このお話は『When He's Not Around』の続編です。







夢見たものは   前編

                                
味海苔 様


 昨日、あの女は何をしたかった?一体どうしたかった?
 コックにあの歌の意味を聞いてから、何度これを繰り返したか分からない。くそ、トレーニングに全く集中できねぇ。
ゾロはダンベルを床におろし、その横にどっかと腰をおろした。 あいつは歌で伝えてきた。かつて訪ねた島には、男女が短い歌で想いをやり取りする習慣があった。ここはやはり歌で返すべきなのだろうか。

そんなことをうとうと考えていると、遠くで遊んでいたはずのルフィたちが来ていた。また、かくれんぼをしろとでも言うのか…。「おいゾロ、今日は朝から変だぞ〜。何かあったのか〜?」
「なにっ、どこか具合でも悪いのか!? ちょっと待ってろ、すぐに道具取ってくる!」
「いや、チョッパー、その必要はない!この、キャプテ〜ン・ウソップ様がいるところに病人は出ないのだ!」
「びょーにん?それ、食えるのか?」
「…うるさいっ!」
「ちぇ、せっかく鬼ごっこやろうと思ったのによ〜」



特に何も思いつかないうちに、とうとう夕食の時間になってしまった。まだ考え込みながら黙々と食べていると、いきなりナミが皆に声をかけた。
「気候も安定してきたし、そろそろ島に着くわ。このままだと明日の昼前には着きそう。チョッパーがカモメに聞いたところによると、結構大きな街があるらしいわ。海軍もいないみたいだし、ログの期間によっては陸でゆっくりできそうね。」
ナミの言葉に、一同は歓声をあげた。普段はあまり喜ばないゾロも、今回は嬉しそうにしていた。もう少しでガッツポーズを作りそうな勢いである。そして背後には、全てを理解した様子で微笑むロビンの姿があった。



「ログが溜まるのは75時間と聞いたわ。サンジ君のおかげで財政面はいつもより安心できるから、全員分の宿をと取っておいた。船番は12時間交代で、ゾロとロビンとサンジ君が2回ずつね。」
「んナミすゎんが、僕のおかげですって〜☆」
「あのさぁ、何でサンジのおかげで宿がとれんだよ〜」
「「「「「「お前(あんた、あなた)の冷蔵庫荒らしを防いでいるから」」」」」」
「なんだよ、みんなしてよ〜。俺がかわいそうだろ〜」
「「「「「「どこが」」」」」」 船長のことになると、大抵クルーの意見は悲しいくらい一致する。ゾロは、雰囲気を察して陸の話を始めたウソップをぼんやりと眺めながら考える。
うたう歌はとりあえず決めてある。あとはタイミングだ。今夜は船番で、2泊だから明日の夜になる。部屋割りは多分3バカ、ナミとロビン、俺とサンジ だろう。そうすると、ナミを招くのか…。いや、と首を振る。俺にそんなことができるわけがない。チャンスがないではないか…。
溜め息をつきかけて、待てよ、と立ち直る。ロビンはきっとサンジのところに残る。ナミの部屋は空く。そこに行けばいい。
「もしも〜し、ゾロ君、起きてるかな〜?」
我に返ると、小馬鹿にしたように尋ねるナミの顔があった。
「のわっ!い、いきなりなんだ!?」
「これ、ホテルまでの地図。この赤いラインが道筋で、青いのが目印。さすがにこれまでしたら、万年迷子のあんたでも無事に行けるはずだから。」
「だ、誰が迷子だっ!分かったからさっさと行け!」
「あら、失礼ね。感謝のひとつぐらいしなさいよ。じゃ、行ってきます♪」
「おう。」
ナミたちを見送りに行くと、皆より少し後ろを歩いていたロビンが近づいてきた。何かと思えば、「剣士さん、顔が赤いわよ?どうしたの」
ゾロの耳が、桃色から深紅になった。




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