かなレースがドレープのように重なっている。それを破かないように侵入すると、ほっそりとした美しい足首に辿り着いた。
腕と同じように爪先から撫で上げていく。己の体温で暖めるように、溶かすように。
足首から始まり、ふくらはぎを通って膝の裏までを何度も何度も往復する。たまに姫の足の裏が己の股間に当たるのが堪らない。
関節が柔らかくなると、足の指を再び口にくわえた。
丁寧に処理された指先を口に含んで甘噛みする。爪先から初めて足の裏、踵、踝、足首を通ってふくらはぎを渡り、膝の裏まで辿り着く。
徐々にスカートの中に潜り込み、小さな膝に歯を立てる。
入ってみて判ったが、腰から下は絹で出来た膝までのズボンになっている。今とは違う下着だったんだなと変なところで時代を感じた。
下着の上から太股に手を這わす。気のせいか、だいぶ姫の体温が上がっているように思える。
肌の柔らかさも違う。
両足の間に指先をそっと差し込んだ。指の腹で上下に撫で上げる。
まだそこは堅く閉じられていた。
だいぶ熱が籠もってきたスカートの中を楽しんでから、汗だくになって外に這い出す。
一通り手と舌で散々愛撫したせいか先程までの人形のような気配から、血の温度を感じさせる人間へと変化している。
頬は血の気が増して薔薇色に染まり、未だ閉じられた目元もだいぶ優しくなっている。
「さて、そろそろ本番にいくか」
獲物を楽しむかのようにニヤリと笑うと、唇をペロリと舐めた。

もう一度、深く口付けをする。
僅かに開かれた唇は、今はたやすく男の唇を受け入れる。
口付けを楽しみながら姫君の背中に手を這わして、先程は弄らなかった小さなボタンをはずし始めた。
これがなかなか苦労する。ボタンは小さいうえにやたら多いのだ。布地を引き裂きたいのを必至で我慢して、やっとで全てはずす事が出来た。
「さてと……」
身体を起こして、肩口からそっと衣服を脱がせていく。
腕にピッタリの袖を脱がせるのは難しい。だからといって強引に抜くと腕が折れそうで怖い。
やっとで腕を脱がせるとドレスを腰までずらした。
豊かな胸から腰にかけて、しっかりと白い下着で覆われている。
止めていた細い紐をするりとはずして、やっとで胸元を解放する。
下着をはずしても豊かな胸は左右に崩れず、つんと盛り上がっている。
軽く両手で触ると、先程とはうってかわって溜息が出るほど柔らかい。指がめり込んでしまう気持ちよさに、思わず強く握りそうになるのを必至でこらえた。
代わりに先端を舌で舐め上げ、先を突く。
反応は直ぐに現れた。
赤い先端はそこだけ堅く凝り、触れて欲しそうにふるりと突き出される。
それに応えるように、舌と指で両方の乳房をたっぷりと弄った。
眠り姫の胸が上下に大きく動いた。
口元から息がハッキリと漏れた。イヤイヤをするように、首が左右に動いたのも判ったぐらいだ。
もう一度耳元に唇を寄せて、名前を囁いた。
「ナミ……起きろよ……」
「…………」
「起きねェと……このまま犯るぞ……」
だが、まだ起きる様子はない。
それを見ると、ゾロは次の作業にとりかかった。
腰まで降ろしたドレスを、ゆっくりと脱がしていく。
次第に剥き出されていく身体にも、音を立てて口付けを落とす。可愛い臍には、舌まで差し入れた。
また、ハァ……と息が漏れて、身体が反応する。
そのまま下着と一緒にドレスをずらすと、髪の毛と同じ色の薄い痴毛が姿を現した。
柔らかそうな痴毛は、今はしっとりと濡れて光っている。
ゴクリと喉が鳴り、引き寄せられるようにそこに口付けを落とした。
途端に、今までで一番、眠り姫の身体が強く反応する。
背中から腰がビクビクと反応し、ベッドが軽くスプリングを効かせた。姫の反応に満足して、ドレスを足下から剥ぎ取った。
最早、身につけているのは胸元の首飾りだけだ。確かに美しいが、ゾロはそれも取るとベッドの隅に放り投げた。
その神々しいまでの美しい肢体に、しばし魅入る。
オレンジ色の髪がシーツに散らばり、薔薇の頬を包んでいる。
乳房は少しも垂れずに若々しく張り、桃色の乳首がピンと勃っている。
細くくびれたウエストと平たい腹は豊かな腰へと繋がり、適度に張った腿へと続いていた。
うっすらと色づいた身体は、とても300年間眠っている女性とは思えない。
今まで出会った女の中で一番美しいとすら思えた。
いい加減、苦しくなってきたズボンの前を解放すると、堅くなった性器が剥き出しにされた。
そのまま姫に覆い被さる。
口付けをし、背中に手を回して思い切り抱きしめる。
柔らかな身体を楽しみながら、姫の腹に己の性器を擦りつけた。
あまりの気持ちよさに、それだけで達しそうになる。
髪から始まって顔中に口付けの雨を降らす。だいぶ熱い息を零すようになった口腔内を犯し、白い喉に噛みついて痕を残す。舌を脇の下まで這わして快楽を促すと、胸元に顔を埋めて舌を這わし、両手で散々に嬲った。
肩口から腕を撫でていき、姫の両手を握ると我慢出来ずに己の性器を握らせた。
「判るか……?これが俺だ……」
ほっそりした指を己自身にしっかりと絡ませ、上下に扱き出す。痺れるような快感が背中をゾクゾクと走り抜ける。
「……あんたの中に……これが……入る……っ…!」
姫に覚悟を促しているのか、ただ己の快楽を吐き出したいのか自分でも判らない。
愛撫は次第に激しさを増し、やがて白い欲望を腹の上に吐き出した。
暖かな精液はなかなか収まらず、濃い液体がいつまでも溢れ出す。
まだ強張りのあるそれを姫の乳房に挟んだ。異様な興奮状態が溶けぬまま、前後に腰を使い出す。
姫の身体が一気に血の気が増していく。
頬は赤く染まり、眉は艶めかしく寄せられ震えている。
自分に何が起こっているのか判っているのかいないのか……この状況を何処かで見ているのだろうか。だが本当に嫌なら雷を落としても止めに来るだろうと思い、柔らかな感触を楽しみ続ける。柔らかな乳房は、己の硬い先端を柔順に受け止める。
先端がうっすらと開いた口元に届きそうなのを見て、また別の興奮が頭をよぎった。
ガチガチに堅くなっている性器を乳房から剥がすと、その先端で姫の口を突いた。
先走りした液が愛らしい口元を汚す。
腰を姫の顔の上に持ってくると、両手と両膝で身体を支えながら口腔内にゆっくりと性器を差し込む。強引にねじ込みたいのを必至でこらえ、静かに腰を使う。
眼を覚ました時に殺されそうだが、これが「男を受け入れる」意味に取られないだろうかと期待もした。
軽く歯が当たりもしたが、性器は意外にたやすく飲み込まれていく。
暖かく濡れた口内は、ただ出し入れするだけで異様な興奮を掻き立てた。
時折濡れた舌先がチロチロと先っぽに当たる。それが焦れた興奮を呼び覚ます。
腰の動きが速くなるのを押さえながら、再び精液を口内に吐き出す。
「っ……」
小さな呻き声にハッとなると、慌てて性器を引きずり出した。
途端に眠り姫はケホケホと咳き込んで口元から白い液を零した。
だがゴクリと動いた喉はその多くを飲み込んだらしく、零したのは意外に少ない。
期待して見つめていたが、苦しそうな様子は見せても眼を開けることはない。
ただ左右に首を振って、艶のある吐息を零した。
「……悪い。苦しかったな」
二度も吐き出して少し頭が冷えた。思わぬ無茶をさせてしまったと流石に後悔する。
「じゃあ、次は俺の番だな」
既に邪魔になっているズボンを脱ぎ捨てると、改めて姫の身体に覆い被さった。
汚れた口元を拭ってやり、再び口付けをする。
改めて身体を愛撫しはじめた掌は、次第に下腹部へと降りていった。
「……ん?」
薄い痴毛を掻き分けた掌が、湿った音を出す。
そこはグッショリと熱く濡れていた。
しっかり反応しているのが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。
そのまま襞を指先が掻き分ける。
「……んん……」
今度はハッキリと声が出た。
背筋がゾクゾクとするほど甘い声だ。
「いい声だな……」
無意識に唇を舐めると、指をさらに奥まで進める。
「もっと聞かせてくれ……」
耳たぶを甘く噛んでそっと囁く。
股間に侵入させた指の腹が、隠されていた突起を探り当てる。
「……あっ……」
途端に眠り姫の背中が大きく反応する。
それを見ながら、突起を優しく摘んで剥いてやる。
親指でそれを擦りながら、中指を奥まで侵入させる。
「はぁ…………はっ……」
次第に激しく反応をする様子を見ながら、たっぷりと湿ったそこを愛撫する。ぐちゃぐちゃと嫌らしい水音が当たりに響いた。
これだけ濡れていても、指一本で相当キツイ。
ゾロは身体を起こして、下から股間を眺める位置に座った。
軽く膝を曲げさせると、股関節を撫でながらゆっくりと股を広げていく。
なにせ、これから激しい動きをさせるのだ。ある程度柔軟でないと姫の身体がもたない。
やっと十分に股が広げられると、その中心にふっくらと色づく襞に思わず魅入った。
堅く閉じられていたそこは、男を受け入れようとゆっくりと開こうとしている。
甘い蜜のように滴り落ちる愛液が、甘い芳香を放ってシーツに滴り落ちた。
強く吸い付く。舌を下から上へと這わせて、襞の中に潜らせた。
「ひゃぅ……!」
小さな喘ぎ声が聞こえた。腰がヒクヒクと跳ねる。
それを抱えるようにして、舌と指でたっぷりと弄ぶ。
じゅるりと音を立てて吸い付き、突起を舌で嬲った。
互いの息が荒くなる。いつしか、眠り姫もびっしょりと汗ばんでいる。
意識だけが戻らぬまま、身体だけが喜びの声を上げて男を受け入れる。
一本でもきつかった指が二本目を許すようになり、腰が愛撫に応えるように艶めかしく動く。その頃には、ゾロの我慢も限界に達しようとしていた。
身体を起こし、姫の両足を抱えてその間に己を割り込ませる。
細い腰を両手でしっかりと抱えて、濡れた入り口に己自身を当てた。
「入れるぞ」
二、三度、入り口で擦ると流石に姫の身体が少し硬くなった。それでもここで止める訳にはいかない。
膨らんだ先端をグッと押し込む。強い抵抗を感じて、思わず負けそうになる。
何度か入り口を擦らせてから、強く内部に己を押し込んだ。
「────あッ!!」
衝撃で姫の身体が跳ねる。
内部の圧迫に男もその場で果てそうになったが、必死で踏みとどまった。
更に深く押し入ると、膜を破くような感触が伝わってきた。
「……ナミ………」
腰から背中にかけて快感が走り抜ける。それに酔いながら狭い内部をじわじわと侵入する。
「…………ナミ…………」
背中に手を回し、汗ばんだ身体をしっかりと抱きしめる。
名前を呼びながら更に深く埋め込んだ。
「……いいかげん……眼を覚ませよ……」
先端が奥に突き当たり、ゾロ自身をすっかりと飲み込んだ。
ふぅと一息つくと、しばし馴染むまで動きを休ませた。
胸に耳を当てると、鼓動がハッキリと聞こえる。心音が自分のそれと重なっていく。
「動くぞ……」
ボソリと呟くと、少しずつ腰を動かし始める。
付き入れるたびに、ナミは苦しそうに眉を顰めた。
口から零れる吐息が甘さを増し、腰に絡みついた足がピンと跳ねる。
動きに合わせて愛液が溢れ、次第に注送が滑らかになっていく。
ゾロは耳元で姫の名前を呼び続けた。
出来れば最後に達する時には目を覚ましてほしかった。
叶うなら、2人一緒に。
狂おしそうにパタパタと藻掻く腕をとって己の首に回してやると、ギュッとしがみついてきた。
それでも最後の呪いは必死で眠り姫に絡みつき、目を覚まさせようとしない。
未だ閉じられた目尻からスッと涙が伝わり落ちる。本人も苦しいのだ。
涙を舐め取って、再び口付けを落とすと、今度は向こうから舌に絡みついてきた。
眠り姫の背中が激しく痙攣を起こし始め、それがゾロにも伝わった。
望み通りに、2人は同時に深い絶頂に達した。
男の熱い体液が、ドクドクと注ぎ込まれていく。

繋ぎ止められた最後の鎖が、2つ同時に外れた。



城の内部で激しい音が聞こえる。
未だ、解放の余韻に浸っていたゾロはハッと我に帰った。
「なんだ!?」
その時、部屋の天井にピシリと亀裂が入る。繋がったまま姫を抱きかかえるゾロの目の前で、部屋の三分の一が崩壊し、凄まじい音を立てて地面に落下していった。
すっかり明け切った朝の光がサッと部屋に差し込まれ、寝台の上の2人を照らし出す。
「……どうなってるんだ?」
息を呑んで様子を見守ったが、それ以上建物が崩れる音はしない。
ホッとするゾロの腕の中で、姫が小さく身じろぎをした。
「……ん……」
「おい!」
ハッと気付いて見下ろすと、堅く閉じられていた瞼が小さく震えた。
やがてゆっくりと瞼が開き出す。
息を呑むゾロの目の前で、紅茶色の美しい瞳の焦点が合っていく。
「ナミ」
そっと名前を呼ぶと、二、三度瞬きをして、こちらを見つめる。
「ナミ……」
自分で照れるほど優しい声で名を呼ぶ。
ナミの潤んだ瞳に、自分の顔が映った。唇がかすかに震える。
「……ゾロ……ね……」
「……そうだ」
そうしてニヤリと笑う。
「もう朝だぜ」
「……本当ね……」
ゆっくりと微笑みが広がっていく。
そうして頬笑むと、眠っていた時より数倍も美しい。朝陽の中で輝く薔薇のようだった。
眠り姫──ナミが静かに身を寄せてきたので、ゾロもしっかりと抱きしめてやる。
達した時よりも、遥かに深い満足で満たされる。
「…………寝ていると思って、随分と無茶をしてくれたわね……」
男の胸に顔を埋めながら、ぼそぼそと文句を言う。
「嫌なら雷でも何でも落とせば良かったろう」
「出来ないわよ……眠ってるのに」
「何でだ?アンタの魔力は凄かったぜ」
「……あの試練の部屋とこの部屋にかけたのは、私の呪いが解けるまで途中解除の出来ない、ほぼ永久にかけられたものなの。夢の世界に連れ込まれたら、もう魔力はほとんど使えないわ」
「なら今は?」
「……ダメよ。私はもう魔力がなくなったの……ゾロのせいで」
「俺が!?」
「……そうよ。だって私の魔力は処女性が柱になっていたんだもの……」
そう言って顔をあげたナミの頬は真っ赤に染まっていた。やや恨めしげにゾロを見上げる。
唖然としていたゾロだったが、やっとで合点がいき頷いた。
「……アンタ、だから城の中に閉じこもったんだな」
「そうよ!……私に呪いをかけた黒の魔女は、その事を知っていたのよ!私の力が欲しくて城に来ても、抱いちゃったらただの娘になってしまうわけ。相手がそれで納得するわけないじゃない。私だってそんな屈辱はゴメンだわ。だから……」
そう言ってギュッと唇を噛む。
「……壁が崩壊したのは、私の魔力が失われて支えきれない箇所が出たからよ。この部屋の時間を止める魔力も消えたから、時が経てばそれ相応のガラクタになる。私には何も残らな……キャッ!」
内部に入っていた男のそれが再び硬度を増して、ナミの腰を跳ね上げさせた。
みるみるうちに真っ赤に頬が染まっていったのは、恥じらいと怒りのせいだろう。
「ちょ、ちょっと!いったいいつまで入れてるのよ!」
「なに言ってるんだ。これからだろ?」
「なっ……!」
顔を赤く染めるナミの手をゾロは絡め取って、顔を寄せた。
「なあ。この部屋はまだ当分は大丈夫なんだろ?」
「……そ、そうよ……ってだけど……あっ!」
腰を抱えられ、ベッドに座った男の膝の上につながったまま座らされる。
「じゃ、難しい話は後だ。お楽しみはこれからだぜ」
何か文句を言おうとする女の唇を強引に奪った。
「ちゃんとお前が起きてなきゃ抱いても意味がねェんだよ……」
「……!」
「悪いが……俺はお前の魔力には興味はねェ」
「……え?」
驚いたように目を見開くナミに、ゾロは小さく苦笑した。
「欲しいのは、お前自身なんだ……」
息を呑んだナミの頬が赤く染まる。
それと見たら堪らなくなり、腰を捕まえて激しく揺さぶった。
のけぞる首筋に歯を立てながら、忘れていたことを思い出した。
「そうだった……今日は……アンタの誕生日だったな………」
「……ええ……」
「……誕生日おめでとう……」
「…………ああッ!!」
深く貫くと、再び首にしがみついてきた。

嬌声が崩れかけた部屋に甘く響き出した。





















「……もう、信じられない!ケダモノ!何回すれば気が済むのよ!」
「……そうだな……いや、俺はどっちかっつーと蛋白な方だったんだが……」
「何処がよ!!」
威勢はいいが、ナミはグッタリとベッドに横たわってもう身動きが取れない様子だ。
その横でゾロも流石に大の字になって寝そべっている。
自分自身も実は驚いている。1人の女にこうも立て続けに達したのは初めてだった。
「いや、俺も尊い姫君がこうもくわえるのが上手いとは思わなかったぜ」
「言わないでッ!!」
真っ赤になって怒りながらプイッと顔を背ける。
もらったミカンを手に抱えて、耳まで赤くなったその背中を笑って抱きしめた。
「なあ……アンタ俺と来いよ」
「…………貴方と……?」
「ああ……俺は流れ者で、あちこち旅を続けるしかねェが……それでもいいならな……」
「旅…………」
その言葉に押さえきれない憧れを込めて、ナミは呟いた。
「…………私、ずっと世界中を旅してみたかったの……」
「そうだと思ったぜ……夢の世界でずっと地上の果てを見下ろしていたろ?」
「……でもそれは叶わないと判っていた……私はお城と村人を守らないと行けなかったから……」
「……だが城は壊れたし、アンタの村人はもうここにはいないぜ……」
抱きしめたままそう呟くと、ナミは静かに顔を上げた。
その瞳が涙で濡れている。なくした者と時間を懐かしむ痛み。
「……俺と来いよ……海を渡って遠くまでな」
「……海って見たことがないの……」
「じゃあ見せてやる。それが俺の誕生日の贈り物だ」
そう言うと、やっとナミは頬笑んだ。日の光が輝かしく包み込む。

それからほどなくして、男は約束を果たした。
2人がどうなったかは、また別のお話。




Fin


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<管理人のつぶやき>
rokiさんの【眠れる森の姫君】第4話の裏バージョンでございます。
眠り姫ナミは、ゾロと結ばれることで呪いが解け、目を覚ますことができました。
どんな風に結ばれたかといいますと、こんな風に熱く激しく結ばれたのです!

意識のない人への淫らな行為に、興奮をいっそう掻き立てられますネ!!
もう気持ちはゾロと一緒になってしまって、最中たまらんかったです(ぽっv)。
そして、ナミの艶やかな吐息とゾロの息遣いの背後で、rokiさんの激しい息遣いも聞こえる気がしました(笑)。

rokiさん、素晴らしい作品を本当にありがとうございました〜〜vvv







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